2026/02/02

コールセンターのFAQをAIが電話で自動回答|AIエージェント型ボイスボットの効果と準備

「コールセンターへの入電数が減らず、オペレーターが疲弊している」「せっかくFAQを用意したのに、顧客も社員も活用しきれていない」こうした課題を抱えていないでしょうか。
顧客満足度(CS)を高めつつ運営をスムーズに回すことは、多くのコールセンターが抱える共通の悩みでもあります。
そこで今、注目されているのが、既存のFAQ(よくある質問)とAIエージェント型ボイスボットを組み合わせた取り組みです。FAQを単なるQ&Aの一覧にとどめず、AIが参照できる「ナレッジ」として整えることで、コールセンター運営は大きく変わります。

この記事では、コールセンターのFAQを電話でAIに答えさせる流れと、AIに任せる質問・人が受ける質問の分け方、電話で読み上げるFAQの書き方の例を最初にまとめました。そのうえで、FAQが機能しづらい理由、AIエージェント型ボイスボットの仕組みと導入のメリット、導入例、事前の準備について解説します。

目次

・コールセンターのFAQを電話でAIに答えさせるには?

 ・FAQを電話で答えさせるときの流れ

 ・電話でAIに任せる質問と、人が受ける質問の分け方

 ・画面で読むFAQと、電話で読み上げるFAQの書き方の違い

・コールセンター運営におけるFAQ活用の課題とは?

 ・ナレッジ(知識)の蓄積・共有が進まない

 ・情報の更新や検索に手間取ってしまう

 ・質問対応に追われ、現場に余裕がない

 ・「つながらない」「回答が違う」ことで、顧客満足度(CS)を下げてしまう

・FAQと生成AIを活用したコールセンターの効率化とは?

 ・FAQ・ナレッジベースとAIボイスボットの連携

 ・AIによる自動化と有人対応を組み合わせた効率的な運用

・AIエージェント型ボイスボットとは?従来型との違い

 ・AIエージェント型ボイスボットとは

 ・従来型(シナリオ型)ボイスボットとは

・コールセンターにAIエージェント型ボイスボットを導入するメリット

 ・問い合わせ対応の効率化

 ・顧客の利便性向上

 ・回答品質の均一化

 ・オペレーター負荷軽減と人材定着

 ・問い合わせ削減とコスト効果

・電話放送局のAIエージェント型ボイスボット「DHK CANVAS エージェントプラン」

 ・公式情報をもとにAIが電話で答えている導入例

 ・電話からFAQへ案内して利用が増えた例

・AIエージェント型ボイスボットの導入に向けて今からできる準備

 ・既存FAQデータの棚卸しと修正

 ・運用・更新ルールの策定

 ・リスク管理とルールの確認

 ・導入後はどの数字を見ればよい?

・FAQのナレッジを活用してAIと共に進化するコールセンター運営を

・コールセンターへのAIエージェント型ボイスボット導入に関するFAQ

コールセンターのFAQを電話でAIに答えさせるには?

コールセンターのFAQを電話で答えさせるには、AIエージェント型のボイスボットにFAQを参照させ、お客様が話した質問に合う回答を音声で返す仕組みを作ります。FAQページを開かずに電話をかけてくるお客様にも、オペレーターを待たせずに同じ回答を届けられるようになります。

ただし、画面で読む前提で書いたFAQをそのまま読み上げても、電話では伝わりにくい回答が出てきます。すべての質問をAIに任せることも、お客様が望む形ではありません。どの質問をAIに任せ、FAQをどう直すかを先に決めておくと、導入後の手戻りが少なくなります。

弊社が50〜70代の男女241名に行った調査では、コールセンターを利用したときに最も大きいストレスは「電話がつながらない」(36.9%)でした。ボイスボットに期待することの1位も「待たずにすぐ対応が始まること」(29.9%)です。FAQで答えられる質問をAIが電話で受けられれば、この待ち時間の不満に直接応えられます(出典:コールセンター利用とAI自動応答(ボイスボット)に関する意識調査)。

