ボイスボット導入の稟議書の書き方|記入例と効果の計算式、決裁者の質問への答え方
2026/10/30
上長に「稟議を上げて」と言われ、見積書はあるのに効果の欄が埋まらない。その欄の埋め方から書きます。ボイスボット導入の稟議書は、効果を「月の件数×1件の対応時間×自動で終わる割合(完結率)」で計算し、費用・リスク・やめる基準まで電話の数字で書くのが、一度で通る書き方です。本記事では、そのまま写せる8項目の記入例、自社の件数を入れれば年間の削減時間と金額が出る計算式、決裁者に聞かれる7つの質問への答え方を、弊社の導入事例と調査データを根拠に解説します。プッシュ操作で用件を振り分けるIVR(自動音声応答)の稟議も同じ形で書けるので、手順を変える必要はありません。
目次
・まとめ
ボイスボットの稟議が差し戻されるのはなぜ?
差し戻される稟議の多くは、決裁者が判断に使う数字が書かれていないことが原因です。ボイスボットは電話の一部を自動で受けるしくみなので、決裁者は「何件の電話が、どれだけ人の手を離れ、お客様に何が起きるのか」を知りたがります。まずは、差し戻しでよく言われる言葉から、原因と書き直し方を確かめてください。
| 決裁者に 言われたこと |
稟議書で 足りていないもの |
書き直し方 |
|---|---|---|
| 「で、いくら 浮くの?」 |
対象の件数と 1件あたりの対応時間 |
直近6か月の着信件数と平均対応時間を書き、 削減時間を計算式で示す |
| 「本当に 全部自動になるの?」 |
完結率の前提 | 完結率を2段(例:20%と40%)で置き、 元が取れる完結率と並べて示す |
| 「お客様が 怒らない?」 |
お客様への影響と 人につなぐ道 |
人に代わる条件と、 用件を引き継ぐ方法を書く |
| 「止まったら どうするの?」 |
障害時の備え | 従来の着信先へ戻す手順と、 ベンダーの冗長化の内容を書く |
| 「うまくいかな かったら?」 |
試行期間と やめる基準 |
試行の期間と、 続ける・見直す・やめるの数字を書く |
「お客様が怒らない?」「止まったらどうするの?」の2つは、聞かれてから口頭で答えるのでなく、稟議書の「リスクと対策」の欄に先に書いておきます。表のうち、電話の自動化に特有の2つを説明します。
効果が「業務効率化」の言葉だけで、件数と時間が書かれていない
「業務効率化」「顧客満足度の向上」とだけ書かれた効果の欄では、決裁者は投資の大きさと比べようがありません。効果の欄に必要なのは、対象にする電話の月間件数と、1件あたりの対応時間です。対応時間は通話の時間だけでなく、通話のあとの入力や連絡にかかる後処理の時間(ACW)も足して書きます。この2つがあれば、何時間が人の手を離れるのかを計算で示せます。
全部の電話が自動になる前提で計算している
電話の自動化で一番多い計算の誤りが、対象の電話がすべて自動で終わる前提で効果を出してしまうことです。実際には、お客様が途中で人に代わることを選んだり、想定外の用件だったりして、一部の電話は人につながります。自動で最後まで終わった電話の割合を「完結率」と呼び、効果の計算には必ずこの数字を掛けます。
完結率が低くても、効果がないわけではありません。前橋市の国民健康保険課は、年間約3万2千件の電話に対して完結率約20%で、年間換算で約550時間の業務時間を削減しています(出典:前橋市 国民健康保険課の導入事例)。稟議では「全部は自動にならない。それでもこれだけ浮く」と書くほうが、決裁者の信頼を得られます。
ボイスボット導入の稟議書|8項目の記入例
ボイスボットの稟議書は、次の8項目で組むと、決裁者が知りたいことを漏れなく書けます。ここでは、架空の通販会社のコールセンターを例に、各項目に何を書くかと記入例を示します。
記入例の前提(数字はすべて架空の例です)
記入例は、次の条件のコールセンターを想定して書いています。数字はすべて説明のための例で、弊社の導入実績ではありません。貴社で書くときは、着信レポートや見積書の数字に置き換えてください。
- 対象の電話:解約と配送日の変更の受付、月約3,000件
- 1件あたりの対応時間:通話6分+後処理2分=8分
- 1時間あたりの人件費:2,500円(給与に社会保険料と採用・教育の費用を按分して足したと仮定)
