2026/10/29

IVRのリプレイス・乗り換え手順|着信トラブルを防ぐ7ステップと事例

「今のIVRは保守の期限が近いし、ガイダンスを1行変えるだけでも作業費と日数がかかる」「乗り換えたいけれど、切り替えた日に電話がつながらなくなったら困る」。IVR(自動音声応答)のリプレイスを任され、こう悩む担当者は少なくありません。
IVRの乗り換えで防ぎたいのは、切り替え日に電話がつながらなくなることと、旧契約の解約が遅れて新旧の料金が重なることです。番号の契約先と着信先の変え方を確認し、旧IVRへ戻す手順を用意したうえで、可能なら一部の電話から移すのが安全です。
本記事では、今のIVRの設定変更で直る不満かどうかの見分け方から、乗り換え先の方式の選び方、乗り換え前に書き出しておく5つのこと、着信トラブルを防ぐための切り替え7ステップ、時間外やあふれた電話から段階的に移す方法までを順に解説します。他社サービスや自社運用のIVRから乗り換えた会社の事例も紹介します。
手順を先に確認したい方は、IVRを切り替える7ステップへ進んでください。

目次

・IVRのリプレイスは何がきっかけ?今のIVRで直るかを先に見分ける

・乗り換え先の方式はどう選ぶ?プッシュ式・音声・使い分けの3つ

・IVRを乗り換える前に書き出しておく5つのこと

・IVRを切り替える7ステップ

・一部の電話から移すには?時間外とあふれた電話から始める方法

・IVRの乗り換えでよくある失敗と防ぎ方

・IVRを乗り換えた事例と、電話番号を維持した導入事例

・乗り換え先を比べるときに確かめること

・よくある質問

・まとめ

IVRのリプレイスは何がきっかけ?今のIVRで直るかを先に見分ける

IVRのリプレイスを考えるきっかけは、保守期限や機器の老朽化、料金の高さ、ガイダンスを変えるたびにかかる作業費と日数、プッシュ操作では取れない情報がある、といったものが中心です。ただし、不満の中には今のIVRの設定を見直すだけで直るものもあります。乗り換えには日程と費用がかかるため、最初に「乗り換えないと直らない不満か」を見分けておきます。

今のIVRの設定変更で直るのはどんな不満?

ガイダンスが長い、メニューの階層が深い、営業時間の案内が古いといった不満は、多くの場合、今のIVRのままでも直せます。メニューを減らしたり、案内文を短く録り直したりするのは、契約中のIVRでもできる作業だからです。音声で用件を受けたい、窓口ごとの契約をまとめたい、料金の数え方を変えたい場合も、まず現事業者に対応できる機能や別プランがあるかを確認します。今の契約で変えられないと分かったら、乗り換えを検討してください。

起きていることから原因と打つ手を探せるように、よくあるきっかけを表にしました。

起きていること 考えられる原因 まず確認・変更すること
ガイダンスが長く、
途中で切られる
メニューが増え、
階層が深くなっている
今のIVRで設定を見直す。
メニュー別の着信数を見て、
使われていない分岐を削る
ガイダンスを1行変えるのに
作業費と日数がかかる
変更をベンダーに
依頼する契約になっている
自社で変えられる範囲を
今の契約で確かめる。
変えられなければ乗り換えを検討
保守期限の通知が来た、
機器が古くなった
自社に置いた機器の
寿命や保守の終了
同じ機器を買い直すか、
クラウド型に移るかを比べる
解約理由や要望を
プッシュ操作では取れない
今のIVRが
音声での聞き取りに
対応していない
音声で受けられるIVRや
ボイスボットへの乗り換えを検討
窓口ごとにIVRが分かれ、
管理が煩雑
用件ごとに
別々の契約を
結んできた
複数の用件を1契約で
扱えるIVRへの
まとめ直しを検討
カード情報の扱いなど、
受付方法を変える
必要が出た
今のIVRのままでは
要件を満たせない
今のIVRを改修する費用と、
要件を満たすサービスへ
移る費用を比べる

お客様の側から見た不満も、判断の材料になります。株式会社電話放送局が50〜70代の男女241名に行った調査では、問い合わせの電話で経験した困りごととして「自動音声のプッシュ番号操作が複雑で面倒だった」が17.0%にのぼりました(出典:コールセンター利用とAI自動応答に関する調査の発表)。プッシュ操作の分かりにくさは、メニューの整理で直る部分と、音声で受ける方式に変えないと直らない部分に分かれます。メニューの組み立て方は「コールフローとは?そのまま使える例3パターン」で詳しく紹介しています。

