2026/11/02

IVRのAPI連携でできること|CRM・基幹システムとのつなぎ方と3社の事例

「ボイスボットを入れたいので、今使っているCRMとつながるか調べてほしい」「ベンダーから『API連携できます』と言われたが、どこまで自動になるのか分からない」。IVRと既存システムがAPI連携でどこまでつながるかは、①何で顧客を特定するか、②どのデータを読みに行くか、③受け付けた内容をどこへ書き込むか、の3点で決まります。APIがあれば電話の最中にデータを読み書きでき、社外とつなげない環境でも、必要なデータを定期的に受け渡す方法でつなぐことは可能です。
本記事では、電話1本の中でデータがどの順番で動くかを整理したうえで、連携の4つの型、APIが使えない環境でのつなぎ方、SalesforceやkintoneなどのCRMとのつなぎ方を説明します。株式会社電話放送局のIVRで実際に社内システムとつないだ3社の事例と、ベンダーに確認する12項目の表も載せています。12項目の表は、社内の説明資料やRFP(提案依頼書)の連携欄にそのまま使える形にしました。

目次

・IVRをCRMや基幹システムとつなぐと、電話対応の何が変わる?

・電話1本の中で、データはどう動く?

・APIが使えない社内環境でもつなげる?

・Salesforce・kintoneなどのCRMとつなぐ3つの型

・IVRと社内システムをつないだ3社の事例

・ベンダーに確認する12項目

・連携先が止まっても、電話を止めないためには?

・自社で作るか、IVRサービスとAPIでつなぐか、どう決める?

・電話放送局のIVR・ボイスボットでつなげる範囲

・よくある質問

・まとめ

IVRをCRMや基幹システムとつなぐと、電話対応の何が変わる?

いちばん大きく変わるのは、電話をかけてきた人が誰かをIVRが知ったうえで応対できることと、受け付けた内容を人が打ち直さなくてよくなることです。IVR(自動音声応答)やボイスボットは、単体でも用件の振り分けや受付はできます。ただ、顧客のデータを持たないIVRは、相手が誰なのか、どんな契約なのかを知りません。ここでは、連携しない場合とする場合で、電話の流れがどう違うかを場面ごとに比べます。

連携しない場合とする場合の違い

同じ「定期購入の追加注文」の電話でも、IVRが顧客データを読めるかどうかで、IVRが自動で終えられる範囲が変わります。場面ごとの違いを表にまとめました。

場面 連携しない場合 連携する場合
誰からの電話か 分からない。
名前や番号を録音してもらい、
あとで人が調べる
発信者番号や顧客番号で
顧客データと照合し、
その場で特定する
本人確認 オペレーターが
口頭で確認する
入力された番号を
登録データと照らし合わせ、
IVRの中で確認する
案内できる内容 営業時間や手続き方法など、
誰にでも同じ内容だけ
配送状況、契約内容、
出荷予定日など、
その人の情報を読み上げる
受付内容の入力 録音やWeb管理画面の
受付データを見て、
人が社内システムに打ち込む
IVRが受け付けた内容を
社内システムに書き込む
担当者への引き継ぎ オペレーターが
用件を最初から聞き直す
IVRで聞き取った内容と
顧客情報を添えてつなぐ
受付後の連絡 必要な人に、
担当者が手作業で連絡する
条件に合う人へ、
SMSや電話を自動で送る

連携しなくても、IVRは十分に役立ちます。ただし、受け付けたデータを人が社内システムへ打ち直す作業は残ります。通販の株式会社ハーブ健康本舗では、あふれ呼をIVRで受けていましたが、電話が増えるにつれて「IVR着信後の手動でのデータ処理に工数がかかっていました」と事例ページで振り返っています(出典:株式会社ハーブ健康本舗の導入事例)。件数が少ないうちは手入力で回っても、件数が増えると打ち直しの時間が積み上がります。

人に代わるときの「聞き直し」が減る

連携のもう1つの効果は、IVRから人へ代わるときの聞き直しが減ることです。株式会社電話放送局が2026年10月に、職場で電話対応に携わる全国の20〜60代の男女255名に行った調査では、自動音声から人に代わる電話を経験した人(203名)のうち、79.3%が何らかの困った経験を挙げました。上位は「要件を把握できていない状態で、電話に出る必要があった」34.5%、「自動音声で伝えたはずの要件を、もう一度説明する必要があった」33.0%です(出典:電話対応業務の負担と自動化ニーズに関する実態調査、発表)。

IVRで聞き取った用件と、照合した顧客情報をオペレーターの画面に渡せれば、電話に出た時点で相手と用件が分かります。この「渡す」部分が、システム連携の仕事です。

電話1本の中で、データはどう動く?

