2025/12/24

コールセンター運営において、「AHT(平均処理時間)」は生産性や業務効率を測る代表的な指標のひとつです。AHTを適切に管理・改善することは、顧客満足度の維持・向上だけでなく、コスト削減やオペレーターの負担軽減にもつながります。
一方で、「AHTがなかなか短縮できない」「時間を縮めると応対品質が下がってしまう」といった悩みを抱える管理者も少なくありません。AHTは単に短ければ良い指標ではなく、応対品質とのバランスが重要です。
この記事では、AHTの意味や計算式といった基礎知識から、数値が長くなりやすい主な要因、実務に活かせる具体的な改善策までを解説します。

目次

コールセンターのAHT(平均処理時間)とは?

 ・AHTの構成要素

 ・AHTの計算式

コールセンターにおけるAHTの目安・目標設定の考え方

 ・AHTの目安を知る

 ・自社に合ったAHT目標を設定する

コールセンターのAHTが長くなる原因は?

 ・オペレーターのスキル・ナレッジが不足している

 ・オペレーターが担う業務が多い

 ・業務内容が複雑・難易度が高い

 ・システムやルールが複雑で使いにくい

コールセンターのAHTを改善するには?

 ・回答マニュアルやFAQを整備する

 ・オペレーター教育を強化する

 ・顧客情報システムを整備して確認時間を短くする

 ・音声認識サービスを利用して入力作業を自動化する

AHT改善におけるボイスボットの役割とは?

 ・事前ヒアリングによる「通話時間」の短縮

 ・システム連携による「後処理時間」の削減

 ・定型業務の自動化で「有人対応リソース」を最適化

AHT改善・業務効率化の成功事例

自動化ツールの活用で、コールセンターのAHT改善と品質向上を実現しましょう

コールセンターのAHT(平均処理時間)とは?

AHT(Average Handling Time:平均処理時間)は、1件の問い合わせについて、オペレーターが対応を開始してから完了するまでにかかった平均時間を示す指標です。AHTはオペレーター個人の対応スピードを見るだけでなく、入電予測と組み合わせることで「どの時間帯に何人配置するか」「どのようなシフトを組むか」といった人員計画にも活用されます。

AHTの構成要素

AHTの主な構成要素は、オペレーターが1件の問い合わせを処理するのにかかる「通話時間」と「後処理時間」の2つです。

・    ATT(Average Talk Time:平均通話時間)
顧客と実際に通話している時間の平均(保留時間も含めるケースが一般的)

・    ACW(After Call Work:平均後処理時間)
通話終了後に、対応履歴の入力やメール送信、システム登録などを行う時間の平均

これらを合計することで、「1件の問い合わせを処理するためにかかった総時間の平均」を表せます。

AHTの計算式

AHTは、一定期間における各時間の合計を、応答件数で割ることで求められます。

<AHTの計算式>
AHT=(通話時間の合計(保留時間含む)+後処理時間の合計)÷応答件数

<具体例>
ある時間帯の実績が次の通りとします。

・    通話時間合計(保留時間を含む):420分
・    後処理時間合計:280分
・    応答件数:100件

この場合、総時間は「420分+280分=700分」となり、AHTは「700分÷100件=7分」と算出できます。

コールセンターにおけるAHTの目安・目標設定の考え方

AHTには一般的な目安がありますが、業種や業務内容によって適正値が大きく異なります。自社の実態に合った目標設定のポイントを解説します。

AHTの目安を知る

コールセンター全体のAHT目安として「6〜7 分程度」が参考値として挙げられることが多いですが、これはあくまで一例にすぎません。
例えば、通販の注文や住所変更といった定型業務では比較的短時間で対応可能ですが、操作案内や故障対応などの複雑な業務では15分以上かかる場合もあります。そのため、一般的な数値だけでなく、業界平均や自社の過去実績を基に判断するのが現実的です。