FAQを電話で答えさせるときの流れ

お客様が電話をかけてからAIが答えるまでは、次の5つの段階で進みます。FAQの側で準備が必要になるのは、主に回答を探す・答える・人に引き継ぐの3つの段階です。

コールセンターのFAQをもとにAIが電話で回答し、答えられない質問は担当者へ引き継ぐ流れ

段階 AIがすること FAQの側で用意すること
1. 用件を聞く 「ご用件をお話しください」と案内し、
お客様が話した言葉を文字にする
聞き取りやすい最初の案内の文言
2. 回答を探す 話した内容に近い質問を
FAQの中から探す
お客様が実際に使う言い方
(言い換え)
3. 音声で答える 見つけた回答を読み上げる 耳で聞いて分かる短い回答
4. 解決したか
確かめる
「ほかにご用件はありますか」と
確認する
回答のあとに続ける案内
(SMSで手続きページを送るなど)
5. 人に引き継ぐ FAQにない質問や判断が要る質問は、
聞き取った内容を添えて担当者へ転送する
人に回す質問の線引き

例えば「注文した商品を返品したいのですが、いつまでならできますか」という電話なら、AIは「返品はいつまでできますか」というFAQを見つけ、その回答を読み上げます。続けて「返品の申し込みページをショートメッセージでお送りしましょうか」と案内すれば、お客様は電話を切ったあとすぐに手続きへ進めます。この電話では、オペレーターは一度も受話器を取らずに済みます。

電話でAIに任せる質問と、人が受ける質問の分け方

AIに任せやすいのは、答えが1つに決まり、お客様ごとに内容が変わらない質問です。反対に、契約内容によって答えが変わる質問や、判断・相談が必要な質問は、AIが用件を聞き取ってから人に引き継ぐほうが確実です。

質問の種類 電話での例 任せ方
答えが1つに
決まる案内
営業時間
受付の締め切り
必要な書類
AIがFAQをもとに回答して終える
手続きの方法 住所変更
パスワードの再設定
返品の申し込み
AIが手順を案内し、
手続きページをSMSで送る
お客様ごとに
答えが変わる確認
注文した商品はいつ届くか
今月の請求額
FAQだけでは答えられないため、
顧客システムと連携して照会するか、
聞き取って担当者へ回す
判断や相談が
必要な質問
どのプランが合うか
契約内容の複雑な変更
AIが用件を聞き取り、
要約を添えて担当者へ引き継ぐ
急ぎの用件 体調の異変
事故や故障で困っている
最初から人につなぐ

お客様の側も、この分け方を自然に意識しています。弊社の調査で人間のオペレーターに対応してほしい場面を尋ねると、「契約内容の複雑な変更があるとき」が49.4%、「判断に迷っていて相談したいとき」が36.1%、「命や健康に直結する緊急の問い合わせ」が21.2%でした。「商品の使い方を具体的に教えてほしいとき」も29.0%あるため、使い方の質問は、短い答えで済むものだけをAIに任せるのが無難です。

どの質問から任せるかは、入電理由の件数で決めます。1か月ほど入電理由を数え、件数が多く、表の「AIがFAQをもとに回答して終える」に当てはまる質問から順に、FAQを電話向けに整えていきます。入電理由の数え方は「コールリーズン分析とは?」で詳しく解説しています。

画面で読むFAQと、電話で読み上げるFAQの書き方の違い

Webサイトに載せているFAQは、目で読むことを前提に書かれています。リンクや箇条書き、「こちら」のように画面を指す言葉は、電話では使えません。AIに参照させるFAQは、耳で一度聞いて分かる形に直しておきます。