電話1本の中では、データが「照合する→読む→書き込む→知らせる」の順に動きます。IVRがどこで社内システムに問い合わせ、どこで書き込むかを分けて考えると、自社に必要な連携の範囲が見えてきます。着信から通話が終わるまでの段階と、連携の4つの型は次のとおりです。

着信、照合、案内、受付、書き込み・通知の5つの段階で、IVRと顧客管理・基幹システムの間をデータが行き来する流れの図

着信から終話までの5つの段階

例えば、通販の配送状況の問い合わせをIVRで受ける場合、電話1本の中で次の5つの段階が進みます。

1. 着信:お客様が窓口に電話をかけ、IVRが応答する 2. 照合:発信者番号や、お客様が押した顧客番号を社内システムに問い合わせ、誰からの電話かを特定する 3. 案内:特定した顧客の出荷予定日や配送状況を社内システムから読み、音声で読み上げる 4. 受付:配達日の変更や追加注文など、お客様の用件を番号や音声で受け付ける 5. 書き込み・通知:受け付けた内容を社内システムに書き込み、必要に応じて担当者への通知や、お客様へのSMSを送る

弊社の自動受付IVRのサービスページには、この流れに近い連携の例が載っています。電話番号の入力を受けると、注文システムに1回の通信で必要な情報を問い合わせ、配達件数・商品名と数量・出荷予定日・お問い合わせ番号を順に読み上げる、というコールフローです(出典:自動受付IVR)。2の照合と3の案内を、1回のAPI連携でまとめて行う形です。

APIでは、何を送って何が返ってくる?

IVRは顧客を特定する手がかりを送り、社内システムは案内に使う情報を返します。電話の最中のやりとりには、httpsで決まった形のデータを送り合うREST APIなどが使われます。下の表は一般的な例です。項目の名前や形式はIVRのサービスと社内システムによって異なるため、目安としてご覧ください。

やりとり 中身 例
IVRから
社内システムへ送る
発信者番号(ANI)や、
お客様が押した顧客番号
発信者番号「0312345678」、
顧客番号「123456」
社内システムから
IVRへ返す
顧客ID、契約の種類、
出荷予定日など、
案内に使う情報
顧客ID、定期購入、
出荷予定日「10月31日」
返るまでの
待ち時間
待ち時間の上限と、
超えたときの分岐
上限の秒数はベンダーと決め、
超えたら録音や折り返しの
予約に回す

書き込みでは、受付が終わった時点でIVRが受付内容を社内システムのAPIに送ります。通知では向きが逆になり、社内システムからの合図(Webhook)を受けて、IVRが電話の発信やSMSの送信を始める形です。

5つの段階のすべてで連携する必要はありません。照合だけ、書き込みだけ、という始め方もできます。どの段階で社内システムとやりとりするかで、次の4つの型に分かれます。

API連携の4つの型

IVRとCRM・基幹システムの連携は、データの向きとタイミングで4つの型に整理できます。表で全体を見てから、型ごとに説明します。

型 IVRがすること 使うデータ 向く業務
①着信時に照合して
振り分ける
発信者番号や顧客番号で
顧客を特定し、
案内や転送先を変える
電話番号、顧客番号、
契約の種類、
対応履歴
本人確認、
担当窓口への振り分け
②通話中に情報を
読んで案内する
社内システムから
その人の情報を読み、
音声で伝える
配送状況、契約内容、
在庫、予約の空き
配送状況の問い合わせ、
契約内容の確認
③受け付けた内容を
書き込む
注文や解約などの受付内容を
CRM・基幹システムに
登録する
受付内容、
入力された番号、
音声をテキストにしたもの
注文、解約、
住所変更、
申し込み
④社内システムから
電話をかける・SMSを送る
社内システムの条件に
合わせて、自動で発信や
SMS送信を行う
発信リスト、
送信する文面、
発信結果
督促、出荷の案内、
通話後のアンケート

①着信時に照合して振り分ける

着信と同時に、発信者番号や、お客様に押してもらった顧客番号を社内システムに問い合わせる型です。登録のある顧客かどうか、どの契約の人かが分かれば、案内を変えたり、担当の窓口へ直接つないだりできます。電話番号の登録が無いときや、お客様が非通知でかけてきたときにどう分岐するかも、ここで決めておきます。

②通話中に情報を読んで案内する

本人を特定したあと、その人の配送状況や契約内容を社内システムから読み、音声で読み上げる型です。固定の録音ではなく、その人ごとに違う内容を読み上げるため、文章を音声に変える音声合成を組み合わせます。お客様が知りたいことを聞けた時点で電話が終わるので、オペレーターにつながる件数が減ります。

③受け付けた内容を書き込む

IVRで受け付けた注文や解約、住所変更の内容を、CRMや基幹システムに登録する型です。人が受付データを見て打ち直す作業がなくなるため、入力の手間と打ち間違いが同時に減ります。ガス・ミネラルウォーターの株式会社サイサンや、通販の日本予防医薬株式会社の事例がこの型にあたります。

