2026/10/29

お客様相談室の電話を自動化する方法。定型の質問を自動で案内し、健康被害や異物の申し出を担当者につなぐ場面

「新商品のCMが流れた翌朝から、相談室の電話が鳴りやまない」「増員の稟議は通らないのに、上からはAIで何とかならないのかと言われている」という、お客様相談室の責任者の方は少なくありません。
結論からお伝えすると、お客様相談室の電話のうち、確認済みの成分情報・取扱店・キャンペーンの案内と、住所変更などの手続きの電話受付は自動化できます。登録内容の変更や発送には、その後の担当者の処理か社内システムとの連携が必要です。健康被害・異物混入・強い苦情の申し出は、営業時間内なら入口で用件を聞き分けて人へ優先してつなぎます。時間外に自動で受ける場合は、担当者への通知と緊急時の連絡体制が必要です。AIを使うのは聞き取りや一部の回答で、番号による振り分けなどはAIを使わずに自動化できます。人の時間を、判断や謝罪が要る電話に回すのが相談室の自動化の考え方です。
本記事では、相談室に来る用件ごとの分け方を表にまとめたうえで(「お客様相談室で自動化できる用件と人が受ける用件は?」の章)、健康被害の申し出を取りこぼさないガイダンスの作り方、ネスレ日本の消費者対応部門の事例、始める手順の順に紹介します。

目次

・お客様相談室は、なぜ電話を受ける人数を決めにくい?

・お客様相談室で自動化できる用件と人が受ける用件は?

・お客様相談室の電話を自動化する5つの仕組み

・健康被害・異物混入の電話を取りこぼさない作り方

・ネスレ日本の消費者対応部門は、電話の波にどう対応した?

・自動化しても「冷たい会社」と思われないためには?

・お客様相談室の自動化を始める4つの手順

・よくある質問

・まとめ

お客様相談室は、なぜ電話を受ける人数を決めにくい?

入電の数が読めないうえに、性質の違う用件が1つの番号に集まり、健康や安全に関わる申し出も混ざるからです。何人をどの時間帯に配置するか決めにくい理由を、4つに分けて説明します。

新商品・CM・キャンペーンの直後は、入電の数が読めない

相談室の入電は、自社の動きに合わせて跳ねます。新商品の発売、テレビCM、キャンペーンの開始、パッケージ表記の変更、自主回収のお知らせなど、きっかけは社内で決まっていても、何件増えるかを前もって正確に読むのは困難です。多めに人を置けば空いた時間の人件費がかかり、少なく置けば電話があふれます。

ネスレ日本株式会社のコンシューマーリレーションズ部も、電話がいつ、何件かかるかを読めず、適正な人数の配置が難しかったと説明しています(導入事例:解約変更一次受付)。健康食品を扱う万田発酵株式会社でも、新聞広告や折込チラシを出したときの入電の繁閑の差が大きく、ピーク時に電話を取り切れないあふれ呼が起きていました(導入事例:万田発酵株式会社)。

パッケージに載せた番号に、用件の違う電話がすべて集まる

商品のパッケージやWebサイトに載る相談室の番号は、多くの場合1つです。そこへ、成分の確認、売っている店の問い合わせ、キャンペーンの応募方法、定期購入の手続き、使い方の相談、品質への苦情、体調の申し出まで、性質の違う電話が同じ順番待ちに並びます。

その結果、短い案内で終わる問い合わせと、時間をかけて話を聞く必要がある申し出が、同じ列で待つことになります。オペレーターは電話に出るまで用件が分からないため、毎回ゼロから聞き取りを始めなければなりません。入口で用件を振り分けていないことが、待ち時間と応対時間の両方を延ばしています。

健康被害・異物の申し出を見逃せない

相談室の電話がほかの窓口と違うのは、ごく一部に健康や安全に関わる申し出が混ざることです。「食べたあとに気分が悪くなった」「中に異物が入っていた」という電話は件数こそ少なくても、受け損ねれば被害の広がりや会社の信用に直結します。

そのため相談室では、「混んでいる時間は折り返しにする」「この時間帯は留守番電話にする」といった割り切りがしにくくなります。すべての電話を人がすぐに受ける体制を守ろうとして、人手が足りなくなるのです。どの電話が急ぎなのかが入口で分からないことが、問題の根にあります。

