クラウドPBXの失敗例と防ぎ方|契約前・切り替え日・導入後に起きる11のつまずき
2026/10/07
「クラウドPBXに替えたら、今の電話番号は使えるのだろうか」「導入したあとで音が悪いと言われたら、どこに相談すればいいのか」。ビジネスフォンのリース満了やオフィス移転をきっかけに、電話の切り替えを任された総務・情報システムの担当者は少なくありません。クラウドPBXの失敗の多くは、サービスの性能ではなく、電話番号・回線・電話につながる機器・着信の流れの4つを確認しないまま切り替えたことから起きます。本記事では、クラウドPBXで起きやすい11の失敗例を「契約前」「切り替え日」「導入後」の3つの時期に分けて紹介し、それぞれの防ぎ方と、導入後に不具合が出たときに症状から原因をたどれる対応表、失敗しない導入手順までを解説します。自社がいまどの時期にいるかを確かめながら読むと、先に手を付けるべき項目が分かりやすくなるでしょう。
目次
・まとめ
クラウドPBXの導入で失敗が起きやすいのはなぜ?
クラウドPBXの導入で失敗が起きやすいのは、交換機だけでなく、回線・電話機・番号・着信の設定がまとめて入れ替わるからです。ここでは、失敗の背景と、11の失敗例の全体像を先に確認します。
交換機だけでなく、回線・端末・番号がまとめて変わる
PBXは、外線と内線をつなぎ、代表番号にかかってきた電話を各席に振り分ける交換機です。従来は社内に置いた機械がこの役割を担っていましたが、クラウドPBXでは事業者のサーバーが代わりに処理し、社内とはインターネット経由でつながります。
このとき変わるのは交換機だけではありません。電話回線はインターネット回線に、据え置きの電話機はIP電話機やスマートフォンのアプリに、着信の振り分け設定は事業者の管理画面に移ります。電話番号の扱いも、契約の仕方次第で変わる点に注意が必要です。社内の電話にかかわるほぼすべてが一度に動くため、1つでも確認が漏れると、切り替えた日から業務に影響が出ます。
失敗が表に出るのは、切り替えた後
もう一つの理由は、失敗の多くが契約の時点では見えないことです。料金表やデモ画面で比べている段階では、自社のネットワークで音がどう聞こえるか、FAXや警備の回線がどこにつながっているかまでは分かりません。
切り替えの当日に初めて「FAXが届かない」「代表番号が誰の電話も鳴らさない」と気づき、そこから原因を探すことになります。導入後に起きる失敗も同じで、社員が使い方に慣れない、障害時の連絡先が分からないといった問題は、実際に使い始めてから表に出てきます。
11の失敗例と、起きる時期の一覧
クラウドPBXでよく起きる失敗を、起きる時期で並べると次のとおりです。いま自社がどの時期にいるかを確認し、その時期の行から読み進めてください。
| 時期 | 起きやすい失敗 | 防ぐために 確認すること |
|---|---|---|
| 契約前 | ①今の電話番号が使えなかった ②月額だけで比べ、総額が高くなった ③リース・保守契約が残っていた ④必要な機能がプランになかった |
番号の種類と今の契約先 3年分の総額 旧契約の満了日 業務で使う機能の一覧 |
| 切り替え日 | ⑤音が途切れる・遅れる ⑥電話回線につないだ機器が止まった ⑦着信の流れを移しきれなかった ⑧110番・119番がかけられなかった |
社内ネットワークと同時通話数 FAX・警備・0120などの回線 代表番号の鳴らし方と時間外の案内 緊急通報の可否 |
| 導入後 | ⑨社員が使いこなせず、管理も追いつかない ⑩障害時に電話を逃がす先がない ⑪電話のつながりにくさが変わらない |
操作説明とアカウント管理の担当 障害時の転送先と連絡先 入電の量と応答率 |
契約前に起きる失敗例4つ
契約前の失敗は、料金表やカタログに書かれていない「自社の今の状態」を確認しなかったことから起きます。ここでは、番号・費用・旧契約・機能の4つの失敗例と防ぎ方を紹介します。
失敗例① 今の電話番号が使えなかった
最も影響が大きいのが、長年使ってきた代表番号を新しいサービスに持っていけなかったという失敗です。名刺、Webサイト、取引先の登録情報、請求書の記載まで番号を変えることになり、切り替え後もしばらくは古い番号にかかってきた電話の案内に追われます。
番号を持っていけるかどうかは、サービスの良し悪しではなく、番号の種類と今の契約の状態で決まります。契約の前に確認したいのは、次の2点です。
050番号と市外局番の番号は何が違う?