④社内システムから自動で電話をかける・SMSを送る

社内システム側が起点になり、条件に合う顧客へ自動で電話をかけたり、SMSを送ったりする型です。弊社のオートコール(自動発信)では、Web管理画面からCSVファイルで発信リストを登録する方法のほかに、貴社のシステムからhttps通信の「発信リスト登録API」でリストを送り、「発信リスト結果取得API」で発信結果を受け取る方法があります。システム連携によって、特定の条件下で自動的に発信させることもできます(出典:オートコールIVR)。

通話の後にSMSを送る連携もこの型に入ります。ネスレ日本株式会社では、通話後のアンケートのSMSを、オペレーターが手で送る方法からAPI連携での送信に切り替え、1件あたりの工数が2分から0分になり、送信率は100%になりました(出典:ネスレ日本株式会社の導入事例)。電話の途中や後にSMSでWebへ案内する方法は「IVR×SMSとは?」で紹介しています。

照合できないときは、どう分岐させる?

入力のやり直しに回数の上限を決め、上限を超えたらオペレーターへの転送か折り返しの予約に回すのが基本です。①の照合は、すべての電話で思いどおりに一致するとは限りません。一致しなかったときにIVRがどう動くかを決めておかないと、お客様が同じ入力を何度も求められたり、行き止まりになったりします。決めておきたいのは、次のような場合の分岐です。

  • 発信者番号が非通知、または登録の無い番号だったとき
  • 押された顧客番号が登録データと一致しないとき
  • 家族で同じ固定電話を使っているなど、1つの番号に複数の顧客が登録されているとき
  • 照合はできたが、契約が解約済みなど、受付できない状態だったとき

弊社のオートコールIVRでは、本人確認に失敗した場合にコールセンターへ転送する設定や、分岐先によっては転送せずに折り返し電話の予約を受け付ける設定ができます(出典:オートコールIVR)。分岐の描き方は「コールフローとは?」で例と一緒に紹介しています。

APIが使えない社内環境でもつなげる?

つなげます。社内のネットワークが外部とつながっていない、基幹システムが古くてAPIを持たない、社外からの通信が社内規程で認められない、といった環境でも、データの受け渡し方を変えれば連携できます。弊社の自動受付IVRやオートコールIVRのサービスページでも、「オフライン環境などの理由でAPI連携ができない場合、IVRでの受付に必要な情報を定期的にアップロードすることにより、顧客認証や商品在庫確認、受付データ、発信結果データなどの連携を実現します」と案内しています(出典:自動受付IVR)。ここでは、APIを使わない3つの方法と、APIとの選び分けを説明します。

電話の最中にIVRと社内システムがやりとりするAPI連携と、決まった時刻にデータを受け渡す定期アップロードの違いを比べた図

APIを使わない3つのつなぎ方

APIを使わない方法は、データを電話の最中ではなく、決まったタイミングでまとめて受け渡す点が共通しています。方法ごとのしくみと、向く場合を表にまとめました。

方法 しくみ 向く場合 注意すること
①照合用のデータを
定期的にアップロードする
顧客番号や在庫などの
照合に必要なデータを、
決まった時刻にIVR側へ送る
社外からの問い合わせを
受け付けられない
社内環境
アップロードの間に
変わった情報は反映されない
②受付データを
CSVで取り込む
IVRの管理画面から
受付データをCSVで
ダウンロードし、社内に取り込む
受付の件数が
まだ少ない窓口、
まず試したい場合
取り込みの作業が残る。
取り込むまで社内に
反映されない
③RPAで
画面操作を自動にする
受け取ったデータを、
RPAが社内システムの
画面に入力・照合する
基幹システムに
APIが無く、
改修も難しい場合
画面の変更で
止まることがあるため、
保守の担当を決める

①は、照合に使うデータの写しをIVR側に置いておく方法です。電話の最中に社内システムへ問い合わせないため、社内のネットワークを外に開かずに、顧客の認証や在庫の確認ができます。

②は、いちばん手軽に始められる方法です。弊社の自動受付IVRでは、受付データの確認やCSVでのダウンロードを、SSL/TLSに対応したWeb管理画面から行えます。アクセス元を固定のグローバルIPアドレスで制限することもできます(出典:自動受付IVR)。

③のRPAは、APIと組み合わせて使われることもあります。日本予防医薬株式会社では、IVRで受け付けたデータをAPIで社内システムに取り込んだあと、RPAが電話番号や顧客番号を照合してお客様を特定しています(出典:日本予防医薬株式会社の導入事例)。

なお、社外とのやりとりを専用の経路に限りたい場合は、APIをVPNで使う方法もあります。弊社のIVRでは、業務量や業務特性に応じた専用環境の提供と、VPNへの対応も可能です(出典:自動受付IVR)。

APIと定期アップロードは、どう使い分ける?