「電話がつながらない」が、そのまま新しい苦情になる

待ち時間の長さは、それ自体がお客様の不満になります。株式会社電話放送局が全国の50〜70代の男女241名に行った調査では、コールセンターの利用で84.6%が何らかの嫌な経験を挙げ、経験率の1位は「電話がなかなかつながらず、イライラした」の50.2%でした。最も大きいストレスを1つ選ぶ質問でも、「電話がつながらない」が36.9%で1位です(出典:株式会社電話放送局「コールセンター利用とAI自動応答(ボイスボット)に関する意識調査」、ニュースリリース)。

相談室に電話をかける人の中には、商品のことで困っている人や、すでに不満を抱えている人が含まれます。そこで長く待たされると、本来の用件に「つながらなかった」という不満が上乗せされます。人を増やす以外の打ち手は、入口の聞き取りと定型の用件を自動にして、人の時間を判断や謝罪が要る電話に回すことです。

お客様相談室で自動化できる用件と人が受ける用件は?

用件の分け方は「自動で完結」「受付だけ自動」「人が受ける」の3段階です。登録済みの答えを案内する問い合わせは自動で完結でき、住所変更などは電話受付まで自動にできます。判断や相談が要る用件は入口だけを自動にし、その後は人の対応が必要です。健康被害・異物混入・強い苦情は営業時間内に人へ優先してつなぎ、時間外の受付には別の連絡体制を用意します。相談室によくある用件を表に並べたので、自部署の用件を当てはめてみてください。

お客様相談室に来る電話を、自動で案内する取扱店の質問、受付だけ自動にする返品の相談、営業時間内に人へつなぐ体調不良や異物の申し出に分けた図

用件 自動化の段階 使う仕組み 担当者が
確認する情報
成分・アレルゲン・
原産地の確認
自動で完結
(登録した答えの範囲だけ)
確認済みの固定音声、
SMSで公式商品ページへ案内
登録に無い質問のとき:
商品名、質問の内容
取扱店・購入方法 自動で完結 IVR、
SMSで店舗検索・通販ページへ案内
なし
キャンペーンの
応募方法
自動で完結 IVR、
SMSで応募ページへ案内
なし
住所・電話番号の変更、
パンフレットの請求
受付を自動化
(変更・発送は人が処理)
ボイスボットで聞き取り、
管理画面に記録
記録を担当者が処理
定期購入の休止・
解約の申し出
入口だけ自動、
または自動で完結
ボイスボット・IVRで受付 登録電話番号、理由
返品・交換の申し出 入口だけ自動 ボイスボットで聞き取り 商品名、購入日、
購入した店、商品の状態
使い方の
込み入った相談
入口だけ自動 IVRで振り分け、
担当者へ転送
商品名、困っている内容
取引先・取材・
営業の電話
入口で振り分け IVRで別の窓口へ案内 会社名、用件
体調不良・
健康被害の申し出
営業時間内は人へ優先転送 冒頭の選択肢で
担当者へ優先して転送
商品名、食べた(使った)日時、
症状、受診の有無
異物混入・
けがの申し出
営業時間内は人へ優先転送 冒頭の選択肢で
担当者へ優先して転送
商品名、異物の様子、
現物が手元にあるか
強い苦情 営業時間内は人へ優先転送
(混雑時は折り返し)
担当者へ転送、
混雑時は折り返しの予約
苦情の要点、連絡先
ご意見・軽い要望 入口だけ自動 ボイスボットで内容を聞き取る 商品名、意見の内容、
返答が必要か

右端は、担当者が確認する情報です。通常の用件は自動の受付で先に聞き取り、画面やメールに渡しておきます。安全に関わる申し出は、営業時間内なら詳しい聞き取りより先に担当者へつなぎ、商品名や症状を聞くのは担当者です。時間外に自動で一次受付する場合の条件は、後の「健康被害・異物混入の電話を取りこぼさない作り方」で説明します。

用件はどんな基準で分ける?