最大の違いは、国が定める品質の基準と、緊急通報の扱いです。03や06のような市外局番から始まる番号(0AB-J番号)を使うIP電話には、固定電話に近い通話品質や緊急通報への対応が求められ、050番号のIP電話にはそこまでの基準がありません。総務省の資料では、両者の基準が次のように整理されています。
| 項目 | 市外局番の番号 (0AB-J IP電話) |
050番号 (050 IP電話) |
|---|---|---|
| 音声の遅れの基準 | 150ミリ秒未満 | 400ミリ秒未満 |
| 緊急通報 (110番・119番など) |
使えることが求められる | 義務化されていない |
| FAXの送受信 | 正常に行えることが求められる | 基準なし |
出典:総務省「0AB-J IP電話の品質要件の在り方について」報告書概要
050番号は全国どこからでも取得でき、月額も抑えやすい一方で、代表番号を050に変えると、取引先から見た番号の印象も変わります。今の代表番号が市外局番の番号であれば、新しいサービスでも市外局番の番号を使えるかどうかを最初に確認してください。
今の電話番号は引き継げる?
市外局番の番号を引き継げるかどうかは、番号の種類、今の契約先、事務所の場所の3点で決まります。2025年1月からは、固定電話の事業者どうしで番号を相互に持ち運べる「双方向番号ポータビリティ」の受付が始まり、NTT東西以外の事業者が発行した番号やひかり電話の番号も、条件を満たせば引き継げるようになりました。ただし、050番号はこの仕組みの対象外です(出典:NTT東日本「双方向番号ポータビリティとは?」)。
市外局番の番号は地域と結びついているため、オフィス移転と同時に切り替える場合は、移転先でも同じ番号を使えるかを個別に確かめる必要があります。確認の際は、今の請求書を手元に置き、契約名義・番号・回線の種類を事業者に伝えると話が早く進みます。
失敗例② 月額料金だけで比べ、総額が高くなった
クラウドPBXは、利用人数(ID数)に応じた月額料金で紹介されることが多いサービスです。ところが実際に払う金額には、月額のほかに初期費用、通話料、電話機やヘッドセットの購入費、通話録音などのオプション料金が加わります。
1ID単位の安さで選んだものの、録音・転送・自動音声の案内をオプションで足していった結果、以前のビジネスフォンより高くなったという失敗は、珍しくありません。社内のインターネット回線が通話に耐えられず、回線の増強費用が後から発生するケースもあります。
比べるときは、今の利用人数と必要な機能をそろえたうえで、3年分の総額で並べるのが確実です。費用の内訳と相場はPBX費用の相場で詳しく整理しています。
失敗例③ ビジネスフォンのリースや保守契約が残っていた
新しいサービスを契約してから、今のビジネスフォンのリースが2年残っていたと分かる失敗です。リース契約は、原則として期間の途中で解約できません。公益社団法人リース事業協会も、途中で解約する場合は残りの期間のリース料、またはそれに相当する違約金を一括で支払うよう契約で定められていると説明しています(出典:リース事業協会「リース契約の特徴」)。
リースのほかにも、電話機の保守契約、回線の契約、0120番号の契約などが別々に結ばれていることがあります。どれか1つでも解約を忘れると、使っていないサービスの料金を払い続けることになりかねません。
切り替えの日程は、旧契約の満了日から逆算して決めます。満了まで期間が長い場合は、満了まで今の設備を使い、その間に新しいサービスの試用と社内の準備を進めるのが無理のない進め方です。
失敗例④ 必要な機能がプランに入っていなかった
契約してから「通話録音は上位プランのみ」「顧客管理システムとの連携は別料金」と分かる失敗です。クラウドPBXは同じサービス名でも、プランごとに使える機能が大きく違います。
防ぐには、機能の一覧表を見る前に、自社の電話業務で使っている機能を書き出します。代表番号の着信をどの席で鳴らすか、時間外にどんな案内を流すか、通話を録音しているか、外出中の社員に電話を転送しているか。この一覧を各社に渡し、「標準で使えるか」「オプションか」「使えないか」を回答してもらうと、比べる軸がそろいます。
機能を盛り込みすぎるのも失敗のもとです。使わない機能が多いと、設定画面が複雑になり、導入後に社員が迷う原因になります。比べ方の全体像はクラウドPBX比較の7つのチェック項目でまとめています。
切り替え日に起きる失敗例4つ
切り替え日の失敗は、社内の電話環境を実際に動かしたときに初めて表に出ます。ここでは、音質・つないでいた機器・着信の流れ・緊急通報の4つを取り上げます。
失敗例⑤ 音が途切れる・声が遅れて聞こえる
切り替えた直後に「相手の声が途切れる」「話すタイミングがずれる」と苦情が出る失敗です。クラウドPBXの音声はインターネット回線を通るため、サービスそのものより、社内のネットワークの状態に大きく左右されます。
音が悪くなる原因はどこにある?