決め手は、電話の最中に最新の情報が要るかどうかです。残高、在庫、配送状況のように数分で変わる情報を案内するなら、電話の最中に読みに行くAPIが向いています。顧客番号の一覧や契約の種類のように1日に何度も変わらない情報なら、定期的なアップロードで足ります。

書き込みの方法も、同じ考え方で選べば問題ありません。受け付けた注文をその日のうちに出荷へ回すなら、受付と同時に書き込むAPIが必要です。翌営業日にまとめて処理する業務なら、受付データを1日1回取り込む方法でも業務は回ります。読みと書きで別の方法を組み合わせてもかまいません。

Salesforce・kintoneなどのCRMとつなぐ3つの型

SalesforceやkintoneなどのクラウドCRMとIVRをつなぐ方法は、大きく3つの型に分かれます。どの型で連携するかによって、開発の量も、誰が作るかも変わります。まずは表で3つの型を比べてみてください。

型 しくみ 向く会社 確認すること
用意された
連携機能を使う
電話のサービスかCRMに、
相手の製品とつなぐための
連携機能が用意されている
開発の担当がいない、
早く始めたい会社
受け渡せる項目と、
自社のCRMの設定で
使えるかどうか
コールセンター
システムを経由する
IVRで選んだ内容を、
CTIなどの仕組みを通して
オペレーターの画面に渡す
オペレーターが
CRMの画面で応対している
コールセンター
IVRの結果を
どの項目に入れて、
画面のどこに出すか
APIで
個別に作る
IVRとCRMのAPIを使い、
読む・書く処理を
自社の業務に合わせて作る
独自の項目や
業務の流れが多い会社
誰が作り、
誰が保守するか。
呼び出し回数の上限

用意された連携機能を使う

電話のサービス側か、CRM側に、相手の製品とつなぐための連携機能が用意されている場合は、設定だけで始められることがあります。開発の手間がいちばん少ない型ですが、受け渡せる項目や動きは用意された範囲に限られます。自社で独自に追加した項目に書き込みたい場合は、その項目に対応しているかを確かめてください。

コールセンターシステムを経由する

オペレーターがCRMの画面を見ながら電話を受けているコールセンターでは、IVRとCRMを直接つながず、間にあるコールセンターシステムを通す形が多くなります。電話とパソコンの画面を連動させる仕組みをCTIと呼び、着信と同時に顧客の画面を開いたり、IVRで選んだ用件を画面に表示したりするのが主な役割です。電話機の側の構成や、ACD(着信を空いているオペレーターに配る仕組み)との組み合わせは「PBXとIVRの連携方法と構成例」で紹介しています。

Salesforceの場合、パソコンで電話を受けるソフトフォンをSalesforceの画面に組み込むJavaScript APIとして「Open CTI」が長く使われてきました。ただしOpen CTIは2020年から新しい機能が追加されておらず、2028年2月28日に提供を終える予定で、Salesforceは同社の音声機能(Voice from Salesforce)への移行を勧めています(出典:Salesforce Trailhead「Prepare for Open CTI Retirement」)。これからSalesforceの画面とIVRをつなぐ場合は、2028年以降も使える方式で連携できるかを、IVRとコールセンターシステムの会社に確かめておくと安心です。

APIで個別に作る

クラウドCRMは、外部のシステムからデータを読み書きするためのAPIを公開しています。例えばkintoneでは、REST APIでレコードの取得・登録・更新・削除ができます(出典:cybozu developer network「kintone REST API」)。レコードの追加や編集、プロセス管理のステータスの更新があったときに、その内容を外部のサービスへ送るWebhookも用意されています(出典:cybozu developer network「kintone Webhook」)。IVR側のAPIと組み合わせれば、「着信したらCRMの顧客を検索する」「受付が終わったら対応履歴を登録する」といった処理を、自社の業務に合わせて作ることも可能です。自由度は最も高い一方で、作った処理の保守も自社か開発の委託先が担うことになります。呼び出せる回数の上限にも注意が必要です。Salesforceでは、直近24時間に呼び出せるAPIの合計回数に上限があり、その値は組織のエディションとライセンスの種類によって異なります(出典:Salesforce Trailhead「APIの基礎」)。電話1本ごとにCRMを呼び出す設計にする場合は、ピーク時の着信数で上限を超えないかを、CRMの管理者と一緒に確かめてください。