自社に合ったAHT目標を設定する

自社に適したAHT目標を設定するには、まず現状のAHTを「通話・保留・後処理」の内訳ごとに分解し、「どこに無駄があるか」「どこを短縮できそうか」を分析することから始めます。

その際、AHTの数値だけを無理に下げようとするのは禁物です。焦ったオペレーターによる説明不足が原因で再入電が増えたり、「対応が雑だ」といったクレームを招いたりすると、結果として全体のコール数が増加して本末転倒な結果になってしまいます。目標設定時は、初回解決率(FCR)・顧客満足度(CS)・品質評価など他のKPIとのバランスを考慮し、無理のない値を定めましょう。

コールセンターのAHTが長くなる原因は?

AHTが想定よりも長くなる場合、業務フローや環境に何らかの課題が潜んでいます。主な原因として、以下の4点が考えられます。

オペレーターのスキル・ナレッジが不足している

顧客からの専門的な質問に即答できない場合、確認作業や説明が長引いてしまいます。また、要点を整理して伝える力が不足していると、会話が脱線しやすく通話時間が延びる原因になります。会話の主導権を握れず、顧客主導で話が広がってしまうケースもAHT延長の典型例です。

オペレーターが担う業務が多い

通話中の複数システム確認、通話後の詳細日報入力、関連部署への連絡など付帯業務が多いと、当然ながら全体時間は延びてしまいます。特に後処理の入力項目が多すぎる場合、1件あたりの処理時間が大幅に増加します。業務分担の見直しがないと、オペレーターの疲労も蓄積し、作業効率の低下につながりかねません。

業務内容が複雑・難易度が高い

トラブル対応や契約変更など確認事項が多い業務では、どうしても保留時間が長くなる傾向があります。さらに、FAQやマニュアル整備が追いついておらず、上長や他部署への確認が都度必要な状況が慢性化しているときもAHTは長くなりやすいです。

システムやルールが複雑で使いにくい

CRMや検索システムの入力項目の多さ、煩雑な画面遷移、動作の重さが操作時間を増やす要因となります。また、情報を探すために複数の画面を行き来する必要があると通話中の保留が増えます。システム改善が進まないと、後処理時間のロスも継続的に発生しやすくなるでしょう。

コールセンターのAHTを改善するには?

AHT改善には、オペレーター教育によるスキルアップだけでなく、仕組みやツールの活用が効果的です。

回答マニュアルやFAQを整備する

通話時間(ATT)が長い場合、まずは対応手順の標準化が有効です。トークスクリプトやFAQを整備・更新することで、ベテランと新人の対応差を縮め、通話時間のばらつきを抑える効果が期待できます。

オペレーター教育を強化する

傾聴力・要約力・トークコントロールといったスキルを、定期研修やモニタリングでトレーニングしましょう。これにより、要点を押さえた会話ができるようになり、短時間で顧客が納得できる応対が可能になります。

【参考記事】
コールセンターの研修内容は?入社時と定期的の研修が重要な理由

顧客情報システムを整備して確認時間を短くする

CTIシステムを活用して着信時に顧客情報・購入履歴をポップアップ表示し、検索や確認の時間を短縮します。あわせて、画面遷移の簡素化や入力項目の見直しを行うことも、即効性のある対策です。

音声認識サービスを利用して入力作業を自動化する

通話内容を自動で文字起こしし、対応履歴の作成やシステム入力を支援するツールを活用します。これによりメモを取る時間を減らせるため、通話中だけでなく後処理業務の効率化も図れます。

【参考記事】
コールセンターにおける音声認識サービスとは?機能や活用のメリット

AHT改善におけるボイスボットの役割とは?