多くの場合、原因は社内のネットワークにあります。よくあるのは、Wi-Fiの電波が弱い席でスマートフォンやパソコンから通話している、動画会議や大容量のファイル送信と同じ回線を使っている、古いルーターが通話の多さに追いついていない、といった状態です。事業者のサーバー側の問題であれば全員の音が同時に悪くなりますが、特定の席や時間帯だけ悪い場合は、社内のネットワークを疑うのが先です。
同時に何本話すかで必要な回線が決まる
必要な回線の太さは、社員の人数ではなく、同時に何本の通話が発生するかで決まります。月曜の朝や月末など、いちばん電話が重なる時間帯に何本の通話が同時に起きているかを、今の電話機の履歴やPBXの記録から数えておくと確実です。
その数を事業者に伝え、1通話あたりに必要な通信量と、自社の回線で足りるかを確認します。契約前に試用期間を使い、実際の席・実際の時間帯で通話してみると、机上の確認では分からない音の問題を事前に見つけられます。
失敗例⑥ 電話回線につないでいた機器が動かなくなった
切り替えた翌日にFAXが届かなくなった、警備会社への通報が送れなくなっていた、という失敗です。オフィスの電話回線には、電話機のほかにもさまざまな機器がつながっています。クラウドPBXに切り替えて旧来の回線を解約すると、それらの機器も一緒に止まります。
切り替え前に確認したいのは、今の回線を使っている次のような機器や番号です。
- FAX複合機(送受信の番号と、FAXを受けている回線)
- 警備会社の通報装置、エレベーターや設備の非常用電話
- カード決済端末など、電話回線で通信している業務用の機器
- 0120・0570などの番号(今の代表番号に着信させている場合)
総務省の資料では、050番号のIP電話にはFAXの送受信の基準が設けられていません。FAXを使い続けるなら、新しいサービスでFAXをどう送受信するか(インターネットFAXに移すか、FAX用の回線を残すか)を先に決めておきます。0120や0570の番号は、番号の契約先で着信先を新しい番号に変更する手続きが必要です。
失敗例⑦ 着信の流れを移しきれず、電話が鳴らない・鳴りすぎる
切り替え当日に、代表番号への電話が誰の電話も鳴らさない、逆に全員の電話が一斉に鳴る、という失敗です。旧PBXに長年かけて積み上げてきた設定は、担当者が把握していないことが少なくありません。
たとえば「平日9時から12時は総務の3台を鳴らし、出なければ20秒後に営業の席にも回す」「18時以降と休日は時間外の案内を流す」「経理の直通番号は経理の2台だけ鳴らす」といった細かな設定です。これらを書き出さないまま新しいサービスに移すと、どこかが抜け落ちます。
防ぐ方法は、切り替えの前に「どの番号にかかった電話が、どの時間帯に、どの席を、どの順番で鳴らすか」をコールフローの図にしておくことです。時間外や混雑時に流している自動音声の案内も、音声ガイダンスの作り方を参考に文言を見直してから移すと、切り替えの機会に案内を整理できます。代表電話の取り次ぎの流れそのものを見直したい場合は、電話の取り次ぎの流れも参考になります。
失敗例⑧ 110番・119番がかけられなかった
オフィスで急病人が出たとき、デスクの電話から119番にかけられなかったという失敗です。総務省の資料では、050番号のIP電話は緊急通報が義務化されていません。サービスや端末の組み合わせによっては、110番・119番にかけられない場合があります。
契約前に、緊急通報が使えるかどうかを事業者に確認し、使えない場合は社内の携帯電話や別の固定電話からかけるよう、手順を決めて掲示しておきます。来客の多い受付や、夜間に少人数で残る部署では特に重要です。
導入後に起きる失敗例3つ
導入後の失敗は、使い始めてから数週間から数か月かけて表に出てきます。ここでは、運用・障害・電話のつながりにくさの3つを取り上げます。
失敗例⑨ 社員が使いこなせず、端末とアカウントの管理も追いつかなかった