「答えが決まっているか」「判断・謝罪・相談が要るか」「健康や安全に関わるか」の3つの問いで分けます。表の段階も、この3つで決めています。1つ目は「答えが商品ごとに決まっているか」です。決まっていれば、登録した答えを返すだけで済むため自動で案内できます。2つ目は「判断・謝罪・相談が要るか」で、要るなら入口の聞き取りだけを自動にし、対応は人の仕事です。3つ目は「健康や安全に関わるか」で、関わるなら営業時間内は入口から人が受けます。

この線引きは、お客様側の感覚とも重なります。前出の株式会社電話放送局の調査で、人間のオペレーターに対応してほしい場面を尋ねたところ、上位は「契約内容の複雑な変更があるとき」49.4%、「判断に迷っていて相談したいとき」36.1%、「商品の使い方を具体的に教えてほしいとき」29.0%で、「命や健康に直結する緊急の問い合わせ」も21.2%でした(出典:同調査)。相談や判断、健康に関わる電話を人に残す設計は、お客様が人に求める場面と一致しています。

自動で案内できる用件と、受付だけ自動にできる用件

自動で案内を完結できるのは、確認済みの固定文で答えられる成分・アレルゲン・原産地の確認、取扱店や購入方法、キャンペーンの応募方法です。住所変更やパンフレットの請求は電話での受付まで自動にできますが、顧客情報の変更や発送まで終えるには、担当者の処理か社内システムとの連携が必要です。お客様が知りたい答えか、相談室が聞きたい項目が先に決まっている用件から選びます。

例えば取扱店の問い合わせなら、IVRが「お近くの取扱店をお探しの方は2番を押してください」と案内し、押した方の携帯電話にSMSで店舗検索ページのURLを送る流れです。住所変更なら、ボイスボットが「お客様番号」「新しいご住所」「お電話番号」を順に聞き取り、管理画面に記録します。担当者は電話に出ずに、記録をまとめて処理できます。

ただし成分やアレルゲンの回答は、誤りがそのまま健康に関わる内容です。相談室が商品ごとに確認した固定文を読み上げるか、公式商品ページへ案内する方法を優先してください。商品や質問を特定できない場合、情報が一致しない場合は担当者に回します。

入口だけ自動にして人に渡す用件

返品・交換の申し出、使い方の込み入った相談、定期購入の休止や解約の申し出は、入口の聞き取りだけを自動にして、対応は人が行う用件です。商品名や購入日、困っている内容を先に聞き取っておけば、担当者は事情を把握した状態で電話に出られます。

解約の申し出をどこまで自動にするかは、会社の方針で変わります。ネスレ日本のコンシューマーリレーションズ部は「解約受付は人で実施するポリシーがあるため、完全自動化するのではなく、解約一次受付をIVRで対応することにしました」と、一次受付だけを自動にしています(導入事例:解約変更一次受付)。一方で通信販売の日本予防医薬株式会社は、解約の手続きをボイスボットで自動化しています(導入事例:日本予防医薬株式会社)。自動化しても「人が受ける」という方針は守れるので、方針を先に決めてから仕組みを選びます。

健康被害・異物混入・強い苦情は人へ優先してつなぐ

体調不良や健康被害の申し出、異物混入やけがの申し出、強い苦情は、営業時間内なら冒頭で人へ優先してつなぎます。症状の確認、受診の勧め、現物の回収、謝罪といった判断が、電話の最初の数分で必要になるからです。

苦情については、少し補足があります。前出の調査では、「人よりボイスボットの方が話しやすいシーン」として「クレーム・苦情を伝えるとき」を挙げた人が18.7%いました(出典:同調査)。人に直接言いにくい人もいるため、混雑時に苦情の内容と連絡先を自動で聞き取り、担当者が折り返す形をとる余地はあります。ただし、聞き取りのあとの対応は人の仕事です。苦情の受け方の基準は「コールセンターのクレーム対応改善」、担当者を守る体制づくりは「コールセンターのカスハラ対策」で詳しく紹介しています。

業種を問わない一般的な線引きは「AI電話対応とは?任せられる電話と人が受ける電話の分け方」にまとめています。

お客様相談室の電話を自動化する5つの仕組み

ここでは、前の表に出てきた仕組みを相談室で使う場面に絞って説明します。IVR・SMS・折り返し予約はAIがなくても動く自動応答です。話した内容の認識とFAQへの回答にはAIを使います。用件に合わせて組み合わせます。