乗り換えを決めた会社のきっかけ

実際にIVRを乗り換えた会社のきっかけは、3つの型に分かれます。

通販の日本予防医薬株式会社は、以前は他社のサービスを使っていましたが、解約理由をプッシュボタンでの回答に限っていたため、お客様の詳しい声を取れませんでした。新規のお客様向けと既存のお客様向けで別々のIVRを使っていて、管理が煩雑だったことも課題でした(導入事例)。

チケット販売のぴあ株式会社は、自社でIVRを構築し、約10年間オンプレミスで運用していました。2018年のリプレースの際に、運用のコストと工数の削減、音声を含めたトラブルの解消を考えて、オンプレミスを続けるかクラウドに切り替えるかを検討しています(導入事例)。

EV充電サービスのジャパンチャージネットワーク株式会社は、電話で受けるカード情報を自社システムに残さない運用へ変えるため、旧IVRをどう移すか検討しました。同社はカード情報を自社で保持しない方法を選び、移行先と基幹システムの接続も選定時に確かめています(導入事例)。カード情報を保持しない受付方法は「クレジットカードの非保持化とは?」で解説しています。

聞きたい情報が取れない、運用の負担が重い、守るべきルールが変わった、という3つの型のどれに当たるかが分かると、乗り換え先に求める条件もはっきりします。

乗り換え先の方式はどう選ぶ?プッシュ式・音声・使い分けの3つ

乗り換え先の方式は、用件ごとに「間違えられない情報か、言葉で話してほしい情報か」で選びます。番号のように正確さが要る情報はプッシュ操作、理由や要望のように選択肢では受けにくい情報は音声で受けるのが基本です。乗り換え先の方式は、大きく次の3つに分かれます。

方式 向く用件 準備すること 気をつけること
プッシュ式のIVRを
新しくする
用件の振り分け、
番号の入力、
決まった手続き
今のコールフローの整理と、
ガイダンスの録り直し
選択肢にない用件は
受けられない
ボイスボットで受ける 理由や要望の聞き取り、
言い方がばらばらな質問
想定する言い方の洗い出しと、
聞き取れないときの流れ
聞き取りの誤りを
前提に設計する
用件ごとに
プッシュと音声を
使い分ける
番号は正確に、
理由は詳しく
聞きたい手続き
どの項目をどちらで
受けるかの割り振り
1本の電話の中で
操作が変わることを
ガイダンスで伝える

ボイスボットとプッシュ操作の違いは「対話型AIボイスボットと従来型の違いは?」で、業務ごとの向き不向きは「ボイスボットと相性が良い業務は?プッシュ操作との棲み分け」で詳しく解説しています。

番号はプッシュ、理由は音声で受けるのはなぜ?

お客様が音声での応対に感じる不安が、聞き取りの正確さに集まっているからです。先ほどの調査では、ボイスボットを使うときに最も不安なこととして「自分の話した内容を正しく聞き取ってもらえるか不安」が22.4%、「結局オペレーターにつながるなら二度手間ではないか」が22.0%で上位に並びました(出典:株式会社電話放送局の調査発表)。

電話番号や顧客番号は、1桁違えば別のお客様の記録に当たってしまいます。プッシュ入力なら音声認識による聞き取り違いは避けられますが、押し間違いはあり得るため入力値の確認が必要です。反対に、解約の理由や商品への要望は選択肢を並べると取りこぼしが出るため、音声で自由に話してもらうほうが詳しく取れます。

日本予防医薬では、解約の電話で電話番号・顧客番号・郵便番号をプッシュ入力で、解約理由を自由な発話の音声で受け、テキストにしています(導入事例)。プッシュ式から乗り換えるときに、全部を音声に替える必要はありません。今のIVRで困っている項目だけを音声に替える、という選び方ができます。

IVRを乗り換える前に書き出しておく5つのこと

乗り換えの日程と見積もりの精度は、今のIVRの状態をどこまで書き出せているかで決まります。ここでは、乗り換え先に相談する前に書き出しておく5つのことを、確かめる場所と書き方の例とあわせて紹介します。