保留や転送のやり方がビジネスフォンと違い、取り次ぎのたびに電話が切れてしまう失敗です。スマートフォンのアプリで内線を受けられるようになった反面、「誰の端末に何が入っているか」を誰も把握していない状態になることもあります。
使い方の失敗を防ぐ方法は、発信・着信・保留・転送の4つの操作だけを1枚にまとめた手順書を配り、切り替えの前に全員で一度試しておくことです。電話の受け方そのものの社内ルールは、電話対応マニュアルの作り方を参考に整えておくと、切り替えを機に対応をそろえられます。
管理面では、アカウントの発行と削除を担当する人を決めておくことが欠かせません。退職や異動のたびにアカウントを止めないと、使われていないアカウントが残り、不正に発信される危険が生まれます。管理画面へのログインには、多要素認証が使えるかどうかも確認しておきます。
失敗例⑩ 障害のとき、電話をどこへ逃がすか決まっていなかった
事業者側の障害や社内のネットワーク停止で、半日電話が受けられなかったという失敗です。クラウドPBXはインターネットにつながっていることが前提のため、回線や機器が止まると、オフィスの電話が一斉に使えなくなります。
対策は、止まったときの動き方を先に決めておくことです。障害時に代表番号への着信を携帯電話や別拠点に転送できるか、事業者の障害窓口の連絡先と受付時間はどうなっているか、障害情報はどこで確認できるか。この3点を契約前に確認し、社内の連絡網に書き込んでおきます。
災害時や停電時も含めて電話をどう受け続けるかは、コールセンターにおけるBCP対策で整理している考え方がそのまま使えます。
失敗例⑪ 電話のつながりにくさは変わらなかった
「クラウドPBXにすれば電話のつながりにくさも解消する」と期待していたのに、混雑する時間帯の取りこぼしが減らなかったという失敗です。切り替えの目的に「つながりやすさの改善」を挙げている場合は、特に注意が必要です。
PBXを替えれば、つながりにくさは解消する?
解消しません。クラウドPBXは電話を受ける仕組みを入れ替えるもので、かかってくる電話の量も、受ける人の数も変わらないからです。たとえば月曜の午前中に電話が集中し、出られる人が3人しかいなければ、4本目以降の電話は待たされるか、話し中になります。これはPBXがオフィスの中にあってもクラウドにあっても同じです。かけ直してきたお客様の電話がさらに混雑を増やすため、つながりにくさは数字以上に悪く感じられます。
切り替えの前後で応答率を測っておくと、つながりにくさの原因が電話の仕組みにあるのか、入電の量と人数のバランスにあるのかを切り分けられます。
混む時間の電話を自動応答で受ける
入電の量が原因の場合は、受ける人を増やすか、人が出なくても用件を受け付けられる仕組みを足すことになります。代表的なのが、混雑時や時間外の電話をIVR(自動音声応答)で受け、用件を聞き取って折り返しの予約を受け付けたり、SMSでWebの手続きを案内したりする方法です。
スカイネット株式会社では、広告の反響で瞬間的に集中する電話を、電話放送局のあふれ呼IVRで受け付け、受付データを自社システムに取り込む形にしました。その結果、折り返しまでの平均所要時間を55%短縮し、2,700万円の売上増につながっています(出典:導入事例 スカイネット株式会社)。
チケット販売のぴあ株式会社は、自社で構築・運用していた電話の自動受付について「ここぞというときに電話をうけられない」機会損失を抱えていました。2018年のリプレースを機にクラウドへ切り替え、人件費の15%削減につなげています(出典:導入事例 ぴあ株式会社)。
こうした自動応答の仕組みは、PBXの入れ替えとは別に足せます。たとえばDHK CANVASは、サービス側で発行した電話番号に、今使っている番号から転送する形で利用でき、最短約2週間で使い始められます。クラウドPBXへの切り替えと同時に進めても、切り替えが落ち着いてから足しても構いません。
導入後に不具合が出たら、どこから確認する?
