2026/10/12

コールセンターのトークスクリプト例文|場面別テンプレートと作り方5ステップ

「新人に渡すトークスクリプトを作るよう言われたが、どこまで書けばいいのか分からない」「台本はあるのに、現場では誰も見ていない」。コールセンターの運営を任された方から、こうした声をよく聞きます。コールセンターのトークスクリプトとは、お客様との通話を始めから終わりまで、場面ごとに「何をどう話すか」を書いた台本のことです。使える台本にする要点は、オペレーターの一言だけでなく、お客様の返答によって次に何を言うかの分かれ道まで書いておくことにあります。本記事では、受電の第一声・注文・解約・クレーム・保留と折り返し・発信の6場面の例文を表でまとめ、作り方の5ステップと、同じ台本をIVRやボイスボットの自動応答に移す方法まで解説します。例文の表は、記事の中ほどにある「場面別」の章です。

目次

・コールセンターのトークスクリプトとは?

・トークスクリプトの基本構成は?3つのパートと7つの要素

・【場面別】コールセンターのトークスクリプト例文

・トークスクリプトの作り方5ステップ

・現場で使われるトークスクリプトにする4つのコツ

・トークスクリプトが機能しないときは何を直す?

・トークスクリプトはIVR・ボイスボットのシナリオにそのまま使える

・よくある質問

・まとめ

コールセンターのトークスクリプトとは?

コールセンターのトークスクリプトは、通話の流れに沿って、オペレーターが話す言葉と、お客様の返答に応じた次の対応を書いた台本です。誰が電話を取っても同じ内容・同じ品質で応対できるようにすることが、いちばんの目的になります。ここでは、似た資料との違いと、台本の2つの書き方を整理します。

マニュアル・コールフロー・FAQとの違い

トークスクリプトは、コールセンターで使う資料の一部です。業務全体のルールを書いたコールセンターマニュアル、電話がどの窓口や処理に進むかを示すコールフロー、よくある質問と回答をまとめたFAQと並べると、役割の違いが分かりやすくなります。

資料 書いてあること 使う場面
トーク
スクリプト
通話の中で話す言葉と、
お客様の返答ごとの次の一言
通話中に画面や手元で見ながら話す
マニュアル 業務の手順、社内ルール、
システムの操作方法、言葉遣い
研修や、判断に迷ったときに調べる
コールフロー 着信から完了までの
電話の流れと分岐
窓口の設計や、IVRの
メニューを決めるとき
FAQ よくある質問と
その回答
回答の中身を確かめるとき、
お客様が自分で調べるとき

マニュアルが「何をするか」を決める資料だとすれば、トークスクリプトは「それをどう話すか」を決める資料です。言葉遣いの基本はコールセンターの言葉遣い一覧、一般の会社の電話応対の例文は電話対応マニュアルの作り方で紹介しています。本記事では、コールセンターの通話そのものを台本にする方法に絞って解説します。

トークスクリプトがあると何が変わる?

いちばん大きく変わるのは、応対の差が人によって開かなくなることです。経験の長いオペレーターと入ったばかりのオペレーターが、同じ順番で同じことを確認するため、確認漏れや言い間違いが減ります。

新人の立ち上がりも早くなります。研修で台本の流れを覚えておけば、デビュー直後でも「次に何を聞けばいいか」で手が止まりません。経験者がつきっきりで隣に座る時間も短くて済むため、教える側の負担も軽くなります。

もう1つは、通話時間がそろうことです。聞く順番が決まっていると、同じ質問を2回したり、確認し忘れて折り返したりする場面が減ります。結果として平均処理時間(AHT)のばらつきが小さくなり、人員の計画も立てやすくなります。

読み上げ型と要点型の2つの書き方

トークスクリプトには、話す言葉を一字一句書く「読み上げ型」と、伝える要点だけを書く「要点型」があります。どちらが正しいかではなく、場面によって使い分けるのが一般的です。

読み上げ型が向いているのは、言い間違えると困る場面です。本人確認の前置き、料金や解約条件の説明、録音の告知などは、誰が話しても同じ文言にしておく必要があります。一方、要点型は、雑談に近い会話や、お客様の話を聞きながら進める相談で力を発揮する書き方です。一字一句を決めてしまうと棒読みに聞こえやすいため、「必ず伝えること」と「確認すること」だけを決め、言い回しはオペレーターに任せます。