書き出すこと どこで確かめるか 記入する内容
① 電話番号と契約先、
同時に受ける本数
電話会社の契約書と請求書、
着信の記録
番号ごとの契約名義と電話会社。
最も混む時間の同時着信数
② PBXを通る順番と
転送先
回線とPBXの構成図、
PBXの設定
着信→IVR→PBX→オペレーター。
時間外は折り返し受付へ
③ IVRと連携している
システム
情報システム部門、
IVRの仕様書
顧客管理システムへ受付データを
毎時取り込み。通話録音は別契約
④ コールフローと
メニュー別の着信数
IVRの管理画面と
着信レポート
各メニューの月間着信件数と、
利用の少ない分岐
⑤ 旧契約の条件と
データの返し方
IVRの契約書と
利用規約
最低利用期間、解約予告の期限、
録音データの出力可否と形式

① 電話番号と契約先、同時に受ける本数

最初に、お客様がかけてくる電話番号を全部書き出し、それぞれ誰の名義で、どの電話会社と契約しているかを確かめます。番号を自社で契約し、着信先だけを変えられるなら、番号を維持して新しいIVRへつなげます。今のIVR事業者が番号ごと提供している場合や、着信先の変更に制約がある場合は、同じ番号を使い続けられるかを契約先に確かめてください。

あわせて、最も混む時間帯に同時に何本の電話がかかってくるかも、着信の記録から拾っておきましょう。電話会社の番号から新しいIVRへ転送して受ける場合は、転送元の回線数と新しいIVRで受けられる本数の両方を確かめます。DHK CANVASのサービスページも、転送を挟む場合は転送元の回線数が上限になると案内しています。必要な回線数の考え方は「あふれ呼とは?件数の調べ方と必要な回線数の計算」で紹介しています。

② PBXとの順番と転送先

次に、電話がどの順番で流れているかを書き出します。電話会社から来た電話が先にIVRに入ってからPBXへつながるのか、PBXが受けてからIVRへ回すのかで、切り替えのときに設定を変える場所が変わるためです。IVRから先の転送先(オペレーターの席、部署の番号、時間外の折り返し受付など)も、番号まで1つずつ書きます。PBXとIVRのつなぎ方は「PBXとIVRの連携方法と構成例」で図にしています。

③ IVRと連携しているシステム

IVRが受けたデータをどこへ渡しているかを、情報システム部門と一緒に確かめます。顧客管理システム、基幹システム、決済代行会社、SMSの送信、通話録音などが代表的です。乗り換えでいちばん抜けやすいのは、この受け渡しです。電話はつながっているのに、受付のデータが社内のシステムに入らなくなる、という形で表に出ます。

④ コールフローとメニュー別の着信数

今のコールフローを、分岐・営業時間・祝日・臨時休業・満席のときの流れまで含めて図に起こします。管理画面の設定だけでなく、年末年始だけ流している案内のように、期間を決めて切り替えている設定も漏らさず拾うことが大切です。メニューごとの着信数も並べておくと、新しいIVRへ移すときに、ほとんど使われていない分岐を削れます。

⑤ 旧契約の条件とデータの返し方

最後に、今のIVRの契約書と利用規約から、最低利用期間、解約の申し出の期限、自動更新の有無、解約したあとの録音データや設定の扱いを書き出します。解約の申し出の期限が、乗り換えの日程全体を決めることが多いためです。録音データを残す必要がある場合は、解約の前に取り出せるか、どの形式で受け取れるかも確かめておきます。通話録音の保存の考え方は「コールセンターの通話録音に開示義務はある?」を参考にしてください。

IVRを切り替える7ステップ

書き出した5つのことをもとに、着信トラブルを防ぐための切り替え手順を7つに分けて説明します。切り替え中も電話がつながるかどうかは現在の構成と変更方法によるため、事前に電話会社と確認してください。まず全体を一覧にしました。

方式と移す範囲を決める、旧契約の解約期限から切り替え日を決める、コールフローを整理して移す、ガイダンスを作り直す、本番前に着信テスト、着信先を切り替える、切り替え後の数字を見る、の7ステップでIVRを乗り換える流れの図