- 候補のサービス:2社に絞り込み済み、見積書を取得済み
- 見積書の金額:初期費用50万円、月額25万円(仮定)
8項目の記入例
| 項目 | 書くこと | 記入例 |
|---|---|---|
| 1 件名 | 何を・どこに・どの範囲で入れるか | 解約・配送日変更の受付電話へのボイスボット導入(3か月の試行を含む) |
| 2 導入の目的と背景 | 今の件数・時間・困っていることを数字で | 解約・配送日変更の電話は月約3,000件(直近6か月平均)、1件平均8分で、月約400時間をオペレーターが対応している。繁忙月はつながらない電話が増え、残業と応援で対応している |
| 3 対象業務と範囲 | 自動にする用件と、人が受け続ける用件 | 解約と配送日変更の受付のみ。顧客番号はプッシュ入力、解約理由は音声で聞き取る。料金の相談と苦情は従来どおりオペレーターが受ける |
| 4 導入するサービスと選定理由 | 比べた候補と、選んだ理由 | 2社を比較し、A社のサービスを選定。月の費用を件数から見込める、人に代わるときに用件が引き継がれる、今の電話番号のまま使える、の3点による |
| 5 費用 | 初期・月額・従量・通話料・社内工数 | 初期費用50万円、月額25万円(◯件まで)、超過1件あたり◯円、通話料は別途。社内工数は情報システム部10人日(見積書の数字を記入) |
| 6 効果 | 削減時間と金額、時間以外の効果 | 完結率20%で年960時間(約240万円)、40%で年1,920時間(約480万円)。あわせて、つながらずに切れた電話の割合と夜間の受付件数を月ごとに報告する。元が取れる完結率は25%(月額25万円÷月400時間×2,500円)。20%では人件費だけでは月額を回収できないため、試行で25%を超えるかを判定する |
| 7 リスクと対策 | お客様・障害・個人情報への備え | 聞き取りの誤りはSMSで内容を確認してもらう。人と話したいお客様は0番でオペレーターへ。障害時は従来の着信先に戻す。個人情報の扱いはベンダーの認証を確認済み |
| 8 スケジュールと評価・撤退の基準 | 試行の期間と、続ける・やめるの数字 | 12月契約、1〜3月に試行、4月に判定。完結率25%以上で継続、15%未満なら対象の用件を見直すか終了する |
8項目のうち、決裁者がいちばん時間をかけて読むのは「6 効果」と「7 リスクと対策」です。6の数字の出し方は次の章で、7に書く答えは「決裁者に聞かれる7つの質問と答え方」で詳しく説明します。
稟議書の本文にそのまま使える文例
社内の様式が自由記述の場合は、8項目をそのまま段落にして書けます。上の記入例を文章にした例が次の8行です。
1. 件名:解約・配送日変更の受付電話へのボイスボット導入について(3か月の試行を含む) 2. 目的と背景:解約・配送日変更の電話は月約3,000件、1件平均8分で、月約400時間をオペレーターが対応しています。繁忙月の取りこぼしと残業を減らすため、受付の一部の自動化を提案するものです。 3. 対象業務と範囲:解約と配送日変更の受付に限ります。料金の相談と苦情は、これまでどおりオペレーターが受けます。 4. サービスと選定理由:2社を比較し、件数から月の費用を見込めること、人に代わるときに用件が引き継がれることを理由にA社を選びました。 5. 費用:初期費用50万円、月額25万円、通話料は別途です。社内の作業は情報システム部で10人日を見込みます。 6. 効果:完結率20%で年960時間、40%で年1,920時間の対応時間が減る見込みです。元が取れる完結率は25%で、20%では人件費の削減だけでは月額を回収できないため、試行で25%を超えるかを確かめてから本格導入を判断します。 7. リスクと対策:人と話したいお客様は、いつでもオペレーターへ代われる設計にします。障害時は従来の着信先へ戻す手順を用意済みです。 8. スケジュールと基準:1〜3月に試行し、完結率25%以上なら継続、15%未満なら範囲を見直すか終了します。
文例の中の数字は、すべて架空の例です。貴社の着信レポートと見積書の数字に置き換えてお使いください。
自治体で起案・予算要求をする場合はどう書く?