仕組み 向く用件 お客様の手間 相談室で準備すること
①IVR 用件の振り分け、
取扱店・キャンペーンの案内
番号を押す。
選択肢が多いと迷う
選択肢の並び順と
ガイダンスの文
②ボイスボット 住所変更・返品の聞き取り、
用件を話してもらう受付
話すだけ。
聞き取れないと言い直し
聞き取る項目と、
聞き取れないときの流れ
③SMSでWebへ案内 店舗検索、応募ページ、
チャットへの誘導
SMSを開いて
Webで操作する
案内するページと
SMSの文面
④折り返しの予約 混雑時・時間外の
電話全般
用件と連絡先を残して
連絡を待つ
折り返す順番と担当者
⑤生成AIのFAQ回答 使い方など
登録済みの質問
話して聞くだけ 商品ごとのFAQと、
答えない範囲

①用件を番号で振り分けるIVR

IVR(自動音声応答)は、「お体の不調や異物のお申し出は1番」という案内で用件を振り分ける仕組みです。相談室では、健康や安全に関わる申し出を最初の選択肢に置き、担当者へ優先してつなぐ使い方が中心になります。取扱店やキャンペーンのように答えが1つに決まる案内は、IVRだけで完結できます。選択肢は多くするほどお客様が迷うため、最初の階層は用件の多いものに絞るのが基本です。

②話した内容を聞き取るボイスボット

ボイスボットは、お客様が話した内容を音声認識で聞き取る仕組みです。商品名や返品の理由のように、番号では選びにくい内容を受け付けられます。相談室では「どの商品について、何があったか」を先に話してもらい、内容に応じて自動で答えるか、担当者に渡すかを分ける入口として使えます。

③SMSでチャットやWebページへ案内する

電話をかけてきたお客様の携帯電話に、SMSでWebページやチャットのURLを送る方法です(仕組みは「IVR×SMSとは?」で紹介しています)。店舗検索や応募ページのように、画面を見たほうが早い用件に向いています。

集合住宅向けのインターネット接続サービスを提供する株式会社ギガプライズは、基本はオペレーターが対応しながら、取り切れない電話をIVRでチャットボットやFAQへ案内する運用にしました。その結果、放棄呼ゼロ、チャットボットやFAQの利用率10%アップにつながっています(導入事例:株式会社ギガプライズ)。

④混雑時・時間外に折り返しの予約を受ける

混雑時や受付時間外の電話を自動で受け、用件と連絡先を聞き取って、担当者があとから折り返す方法です(コールバックとも呼ばれます)。お客様は待ち続けずに済み、相談室は空いた時間に折り返しを回せます。健康や異物の申し出は通常の折り返しに混ぜず、緊急度を確認して担当者へ通知する流れを別に設けます。

⑤生成AIが商品のFAQから答える

生成AIが、相談室で登録したFAQをもとに、お客様の質問に音声で答える方法です(「コールセンターのFAQをAIが電話で自動回答」で詳しく紹介しています)。言い方が違う質問にも対応できる仕組みです。

相談室で使う場合は、成分やアレルゲンのように誤りが健康に関わる質問を生成AIの自由な回答に任せず、確認済みの固定文か公式商品ページへ案内します。それ以外の質問も、回答範囲を決めて事前に通話テストを行い、運用中の回答を確認します。登録にない質問や聞き取れない用件は担当者へ回してください。FAQを登録するだけで誤回答がなくなるわけではありません。元になるFAQの整え方は「コールセンターのFAQの作り方と管理方法」が参考になります。

健康被害・異物混入の電話を取りこぼさない作り方

相談室の自動化で最も心配されるのが、体調や異物の申し出が自動応答の中に埋もれてしまうことです。取りこぼしは、入口の選択肢、聞き取りの途中、時間外、記録の4か所で防ぎます。

最初のガイダンスで「体調・異物・けが」を先に選べるようにする

安全に関わる申し出の選択肢は、ガイダンスの最初に置きます。最後に置くと、お客様が案内を聞き終える前に別の番号を押したり、電話を切ったりするおそれがあるためです。ガイダンスの例を場面ごとに並べました。