ステップ やること 主に動く人 つまずきやすいこと
1 方式と
移す範囲を決める
用件ごとの方式と、
最初に移す電話を決める
窓口の責任者 全部を一度に
移そうとする
2 切り替え日を決める 解約の申し出期限から
逆算して日程を決める
窓口の責任者、
契約の担当
申し出期限を過ぎ、
自動更新される
3 コールフローを
整理して移す
使われていない分岐を削り、
新しいIVRに組む
窓口の運用担当 古い分岐を
そのまま写す
4 ガイダンスを
作り直す
録り直すか合成音声にするか
決めて作る
窓口の運用担当 日付や金額の
読み方の誤り
5 着信テスト 全分岐と時間帯、
連携先の記録を確かめる
運用担当、
情報システム部門
営業時間内しか
試していない
6 着信先を
切り替える
電話の少ない時間帯に
着信先を変える
情報システム部門、
電話会社、IVR事業者
戻し方と連絡先を
決めていない
7 切り替え後の
結果を確認する
事前に決めた期間、旧IVRと
同じ数え方で数字を比べる
窓口の責任者 数え方が違い、
良し悪しを判断できない

ステップ1 方式と移す範囲を決める

最初に、用件ごとにプッシュ・音声・使い分けのどれで受けるかを決め、最初にどの電話から移すかを決めます。全部の電話を同じ日に切り替えるか、時間外やあふれた電話など一部から移すかの判断です。移す範囲を絞るほど、切り替えで問題が起きたときの影響は小さくなります。一部から移す具体的な方法は、7ステップのあとの「一部の電話から移すには?」で紹介します。

ステップ2 旧契約の解約期限から切り替え日を決める

旧契約の解約申出期限、新しいIVRでの試験日、電話会社が着信先を変更できる日、旧IVRへ戻せる期間を、1枚の日程表に並べます。例えば、解約の申し出が3か月前までと決まっている契約で、9月末に旧IVRを止めたい場合は、6月末までに申し出る必要があります。ただし、解約を申し出る前に、新しいIVRの準備と着信先の変更が間に合うかを関係者に確かめてください。

新旧を並べて動かす期間は、料金を二重に払う期間でもあります。短くしすぎると、問題が出たときに戻す先がなくなります。切り替え後に旧IVRへ戻せる期間を何週間とるかを先に決め、その分だけ解約日を後ろにずらすのが安全です。

新しいIVRの準備期間は、乗り換え先や要件によって変わります。弊社のDHK CANVASは、サービスページで「最短2週間で導入」と案内しています(サービスページ)。ただし、旧契約の解約期限や、顧客管理システムとの連携にかかる期間まで2週間で終わるという意味ではありません。電話会社の着信先変更に必要な手続きも含め、関係者と全体の日程を決めます。

ステップ3 コールフローを移しながら整理する

今のコールフローは、そのまま写さずに整理してから新しいIVRに組みます。何年も使ったIVRには、キャンペーンのために足して使われなくなった分岐や、用件が重なっているメニューが残っていることが多いからです。そのまま写すと、古い分岐への不満まで一緒に移ってしまいます。

整理の材料は、書き出した④のメニュー別の着信数です。利用が少ない分岐でも緊急性の高い用件や必要な案内は残し、担当部署と確かめたうえで不要な分岐だけを整理します。どの用件で電話がかかってきているかを分類したい場合は「コールリーズン分析とは?」の手順が使えます。

ステップ4 ガイダンスを作り直す

ガイダンスは、今の録音を使えるか、録り直すか、合成音声にするかを決めて作り直します。録音した音声ファイルを持っていても、新しいIVRの形式に合わせて変換が要ったり、メニューを整理した結果、案内文自体を変えたりする場合もあるためです。合成音声にすると、あとから案内文を変えるたびに録り直す手間がなくなります。

合成音声を使う場合は、日付・金額・電話番号・商品名の読み方を、実際に電話で聞いて確かめます。文字で見て正しくても、読み上げると区切りが不自然になることがあるためです。案内文の書き方は「電話音声ガイダンス(IVR)の作り方・設定のやり方」の例文が参考になります。

ステップ5 本番前に着信テストをする

本番の前に、新しいIVRの試験用番号へ実際に電話をかけて、すべての分岐を確かめます。営業時間内だけでなく、時間外・祝日・満席のときの流れも対象です。ここでは新しいIVR単体の動作を確かめ、本番番号からの着信はステップ6で確認します。テスト結果は、確かめた人と日付を残しておくと切り替え当日の判断に使えます。

試す条件 確かめること 見落としやすい点
すべてのメニュー 選んだ番号どおりの
窓口や案内につながるか
「その他」や
オペレーターにつなぐ番号
時間帯と曜日 営業時間内・時間外・
祝日で案内が切り替わるか
年末年始や
臨時休業の設定
満席のとき オペレーターが出られないときに
折り返し受付などへ回るか
待たせる時間の上限
かける電話の種類 固定電話と携帯電話の
両方からつながるか
番号を通知しない
電話の扱い
連携先 受付のデータや録音が
社内のシステムに残るか
データが取り込まれる
タイミング

ステップ6 着信先はいつ、どう切り替える?