自治体の場合は、1年目を実証実験として予算を取り、成果を確認してから本格導入に進む書き方が通りやすくなります。前橋市の国民健康保険課は、他の自治体の先行事例をきっかけに検討を始め、1年目の実証実験で成果を確信して本格導入へ移っています(出典:前橋市 国民健康保険課の導入事例)。実証実験の起案には、民間の稟議と同じ8項目に加えて、本格導入に進む判断の基準を書いておきます。
費用の欄では、制度が変わるたびに案内の流れを直す費用を見込んでおく必要があります。山口県総合交通センターは、道路交通法の改正に合わせて案内の流れの改修が頻繁に必要になるため、改修費用が何度でも無料である点を決め手にボイスボットを選んでいます(出典:山口県総合交通センターの導入事例)。予算要求の資料に載せる件数・時間の数字の集め方は、「自治体の電話対応を自動化するには?」で紹介しています。
効果の欄は「件数×時間×完結率」で計算する
効果の欄は、自社の数字を入れれば誰が計算しても同じ答えになる式で書きます。決裁者が数字を検算できるので、「その数字はどこから出たのか」という差し戻しを防げます。
年間の削減時間と金額を出す計算式
計算式は2段です。
- 年間の削減時間=対象の月間件数×1件あたりの対応時間(通話+後処理)×完結率×12か月
- 年間の削減額=年間の削減時間×1時間あたりの人件費
1時間あたりの人件費には、給与だけでなく、会社が負担する社会保険料や、採用と教育にかかる費用を按分して足します。人件費の積み上げ方は「コールセンターの費用の内訳と計算方法」で手順を紹介しました。対象の件数は、電話の用件ごとに件数を数えるコールリーズン分析で出すと、どの用件を自動にするかも同時に決まります。
日本予防医薬では、年間7万件の解約電話のうち40.9%が完全自動処理で完結し、年間3,800時間を削減しました(出典:日本予防医薬の導入事例)。この数字を式に当てはめると、完結した約2万8,600件で1件あたり約8分の対応時間が減った計算です(弊社による試算で、事例ページに記載の数字ではありません)。
完結率20%と40%で並べた試算表
完結率は、試してみるまで正確には分かりません。そこで稟議書では、低めと高めの2段で効果を並べます。記入例の前提(月3,000件・8分・時給換算2,500円)で計算すると、次のとおりです。
| 計算の段階 | 完結率20%の場合 | 完結率40%の場合 |
|---|---|---|
| 月の対象時間 (3,000件×8分) |
400時間 | 400時間 |
| 月の削減時間 | 80時間 | 160時間 |
| 年間の削減時間 | 960時間 | 1,920時間 |
| 年間の削減額 (×2,500円) |
約240万円 | 約480万円 |
数字はすべて架空の例です。完結率は、どの用件を任せるかと、案内の流れの作り方で大きく変わります。中京医薬品では、導入当初の自動化率は40%程度でしたが、案内の内容と受け付ける商品を見直した結果、電話注文の80%を自動化できるようになりました(出典:中京医薬品の導入事例)。試行の段階では低いほうの数字で判断し、改善の余地は「伸びしろ」として別に書いておくのが無難です。
何%自動で終われば元が取れる?