トークスクリプトの基本構成は?3つのパートと7つの要素

トークスクリプトは、通話の始まりの「オープニング」、用件に対応する「メイン」、締めくくりの「クロージング」の3つのパートで組み立てます。さらに細かく分けると、どの業務でも共通する7つの要素になります。まずはこの型を、自社の台本の骨組みとして使ってください。

トークスクリプトの基本構成。オープニング・メイン・クロージングの3つのパートと、第一声から締めの名乗りまでの7つの要素を示した図

パート 要素 台本に書いておくこと 基本の一言
オープニング 1. 第一声と名乗り 社名・窓口名・担当者名、
録音の告知
「お電話ありがとうございます。
〇〇株式会社 お客様センターの
△△でございます」
オープニング 2. 本人確認 確認する項目と順番、
確認できないときの対応
「ご登録のお電話番号を
伺ってもよろしいでしょうか」
メイン 3. 用件の聞き取り 最初に聞く質問、
用件ごとの分かれ道
「本日はどのような
ご用件でしょうか」
メイン 4. 回答と手続き 用件ごとの説明文、
答えてはいけないこと、
上席に代わる基準
「〇〇の件でございますね。
ただいまお調べいたします」
クロージング 5. 復唱と確認 復唱する項目(日付・金額・
住所・連絡先)
「念のため復唱いたします。
〇月〇日に〜でよろしいでしょうか」
クロージング 6. ほかの用件の確認 聞き忘れを防ぐひと言 「ほかにご不明な点は
ございませんか」
クロージング 7. お礼と名乗り 締めの言葉、再度の名乗り、
切るタイミング
「本日は〇〇株式会社の△△が
承りました。ありがとうございました」

オープニング:第一声と名乗り、本人確認

オープニングで決めておくのは、名乗りの文言と本人確認の順番です。第一声は、社名と窓口名を最初に言い切るとお客様が安心します。「〇〇株式会社 お客様センターの△△でございます」のように、かけた先が合っているかがすぐ分かる形にしてください。

本人確認は、確認する項目と順番を台本で固定します。電話番号→お名前→生年月日のように順番が決まっていれば、オペレーターごとに聞き方が変わることはありません。確認が取れなかったときの言い方も、同じ場所に書いておきます。

メイン:用件の聞き取りと回答

メインのパートは、台本の中でいちばん分岐が多い部分です。「本日はどのようなご用件でしょうか」と聞いたあと、注文・変更・解約・問い合わせなど、用件ごとに別の台本へ進む作りにするのが基本です。用件を聞いたら、まず要点を短く言い返して受け止めると、お客様は「伝わった」と感じます。

回答の部分には、説明する文言と一緒に「ここから先は答えない」線も書いておきます。契約の解釈、返金の可否、他社との比較など、オペレーターが判断してはいけない内容は、上席や担当部署に代わる基準とセットで示してください。

クロージング:復唱と締めの一言

クロージングでは、受け付けた内容を復唱してから締めます。日付・金額・住所・連絡先のように、間違えるとやり直しになる項目は、必ず声に出して確認する項目として台本に入れておいてください。

最後に「ほかにご不明な点はございませんか」と聞き、名乗り直してお礼を言います。お客様が切ったのを確かめてから受話器を置く、といった動作のルールも、ここに一行添えておくと抜けません。

【場面別】コールセンターのトークスクリプト例文

ここからは、コールセンターでよくある6つの場面の例文を表で紹介します。各表は「場面」「オペレーターの一言」「お客様の返答で変わる次の一言」の3列で、左から読むと通話の流れになります。〇〇は社名、△△は担当者名、□□は商品名に置き換えて使ってください。

例文① 受電の第一声と本人確認

どの用件の電話でも、最初の30秒ほどは同じ流れになります。ここを全員でそろえておくと、通話の入り口で迷うことがなくなります。

場面 オペレーターの一言 お客様の返答で
変わる次の一言
第一声 「お電話ありがとうございます。〇〇株式会社 お客様センターの△△でございます」 名乗られた場合:「〇〇様でいらっしゃいますね。いつもご利用いただきありがとうございます」
用件の確認 「本日はどのようなご用件でしょうか」 話が長い場合:「〇〇の件でございますね」と要点を言い返してから次へ進む
本人確認の
前置き
「ご契約内容をお調べしますので、ご登録のお電話番号を伺ってもよろしいでしょうか」 番号が分からない場合:「それでは、ご契約者様のお名前と生年月日でお調べいたします」
本人でない
場合
「失礼ですが、ご契約者様ご本人でいらっしゃいますか」 ご家族の場合:「恐れ入りますが、ご契約内容はご本人様にのみお伝えしております。ご本人様からお電話をいただけますでしょうか」
声が
聞き取れない
「申し訳ございません。お電話が少し遠いようでございます。もう一度お願いできますでしょうか」 改善しない場合:「こちらからおかけ直ししてもよろしいでしょうか。ご連絡先を伺えますか」