直すところ 画面で読むFAQ 電話で読み上げるFAQ
回答の長さ 手順をすべて書く 結論を1〜2文で伝え、
続きはSMSで送る
結論の位置 前置きのあとに書くこともある 最初の1文で答える
リンクや
「こちら」
「詳しくはこちら」で
別のページへ送る
「手続きのページをショートメッセージで
お送りします」と言葉で案内する
表・記号・
英数字
表や記号で整理する 表は使わず、型番や番号は
区切って読み上げる形にする
質問の言い方 「パスワード再設定方法」など
見出しの言葉で書く
「パスワードを忘れた」「ログインできない」など、
電話で話す言葉も登録する

例えば「パスワードを忘れたときは?」というFAQなら、画面向けには「ログイン画面の『パスワードをお忘れの方』を押し、登録したメールアドレスを入力してください。届いたメールのURLから再設定できます。詳しくはこちら」と書きます。電話向けには「パスワードは、ログイン画面からご自身で再設定できます。手順をショートメッセージでお送りしましょうか」と短く直し、お客様が「はい」と答えたらSMSを送る流れにします。

FAQの元になる社内の情報がまだ散らばっている場合は、情報を1か所に集めて整理するところから始めます。集め方と整理の手順は「ナレッジベースとは?」で紹介しています。

コールセンター運営におけるFAQ活用の課題とは?

日々、多くの問い合わせに対応するコールセンターですが、FAQが十分に機能していないケースも少なくありません。まずは、多くのコールセンターが直面している代表的な課題を見ていきましょう。

ナレッジ(知識)の蓄積・共有が進まない

大きな課題の一つは、業務に関する知識やノウハウが組織として蓄積されにくい点です。ベテランオペレーターは、日々の業務を通じて「こう説明すれば伝わりやすい」「このトラブルにはこう対処する」といった独自の解決策やコツを持っています。

しかし、それらが個人のメモや記憶に留まり、属人化が進んでいるのが現状です。組織としてナレッジを共有する仕組みがないと、せっかくの知見も企業の資産になりません。その結果、オペレーター間で知識量や対応スキルに差が生まれ、サービス品質のばらつきを招いてしまいます。

情報の更新や検索に手間取ってしまう

FAQは「作って終わり」ではありません。サービスの変更や新商品の発売などがあれば、FAQの内容を見直す必要があります。しかし、承認の流れや作業体制が追いつかず、更新が滞る現場も少なくありません。

もし新情報の社内周知が遅れると、オペレーターが誤って古い情報を案内してしまい、現場が混乱する原因になります。加えて、FAQの項目が無秩序に増えて整理が追いつかないと、必要な回答にたどり着くまでに時間がかかり、応対スピードにも悪影響が出てしまいます。

質問対応に追われ、現場に余裕がない

FAQが現場で十分に機能していないと、「本来なら減らせるはずの問い合わせ」に時間を取られます。
例えば、資料請求やWeb上の手続きで完結する内容など、定型の質問で電話回線が埋まってはいないでしょうか。こうした状態が続くと、複雑な相談やクレーム対応、丁寧なケアが必要な高齢者の問い合わせなど、本来時間をかけたい案件に手が回らなくなります。

さらに、回線が混み合うと待ち時間が伸び、つながる前に顧客が諦めて電話を切ってしまうケースも増えます。こうした途中離脱(放棄呼)や、回線がパンクしてそもそもつながらない状態(あふれ呼)が重なると、企業にとって大きな機会損失になりかねません。

「つながらない」「回答が違う」ことで、顧客満足度(CS)を下げてしまう

そもそもWebサイトのFAQを見ても解決できず、「仕方なく電話をかけた」という顧客は少なくありません。FAQが問題解決に結びついていないこと自体が、電話対応の混雑を招く要因になっています。

このような悪循環は、最終的に顧客満足度(CS)の低下を招きます。
困っているところへ待ち時間のストレスが重なり、ようやくつながっても担当者によって案内する内容が食い違っていれば、顧客の不信感は一気に強まります。対応品質のぶれを放置すれば、企業の信頼を大きく損なうでしょう。

FAQと生成AIを活用したコールセンターの効率化とは?