元が取れる完結率は、「月の費用÷(月の対象時間×1時間あたりの人件費)」で出せます。記入例の前提では月額が25万円なので、25万円÷(400時間×2,500円)=25%です。完結率が25%を超えれば、人件費の削減だけで月額を回収できます。
初期費用の回収期間は、「初期費用÷(月の削減額−月の費用)」で計算します。記入例の初期費用50万円で計算すると、完結率40%では月の削減額40万円から月額25万円を引いた15万円で割って、約3.3か月で回収できる計算です。完結率20%では月の削減額が20万円で月額を下回るため、人件費だけでは回収できません。この場合は、下の「時間で表しにくい効果の書き方」で挙げる効果をあわせて書くか、対象の用件を広げる計画を書きます。金額は説明のための仮定で、実際には見積書の数字を入れてください。
元が取れる完結率を稟議書に書いておくと、試行の判定基準もそのまま決まります。記入例の「完結率25%以上で継続」は、この計算から置いた数字です。
人につないだ電話の時間はどう扱う?
保守的に見積もるなら、人につないだ電話の削減時間はゼロで計算します。ボイスボットが先に用件や名前を聞き取ってから人に渡すと、オペレーターが一から聞く時間が減る場合があります。万田発酵では、夜間に用件と折り返し先を聞き取っておくことで、翌営業日の折り返しで一から内容を聞く必要がなくなり、平均応対時間の短縮につながっています(出典:万田発酵の導入事例)。
一方で、自動で終わる簡単な電話が減ると、人が受けるのは難しい電話ばかりになり、1件あたりの時間が伸びることもあります。このずれは「ボイスボット導入の失敗を防ぐには?」で、有人転送後の平均処理時間が伸びる問題として取り上げています。稟議書では、転送分の短縮は効果に含めず、「試行で測ってから上乗せする」と書いておくと、数字を盛っていると受け取られません。
時間で表しにくい効果の書き方
ボイスボットの効果には、削減時間に換算しにくいものもあります。換算しにくい効果も、測る指標と今の数字を書いておけば、試行のあとに比べることができるからです。指標の定義は「コールセンターのKPI一覧」で確かめられます。
つながらずに切れる電話を減らす
つながる前にお客様が切ってしまった電話(放棄呼)は、注文や問い合わせの取りこぼしです。弊社が50〜70代の241名に行った調査でも、コールセンターを利用したときに最も大きいストレスとして「電話がつながらない」を挙げた人が36.9%で1位でした(出典:株式会社電話放送局「コールセンター利用とAI自動応答(ボイスボット)に関する意識調査」)。稟議書には、今の放棄呼の件数と、繁忙期のあふれ呼の件数を書いておきます。
30秒以内に出られる割合を上げる
30秒以内に応答できた割合(サービスレベル)も、自動化の効果が表れやすい指標です。ダスキンでは、2020年と2025年度のエアコンクリーニングのお問い合わせを比べて、コンタクトセンターの応答率が7%、サービスレベルが22.4%向上しました(出典:ダスキンの導入事例)。事例ページには、Webで申し込むお客様が増えて電話の件数自体が減ったという背景も書かれています。稟議で事例の数字を引くときは、こうした条件も書いておくと、条件の違いを突かれません。
夜間・休日も受け付ける
人を置いていない時間帯の受付は、件数そのものが新しく取れる効果です。山口県総合交通センターは、365日24時間の受付を始め、1日約240件あった電話のうち職員が対応する件数を75%削減しました(出典:山口県総合交通センターの導入事例)。夜間・休日の着信件数は、今は留守番電話や話し中で消えているため、試行の前に電話会社の着信記録で数えておきます。
浮いた時間の使い道を書く
決裁者は、削減時間が本当にお金に変わるのかを気にします。浮いた時間が別の作業に吸収されるだけなら、費用は1円も減らないからです。稟議書には、浮いた時間を残業の削減、欠員の補充の見送り、繁忙期の応援の取りやめのどれで回収するかを書きます。