本人確認で家族からの電話を受けた場合の扱いは、会社の規程によって変わります。表の文言は一例なので、どこまで家族に伝えてよいかを先に社内で決め、その結論を台本に書き込んでください。

例文② 注文・申し込み・登録内容の変更

注文や変更の受付は、聞き取る項目が多く、言い間違いや聞き間違いがそのまま手配ミスにつながります。聞く順番と復唱の場所を、台本で決めておくのが基本です。

場面 オペレーターの一言 お客様の返答で
変わる次の一言
注文内容の
聞き取り
「ご注文の商品名と数量をお願いいたします」 商品名が曖昧な場合:「お手元にカタログはございますか。商品番号でもお承りできます」
お届け日の
確認
「お届けは最短で〇月〇日になりますが、ご希望の日時はございますか」 希望日に届かない場合:「申し訳ございません。〇日のお届けが難しいため、〇日以降でご都合のよい日はございますか」
住所の
変更
「新しいご住所を、郵便番号からお願いいたします」 建物名が長い場合:「建物名とお部屋番号を、ゆっくりお願いできますでしょうか」
在庫切れ 「申し訳ございません。□□はただいま在庫を切らしております」 待てる場合:「入荷は〇月〇日の予定です。入荷しだいお送りする形でよろしいでしょうか」
復唱 「念のため復唱いたします。□□を〇個、〇月〇日のお届けでよろしいでしょうか」 訂正があった場合:「失礼いたしました。〇個に訂正いたします」と言い直して、もう一度全体を復唱する

住所や電話番号は、数字を1つずつ区切って復唱すると聞き間違いが減ります。「1」と「7」、「4」と「7」のように聞き分けにくい数字は、「いち」「なな」と読み方を決めておくのも1つの方法です。

例文③ 解約・退会の申し出

解約の電話は、引き止めの言葉を重ねすぎると、お客様の不満がかえって大きくなります。理由を一度だけ伺い、代わりの案があれば一度だけ伝える、という程度に抑えるのが無理のない形です。

場面 オペレーターの一言 お客様の返答で
変わる次の一言
申し出の
受け止め
「ご解約のご希望でございますね。承知いたしました。お手続きのためにご契約内容を確認させてください」 理由を話し始めた場合:遮らずに最後まで聞き、「さようでございましたか」と受け止める
理由の確認 「今後の参考にさせていただきたいので、差し支えなければ、ご解約の理由をお聞かせいただけますか」 話したくない様子の場合:「承知いたしました」とだけ返し、それ以上は聞かない
代わりの
案内
「お届けの間隔を延ばす、一時お休みするといった方法もございますが、いかがなさいますか」 不要と言われた場合:「かしこまりました。それではご解約のお手続きを進めます」と1回で切り替える
条件の説明 「ご解約は〇月〇日の受付分までとなり、それ以降のお届けは停止いたします」 違約金などを聞かれた場合:規約の該当箇所を読み上げ型の文言で伝える
締め 「これまでご利用いただき、ありがとうございました」 再開について聞かれた場合:「またご利用の際は、こちらの番号からいつでもお申し込みいただけます」

解約条件や違約金の説明は、言い方が人によって変わるとトラブルの元になります。この部分だけは読み上げ型にして、規約の文言と食い違わないかを法務や担当部署に確認してもらってください。