こうした課題を解決する手段として、近年広がっているのが「FAQデータと生成AIの連携」です。
生成AIや音声認識・音声合成技術の精度は、この数年で大きく向上しました。従来のロボットのような機械的な対応ではなく、文脈を踏まえた自然な対話が可能になりつつあります。その結果、AIがコールセンターの一次窓口として機能する場面が増え、導入を検討する企業も多くなっています。

FAQ・ナレッジベースとAIボイスボットの連携

効率化の鍵となるのが、コールセンターに蓄積されたFAQデータをボイスボットに連携し、AIが参照できる状態にする仕組みです。

これまでは、顧客からの質問に対してオペレーターがFAQシステムを検索し、その内容を読み上げて回答していました。しかし、FAQデータをAIボイスボットと連携させれば、検索から回答までの一連の流れを自動化できます。顧客が電話口で質問すると、AIがFAQから適切な回答を探し出し、音声で答えてくれるのです。

AIによる自動化と有人対応を組み合わせた効率的な運用

もちろん、すべての対応をAIに任せるわけではありません。重要なのは「人とAIの役割分担」です。
よくある質問や、住所変更などの定型的な手続きはボイスボットで完結させます。一方で、判断が難しい相談や感情面のケアが必要なクレーム対応は、ボイスボットが用件を聞き取ったうえでオペレーターへ引き継ぎます。あらかじめ用件が整理されていれば、オペレーターは内容を把握した状態で対応を始められ、心理的な負担も和らぐでしょう。

【参考記事】
生成AI×ボイスボットでできることは?導入ステップ、リスクと対策

AIエージェント型ボイスボットとは?従来型との違い

ボイスボットには大きく分けて、従来のシナリオ型と、AIエージェント型があります。自社の課題や運用スタイルに合ったシステムを選ぶために、まずはそれぞれの違いを正しく理解しておきましょう。

AIエージェント型ボイスボットとは

AIエージェント型ボイスボットは、生成AIを使った高度な音声対話システムです。特徴は、より「自律的」に会話を進められる点にあります。顧客の自然な話し言葉や多少あいまいな表現でも文脈を読み取り、従来型より柔軟に応答します。

<AIエージェント型ボイスボットの主な特徴>
・深掘りと誘導:ユーザーの要件を掘り下げ、解決策の提示や担当部署への案内を行います。
・確認の問い返し:情報があいまいな場合、AIが自ら判断して確認質問を行います。
・意図の読み取り:「ちょっと使い方がわからないのだけど」といった曖昧な依頼から意図を読み取り、必要な手続きを進めます。
・複数要件の処理:複数の用件が一度に話されても、順序立てて処理しやすくします。

従来型(シナリオ型)ボイスボットとは

従来型(シナリオ型)ボイスボットは、事前に用意した「シナリオ(台本)」に沿って応答する方式です。

「会員番号を押してください」「〇〇についてのお問い合わせは1を……」のように、決まった質問項目を順番に聞き取り、想定内のキーワードが得られれば対応を進める仕組みです。安定した運用をしやすい一方、想定外の言い回しやイレギュラーな発話には対応しづらい面があります。

<従来型(シナリオ型)とAIエージェント型の比較>
比較項目 従来型ボイスボット
(シナリオ型)
AIエージェント型ボイスボット
初期構築 ・シナリオ(対話フロー)の設計が必要
・分岐が増えるほど構築工数が大きい
・FAQデータやナレッジベースを参照させて対応可能
・対話ロジックはAI任せの部分が増え、設計負担を抑えやすい
運用・更新 ・変更時はシナリオ自体の改修が必要
・更新頻度が低いと最新情報に対応しにくい
・FAQの更新・追加で応答内容も更新しやすい
・フィードバックで精度向上も期待できる
対応範囲 ・想定問答中心
・想定外はオペレーターへ転送
・ナレッジベースに回答があれば広範囲の対応が可能
・多様な言い回しでも意図を解析しやすい
対話の柔軟性 ・定型質問を順番に繰り返す形式になりやすい ・会話の文脈を踏まえた双方向のやり取りが可能
回答の正確性 ・スクリプト通りのため回答のぶれが少ない ・動的生成の利便性がある一方、誤回答(ハルシネーション)のリスクがある