場面 ガイダンスの例
最初の案内 お電話ありがとうございます。お体の不調や、商品に異物が入っていたなど、安全に関わるお申し出は1番を押してください。担当者におつなぎします。そのほかのお問い合わせは2番、担当者と直接お話しになりたい方は3番を押してください。
受付時間外 ただいま受付時間外です。お体の不調や異物のお申し出は、この後の案内に沿って、商品名とご連絡先をお話しください。緊急の症状がある場合は、医療機関へご相談ください。内容を確認し、担当者からご連絡いたします。
異物の申し出を
受け付けたあと
お手元の商品と包装は、捨てずに保管していただきますようお願いいたします。担当者から、確認のご連絡をいたします。

ガイダンスの文の作り方は「電話音声ガイダンス(IVR)の作り方」で場面ごとの例文とあわせて紹介しています。

体調や異物に関わる言葉が出たら担当者へつなぐ

最初に「そのほか」を選んだお客様が、話の途中で体調のことを話しはじめる場合もあります。そこで、ボイスボットの聞き取りの中に「気分が悪い」「吐いた」「かゆい」「腫れた」「病院」「入っていた」「混ざっていた」「けがをした」といった言葉が出たら、その場で担当者へつなぐ分岐が必要です。

どの言葉で人へ回すかは、過去の申し出の記録から拾い出します。ただし言葉の検知だけで安全上の申し出を漏れなく拾えるわけではありません。検知できる言葉や転送の条件は導入する仕組みで異なるため、実際の通話を想定したテストで確かめます。聞き取れなかったときも、言い直しを何度も求めずに担当者へ回す設計が必要です。

時間外の申し出は緊急度で対応を分ける

受付時間外の健康や安全に関わる申し出を自動で一次受付するなら、翌営業日の通常の折り返しに混ぜない運用が必要です。自動応答では、緊急の症状がある場合は医療機関への相談を案内し、商品名、症状、折り返し先を記録します。決めておいた緊急連絡先へ通知し、時間外に対応する担当者が確認する体制が必要です。担当者が翌営業日の対応でよいと判断した用件だけを、折り返し一覧に入れます。時間外に確認する担当者を置けない場合は、すぐに連絡できると案内してはいけません。緊急度の判断基準と連絡体制は、運用開始前に品質部門と決めてください。

受付時間外の体調不良や異物の申し出を自動で記録し、時間外の担当者が確認して対応を分ける図

健康食品の通信販売を行う万田発酵株式会社は、深夜帯の電話をボイスボットで受け、問い合わせ内容、名前、折り返し電話番号を聞き取って翌営業日に人が折り返す運用をしています。時間外の入電の半数以上を一次受けでき、用件が事前に分かるため、折り返し時に最初から聞き直さずに済むようになりました(導入事例:万田発酵株式会社)。この事例は時間外の一次受付の参考になりますが、健康被害の緊急連絡体制を示すものではありません。

録音と聞き取った内容は、何を残せばよい?

1件ずつ残すのは、受付の日時、商品名、症状や異物の様子、連絡先と通話の録音です。こうした記録は、品質部門への連絡にも使います。聞き取れなかった項目は空欄のまま示し、担当者が本人に確認できるようにしておくことが必要です。

記録を1件ずつ残しておけば、同じ商品の申し出が重なったときに気づきやすくなります。自動の受付で聞き取った内容と通話の録音をあわせて保存し、担当者にメールで通知する形にしておくと、担当者が電話に出る前に内容を確認できます。録音の告知や保存期間の考え方は「コールセンターの通話録音に開示義務はある?」を参考にしてください。

ネスレ日本の消費者対応部門は、電話の波にどう対応した?

ネスレ日本のコンシューマーリレーションズ部は、解約の一次受付、チャットへの案内、通話後のアンケートを自動化しています。解約の一次受付では、受電の波に合わせて人の配置を調整できるようにしました。3つの取り組みを順に紹介します。

解約の一次受付をIVRにして、人の配置を平準化した

ネスレ日本は、解約を希望するお客様の電話をIVRで受け、登録している電話番号と解約理由を話してもらう一次受付にしました。受け付けた内容は管理画面に蓄積され、解約希望者のリストが自動で作られます。このリストをもとに、人がお客様へ電話をかけます。