例文④ 不具合・クレームの一次対応

クレームの電話で最初に必要なのは、言い分を遮らずに聞き、お詫びの範囲をはっきりさせることです。事実が確認できていない段階で、全面的に非を認める言い方は避けます。

場面 オペレーターの一言 お客様の返答で
変わる次の一言
最初の
お詫び
「ご不便をおかけしており、申し訳ございません」 強い口調が続く場合:相づちだけを返し、話が一区切りつくまで待つ
状況の
聞き取り
「詳しく確認いたしますので、いつ頃から、どのような状態か教えていただけますか」 説明が前後する場合:「〇日から、□□が動かないということでございますね」と時系列で言い返す
対応の提示 「交換品をお送りし、お手元の品は着払いでご返送いただく形でよろしいでしょうか」 返金を求められた場合:「返金の可否は担当部署で確認いたします。〇日までにご連絡いたします」
上席への
交代
「私の判断ではお答えしかねますので、責任者に代わります。少々お待ちいただけますか」 責任者が不在の場合:「責任者から本日〇時までに折り返しご連絡いたします」
締め 「貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。担当部署にも必ず共有いたします」 同じ内容が繰り返される場合:決めておいた回数・時間で、上席に交代する

「最初のお詫び」は、お客様が困っていることへのお詫びで、会社の過失を認める言葉ではありません。どこから上席に代わるかの基準と、不当な要求を受けたときの対応は、クレーム対応の例文とNGフレーズや、義務化されたカスハラ対策とあわせて台本に書き込んでおくと、オペレーターが一人で抱え込まずに済みます。

例文⑤ 保留・転送・折り返し

保留や転送は、お客様の待ち時間が延びやすい場面です。待たせる理由と目安の時間を先に伝え、長くなりそうなら折り返しに切り替える、という順番を台本に入れておきます。

場面 オペレーターの一言 お客様の返答で
変わる次の一言
保留の前 「お調べいたしますので、1分ほどお待ちいただけますでしょうか」 急いでいると言われた場合:「では、確認でき次第こちらからお電話いたします」と折り返しを提案する
保留が
延びたとき
「お待たせして申し訳ございません。もう少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか」 待てないと言われた場合:折り返しの希望時間と連絡先を伺う
転送 「担当部署におつなぎいたします。〇〇の件と申し送りいたしますので、少々お待ちください」 担当が話し中の場合:「担当から折り返しご連絡いたします」と用件と連絡先を預かる
折り返しの
約束
「本日〇時までに、△△からご連絡いたします。おかけするお電話番号は〇〇でよろしいでしょうか」 時間の指定があった場合:「〇時以降にご連絡いたします」と時間を復唱する

転送の場面で大切なのは、「〇〇の件と申し送りいたします」の一言です。転送先で同じ説明を最初からさせると、お客様にとっては二度手間になります。折り返しの運用そのものは、コールバックの仕組みと自動化で詳しく紹介しています。

例文⑥ 発信(アウトバウンド):お支払いの確認・フォローの電話

こちらからかける電話は、相手が電話に出られる状況とは限りません。名乗ったらすぐに用件と所要時間を伝え、話してよいかを確かめてから本題に入ります。

場面 オペレーターの一言 お客様の返答で
変わる次の一言
名乗りと
本人確認
「お忙しいところ恐れ入ります。〇〇株式会社の△△と申します。□□様でいらっしゃいますか」 本人でない場合:「あらためてご連絡いたします」とだけ伝え、用件は言わない
用件と
所要時間
「先日ご購入いただいた□□の件で、3分ほどお時間をいただけますでしょうか」 都合が悪い場合:「ご都合のよい時間帯を伺えますか」と、かけ直す時間を決める
お支払いの
確認
「〇月分のお支払いが、まだこちらで確認できておりません。お手続きの状況を伺ってもよろしいでしょうか」 支払い済みと言われた場合:「行き違いでしたら申し訳ございません。お支払い日を伺ってもよろしいでしょうか」
フォローの
確認
「□□をお使いいただいて、分かりにくい点はございませんか」 不満を話された場合:例文④のクレームの台本に切り替える
締め 「お時間をいただき、ありがとうございました。失礼いたします」 今後の連絡を断られた場合:「承知いたしました。今後のご案内は控えます」と伝え、記録に残す

お支払いの確認では、本人以外に用件を伝えないことが特に重要です。家族が出た場合に「お支払いの件で」と言ってしまうと、本人の事情を第三者に知らせることになります。発信業務の全体像はアウトバウンドコールとはで解説しています。

トークスクリプトの作り方5ステップ

例文をそのまま使えるのは、どの会社でも同じ流れになる部分だけです。自社の台本は、実際の電話から作るのが近道になります。ここでは、ゼロから台本を作るときの5つのステップを順番に説明します。