このように、AIエージェント型では、ユーザーの自由な会話から意図や文脈を読み取り、FAQデータやナレッジベースを参照しながら適切な回答を生成できます。そのため、従来は難しかった「想定外の質問への対応」や「より自然な対話」が実現しやすくなるでしょう。

その一方で、AIが自律的に回答を生成する分、正確性の管理や誤回答時の対処(ハルシネーション対策など)といった新たな課題もあります。両者の特徴を踏まえ、自社の課題に合う型を選ぶことが大切です。

【参考記事】
AIエージェントとは?コールセンターに導入するメリットや注意点

コールセンターにAIエージェント型ボイスボットを導入するメリット

では、AIエージェント型ボイスボットを導入することで、コールセンターにはどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。

問い合わせ対応の効率化

導入によって得られる大きなメリットは、業務効率の向上です。「パスワードを忘れた」「営業時間を知りたい」といったよくある質問は、蓄積されたFAQ情報をもとにボイスボットが自動応答します。
これにより、オペレーターはAIでは解決しにくい複雑な案件や、より丁寧な対応が求められる問い合わせに集中しやすくなります。結果として、オペレーター1人あたりの対応件数増加や、平均処理時間(AHT)の短縮が見込めるでしょう。

【参考記事】
コールセンターのAHTとは?計算式や目標値、長くなる原因と改善方法

顧客の利便性向上

「待ち時間の短縮」と「24時間対応」は、顧客の利便性を大きく高めます。
有人対応のみでは、夜間や休日に問い合わせを受け付けることが難しい状況でも、ボイスボットなら24時間365日、即座に応答可能です。顧客は自分の都合の良いタイミングで問い合わせができ、コールセンターの営業時間を気にする必要がありません。

さらに、キャンペーン直後のような回線が混雑するタイミングでも、「いつまでも電話がつながらない」という事態を防げるため、顧客に無用なストレスを与えずに済みます。

回答品質の均一化

有人対応では、経験年数や知識量によって回答の質やスピードに差が出ることがあります。しかし、ボイスボットは用意されたFAQに基づき、一定の品質で回答ができます。これにより、オペレーターの習熟度による回答品質のばらつきが緩和され、企業として一貫性のある顧客対応が可能になります。

さらに、AIボイスボットの応対ログを分析して回答内容を改善できる仕組みが整えば、継続的な対応品質の向上にも寄与します。

オペレーター負荷軽減と人材定着

顧客からの「定型的な質問」が集中すると、コールセンターは常に「電話が鳴り止まない」状態になってしまいます。同じ説明を何度も繰り返すことは、オペレーターにとって大きなストレスです。ボイスボットがこれらのやり取りを担うことで、オペレーターの精神的・肉体的な負荷を軽減できるでしょう。着信のプレッシャーが弱まれば、働きやすさにもつながり、離職率の低下も期待できます。

問い合わせ削減とコスト効果

コールセンターの自動化が進めば、オペレーターが受ける総問い合わせ件数(着信数)の削減が見込めます。これは人件費換算でのコスト削減に直結するほか、採用難の中でオペレーターの増員を抑制できるという点でも、ROI(投資対効果)が高い施策となり得ます。
そのため、AIボイスボットの導入には初期費用や運用コストがかかりますが、中長期で見ればメリットを生み出す余地があるといえるでしょう。