見積もりの前に決めておく4つのこと

どの型を選ぶ場合も、次の4つが決まっていないと、ベンダーは連携の見積もりを出せません。社内で先に整理しておくと、打ち合わせの回数を減らせます。

読むデータと書き込むデータ

IVRがCRMから読む項目と、CRMに書き込む項目を一覧にします。顧客番号、電話番号、契約の種類のような項目名だけでなく、どの画面のどの項目かまで書き出すと、開発の範囲がはっきりします。

書き込む先と書き込み方

受付内容を新しい記録として追加するのか、既存の顧客情報を上書きするのかで、作る処理が変わります。上書きする場合は、IVRの受付内容とオペレーターの入力がぶつかったときに、どちらを優先するかも決めます。

開発と保守の分担

IVR側の設定、CRM側の受け口の開発、つないだあとのテストを、それぞれ誰が担当するかを決めます。CRMの仕様が変わったときに、どちらが改修するかも合わせて決めておきます。

照合に使う項目

着信時の照合(API連携の型①)で説明したように、顧客を何で特定するかを決めます。電話番号だけで特定するか、顧客番号の入力も求めるかで、IVRの流れも変わります。

IVRと社内システムをつないだ3社の事例

ここからは、弊社のIVRと社内システムをつないだ3社の事例を紹介します。まずは、何をどうつないだかを表で比べます。

会社・業種 何をつないだか つなぎ方 結果
株式会社サイサン
(ガス・ミネラル
ウォーター)
定期配送のキャンセルと
追加注文の受付を、
基幹システムへ
IVR内で本人確認し、
受付内容を基幹システムに
自動反映
応答率70%→93%、
人件費40%削減、
受注数20%UP
日本予防医薬株式会社
(通信販売)
解約の受付データを、
社内システムへ
DHK CANVASのAPI機能で
取り込み、RPAで照合し、
生成AIで理由を分類
年間7万件の解約電話のうち
40.9%が完全自動処理、
年間3,800時間削減
株式会社ハーブ健康本舗
(通信販売)
あふれ呼IVRの受付リストを、
受電管理システムへ
自社ツールで起きていた
連携のエラーを受けて、
弊社がシステムを構築
エラー対応の工数0時間、
投資効果1000%

株式会社サイサン:受け付けた注文を基幹システムに自動反映

株式会社サイサンでは、ミネラルウォーターを定期購入している顧客からの電話のうち、定期配送のキャンセルと追加注文が受電内容全体の8割を占めていました。導入にあたっての検討ポイントには「基幹システムとの連携が可能なこと」が挙げられています。自動受付IVRでキャンセルと追加注文を受け付け、IVR内で本人確認を行い、受け付けた内容は基幹システムに自動反映される形にしました。

導入前はミネラルウォーターの平均電話応答数が16,000本/月、応答率は70%でした。導入後は有人での応答数が平均8,500本/月に減り、応答率は93%に向上しています。IVRでは平均7,000件/月を受け付けており、人件費40%削減、受注数20%UPにもつながりました(出典:株式会社サイサンの導入事例)。手配の入力を人が行わなくなったことで、人的な手配ミスも大きく減ったと事例ページに書かれています。

日本予防医薬株式会社:APIで取り込み、RPAと生成AIで仕分け

日本予防医薬株式会社では、DHK CANVASを新規注文・定期注文・解約受付の3つの業務に使っています。解約の電話では、電話番号・顧客番号・郵便番号のように正確さが要る情報はプッシュ入力で、解約理由は自由な発話の音声で受け付け、テキストに変換する形です。

取得したデータは、DHK CANVASのAPI機能で社内システムに自動で取り込まれます。その後、RPAが電話番号や顧客番号を照合してお客様を特定し、生成AIが解約理由を「余っている」「経済的な理由」といったシステムに適した項目に分類します。結果として、年間7万件の解約電話のうち40.9%が完全自動処理で完結し、年間3,800時間の削減につながりました(出典:日本予防医薬株式会社の導入事例)。API・RPA・生成AIを役割ごとに分けてつないだ例です。

株式会社ハーブ健康本舗:受電管理システムとの連携を安定させる

株式会社ハーブ健康本舗では、あふれ呼IVRで受けた電話のデータ処理に工数がかかっていたため、IVRと受電管理システムを連携させる自社ツールを開発し、IVRリストを外部委託先へ自動分配する仕組みを作りました。ところが、自社ツールと受電管理システムの間でエラーが頻発し、エラーのたびに数時間単位の復旧作業と、お客様対応の中断が起きていたといいます。

そこで、あふれ呼IVRを提供している弊社がシステムを構築する形に切り替えました。システムエラーが発生しなくなり、システム担当者のエラー対応・エラー検知にかかる工数は0時間になっています。事例ページでは、システム連携にかかる費用と比べた効果を「投資効果1000%」と表現しています(出典:株式会社ハーブ健康本舗の導入事例)。