ステップ1 入電理由を数えて、台本を書く場面を決める

最初に、どんな用件の電話が何件来ているかを数えます。1か月分の通話記録を用件ごとに分けると、上位の数件で全体の大半を占めていることが多いはずです。この用件の分類をコールリーズンと呼びます。

台本は、件数の多い用件から順に作るのが鉄則です。全部の用件を一度に台本にしようとすると、完成までに時間がかかり、その間に現場の状況が変わってしまいます。上位3〜5件の用件の台本ができれば、日々の電話の多くをカバーできます。

ステップ2 応対が上手な人の通話を書き起こす

次に、その用件で応対が上手なオペレーターの通話録音を聞き、書き起こします。机の上で考えた言い回しより、実際にお客様に通じた言い回しのほうが、現場で使える台本に仕上がるからです。

書き起こすときは、上手な人が「何を言ったか」だけでなく、「どの順番で聞いたか」「お客様が迷ったときに何と言い足したか」にも注目します。複数の人の録音を聞き比べると、共通している部分が台本の骨組みになり、人によって違う部分が分岐の候補になります。

ステップ3 お客様の返答で分かれる道を先に描く

台本の文言を書く前に、通話の分かれ道を図にします。「本人確認が取れた/取れない」「在庫がある/ない」「理由を話した/話さなかった」のように、お客様の返答で次の一言が変わる地点を、すべて洗い出してください。

用件の確認から注文・変更・解約に分かれ、在庫の有無や本人確認の結果によって次の一言が変わるトークスクリプトの分岐図

この図が、台本の設計図になります。分岐を先に描いておくと、「在庫がないと言われたときの言い方が書いていない」といった抜けに、文言を書く前に気づけます。電話の流れを図にする考え方は、コールフローの設計と同じです。

ステップ4 1場面1枚のテンプレートに落とす

分岐が決まったら、場面ごとに台本を1枚ずつ作ります。書式をそろえておくと、誰が書いても同じ形になり、後から直すときも探しやすくなります。次の表は、そのまま書式として使えるテンプレートです。

項目 書くこと 記入例(住所変更の場合)
場面名 どの用件の台本か 登録住所の変更
ゴール 通話が終わったときに
できていること
新住所がシステムに登録され、
次回の発送に反映される
聞く項目と順番 確認する情報を
聞く順に並べる
①登録電話番号 ②お名前
③新住所(郵便番号から)
④変更の開始時期
分かれ道 お客様の返答と、
その先の一言
発送準備中の場合:「今回分は旧住所に届くため、〜」と案内する
復唱する項目 必ず声に出して
確認する項目
新住所、変更の開始時期
答えないこと オペレーターが
判断しない内容
配送業者の個別の事情、
送料の例外対応
交代の基準 上席や担当部署に
代わる条件と連絡先
海外住所への変更、
名義の変更を伴う場合
更新日と担当 最後に直した日と、
直す責任者
2026年10月1日/SV △△

文言は話し言葉で書きます。書き言葉のまま読み上げると、「〜につきましては」「〜の旨」のような硬い表現が続き、聞いている側には頭に入りにくくなります。書いたら一度声に出して読み、息継ぎの場所で文を区切ってください。

ステップ5 ロールプレイと録音で直す

台本ができたら、オペレーター役とお客様役に分かれてロールプレイをします。お客様役には、台本の分かれ道をわざと外れる返答をしてもらい、台本に書いていない場面がないかを確かめてください。

本番で使い始めたら、録音を聞いて台本を直します。お客様に聞き返されている箇所、オペレーターが台本を飛ばしている箇所は、台本の文言が実際の会話に合っていないサインです。直した日と内容は、ステップ4の「更新日と担当」の欄に残しておきます。研修での使い方はコールセンターの研修内容も参考にしてください。

現場で使われるトークスクリプトにする4つのコツ

台本は作っただけでは使われません。通話中に目で追える形になっているかどうかで、現場での使われ方が大きく変わります。ここでは、書き方の4つのコツを紹介します。

1文を短くし、1回に聞くことは1つにする

台本の1文は、ひと息で言える長さにします。「ご住所とお電話番号とご希望のお届け日をお願いいたします」と3つを一度に聞くと、お客様はどれから答えればよいか迷い、聞き返しが増えます。「まず、ご住所をお願いいたします」と1つずつ聞くほうが、結果として通話は短く済むでしょう。