電話放送局のAIエージェント型ボイスボット「DHK CANVAS エージェントプラン」

ここまで見てきたように、AIエージェント型ボイスボットは、定型的なFAQ対応を自動化しながら、有人対応が必要な問い合わせに人のリソースを集中させやすくする仕組みです。こうした流れの中で注目されるのが、電話放送局の新サービスであるAIエージェント型ボイスボットです。

電話放送局は、2026年4月15日にAIエージェント型ボイスボット「DHK CANVAS エージェントプラン」の提供を開始しました。大きな特徴は、「コールセンターに蓄積されたFAQをAIのナレッジとして活用できる点」です。
これまでオペレーターが「FAQを検索して読み上げる」ことで対応していた定型問い合わせについて、AIがFAQを参照しながら応答できるようになります。そうすることで、現場の負荷軽減や応答品質の安定化が期待されます。

電話放送局はIVRやボイスボットサービスを展開しており、電話応対の効率化を支援してきました。DHK CANVASには定型業務に向くシナリオプランもあり、用件に応じてシナリオとAIを使い分けることも、シナリオプランから段階的に切り替えることもできます。従来型のボイスボットが得意としてきた確実な回答を行う制御性に、AIエージェント型の柔軟な対話を兼ね備えることで、FAQ回答業務の効率化に寄与すると期待されます。

また、その他の注目機能としては、感情解析による顧客満足度の向上や、多言語対応によるグローバルな顧客への対応が挙げられます。これらの機能も順次実装予定です。
問い合わせ内容だけでなく状況に応じた案内や、言語の壁を越えた一次対応が可能になれば、顧客体験の改善と現場運用の最適化を同時に進めやすくなるでしょう。

公式情報をもとにAIが電話で答えている導入例

岡山県倉敷市では、2026年7月1日から市民課(戸籍・住民票・マイナンバーカード等)の電話対応にDHK CANVAS エージェントプランが使われています。AIが市民の質問を聞き取り、倉敷市の公式情報を参照して回答します。AIで対応が難しい場合は、質問の要約を職員に引き継ぐ仕組みです。

回答の情報源を倉敷市の公式情報に限っているのは、正確性を保つためです。コールセンターに置き換えると、AIに参照させるFAQを自社で確認済みの内容に絞ることにあたります。導入によって24時間365日・300人同時に対応できる体制になりました(倉敷市での導入のお知らせ)。

企業の窓口では、再春館製薬所が「ドモホルンリンクル」のお客様窓口で、夜間・早朝(21時〜翌9時)の時間外受付にDHK CANVAS エージェントプランを導入しています。営業時間内はこれまでどおり人が対応し、時間外はAIが受け付ける形です(再春館製薬所での導入のお知らせ)。

電話からFAQへ案内して利用が増えた例

AIに答えさせる前の段階として、電話の自動音声からFAQページへ案内する方法もあります。情報・通信業のギガプライズでは、オペレーターが取り切れない電話に対して、IVR(自動音声応答)からチャットボットやFAQへ案内する運用を行っています。その結果、チャットボットやFAQの利用率が10%上がりました(ギガプライズの導入事例)。

前橋市の国民健康保険課では、自動音声による案内とあわせてホームページやFAQの動線を見直し、自動音声で案内が完結する割合(完結率)が約20%になりました。電話応対の時間は年間換算で約550時間減っています(前橋市の導入事例)。電話とFAQページをつなげて設計すると、Webに置いたFAQも使われやすくなります。

AIエージェント型ボイスボットの導入に向けて今からできる準備

AIエージェント型ボイスボットは、導入するだけですべての課題を解決できる万能なツールではありません。
能力を十分に発揮するためには、導入前の準備が重要です。ここでは、導入を決める前から取り組める準備について解説します。