着信先は、電話の少ない曜日と時間帯を選んで切り替えます。今の番号を維持できる契約なら、電話会社のサービスやPBXの着信先設定を新しいIVRへ変えます。設定を変える場所と所要時間は現在の構成によって異なるため、電話会社と新旧IVR事業者に事前に確かめてください。弊社の場合、電話番号の設定(電話会社のサービスやPBXの設定)はお客様に手配していただき、弊社がサポートする形です(導入の流れ)。

切り替え前に、電話会社へ変更作業中の着信がどう扱われるか、つながらない時間が生じるかを確かめてください。あわせて電話会社と旧IVR事業者へ戻し方と所要時間を確認し、戻すかどうかを決める責任者を指定します。電話会社・新旧IVR事業者・PBX保守会社の連絡先も1枚にまとめます。旧IVRは、ステップ2で決めた期間が終わるまで戻せる状態で残してください。

着信先を変えた直後は、担当者が本番番号へ固定電話と携帯電話からかけ、主要メニュー、オペレーターへの転送、受付データの記録を確認する必要があります。番号につながらない、別の窓口へつながる、受付データが残らない場合は新しいIVRへの切り替えを止め、事前に決めた担当者が電話会社と旧IVR事業者へ戻す作業を依頼してください。戻す作業にも時間がかかり得るため、切り替え日時は関係者が対応できる時間帯に設定します。

ステップ7 切り替え後の数字を見る

切り替え前に、誰がいつまで数字を確認するかを決めておき、旧IVRのころと比べます。見る数字は、自動で受付まで終わった電話の割合、ガイダンスの途中で切られた電話の数、オペレーターにつないだ電話の数の3つです。例えば週ごとに確認すれば、変化が出た時期を追えます。途中で切られた電話の見方は「放棄呼とは?放棄呼率の計算方法」で解説しています。

比べるときは、旧IVRと同じ数え方にそろえます。例えば「自動で終わった割合」を、新しいIVRでは全着信を分母に、旧IVRではメニューを選んだ電話を分母にして比べると、改善したのか悪化したのかを判断できません。数字の定義は「コールセンターのKPI一覧」の計算式にそろえておくと、社内への報告もしやすくなります。

一部の電話から移すには?時間外とあふれた電話から始める方法

現在の電話設備やIVRで着信を条件別に振り分けられるなら、旧IVRを残したまま、営業時間外やオペレーターが出られない電話だけを先に新しいIVRへ流せます。振り分けができない構成では、番号や時間帯を分けた試験運用を含め、電話会社と移し方を相談してください。新しいIVRで受付とデータの引き継ぎを確かめてから対象を広げ、旧IVRの解約は移行後に判断します。

条件別の振り分けができる場合に、旧IVRを残したまま営業時間外とあふれた電話だけを新しいIVRへ流し、対象を広げる乗り換えの図

移す順番の例

条件別に振り分けられる構成なら、影響を確かめやすい電話から移します。営業時間外に従来は受け付けていなかった用件なら、新しいIVRで受付を始める前に、翌営業日に誰が折り返すかまで決めておきます。

段階 新しいIVRへ移す電話 この段階で見る数字
1 時間外 営業時間外の電話。
用件と折り返し先を受ける
受付まで終わった件数、
翌営業日の折り返しの件数
2 あふれた電話 営業時間内に
オペレーターが出られない電話
途中で切られた電話の数、
折り返しまでの時間
3 決まった手続き 注文・解約・住所変更など
手順が決まっている用件
自動で終わった割合、
オペレーターにつないだ件数
4 全部 すべての着信を移す。
旧IVRは戻せる期間を終えてから解約する
旧IVRのころと
同じ数え方の全体の数字