3社に共通すること

3社とも、連携の中心は受け付けた内容を社内システムに入れる部分です。サイサンは定期配送のキャンセルと追加注文(受電内容全体の8割)、日本予防医薬は解約の受付データ、ハーブ健康本舗はあふれた電話の受付リストを、人が打ち直さずに社内システムへ入れています。どの用件から始めるかは、入電の理由を分類したコールリーズンの件数で決めると、効果の大きい順に進められるでしょう。

ほかの業種の事例は導入事例の一覧で紹介しています。

ベンダーに確認する12項目

IVRのAPI連携をベンダーに相談するときは、次の12項目を確認すると、つながるかどうかと、つないだあとの運用の両方を判断できます。左の列をそのまま質問として使えるように書いています。答えの例にある○の数字は、ベンダーに書き込んでもらう欄です。

確認すること なぜ聞くか 答えの例
1. データの受け渡し方 自社のシステムが
対応できる方式か確かめる
https通信のAPI、
ファイルの定期アップロード、
CSVダウンロード
2. IVRからできる操作 読むだけか、書き込みや
更新までできるかで、
自動にできる範囲が変わる
顧客情報の照会、
受付データの登録、
発信リストの登録
3. 照合に使う項目と、
一致しないときの動き
非通知や番号の不一致で
行き止まりにしないため
電話番号と顧客番号で照合し、
不一致が続いたら
オペレーターへ転送
4. 応答が遅いときの
待ち時間の上限
お客様を無音のまま
待たせないため
連携先から○秒以内に
応答が無ければ、用件の録音か
折り返しの予約に切り替える
5. 同時に電話が
集中したときの動き
ピーク時に連携先へ
問い合わせが集中しても
止まらないか確かめる
最大同時着信○回線。
連携先への問い合わせが上限を
超えたら、待ちの案内を流す/
照合を省いて受付だけ行う
6. 認証の方式と
キーの管理
なりすましの
通信を防ぐため
認証キーの発行と
更新の手順、
管理する担当
7. 通信の暗号化と
接続元の制限
通信の途中で
個人情報が漏れないようにするため
https通信、
固定IPアドレスでの制限、
VPN
8. IVR側に残るデータと
保存期間
社外に置かれる個人データを
把握するため
受付データと録音の
保存場所・保存期間・
消し方
9. 連携が失敗したときの
通知と再送
書き込み漏れに
すぐ気づけるようにするため
失敗時の管理者への通知、
失敗した受付の再送の方法
10. 開発とテストの分担 見積もりと
スケジュールを確定するため
IVR側の設定、
自社の受け口の開発、
つないだあとのテストの担当
11. 仕様が変わったときの
改修の窓口と費用
CRMやIVRの変更で
連携が止まるのを防ぐため
改修の相談窓口と、
費用がかかる範囲
12. 本番前に試せる環境 実際の電話で
動きを確かめてから
切り替えるため
試験用の電話番号と
試験用のデータでの確認

1〜5は「つながるか」、6〜8は「安全に預けられるか」、9〜12は「つないだあとも動き続けるか」を確かめる質問です。9と11は、つないだ時点では動いていても、CRMの項目の追加やIVRの設定変更をきっかけに問題になる項目です。ハーブ健康本舗の事例のように、エラーが起きたときに誰がどう気づき、どう直すかまで決めておくと、運用が安定します。

確認表を社内で使うときのポイント

この表は、ベンダーに聞く前に、社内の情報システム部門とコールセンターの担当者で一度埋めてみると役に立ちます。2の「IVRからできる操作」と、10の「開発とテストの分担」は、社内で答えを決めておかないとベンダーも答えられない項目です。RFPを作る場合は、表の左の列を連携の要件欄に入れ、答えの例の列を「回答してほしい内容」として書き添えると、ベンダーごとの回答を比べやすくなります。

連携先が止まっても、電話を止めないためには?

連携先のシステムが応答しないときも、IVRは電話を受け続け、用件を受け付けて人や後の処理に回す設計にしておきます。電話はお客様が今まさにかけてきているものなので、社内システムの都合で「ただいまご利用になれません」と切ってしまうと、その用件を取りこぼします。起きることと打ち手を表にまとめました。

社内システムが応答しないとき、IVRが用件の録音・オペレーターへの転送・折り返しの予約に分岐し、受付データを後で登録する流れの図

止まったときに起きることと対処法

連携のトラブルは、起きる場所によって対処法が違います。自社の窓口で起きそうなものを、表の行から探してください。

起きること 主な原因 IVRの動き(対処法)
照合の応答が返らず、
お客様が無音で待つ
社内システムの停止、
メンテナンス、
通信の遅れ
待ち時間の上限を決め、
超えたら用件の録音や
折り返しの予約に切り替える
登録のある顧客なのに
照合できない
番号の登録漏れ、
アップロードしたデータが古い
「照合できないときは」の
分岐どおりに案内する
受付は終わったのに
社内システムに入らない
書き込みの失敗、
項目の追加や変更
受付データをIVR側に残し、
管理者に通知して再送する
連携のエラーが
何度も起き、復旧に追われる
自社で作った
中継の仕組みの不具合
エラーの通知先と
復旧の手順を決める。
構築を提供元に任せる
ピーク時だけ
連携が遅くなる
連携先の
呼び出し回数の上限、
処理の能力不足
照合データを定期アップロードに
切り替える、
照合を必要な用件に絞る