中京医薬品は、正社員比率を6分の1にしてパート社員の体制に切り替え、固定費を下げています(出典:中京医薬品の導入事例)。万田発酵の最大の効果は、ピーク時の負担の平準化でした。ピークに合わせて無理に人を集めなくても運営できる体制になった、という書き方も、採用が難しい窓口では立派な回収の手段になります(出典:万田発酵の導入事例)。
費用の欄に漏れなく書く7項目
費用の欄は、見積書の合計金額だけを写すと、あとから追加の費用が出て決裁者の信頼を失います。次の7項目を1行ずつ書き、見積書に含まれないものは「別途」と明記してください。
| 費用の種類 | 中身 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 案内の流れの設計と設定、 電話番号の準備 |
案内の流れを何本まで 作ってもらえるか |
| 月額基本料 | 毎月かかる利用料 | 月額に含まれる件数や 時間の上限 |
| 従量料金 | 件課金なら月の件数×単価、 時間課金なら件数×通話時間×分単価で書く |
自動で終わった件数だけか、受けた全件か。 時間課金は試行で平均通話時間を測ってから確定 |
| 通話料・転送料 | 着信と、人につなぐ ときの通話料 |
フリーダイヤルの着信料と 転送の通話料は別になりやすい |
| 案内の流れの改修費 | 導入後に案内文や 分岐を直す費用 |
制度変更や商品変更の たびにかかるか |
| システム連携の開発費 | 顧客管理や受注の システムとつなぐ費用 |
自社側のシステム改修が 必要になるか |
| 社内の工数 | 準備・試験・運用の 担当者の時間 |
導入後の改善を 誰が何時間持つか |
料金の決まり方の種類や、見落としがちな隠れコストは「ボイスボットの費用相場」で詳しく説明しています。稟議書の費用欄には、相場の金額よりも、手元の見積書の金額が上の7項目のどこまでを含んでいるかを書きます。
社内の工数も費用に入れる?
入れます。社内の担当者の時間は、見積書に載らないため書き漏れやすい費用です。準備の段階では、対象の用件の洗い出し、案内文の確認、試験通話に時間がかかります。導入後は、聞き取れなかった発話の記録を見て案内文を直す作業が続くため、その時間も含めてください。担当者を決め、月に何時間を見込むかを書いておくと、「入れたあと誰が面倒を見るのか」という質問に先に答えられます。
決裁者に聞かれる7つの質問と答え方
決裁者が電話の自動化で聞くことは、ほぼ決まっています。答えと根拠を先に用意しておけば、その場で数字と出典を示せます。弊社の調査と導入事例から、使えるデータを質問ごとに並べました。
| 聞かれること | 答え方 | 根拠に使えるデータ |
|---|---|---|
| 1 お客様が 嫌がらないか |
お客様が自動のほうを好む用件から始めると答える | 50〜70代241名の調査で、利用意向は31.6%だが、70.5%が「人よりボイスボットの方が話しやすい場面がある」と回答。上位は解約・退会35.3%、深夜・早朝24.9%(entry-583) |
| 2 高齢のお客様は 使えるか |
聞き取れないときはプッシュ操作や人に切り替える設計にすると答える | 中京医薬品(プッシュ操作の自動受付IVR)は、高齢のお客様が多く移行は難しいと考えていたが、電話注文の80%を自動化(case/entry-198) |
| 3 聞き間違えたら どうするか |
聞き取った内容を復唱し、SMSで確認・修正してもらうと答える | ダスキンは、受付内容をSMSで送りお客様自身が確認・修正できる機能を最大の決め手に選定(case/entry-569) |
| 4 結局人につながる なら二度手間では |