工夫は、電話をかける人数を、受ける電話の多さに合わせて動かした点です。入電が多い時間は電話をかける人を減らして受電に回し、入電が少ない時間は余った人を解約の対応にあてました。事例では、解約希望者のリストが「人員適正化のスポンジ役」になったと表現されており、対象業務のコストを45%カットできています(導入事例:解約変更一次受付)。読めない入電の波を、計画して動かせる仕事で吸収するという考え方は、相談室のほかの用件にも応用できます。

携帯電話からの入電を、SMSでチャットへ案内した

ネスレ日本は、携帯電話からの入電の一定比率を、SMSを送るIVRへ着信させ、チャットでの対応を案内しました。固定電話からの入電は、これまでどおり待ち呼のガイダンスで待ってもらっています。

導入当初、SMSの送信を希望したお客様の割合は20%でした。アナウンスの文言を変えたところ、51%に上がっています。SMSのURLからチャットを希望した割合は85%で、「電話が苦手なのでありがたかった。」という声も届きました。導入前には、電話で話すつもりでかけてきたお客様に会社側の都合でチャットを勧めると、快く思われないのではないかという懸念があったそうです(導入事例:SMSとIVRでチャットへ誘導)。

通話後のアンケートをSMSで送り、応対品質を数字で見た

ネスレ日本は、通話後にSMSでアンケートを送り、オペレーターの応対品質を数値で見る取り組みも行っています。最初はオペレーターが手動で送っていたため、送信率は90%程度、1件の送信に2分程度かかっていました。API連携で自動送信にしたところ、送信率は100%になり、オペレーターの後処理が不要になっています。回答率は10%です(導入事例:SMSを活用したCS調査・マーケティング)。

3つの事例は、一次受付、チャットへの案内、通話後の作業と、自動化する場所がそれぞれ違います。弊社のDHK CANVASでは、AIによる一次受付と用件の振り分け、聞き取った内容を添えた担当者への転送、SMS送信の連携、通話の録音と聞き取った内容の記録・メール通知を、1つのサービスで組み合わせられます。

自動化しても「冷たい会社」と思われないためには?

答えは、人の担当者にもつながることを最初に伝え、担当者に代わるときに用件を言い直させないことです。相談室はお客様との関係を守る部署なので、自動化の作り方がそのまま会社の印象になります。

最初の案内で、人とも話せることを伝える

自動応答に対するお客様の不安は、具体的に分かっています。株式会社電話放送局の調査では、ボイスボットの利用で最も不安なこととして「自分の話した内容を正しく聞き取ってもらえるか不安」22.4%、「結局オペレーターにつながるなら二度手間ではないか」22.0%が上位に挙がりました(出典:同調査)。

最初の案内で「担当者とお話しになりたい方は〇番を押してください」と伝えておけば、お客様は自動の受付を試しやすくなります。体調や異物の申し出を最初の選択肢に置くことも、「大事な話はきちんと人が聞く」と伝える案内になります。

担当者に代わっても、用件を言い直させない

自動の受付から人に代わる場面は、受ける側にとっても負担になりやすい箇所です。株式会社電話放送局が職場で電話対応に携わる全国の20〜60代の男女255名に行った調査では、自動音声から人に代わる電話の経験者の79.3%が、切り替えの場面で困った経験を挙げました。経験者の上位は「要件を把握できていない状態で、電話に出る必要があった」34.5%、「自動音声で伝えたはずの要件を、もう一度説明する必要があった」33.0%です(出典:株式会社電話放送局「電話対応業務の負担と自動化ニーズに関する実態調査」、ニュースリリース)。

相談室では、自動で聞き取った商品名や用件を、転送と同時に担当者の画面やメールに出しておきます。担当者が「返品の件でお電話いただいたのですね」と話を始められれば、お客様は同じ説明を繰り返さずに済みます。

高齢のお客様が多い場合はどうする?