近年、AHT改善の手段として注目されているのがボイスボットです。ボイスボットは通話時間や後処理時間の削減だけでなく、有人対応件数の最適化にも貢献します。

事前ヒアリングによる「通話時間」の短縮

ボイスボットを導入すると、オペレーターにつながる前に自動で「本人確認(名前や電話番号)」や「問い合わせの用件」をヒアリングすることが可能です。オペレーターは、画面上で顧客情報や用件を把握した状態から通話をスタートできるため、冒頭の聞き取りにかかる時間をカットできます。スムーズに本題に入れるため、結果としてATTの短縮につながりやすくなります。

システム連携による「後処理時間」の削減

ボイスボットが聞き取った情報は、API連携などによってCRMへ自動入力することができます。これにより、オペレーターが通話終了後に手動で入力する項目が減り、ACWの削減が期待できます。また、手入力によるミスも防げるため、確認や修正にかかる工数削減にも効果的です。

【参考記事】
ACWとは?対応時間の短縮でコールセンターの業務を効率化

定型業務の自動化で「有人対応リソース」を最適化

「予約の変更」「資料請求」「FAQで解決できる質問」などの定型的な問い合わせは、ボイスボットだけで完結させることも可能です。単純な手続き業務がボイスボット側に移行すれば、オペレーターは「複雑な相談」や「クレーム対応」に集中できる環境が整います。これにより、センター全体のAHT効率が向上するだけでなく、顧客一人ひとりに寄り添った対応が実現できるでしょう。

【参考記事】
ボイスボットと相性が良い業務は?プッシュ操作との棲み分けや選び方

AHT改善・業務効率化の成功事例

実際にボイスボットを活用し、AHT改善に成功した事例をご紹介します。

<課題>
ある企業では、繁忙期と閑散期の入電数に大きな差があり、オペレーターの人員確保やシフト調整が課題となっていました。また、解約手続きやその後の処理に多くの時間を要しており、AHTの短縮と業務効率化が急務でした。

<導入した解決策:DHK CANVAS>
そこで、電話放送局の「DHK CANVAS」を導入し、以下の対策を行いました。

・    解約理由などの聞き取りをボイスボットで自動化
・    聞き取ったデータをRPA(業務自動化ロボット)と連携させ、基幹システムへの照合・登録作業も自動化
・    生成AIを活用し、顧客の自由な発言(解約理由など)をシステム管理用の分類コードへ自動変換・要約

<成果>
この取り組みにより、解約に関する電話の約4割を自動化することに成功し、年間で約3,800時間もの業務時間を削減しました。また、注文受付業務においても、オペレーター対応と同等の品質を維持しながらコストの25%削減を達成しています。

「ボイスボット×RPA×生成AI」の連携によって、解約受付から後処理までの一連のフローが自動化され、AHTの短縮と電話対応業務全体の効率化に大きく貢献しています。

【参考事例】
DHK CANVASと生成AI、RPAの連携で電話対応を効率化!年間3,800時間削減を実現

自動化ツールの活用で、コールセンターのAHT改善と品質向上を実現しましょう

AHTを本質的に改善するには、人が対応すべき業務と自動化できる業務を切り分けることが重要です。
電話放送局のボイスボットサービスを活用すれば、一次受付や定型業務を自動化でき、オペレーターは難易度の高い問い合わせに集中できるようになります。これにより、AHTの短縮と応対品質の向上という、一見相反する課題の両立を図りやすくなります。
AHT改善や業務効率化に役立つ、電話放送局の代表的なサービスは以下の通りです。

・とりつぎ君(用件振分・情報案内)
とりつぎ君は、顧客の発話内容からAIが用件を判別し、適切な部署・担当者へ自動で振り分けるIVR機能を備えたコールルーティングサービスです。既存の電話番号を変えずに導入でき、代表電話や窓口への「とりつぎ負荷」を軽減します。

とりつぎ君

・DHK CANVAS
DHK CANVAS は、Web管理画面からノーコードで直感的にコールフローを設計・編集できるシナリオ型ボイスボットです。一次受付、予約受付、店舗案内など複数の業務を1つの契約で運用可能で、レポートを見ながら現場主導で素早くフロー改善を回すことができます。

DHK CANVAS

これらの自動化ツールを活用してAHTの改善と応対品質の向上を同時に実現し、コールセンター運営の持続的な効率化につなげていきましょう。

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