答えてはいけないことと、代わる基準を書く

新人が通話中に固まるのは、台本に書いていない質問を受けたときです。「答えてはいけないこと」と「上席に代わる基準」が書いてあれば、その場で迷わずに次の行動に移れます。「分からないことは確認してから折り返す」という逃げ道を、台本の中に明記しておいてください。

自分の言葉で話せる余白を残す

すべての文言を固定すると、どうしても棒読みに聞こえてしまうものです。必ず同じ文言で言う部分(本人確認・料金・規約)だけを読み上げ型にし、それ以外は要点型にして、相づちや言い回しはオペレーターに任せます。声のトーンや話す速さの整え方は、オペレーターの話し方を向上させるにはで紹介しています。

画面の操作と台本の順番をそろえる

通話中、オペレーターは台本を読みながら顧客管理システムにも入力しています。台本で聞く順番と、システムの入力欄の順番がずれていると、画面を行き来するたびに会話が止まります。台本を作るときは、実際の入力画面を横に置いて、聞く順番を画面に合わせてください。

トークスクリプトが機能しないときは何を直す?

台本が機能しないときは、現場で起きている症状から原因を探すのが早道です。症状ごとに、考えられる原因と台本の直し方を表にまとめました。

現場で起きていること 考えられる原因 台本の直し方
お客様に
聞き返される
1文が長い、
書き言葉のまま
ひと息で言える長さに区切り、
話し言葉に直す
通話時間が
人によって違う
聞く順番が決まっていない、
分岐が書かれていない
聞く項目と順番を固定し、
分かれ道を書き足す
保留や
折り返しが多い
よく聞かれる質問の答えが
台本にない
保留になった質問を集め、
答えを台本とFAQに足す
棒読みだと
言われる
すべてを読み上げ型で
書いている
固定する部分以外を要点型にし、
言い回しは任せる
新人が
通話中に固まる
答えてはいけないことと、
代わる基準がない
交代の条件と
「確認して折り返す」の一言を足す
誰も
台本を見ない
現場の言い回しと合っていない、
更新されていない
上手な人の録音から作り直し、
更新日と担当を決める

台本の効き目はどの数字で確かめる?

平均処理時間、保留の回数、上席への交代の件数、同じお客様からのかけ直しの件数の4つで確かめます。台本を直す前と後で比べ、直した用件だけで数字が改善していれば、その直し方は合っていると判断してよいでしょう。指標の計算方法はコールセンターのKPI一覧にまとめています。

台本を直す担当と頻度を決める

台本が使われなくなる原因の多くは、現場の変化に台本が追いつかないことです。商品や料金が変わったら、その日のうちに台本を直す担当者を決めておきます。あわせて、月に1回はオペレーターから「言いにくい箇所」「書いていない質問」を集め、まとめて直す日を設けると、台本が古くなりません。

トークスクリプトはIVR・ボイスボットのシナリオにそのまま使える

トークスクリプトは、人が話すための台本であると同時に、電話の自動応答を作るための設計図にもなります。IVR(自動音声応答)やボイスボットの「シナリオ」は、聞く項目・分かれ道・復唱・人への引き継ぎで組み立てるもので、トークスクリプトと中身はほぼ同じです。ここでは、台本を自動応答に移すときの考え方を紹介します。

オペレーターのトークスクリプトの各要素が、IVR・ボイスボットのシナリオのガイダンス・入力・振り分け・確認・転送に対応することを示した図

台本の各要素は、自動応答のどこになる?

台本の要素は、ほとんどがそのまま自動応答の部品になります。第一声はガイダンスに、用件の聞き取りはメニューや発話による振り分けに、上席に代わる基準はオペレーターへの転送条件に置き換わります。

台本の要素 オペレーターの場合 IVR・ボイスボットの場合
第一声と名乗り 社名・窓口名・担当者名を名乗る 冒頭のガイダンスで社名と
受付内容を案内する
本人確認 電話番号やお名前を口頭で聞く 番号のプッシュ入力や発話で受け付け、
登録情報と照合する
用件の聞き取り 「どのようなご用件でしょうか」 番号を選ぶメニュー、
または話した内容で振り分ける
復唱と確認 受け付けた内容を声に出して確認 聞き取った内容を読み上げる、
SMSで文字にして送る
交代の基準 判断できない内容は上席に代わる 想定外の発話や希望があれば
オペレーターに転送する
折り返しの約束 連絡先と時間を預かる 折り返しの番号と用件を録音・記録し、
翌営業日に人がかける

ステップ3で描いた分岐図とステップ4のテンプレートがあれば、自動応答のシナリオの大部分はすでにできていることになります。音声ガイダンスの文言の作り方は、電話音声ガイダンス(IVR)の作り方で例文とあわせて紹介しています。

自動応答に任せやすい場面、人に残したい場面は?