あふれた電話を受ける使い方の実例として、通販のスカイネット株式会社は、あふれ呼IVRで受けたコールバックの希望をAPI連携で自社システムに取り込み、コールバックまでの平均所要時間を55%短縮しました(導入事例)。同じく通販の株式会社関西テレビハッズは、オペレーターを置いていない深夜帯の電話を受けられずにいたため、24時間いつでもIVRで着信できる運用に変えています(導入事例)。どちらも乗り換えの事例ではありません。現在の設備で振り分けられるなら、こうした用件を試験運用の対象にする方法が考えられます。

用件ごとに一部だけ新しいIVRへ回す

用件の一部だけを新しいIVRへ回すこともできます。宅配水の株式会社中京医薬品では、フリーダイヤルの用件振り分けの機能を使い、追加注文の電話だけを弊社のIVRに転送して自動で受け、注文以外のお問い合わせは自社のコールセンターに着信させる仕組みにしました(導入事例)。入口で用件を分けておけば、新しいIVRへ移す用件を1つずつ増やしていけます。

運用中に受け付ける用件を変えた例

最初に決めた範囲を、運用しながら変えていくこともできます。健康食品の万田発酵株式会社は、DHK CANVASを「あふれ呼対策」から使い始め、繁忙期には電話注文の自動化も一時期だけ行いました。あふれ呼が落ち着いた今は、日中の注文は人が受け、深夜帯(営業時間外)の受付を中心に使っています(導入事例)。移す範囲は一度決めたら終わりではなく、着信の状況に合わせて広げたり絞ったりできます。

IVRの乗り換えでよくある失敗と防ぎ方

IVRの乗り換えで起きる失敗は、切り替えの当日だけでなく、契約の段階や切り替えから数週間たってから表に出るものもあります。よくある失敗を、起きる時期と防ぎ方とあわせて表にしました。

失敗 起きる時期 防ぎ方
旧契約が自動更新され、
新旧の料金を二重に払う
契約の段階 解約の申し出期限を
日程表の最初に書く(ステップ2)
解約後に旧IVRの
録音データを取り出せない
旧IVRの解約後 解約の前に、取り出せる範囲と
形式を確かめる(書き出す⑤)
切り替えた日に着信しない、
違う窓口につながる
切り替え当日 全分岐の着信テストと、
旧IVRへ戻す手順(ステップ5・6)
祝日や年末年始の
案内が流れない
切り替えから
最初の祝日・連休
期間を決めて切り替える設定も
書き出しておく(書き出す④)
顧客管理や基幹システムに
受付データが残らない
切り替え後
数日〜数週間
連携先に記録が残るかまで
テストする(ステップ5)
オペレーターに用件が
引き継がれず、
お客様に説明し直させる
切り替え後 聞き取った内容を
オペレーターに渡す流れを
設計に入れる
高齢のお客様が
操作に迷って切ってしまう
切り替え後 操作の少ない流れにし、
人につなぐ選択肢を残す

オペレーターにつなぐときに、何を引き継ぐ?

IVRで聞いた用件と受付結果を、オペレーターへ引き継ぎます。株式会社電話放送局が職場で電話対応に携わる20〜60代の男女255名に行った調査では、自動音声から担当者へつながる電話を経験した人のうち79.3%が、切り替えのときに困った経験がありました。経験者に多かったのは、「要件を把握できていない状態で、電話に出る必要があった」34.5%と、「自動音声で伝えたはずの要件を、もう一度説明する必要があった」33.0%です(出典:電話対応業務の負担と自動化ニーズに関する実態調査、調査の発表)。

新しいIVRで受付の項目を増やしても、聞き取った内容がオペレーターに渡らなければ、お客様は同じことを2回話すことになります。乗り換えの設計では、IVRで聞いた用件や番号を、つないだ先の画面やメールでオペレーターが見られるかまで確かめておくことが欠かせません。

高齢のお客様が多い窓口では、IVRそのものを使ってもらえるかを心配する声もあります。中京医薬品は、高齢のお客様が多いのでIVRによる受付に移行するのは難しいと思っていたものの、その心配は杞憂に終わり、電話注文の80%を自動化できたと話しています(導入事例)。この数値は同社の電話注文での結果であり、すべての窓口で同じ割合を見込めるわけではありません。高齢のお客様向けの配慮は「コールセンターは高齢者対応の強化が必要?」でも紹介しています。