既存FAQデータの棚卸しと修正

AIが正しく答えるためには、回答の判断基準となる「FAQデータ」の精度が重要です。まずは、現在社内にあるFAQデータの棚卸しを行いましょう。古い情報が残っていないか、内容が重複していないか、専門用語ばかりで顧客に伝わりにくい表現になっていないかを確認し、データを整理します。
また、マニュアルや個人のメモ、チャット履歴などに散らばっている情報を一つの場所に集約しておくことも大切です。

運用・更新ルールの策定

顧客に案内する情報は常に変化します。そのため、「誰が、いつFAQを更新するか」という運用ルールを事前に決めておきましょう。
導入後は、対話ログから「AIが答えられなかった質問」や「誤回答」を定期的に抽出・分析することになります。その際、不足していた情報を素早くFAQに追加・修正し、AIに反映して精度を高める体制づくりが求められます。

リスク管理とルールの確認

生成AIは時として事実と異なる回答(ハルシネーション)をするリスクがあります。そのため、定期的に人の目で回答内容をチェックする管理体制の構築が必要です。
また、個人情報の扱いやセキュリティポリシーについて、自社の社内ルールやコンプライアンス規定と照らし合わせ、安全に運用できる環境を整えておきましょう。

導入後はどの数字を見ればよい?

電話でAIに答えさせ始めたら、FAQの直しどころを数字で探します。見るのは次の5つです。

見る数字 分かること 悪いときに直すところ
AIだけで用件が
終わった割合
(完結率)
FAQで答えられた電話の割合 任せる質問の選び方と、
回答の長さ
人に引き継いだ
電話の理由
AIが答えられなかった質問 足りない質問をFAQに追加する
聞き取れなかった言葉
・言い直しの回数
お客様の言い方と
FAQの言葉のずれ
質問の言い換えを登録する
回答の途中で
切れた電話
長すぎる回答、
分かりにくい回答
回答を1〜2文に縮め、
続きはSMSで送る
FAQにした用件で
オペレーターが
受けた件数
人が受ける電話が
実際に減ったか
最初の案内で用件を
聞き分けられているかを見直す

導入直後は、人に引き継いだ電話の理由を週に1回は読み、FAQに足りない質問を追加していきます。Webサイトに載せているFAQの更新と同じ担当者がこの作業を受け持つと、画面のFAQと電話の回答の内容がずれにくくなります。

FAQのナレッジを活用してAIと共に進化するコールセンター運営を

AIエージェント型ボイスボットは、FAQ対応を自動化することで、業務の効率化と顧客満足度(CS)の向上を同時に目指せる心強い選択肢です。定型的な問い合わせをAIが担うことで、オペレーターは本来注力すべき複雑な相談や丁寧なケアが必要な対応にリソースを割けるようになり、結果としてコールセンター全体の運用品質も高めやすくなります。

電話放送局が2026年4月に提供を開始した「DHK CANVAS エージェントプラン」は、コールセンターが保有するFAQを資産として活かし、電話の一次対応をAIに任せるためのサービスです。FAQが「置いてあるだけ」の情報から、「顧客対応を支える実働のナレッジ」へ変わることで、問い合わせ対応の在り方そのものが変わっていくでしょう。

ボイスボットをスムーズに導入し、効果を最大化するためには、まずは自社のFAQ情報の見直しから始めることが重要です。FAQを整えることは、AI導入の土台づくりであると同時に、今後のコールセンター運営の改善にも直結します。まずは入電理由を数え、電話でAIに任せられる質問がどれだけあるかを確かめるところから始めてください。弊社では、入電理由の分析をもとに、どの質問をAIに任せるかの設計から導入後の改善まで支援しています。DHK CANVASの詳細もあわせてご覧ください。

コールセンターへのAIエージェント型ボイスボット導入に関するFAQ

コールセンターにAIエージェント型ボイスボットを導入するメリットは何ですか?

繰り返しが多い定型的な対応を自動化することで、オペレーターの負荷軽減と応答の効率化が期待できます。なお、高度な判断が必要な質問や、感情的な寄り添いが必要な相談は、引き続き人による対応が重要です。

AIボイスボットはすべての問い合わせに答えられるのでしょうか?