任せやすいのは、聞く項目が決まっていて、分かれ道が少ない場面です。注文の追加、配送日の変更、解約の一次受付、営業時間外の受付などがこれに当たります。反対に、お客様の相談に乗りながら判断する場面は、人の台本に残すほうが向いています。

電話放送局が50〜70代の男女241名に実施した調査では、「人よりボイスボットのほうが話しやすい場面がある」と答えた人が70.5%にのぼりました。場面別では「解約・退会の手続き」35.3%、「深夜・早朝など時間帯を気にしたくないとき」24.9%、「クレーム・苦情を伝えるとき」18.7%が上位です。一方で、人に対応してほしい場面としては「契約内容の複雑な変更があるとき」49.4%、「判断に迷っていて相談したいとき」36.1%が挙がりました(出典:コールセンター利用とAI自動応答(ボイスボット)に関する意識調査)。

台本の場面に当てはめると、例文③の解約の受付や、時間外の折り返し受付は自動応答の候補になります。例文④のクレーム対応のうち、上席に代わるような判断は、人に残す部分です。どの業務が向いているかは、ボイスボットと相性が良い業務でも整理しています。

人の台本を自動応答に書き換える4つのポイント

人の台本をそのまま自動応答に載せると、うまくいかない部分があります。人なら会話の中で自然に補えることを、自動応答では台本の側で先回りしておく必要があるためです。

選択肢と説明を絞る

人の台本では丁寧に説明できても、自動音声で長い説明が続くと、お客様は途中で迷います。前橋市 国民健康保険課の導入では、当初は「説明漏れがないように」と案内が長くなり、選択肢も増えがちでした。そこで正確さは保ったまま「あえて情報を絞り込む」方針に切り替え、不要なアナウンスを削った結果、年間約550時間の電話応対時間の削減と、自動音声で案内が完結する割合約20%につながっています(出典:前橋市の導入事例)。

聞き取った内容は文字でも確かめる

台本の「復唱」は、自動応答でも欠かせません。先の調査では、ボイスボットへの不安の1位が「自分の話した内容を正しく聞き取ってもらえるか不安」22.4%でした。株式会社ダスキンでは、音声で受け付けた内容をSMSでマイページに送り、お客様自身が確認・修正できる形にしています。エアコンクリーニングの注文の約10%を自動音声受付でカバーし、応答率は7%、サービスレベルは22.4%向上しました(出典:ダスキンの導入事例)。

人に引き継ぐときに同じことを聞かない

不安の2位は「結局オペレーターにつながるなら二度手間ではないか」22.0%でした。自動応答で聞いた用件や連絡先を、オペレーターに渡す仕組みにしておけば、この不安は解消できます。万田発酵株式会社では、営業時間外の電話でボイスボットが用件・お名前・折り返し番号を先に聞き、翌営業日に人が折り返しています。時間外の入電の半数以上をこの一次受けで対応でき、折り返し時に一から用件を聞く必要がなくなったことで、平均応対時間の短縮にもつながりました(出典:万田発酵の導入事例)。

想定外の返答には逃げ道を用意する

不安の3位は「想定されたパターン以外の用件に対応できないのではないか」19.5%です。人の台本の「交代の基準」にあたる部分を、自動応答では「聞き取れなかったとき」「どのメニューにも当てはまらないとき」の転送先として必ず用意しておきます。人の手で受ける方針の業務でも、一次受けだけを自動にする方法があります。解約受付を人で行う方針の企業では、解約の申し出をIVRで一次受付して登録番号と理由をリストにし、人が折り返す形にしたことで、対象業務のコストを45%削減しました(出典:解約一次受付の導入事例)。

台本の分岐が整理されていれば、自動化はそこから始められる

台本を自動応答に移すとき、最初に必要なのは新しい設計ではありません。いま使っている台本の分岐図と、用件ごとの件数です。件数の多い用件のうち、分かれ道の少ない台本から自動応答に移せば、オペレーターは人が話すべき電話に時間を使えるようになります。