IVRを乗り換えた事例と、電話番号を維持した導入事例

弊社のIVRに乗り換えた3社と、既存の電話番号を維持して導入した1件を紹介します。山口県総合交通センターは既存IVRからの乗り換え事例としては扱いません。

日本予防医薬|他社サービスから乗り換え、2つのIVRを1契約にまとめた

日本予防医薬は、他社のサービスでは解約理由をプッシュボタンでしか受けられず、新規と既存のお客様向けに別々のIVRを使っていました。乗り換えの検討では、音声とプッシュのハイブリッド対応、複数の業務を1契約で使える料金体系、実務担当者が自分でコールフローを組める点を確かめています。

DHK CANVASに替えてからは、新規注文・定期注文・解約受付の3つの業務を1つのサービスで受けています。年間7万件の解約電話のうち40.9%が完全自動処理で完結し、年間3,800時間の削減につながりました。注文受付では、オペレーターとほぼ同じ水準の定期購入への引き上げ率を保ちながら、コストを25%削減しています(導入事例)。

ぴあ|約10年のオンプレミス運用からクラウドへ

ぴあは、2018年のリプレースの際にオンプレミスを続けるかクラウドに切り替えるかを検討し、外部のサービスに移すことを決めました。ベンダーの選定で挙げた検討のポイントは「コスト」「自社開発」「契約条件(直契約)」「対応」の4つです。

弊社の自動受付IVRに移ったあとは、自社運用のころに要望があっても変えられなかった機能を実装でき、機械的だった音声もナレーターの収録や音声合成に変えています。トラブル続きだったIVRへのクレームは無くなり、人件費は15%削減しました。テレワークの体制になっても、出勤せずに変わらず運用できていると話しています(導入事例)。

ジャパンチャージネットワーク|ルールの変更をきっかけに、旧IVRから本番移行

ジャパンチャージネットワークは、EV充電の利用者のカード情報を電話で受けるIVRを運用していました。受付方法を見直す際、カード情報を自社システムで保持しない方法を選んでいます。移行先の選定では、基幹システムとの接続と「本番移行の運用スキル・ノウハウ」を確かめていました。

弊社の自動受付IVRとカード決済IVRに移り、旧IVRから本番移行する際も、利用者への影響を最小限に抑えて移行できたと話しています。基幹システムとの接続も、同社の仕様に合わせた開発で、基幹側の対応工数は最小限で済んだそうです(導入事例)。電話でカード情報を受ける仕組みは「IVR決済とは?」で解説しています。

山口県総合交通センター|既存の電話番号を維持してIVRを導入

山口県総合交通センターは、職員が当番制で受けていた運転免許の問い合わせの電話を、DHK CANVASで自動化しました。案内する内容が変わるたびに応答の流れを直す必要があり、改修費用が何度でも無料である点を評価しています。

既存の電話番号をそのまま使えたため、システムの切り替えに伴う混乱もなく導入を始められています。1日約240件あった電話のうち、職員が対応する件数を75%削減しました(導入事例)。

乗り換え先を比べるときに確かめること

乗り換え先を比べるときは、月額料金に加えて、乗り換えの段取りと乗り換えたあとの変更のしやすさを確かめます。見積もりを取る前に、次の6つを質問しておくと、候補を同じ条件で並べられます。

確かめること 聞く理由
今の電話番号のまま、
転送で着信を受けられるか
番号を変えると、お客様への告知や
印刷物の差し替えが必要になる
同時に何本の電話を
受けられるか
最も混む時間帯の同時着信が上限を超えると、
話し中の電話が出る
料金は時間・席数・件数の
どれで数えるか
数え方が変わると、
同じ着信数でも月額が変わる
ガイダンスやコールフローを
自社で変えられるか
変えるたびに作業費と日数がかかると、
乗り換えの理由がそのまま残る
移行の手伝いは
どこまでか
フローの作り直し、音声の作成、
テストの立ち会いの分担が
日程に響く
次に乗り換えるとき、
録音や設定を受け取れるか
今回の乗り換えで困ったことを、
次の乗り換えで繰り返さない

料金の内訳と、IVRサービスごとの違いは「【2026年版】IVRサービス比較|主要サービスの料金表と費用相場、選び方」でまとめています。

よくある質問

Q. IVRを乗り換えると、今の電話番号は変わりますか?

番号を自社で契約し、着信先だけを変更できるなら、同じ番号を使えます。今のIVR事業者が番号ごと提供している場合は、同じ番号を維持できるとは限りません。番号の契約先と着信先変更の可否を、現在の事業者と電話会社に確かめてください。