ナレッジベースに登録された内容や、過去に学習・参照できる範囲の質問には強いですが、万能ではありません。想定外の質問や、文脈が複雑すぎるケースでは正確に答えられず、オペレーターへの引き継ぎが必要になる場合もあります。導入時には、ボイスボットが不得意な領域を見極め、適切にオペレーターへ転送する導線設計が重要です。

FAQの情報が古くてもボイスボットは機能しますか?

システムとしては動作しますが、古い情報を参照して誤った回答をするリスクが高まります。そのため、FAQデータは常に最新の内容に更新しておく必要があります。AIボイスボットの導入前にFAQの棚卸しを行い、不足しているQ&Aを追加・修正しておくことで、より正確な応答が期待できます。

AIエージェント型ボイスボット導入時に注意すべき点はありますか?

最初から完璧な回答率を求めず、運用しながら段階的に精度を上げていく心構えが必要です。回答品質を監視し、誤回答があればFAQを修正するといった改善サイクルを回す体制を整えましょう。また、ボイスボットが対応できない場合のオペレーターへの引き継ぎルールの明確化、個人情報の取り扱いなどコンプライアンス面にも注意が必要です。

ボイスボットを導入したらオペレーターは不要になりますか?

いいえ、オペレーターの役割も引き続き重要です。ボイスボットは一次対応を効率化するためのツールであり、複雑な問題解決やイレギュラーな対応など、オペレーターでないと対応が難しい場面も多くあります。ボイスボットの導入により、オペレーターは定型対応から解放され、より高度な問い合わせやホスピタリティが求められる顧客ケアに注力できるようになります。ボイスボットと人が補完し合う「協働」が理想です。

コールセンターのFAQは、そのまま電話のAIに使えますか?

内容はそのまま使えますが、書き方は電話向けに直したほうが伝わります。画面で読む前提のFAQには、リンクや「こちら」、長い手順が含まれていることが多く、読み上げると要点が伝わりません。結論を最初の1文で伝え、手順はSMSで送る形に直しておくと、電話でも回答が届きます。

電話でAIに答えさせる質問は、どう選べばよいですか?

入電理由を1か月ほど数え、件数が多く、答えが1つに決まる質問から選びます。営業時間や必要書類の案内、手続きの方法などが当てはまります。契約内容の複雑な変更や、判断に迷っている方の相談は、AIが用件を聞き取ってから担当者へ引き継ぐ形が向いています。

FAQにない質問が電話で来たときはどうなりますか?

AIが聞き取った内容を添えて担当者へ転送するか、折り返しの受付に回す設計にします。お客様は用件を一から話し直さずに済みます。あわせて、答えられなかった質問を記録して定期的にFAQへ追加すると、AIで答えられる範囲が広がっていきます。

DHK CANVAS

DHK クラウドサービス概要資料 ダウンロード

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監修者情報

メーカーのコールセンター運営管理に従事し、自らIVRを導入。
不要な入電を抑制しつつ売上向上を実現するなど、現場視点で成果を創出。電話放送局では営業マネージャーとして10年以上従事し、クラウド型IVRの業界シェア1位獲得に貢献。
コロナ禍におけるユーザーのデジタル行動変容を受け、マーケティング部門を立ち上げ、責任者に就任。インサイドセールスを統括し、営業部門との連携を強化。自動音声応答の導入、運用、集客、営業の幅広い経験を有する。
IVRおよびコールセンター市場における20年以上の知見を活かし、ユーザーの検索行動やニーズを深く理解したマーケティング戦略を展開。
検索連動広告の運用経験を基に、現場で役立つ実践的な情報を発信し、読者のビジネス成功を力強くサポートします。

監修者 前田泰延(株式会社電話放送局) マーケティング責任者 営業部営業推進課 課長 前田泰延

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