止まったときの逃がし先として、オペレーターへの転送だけに頼ると、システムの停止と電話のピークが重なったときに人の側があふれます。用件の録音や折り返しの予約のように、人がその場で出なくても受付を終えられる逃がし先を用意しておくと安心です。災害やシステム障害のときの電話窓口の守り方は「コールセンターのBCP対策」で紹介しています。

個人情報の受け渡しで確かめること

IVRのサービスに顧客の個人データを渡して照合や受付をしてもらう場合、自社は預ける側として、データの安全管理に責任を持ちます。個人情報の保護に関する法律では、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じること(第23条)と、個人データの取扱いを委託する場合に委託先を必要かつ適切に監督すること(第25条)が定められています(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」)。

確認表の6〜8は、この監督の材料になります。認証キーの管理、通信の暗号化、IVR側に残るデータの保存期間を確かめ、サービス会社が取得している認証も見ておきましょう。電話でカード番号を受け付ける場合は、カード業界のセキュリティ基準であるPCI DSSへの対応も確認します。弊社のIVRでは、カード情報をIVRで取得する場合、PCI DSSに準拠した環境で運用できます(出典:自動受付IVR)。電話でのカード決済の仕組みは「IVR決済とは?」で紹介しています。

自社で作るか、IVRサービスとAPIでつなぐか、どう決める?

分かれ目は、社内に電話の仕組みを作って保守できる体制があるかどうかです。電話の仕組みから自社で作るか、IVRサービスを使って連携部分だけを作るかで、自社が持つ範囲は大きく異なります。TwilioやAmazon Connect のような、電話の機能を部品として使えるクラウドサービス(CPaaS)を使えば、IVRの流れも連携も自由に作れるのが利点です。その代わり、回線の用意、応答の流れの作り込み、障害への対応、保守までを自社で持つことになります。

IVRサービスを使う場合は、回線と応答の仕組みはサービス会社が持ち、自社が作るのは社内システム側の受け口だけです。社内に電話の仕組みを作って保守できるエンジニアがいて、独自の動きを細かく作り込みたい場合は自作も選択肢に入ります。CRMや基幹システムとのつなぎ込みに集中したい場合は、サービスを使うほうが立ち上げまでの手間を抑えられます。

電話放送局のIVR・ボイスボットでつなげる範囲

弊社のAI電話サービス「DHK CANVAS」では、APIやマスタデータの参照により、既存の顧客管理・受付システムと連携した応対ができます。聞き取った内容をそのままCRMへ自動登録する使い方や、AIで完結しない用件を、聞き取った内容を添えて担当者へ転送する使い方に対応しています。電話中や応対後のSMS送信、通話の録音、担当者へのメール通知も組み合わせられます(出典:DHK CANVAS)。

既存の電話設備や基幹システムとの連携は、「できる・できない」の見極めから技術チームが直接サポートします。SalesforceやkintoneなどのCRMとの連携も、お使いの環境と連携したい項目を伺ったうえで、つなぎ方を個別にご相談いただくことが可能です。情報セキュリティについては、ISMS(ISO27001)認証、プライバシーマーク認証、クレジットカード情報を取り扱うIVRシステムでのPCI DSS認証などを取得しています。電話自動化サービスの導入実績は1,500社以上です。

よくある質問

Q. IVRとCRMは、APIが無いとつなげませんか?

APIが無くてもつなげます。照合に必要なデータを定期的にIVR側へアップロードする方法、受付データをCSVでダウンロードして取り込む方法、RPAで社内システムの画面に入力する方法があります。電話の最中に最新の情報が要るかどうかで、APIと使い分けてください。


Q. Salesforceと連携できるボイスボットは、どう探せばよいですか?

先に、用意された連携機能を使うか、コールセンターシステムを経由するか、APIで個別に作るかのどれで連携したいかを決めてから探すと、比べやすくなります。そのうえで、読むデータと書き込むデータの一覧を各社に渡し、本記事の12項目で回答をもらってください。同じ「連携できます」でも、書き込める項目や開発の分担はサービスによって違います。