Q. 今のIVRの設定やガイダンスは、そのまま新しいIVRに移せますか?

設定そのものは、新しいIVRで組み直すのが基本です。今のコールフロー図や録音済みの音声ファイルは、組み直すときの材料として使えます。何年も使ったIVRには使われていない分岐が残っていることが多いため、移すときに整理しておくと、乗り換えたあとの不満を減らせます。


Q. IVRの乗り換えには、どのくらいの期間がかかりますか?

期間は、旧契約の解約期限、新しいIVRの準備、社内システムとの連携、着信先変更の手続きによって変わります。DHK CANVASのサービスページは「最短2週間で導入」と案内していますが、乗り換え全体の所要期間ではありません。まず旧契約の解約期限と番号の契約先を確認してください。


Q. IVRを乗り換えるとき、PBXも一緒に替える必要はありますか?

PBXの交換は必ずしも必要ありません。現在のPBXを残せるかは、新しいIVRとの接続方法と転送先設定を事業者に確認してください。PBXの保守期限も近い場合は、同時に替えるか時期をずらすかを、切り替え日の負担とあわせて決めます。


Q. プッシュ式からボイスボットに替えると、高齢のお客様は困りませんか?

操作に困るかどうかは窓口の利用者と用件によるため、事前の試験が必要です。番号はプッシュ、理由は音声という使い分けや、オペレーターにつなぐ選択肢を検討します。高齢のお客様が多い中京医薬品では電話注文の80%を自動化しましたが、同社の事例をすべての窓口に当てはめることはできません。


Q. 切り替えた日に不具合が出たら、どうすればよいですか?

事前に旧IVRへ戻せることを確認していれば、決めておいた担当者が電話会社と旧IVR事業者に戻す作業を依頼します。戻し方と所要時間は構成によって異なるため、切り替え前に確かめてください。番号につながらない、別の窓口へつながる、受付データが残らない場合は切り替えを止め、復旧後に原因を調べます。


Q. 旧IVRの通話録音や受付データは、どうしておけばよいですか?

解約の前に、取り出せる範囲と形式を今の事業者に確かめ、残す必要があるものを取り出しておきます。解約したあとは取り出せなくなる契約もあるため、日程表の中で解約日より前に作業日を置いてください。社内で決めている保存期間も、あわせて確かめておくと安心です。

まとめ

IVRのリプレイス・乗り換えでは、旧契約の解約期限から日程を逆算し、番号を維持できるかと着信先の変更方法を確かめ、旧IVRへ戻す手順を用意します。現在の構成で条件別に振り分けられるなら、時間外やあふれた電話から移して動作を確かめられます。

最初の一歩として、今のIVRの契約書を開き、最低利用期間と解約の申し出期限を確かめてください。そのうえで、書き出しておく5つのことを1枚にまとめると、乗り換え先との相談や社内への説明がそのまま始められます。

株式会社電話放送局のDHK CANVASは、今お使いの0120・0800・0570番号からの転送着信に対応し、プッシュ操作と音声の聞き取りを用件ごとに組み合わせられるサービスです。応答の流れは管理画面から自社で作成・変更でき、サービスページでは「最短2週間で導入」と案内しています。導入実績は1,500社以上です。現在の番号とIVRの契約内容を確認したうえで、DHK CANVASのサービスページと導入事例をご覧ください。

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監修者情報

メーカーのコールセンター運営管理に従事し、自らIVRを導入。
不要な入電を抑制しつつ売上向上を実現するなど、現場視点で成果を創出。電話放送局では営業マネージャーとして10年以上従事し、クラウド型IVRの業界シェア1位獲得に貢献。
コロナ禍におけるユーザーのデジタル行動変容を受け、マーケティング部門を立ち上げ、責任者に就任。インサイドセールスを統括し、営業部門との連携を強化。自動音声応答の導入、運用、集客、営業の幅広い経験を有する。
IVRおよびコールセンター市場における20年以上の知見を活かし、ユーザーの検索行動やニーズを深く理解したマーケティング戦略を展開。
検索連動広告の運用経験を基に、現場で役立つ実践的な情報を発信し、読者のビジネス成功を力強くサポートします。

監修者 前田泰延(株式会社電話放送局) 営業部 営業企画・推進チーム シニアリーダー 前田泰延

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