話す方式だけにせず番号を押す方式でも進めるようにし、人の担当者につながる選択肢を残しておきます。DHK CANVASでも、聞き取りが難しい場面ではプッシュ操作へ切り替えたり、オペレーターへ引き継いだりする設計ができます(DHK CANVAS)。

万田発酵株式会社は、「ご高齢のお客様が多いという特性や『オペレーターと話したい』というニーズを大切にし」、日中の注文受付は人が中心、深夜帯は自動の一次受けという使い分けをしています(導入事例:万田発酵株式会社)。高齢のお客様への対応の全体像は「コールセンターは高齢者対応の強化が必要?」で紹介しています。

ガイダンスは、使われ方を見て直す

ガイダンスは、作って終わりではありません。ネスレ日本のチャットへの案内は、当初20%だった送信希望の割合が、ガイダンスのシンプル化とコールフローの変更で51%まで上がりました(導入事例:SMSとIVRでチャットへ誘導)。万田発酵株式会社でも、お客様が自動音声のどの段階で離脱したかが見えるようになり、施策の分析に役立てています。どこで切られているか、どこで人に代わっているかを毎月見て、言い回しと選択肢を直していくことで、自動の受付は少しずつ使いやすくなります。

お客様相談室の自動化を始める4つの手順

最後に、相談室の自動化を始めるときの手順を4つに分けて紹介します。最初から全部を自動にせず、1つの用件か、時間外・混雑時から始めるのが進めやすい方法です。

手順1 1か月分の電話を用件ごとに数える

まず直近1か月の電話を、成分・取扱店・キャンペーン・手続き・使い方・返品・苦情・体調や異物の申し出といった用件ごとに数え、多い順に並べます。用件ごとの平均通話時間もわかれば、どの用件が人の時間を多く使っているかが見えます。数え方と分類表の作り方は「コールリーズン分析とは?」で紹介しています。

上司に説明するときは、「用件ごとの件数×平均通話時間」で、自動にできる用件が月に何時間分の電話にあたるかを示すと伝わりやすくなります。例えば仮の数字で、取扱店の問い合わせが月600件、1件あたり平均4分なら、月2,400分、つまり月40時間分の電話を自動の案内に移せる計算です。

手順2 自動で完結できる用件を1つ選んで始める

次に、手順1の表の上位から、自動で完結できる用件を1つ選びます。件数が多く、答えや聞き取る項目が決まっている用件ほど、最初の対象に向いています。

件数が多い用件なら、1つだけでも効果は小さくありません。日本予防医薬株式会社は、年間7万件の解約電話のうち40.9%を完全自動処理で完結できるようになり、年間3,800時間の削減につなげました(導入事例:日本予防医薬株式会社)。

手順3 時間外・混雑時だけ自動にするところから始めてもよい

日中の電話はこれまでどおり人が受け、受付時間外と混雑時だけを自動にする始め方もあります。万田発酵株式会社も、あふれ呼対策から始め、いまは深夜帯の受付を中心に使っています(導入事例:万田発酵株式会社)。お客様の目に触れる範囲が限られるため、社内の合意もとりやすい方法です。

手順4 3つの数字で効果を見て、ガイダンスを直す

始めたあとは、「自動で完結した割合」「人に代わった割合」「つながらなかった電話の数(放棄呼)」の3つを毎月見ます。数字が思うように動かないときは、次の表で原因と打ち手を探してください。

起きていること 考えられる原因 直し方
自動で完結する割合が
上がらない
選択肢が実際の用件と合っていない、
登録した答えが足りない
人に代わった電話の用件を数え、
多いものから答えと選択肢を足す
ガイダンスの途中で
切れる電話が多い
最初の案内が長い、
選択肢が多い
最初の案内を短くし、
選択肢を絞る
人に代わったあと、
用件を聞き直している
聞き取った内容が
担当者に渡っていない
転送と同時に、聞き取った内容を
画面やメールで担当者に渡す
体調や異物の申し出が
「そのほか」に入っている
最初の選択肢が目立たない、
人へ回す言葉が足りない
安全に関わる選択肢を最初に移し、
人へ回す言葉を足す
「人と話したい」という
声が増えた
担当者につながる番号が
分かりにくい
最初の案内で、
担当者につながる番号を伝える

よくある質問

Q. お客様相談室の電話は、どこまでAIに任せてよいですか?

取扱店・キャンペーンの案内や、確認済みの固定文による成分情報の案内は自動で完結できます。住所変更などは電話での受付まで自動にでき、変更の処理には担当者か社内システムとの連携が必要です。返品・交換や使い方の相談は入口の聞き取りだけを任せ、健康被害・異物混入・強い苦情は営業時間内に人へ優先してつなぎます。