導入後の不具合は、症状から原因の候補を絞り、まず確かめることを1つ決めると早く解決します。よくある症状と原因、最初の打ち手を次の表にまとめました。自社の症状の行を探して使ってください。
| 症状 | 考えられる原因 | まず打つ手 |
|---|---|---|
| 特定の席だけ 音が途切れる |
Wi-Fiの電波が弱い、 端末の性能不足 |
有線でつないで通話し、 音が改善するか比べる |
| 全員の音が 同じ時間帯に悪くなる |
回線の混雑、 会議や大容量通信との重なり |
同時通話数と回線の使用量を 事業者と一緒に確認する |
| 代表番号に かけても誰も出ない |
着信グループや 時間帯の設定漏れ |
旧PBXの着信設定と 管理画面の設定を並べて照合する |
| FAXが届かない | FAXの回線を解約した、 番号の移し忘れ |
FAXの番号と回線の契約先を確認し、 インターネットFAXか回線を残すか決める |
| 保留・転送で 電話が切れる |
操作方法が 旧電話機と違う |
4つの操作を1枚の手順書にまとめ、 全員で試す |
| 退職者の端末から 発信されていた |
アカウントの削除漏れ | アカウント一覧と在籍者を照合し、 削除の担当者を決める |
| 混む時間帯に つながらない苦情が続く |
入電の量に対して 受ける人数が足りない |
時間帯別の応答率を出し、 混雑時の自動応答を検討する |
表の上の4行は電話の仕組みの問題で、事業者のサポートと一緒に確かめることができます。下の3行は使い方や運用の問題のため、社内で手順と担当を決めないと解決しません。どちらの問題なのかを先に見分けておくと、事業者への問い合わせも短く済みます。
クラウドPBXで失敗しない導入手順6ステップ
ここからは、11の失敗例を防ぐための進め方を、実際に手を動かす順番に並べます。ステップ1と2を丁寧に行えば、契約前と切り替え日の失敗の多くは防げます。
ステップ1 今の電話の「番号・回線・機器・契約」を書き出す
最初に、今の電話にかかわるものを4つに分けて書き出します。番号は代表番号・直通番号・FAX番号・0120などすべて、回線は種類と契約先、機器は電話機のほかFAXや警備の装置まで、契約はリース・保守・回線それぞれの満了日です。
この一覧があれば、事業者に番号を引き継げるかを確認でき、解約漏れや機器の止まりも防げます。請求書と電話機の設置場所を見比べながら、総務と情報システムの担当者が一緒に確認すると漏れが減ります。
ステップ2 着信の流れを図にする
次に、どの番号にかかった電話が、どの時間帯に、どの席を鳴らすかを図にします。時間外の案内、混雑時の扱い、外出中の社員への転送も、この図に書き込んでおきましょう。
この図は、事業者に設定を依頼するときの指示書になり、切り替え後に「誰も出ない」が起きたときの照合にも使えます。
ステップ3 自社の席と時間帯で試用する
候補のサービスが決まったら、試用期間を使い、電話がいちばん混む時間帯に、実際の席で通話してみます。Wi-Fiの席と有線の席の両方で試し、保留・転送の操作も担当者に触ってもらいます。
ステップ4 切り替え日と旧契約の解約日を決める
旧契約の満了日から逆算して、切り替え日を決めます。月末や繁忙期は避け、問題が出たときに対応できる担当者がそろう日を選ぶのが安全です。番号の引き継ぎには手続きの期間がかかるため、事業者に必要な日数を確認してから日程を固めます。
ステップ5 操作説明と社内ルールを配る
切り替えの1週間前までに、4つの操作をまとめた手順書と、緊急通報の手順、障害時の連絡先を社内に配ります。アカウントの発行と削除を誰が行うかも、このタイミングで決めておきます。テレワークの社員がいる場合は、テレワークでの電話対応の考え方も参考に、自宅からの受け方まで決めておくと混乱が起きません。
ステップ6 切り替え後1か月の数字を見る
切り替えから1か月は、時間帯別の着信数・応答数・応答率を記録します。切り替え前の数字と比べれば、つながりやすさが良くなったのか、変わらないのかがはっきりするでしょう。変わらない場合は、失敗例⑪のとおり入電の量と人数のバランスに目を向けます。指標の取り方はコールセンターのKPI一覧を参考にしてください。自治体で電話の更改を進めている場合は、自治体のクラウドPBX導入で住民対応の電話の見直しまで含めて整理しています。