Q. 連携の開発は、IVRの会社がしてくれますか?

どこまでを担当するかは会社によって違うため、確認表の10で必ず確かめてください。弊社では、連携の「できる・できない」の見極めから技術チームが直接サポートしており、ハーブ健康本舗の事例のように、弊社がシステムの構築を担当した例もあります。社内システム側の受け口を誰が作るかは、お使いのシステムによって変わります。


Q. 今使っている電話番号のままで連携できますか?

DHK CANVASの場合は、DHK CANVASで発行する電話番号に直接つないでいただくか、現在ご利用中の電話番号から転送していただくことで利用できます。現在お使いの0120・0800・0570番号からの転送着信にも対応可能です。電話機やPBX側の構成は「PBXとIVRの連携方法と構成例」が参考になります。


Q. 連携まで含めると、導入にどのくらいかかりますか?

DHK CANVASの場合、利用開始までは最短約2週間です。ただし、CRMや基幹システムとの連携を含める場合は、連携する項目の数や、社内システム側の開発の有無によって期間は前後します。まずは照合だけ、受付データの取り込みだけというように範囲を絞ると、早く始められます。


Q. 電話の後に、SMSで手続きページを送れますか?

送れます。IVRの流れの中で条件を満たした人に自動でSMSを送る方法と、社内システムからAPIでSMSを送る方法があります。弊社のSMS送信サービスでは、貴社の顧客管理システムなどとAPIで連携して、人を介さずに自動送信できます(出典:SMS送信Web)。


Q. 生成AIのボイスボットでも、API連携の考え方は同じですか?

同じです。何で顧客を特定し、どのデータを読み、受け付けた内容をどこへ書き込むかを決めるという点は、プッシュ操作のIVRでも、自由な発話を聞き取るボイスボットでも変わりません。違いは受け付けたデータの形で、ボイスボットでは音声をテキストにした内容が入るため、日本予防医薬の事例のように、書き込む前に分類する処理を挟むことがあります。

最後に、IVRのAPI連携についてよく寄せられる質問に回答します。

まとめ

IVRのAPI連携で決めることは、何で顧客を特定するか、どのデータを読みに行くか、受け付けた内容をどこへ書き込むかの3つです。この3つが決まれば、4つの型のどれを使うか、APIでつなぐか定期アップロードでつなぐかも決まります。最新の情報を電話の最中に案内したいならAPI、1日に何度も変わらない情報なら定期アップロードで足ります。

最初の一歩として、件数の多い定型の用件を1つ選び、IVRが読む項目と書き込む項目を一覧にしてみてください。その一覧と本記事の12項目を持ってベンダーに相談すれば、つながるかどうかと、つないだあとの運用まで一度に確かめられます。弊社では、お使いのCRMや基幹システムとのつなぎ方をご相談いただけます。詳しくはDHK CANVASのページをご覧ください。

お役立ち資料 無料ダウンロード

【本資料は、下記の関心をお持ちの方におすすめです】
・自動化する業務の選定や、導入する際の考え方や手順を整理したい

監修者情報

メーカーのコールセンター運営管理に従事し、自らIVRを導入。
不要な入電を抑制しつつ売上向上を実現するなど、現場視点で成果を創出。電話放送局では営業マネージャーとして10年以上従事し、クラウド型IVRの業界シェア1位獲得に貢献。
コロナ禍におけるユーザーのデジタル行動変容を受け、マーケティング部門を立ち上げ、責任者に就任。インサイドセールスを統括し、営業部門との連携を強化。自動音声応答の導入、運用、集客、営業の幅広い経験を有する。
IVRおよびコールセンター市場における20年以上の知見を活かし、ユーザーの検索行動やニーズを深く理解したマーケティング戦略を展開。
検索連動広告の運用経験を基に、現場で役立つ実践的な情報を発信し、読者のビジネス成功を力強くサポートします。

監修者 前田泰延(株式会社電話放送局) 営業部 営業企画・推進チーム シニアリーダー 前田泰延

お役立ち資料

関連コラム

おすすめコラム

簡単・便利なIVRを体験

カテゴリー

お役立ち資料

IVRで電話業務を自動化する手法や、IVRサービス提供会社を選ぶポイントを知ることができる資料を無料提供

下記の関心をお持ちの方におすすめです!

  • コールセンターの電話業務をどこまで自動化できるのか知りたい

  • 自動化に適したコール内容を知りたい

  • IVRやボイスボット導入により、自動化に成功した事例を知りたい

IVRを活用してコールセンターを自動化する手法と成功事例

ボイスボット(IVR)で課題解決

こんな課題ありませんか?

  • 今より人は増やせない。今の体制で無理なく運用できる現場を作りたい。
  • AIに任せて大丈夫?自社に合うボイスボットの選定基準がわからない。
  • 効率化はしたい。でも、お客様に『冷たい』と思われる対応は避けたい。

お問い合わせ・資料請求はこちら

お電話からのお問い合わせ