Q. 健康被害の申し出を、AIが聞き逃すことはありませんか?

AIの聞き逃しをゼロにはできません。最初の選択肢に「お体の不調や異物のお申し出」を置き、営業時間内に関連する言葉が出た場合や聞き取れない場合も人へ回します。時間外に自動で受けるなら、担当者への通知と緊急時の連絡体制を用意します。


Q. 苦情の電話も自動で受けてよいですか?

苦情への対応そのものは、人の役割です。混雑時や時間外に、苦情の内容と連絡先を自動で聞き取り、担当者が折り返す形にすることはできます。聞き取った内容を担当者が先に読んでから電話をかけられるため、お客様に同じ説明を繰り返させずに済みます。


Q. 高齢のお客様が多くても自動化できますか?

できます。話す方式だけでなく番号を押す方式でも進められるようにし、人につながる番号も最初の案内に必要です。株式会社電話放送局が50〜70代の男女241名に行った調査では、70.5%が「人よりボイスボットの方が話しやすいシーンがある」と回答しています。相談の内容と本人の希望に合わせて、方法を選べるようにします。


Q. 営業時間外だけ自動にすることはできますか?

できます。日中はこれまでどおり人が受け、受付時間外だけ自動で用件と連絡先を聞き取り、通常の問い合わせは翌営業日に折り返す使い方です。万田発酵株式会社は、深夜帯の電話を自動で一次受けし、時間外の入電の半数以上を一次受け対応できています。健康や安全に関わる申し出には、別途緊急連絡の流れを決めておきます。


Q. 今のフリーダイヤルの番号のまま導入できますか?

DHK CANVASは、いまお使いの0120・0800・0570番号からの転送着信に対応しています。パッケージやWebサイトに載せた番号を変えずに、自動の受付を始められます。転送の設定など、詳しい進め方はお問い合わせください。


Q. 導入までどのくらいかかりますか?

DHK CANVASの公式ページでは、最短約2週間で利用を始められると案内しています。自動化する用件の数や、聞き取る項目、社内システムとの連携の有無によって期間が前後するため、詳しくはお問い合わせください。まずは1つの用件か時間外の受付から始めると、準備の範囲を小さくできます。

最後に、お客様相談室の自動化についてよくある質問に回答します。

まとめ

お客様相談室では、確認済みの答えを案内する問い合わせを自動にし、住所変更などは電話受付まで自動化が可能です。判断や相談が要る用件は入口の聞き取りだけを自動にし、健康被害・異物混入・強い苦情は営業時間内に人へ優先してつなぎます。時間外に自動で一次受付するなら、担当者への通知と緊急時の連絡体制が必要です。この分け方なら、人の時間を判断や相談が要る電話に回せます。

最初の一歩は、直近1か月の電話を用件ごとに数え、自動で完結できる用件を1つ選ぶことです。あわせて、体調や異物の申し出を最初の選択肢に置くガイダンスを用意しておくと、自動化しても大事な申し出を取りこぼしにくくなります。

株式会社電話放送局の電話自動化サービスの導入実績は、1,500社以上です。用件の分け方からガイダンスの設計、時間外の受付まで、ご相談いただけます。メーカーや通信販売の消費者対応部門の使い方は、導入事例もあわせてご覧ください。

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監修者情報

メーカーのコールセンター運営管理に従事し、自らIVRを導入。
不要な入電を抑制しつつ売上向上を実現するなど、現場視点で成果を創出。電話放送局では営業マネージャーとして10年以上従事し、クラウド型IVRの業界シェア1位獲得に貢献。
コロナ禍におけるユーザーのデジタル行動変容を受け、マーケティング部門を立ち上げ、責任者に就任。インサイドセールスを統括し、営業部門との連携を強化。自動音声応答の導入、運用、集客、営業の幅広い経験を有する。
IVRおよびコールセンター市場における20年以上の知見を活かし、ユーザーの検索行動やニーズを深く理解したマーケティング戦略を展開。
検索連動広告の運用経験を基に、現場で役立つ実践的な情報を発信し、読者のビジネス成功を力強くサポートします。

監修者 前田泰延(株式会社電話放送局) 営業部 営業企画・推進チーム シニアリーダー 前田泰延

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