よくある質問
Q. クラウドPBXの導入で、特に気をつけたい失敗は何ですか?
影響が大きいのは、通話の音質、電話番号の引き継ぎ、総額の費用にかかわる失敗です。いずれも契約前に自社の電話環境を確認していれば防げるもので、サービスの性能が原因とは限りません。今の番号・回線・機器・契約を書き出してから比べ始めると、失敗の多くを避けられます。
Q. クラウドPBXに替えると、今の電話番号は変わりますか?
番号の種類と今の契約先、事務所の場所によって変わります。市外局番の番号は、2025年1月に始まった双方向番号ポータビリティにより、条件を満たせば引き継げる範囲が広がりました。050番号は対象外のため、050番号で契約すると代表番号が変わることになります。
Q. クラウドPBXの音質が悪いときは、事業者に問い合わせるべきですか?
まずは社内の環境を確認し、そのうえで問い合わせるのが近道です。特定の席だけ悪い場合は、Wi-Fiや端末が原因のことが多く、有線でつないで比べると切り分けられます。全員の音が同じ時間帯に悪くなる場合は、同時通話数と回線の使用量を添えて事業者に相談します。
Q. ビジネスフォンのリースが残っていても、クラウドPBXに切り替えられますか?
切り替え自体はできますが、残りのリース料を支払う必要があります。リース契約は原則として途中で解約できず、解約する場合は残りの期間のリース料に相当する額を一括で支払うのが一般的です。満了日まで今の設備を使い、その間に試用と社内の準備を進めると、二重払いを避けられます。
Q. クラウドPBXでFAXは使えますか?
サービスによって対応が分かれます。インターネットFAXに切り替える方法と、FAX用の回線だけを残す方法があり、どちらが合うかは受信の件数と使い方で決まります。050番号のIP電話にはFAXの送受信の基準がないため、契約前に事業者へ確認してください。
Q. 中小企業でもクラウドPBXの導入に失敗しないためにできることはありますか?
あります。担当者が1人でも、今の電話の番号・回線・機器・契約を書き出し、着信の流れを図にするだけで、契約前と切り替え日の失敗の多くは防げます。そのうえで試用期間を使い、いちばん混む時間帯に実際の席で通話してから契約すると安心です。
まとめ
クラウドPBXの導入が成功するかどうかは、サービスを比べる前に、今の電話の番号・回線・機器・着信の流れをどこまで書き出せたかで決まります。契約前の失敗は確認不足、切り替え日の失敗は書き出し漏れ、導入後の失敗は担当とルールの決め忘れから起きます。どの時期にいる場合も、まずは今の電話の一覧と着信の流れの図を作るところから始めてください。
そのうえで、切り替え後もつながりにくさが残る場合は、電話の仕組みではなく、入電の量と受ける人数のバランスに原因があります。株式会社電話放送局では、混雑時や時間外の電話を自動音声で受け付ける仕組みを、今の電話番号のまま導入する支援を行っています。具体的な使われ方は導入事例もあわせてご覧ください。
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メーカーのコールセンター運営管理に従事し、自らIVRを導入。
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コロナ禍におけるユーザーのデジタル行動変容を受け、マーケティング部門を立ち上げ、責任者に就任。インサイドセールスを統括し、営業部門との連携を強化。自動音声応答の導入、運用、集客、営業の幅広い経験を有する。
IVRおよびコールセンター市場における20年以上の知見を活かし、ユーザーの検索行動やニーズを深く理解したマーケティング戦略を展開。
検索連動広告の運用経験を基に、現場で役立つ実践的な情報を発信し、読者のビジネス成功を力強くサポートします。
マーケティング責任者 営業部営業推進課 課長 前田泰延
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