聞き取った用件を引き継いで人に渡すと答える | 職場で電話対応をする255名の調査で、自動音声から人に代わる電話の経験者の79.3%が困った経験あり(entry-663)。引き継ぎを稟議の条件に書く |
| 5 止まったら電話が 全部止まるのでは |
障害時に従来の着信先へ戻す手順と、ベンダーの冗長化を答える | ベンダーの回線・データセンターの冗長化の資料と、自社の切り替え手順書 |
| 6 個人情報は 大丈夫か |
聞き取る項目を絞り、ベンダーの認証と保管の方法を確認済みと答える | ベンダーのISMS・プライバシーマークなどの認証、カード情報を扱うならPCI DSS |
| 7 人は減るのか、 現場は反対しないか |
人を減らすのでなく、浮いた時間の使い道を決めてあると答える | 255名の調査で85.5%が電話対応に負担を感じ、79.2%が「自動化できると助かる電話対応がある」と回答(entry-663) |
表の根拠は、稟議書に引用するときに出典を書けるよう、ページの記載どおりに載せました。2つの調査の詳細は、50〜70代の消費者241名の意識調査と、職場で電話対応に携わる255名の実態調査(調査結果のお知らせ)で確かめられます。
1の質問には、調査の数字の読み方も添えておくと、決裁者が数字を取り違えずに判断できます。ボイスボット全体への利用意向は31.6%で、消極的な人の39.0%をやや下回りました。一方で、用件を区切って聞くと70.5%が「ボイスボットの方が話しやすい場面がある」と答えています。「全部の電話を自動にする」のでなく「お客様が自動を好む用件から始める」と書けば、2つの数字の両方が稟議の後押しになります。
4の質問に添えるのは、現場の担当者が導入の条件に挙げている数字です。株式会社電話放送局の調査では、自動化を入れるときに満たされていないと導入したくない条件として、「利用者が操作に迷わない」23.1%、「必要なときに確実に人に代われる」22.7%、「人に代わるときに用件が引き継がれる」22.4%がほぼ並びました(出典:電話対応業務の負担と自動化ニーズに関する実態調査)。この3つを稟議書の「リスクと対策」に書いておくと、現場の賛成も得やすくなります。
答えは「リスクと対策」の欄に先に書いておく
7つの質問への答えは、聞かれてから話すのでなく、稟議書の「7 リスクと対策」に1行ずつ書いておきます。決裁者が稟議書を読んだ時点で疑問が消えていれば、差し戻しも追加の説明の場も要りません。
障害時の備えは、ベンダーの資料を確かめてから書きます。DHK CANVASは、自社運営のデータセンターに直接回線を引き込み、複数の電話会社の回線で冗長化しています(出典:DHK CANVAS)。災害時や停電時に電話窓口をどう続けるかは「コールセンターのBCP対策」で状況別にまとめています。
個人情報の欄には、ベンダーが持っている認証の名前と番号を書くと確認が早く済みます。弊社は、ISMS(ISO27001)認証、プライバシーマーク認証、クレジットカード情報を取り扱うIVRシステムのPCI DSS認証を取得しています(出典:DHK CANVAS)。
稟議を一度で通すための準備
稟議書の中身が固まったら、決裁者が「やってみよう」と言いやすい形に整えます。範囲を小さく区切り、やめる基準を先に決め、ベンダーに根拠の資料をそろえてもらう、の3つです。
小さく始める範囲を決める
最初の稟議は、範囲を小さく区切るほど通りやすくなります。決裁者にとっては、失敗したときの影響が小さいほど判断しやすいからです。よく選ばれるのは、夜間・休日だけ自動で受ける、解約や配送日の変更など1〜2つの用件だけを任せる、といった区切り方です。DHK CANVASも、夜間・休日から始めて対象範囲を広げる段階的な導入ができます(出典:DHK CANVAS)。どの用件が自動に向くかは「ボイスボットと相性が良い業務は?」で例を挙げています。
試行期間と「続ける・やめる」の基準を先に書く