宅配水の定期配送のキャンセルや追加注文が受電の8割を占めていた企業では、その受付を自動受付IVRに移し、応答率が70%から93%に上がり、人件費を40%削減しています(出典:定期配送の受付の導入事例)。自動応答の仕組みそのものは、ボイスボットとはで解説しています。

よくある質問

Q. トークスクリプトとマニュアルは別々に作るべきですか?

別々に作り、互いに参照できるようにしておく形が使いやすくなります。マニュアルは業務の手順やルールを調べるための資料で、トークスクリプトは通話中に見ながら話すための資料なので、求められる読みやすさが違うためです。台本の中に「詳しくはマニュアル〇ページ」と参照先を書いておくと、両方を行き来しやすくなります。


Q. トークスクリプトはどのくらいの分量にすればよいですか?

1つの用件につき、画面1枚か紙1枚に収まる分量が目安です。それ以上長くなる場合は、用件を分けるか、説明部分をFAQやマニュアルに移します。通話中に目で追えない台本は、どれだけ丁寧に書いても使われません。


Q. 新人とベテランで同じトークスクリプトを使ってもよいですか?

同じ台本を使い、見る範囲を変えるのが現実的です。新人は文言まで見ながら話し、ベテランは分かれ道と答えてはいけないことだけを確認する、という使い方ができます。台本を2種類に分けると更新の手間が倍になり、内容がずれる原因にもなります。


Q. トークスクリプトの例文をそのまま使っても問題ありませんか?

第一声や保留の前置きのように、どの会社でも同じ流れになる部分はそのまま使えます。ただし、料金・解約条件・本人確認の範囲は会社ごとに違うため、自社の規約に合わせて書き換えが必要です。書き換えた文言は、法務や担当部署に一度確認してもらうと安心です。


Q. トークスクリプトはどのくらいの頻度で見直せばよいですか?

商品・料金・規約が変わったときはその日のうちに、それ以外は月に1回を目安に見直します。月次の見直しでは、保留になった質問や、オペレーターが言いにくいと感じた箇所を集めて反映してください。更新日と担当者を台本に書いておくと、古い台本が使われ続けるのを防げます。


Q. 作ったトークスクリプトをIVRやボイスボットに使うには何が必要ですか?

用件ごとの分岐図と、聞く項目の一覧があれば、自動応答のシナリオの土台になります。そのうえで、選択肢を絞る、聞き取った内容を復唱する、想定外の返答をオペレーターに転送する、といった自動応答向けの調整を加えます。どの用件から自動化するかは、件数が多く分かれ道の少ないものから選ぶのが基本です。

まとめ

使われるトークスクリプトかどうかの分かれ目は、オペレーターの一言だけでなく、お客様の返答ごとの次の一言まで書けているかどうかです。第一声・本人確認・復唱のように全員でそろえる部分は読み上げ型で固め、相談や雑談に近い部分は要点型にして、言い回しはオペレーターに任せます。

最初の一歩として、直近1か月の電話を用件ごとに数え、件数の多い3つの用件について、上手な人の録音から分岐図を描いてみてください。その分岐図は、オペレーターの台本にも、IVRやボイスボットのシナリオにもそのまま使えます。株式会社電話放送局では、コールリーズンの分析からシナリオの設計、運用後の改善まで伴走しています。自動応答をどう組み込んでいるかは、導入事例もあわせてご覧ください。

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監修者情報

メーカーのコールセンター運営管理に従事し、自らIVRを導入。
不要な入電を抑制しつつ売上向上を実現するなど、現場視点で成果を創出。電話放送局では営業マネージャーとして10年以上従事し、クラウド型IVRの業界シェア1位獲得に貢献。
コロナ禍におけるユーザーのデジタル行動変容を受け、マーケティング部門を立ち上げ、責任者に就任。インサイドセールスを統括し、営業部門との連携を強化。自動音声応答の導入、運用、集客、営業の幅広い経験を有する。
IVRおよびコールセンター市場における20年以上の知見を活かし、ユーザーの検索行動やニーズを深く理解したマーケティング戦略を展開。
検索連動広告の運用経験を基に、現場で役立つ実践的な情報を発信し、読者のビジネス成功を力強くサポートします。

監修者 前田泰延(株式会社電話放送局) マーケティング責任者 営業部営業推進課 課長 前田泰延

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