試行の稟議では、期間と判定の数字を先に書きます。期間は、案内文の手直しを2〜3回できる長さを取るのが目安で、記入例では3か月にしました。判定の数字は、次のように3段で置くと、試行のあとの議論が短くなります。
| 判定 | 基準の例 | 次にやること |
|---|---|---|
| 続ける | 完結率25%以上 (元が取れる完結率) |
本格導入の稟議を上げ、 対象の用件を広げる |
| 見直す | 完結率15%以上25%未満 | 聞き取れなかった発話と途中で切れた場所を確かめ、 案内文と対象の用件を直して延長する |
| やめる | 完結率15%未満、または 苦情が従来より増えた |
従来の受付に戻し、 結果を報告する |
基準の数字は記入例の前提で置いた例です。貴社では、元が取れる完結率を計算して「続ける」の線を決めてください。試行の前の1か月で、今の件数・平均対応時間・放棄呼の割合を記録しておくことも忘れずに行います。導入前の数字がないと、試行の効果を比べられません。
稟議の前にベンダーに頼んでおく4つの資料
稟議書の根拠は、自社で集める数字とベンダーからもらう資料でできています。候補を絞り込んだら、次の4つを依頼しておきます。
- 自社の件数で計算した効果の試算
- 7項目の費用を分けた見積書
- 同じ業種か、同じ用件の導入事例
- 情報セキュリティの認証と、障害時の備えが分かる資料
効果の試算は、自社の用件の内訳を渡して作ってもらうと、稟議書の数字と食い違いません。弊社では、コールリーズンの分析をもとに何を自動化するかをご提案し、想定される導入効果をシミュレーションしてご提示しています(出典:DHK CANVAS)。中京医薬品も、導入前は営業担当者から提示された自動化率の試算に半信半疑だったと話しています(出典:中京医薬品の導入事例)。試算を受け取ったら、低めの完結率でも元が取れるかを自分で計算し直してから稟議書に載せてください。
費用の欄に入れる金額は、受け取った見積書の数字を使います。記入例の月額25万円は説明のための仮定で、弊社の料金ではありません。弊社のDHK CANVASは件課金で、公開している料金は月額15万円から、1,000件分のコールを含みます(出典:DHK CANVAS)。月3,000件規模の料金は件数と業務の内容で変わるため、料金表(資料)と見積りでご確認ください。
稟議書に添えられる電話自動化の導入実績
決裁者は、同じような会社でうまくいった例があるかを知りたがります。稟議書には、業種と用件が近い事例を1つ添えます。決裁者が、同業の結果と比べて判断できるからです。弊社の電話自動化サービスは1,500社以上に導入されており、その中から稟議の根拠に使いやすい事例を、事例ページの記載どおりに並べました。
| 導入先 | 対象の業務 | 結果(事例ページの記載) |
|---|---|---|
| 日本予防医薬 | 解約受付と 注文受付 |
年間7万件の解約電話のうち40.9%が完全自動処理で完結、年間3,800時間削減。注文受付はコスト25%削減 |
| ネスレ日本 | 解約受付の 一次対応 (自動受付IVR) |
一次受付を自動にして人員配置を平準化し、対象業務のコストを45%削減 |
| 中京医薬品 | 宅配水の 追加注文の受付 (自動受付IVR) |
導入当初の自動化率40%程度から、電話注文の80%を自動化 |
| ダスキン | エアコンクリーニングの 注文受付 |
注文件数の約10%を自動音声受付でカバー。2020年と2025年度の比較で応答率7%、サービスレベル22.4%向上 |
| 万田発酵 | 時間外の 折り返し受付 |
時間外の入電の半数以上で一次受けに対応。最大の効果はピーク時の負担の平準化 |
| 前橋市 国民健康保険課 |
国民健康保険の 問い合わせ |
年間約3万2千件の電話で完結率約20%、年間換算で約550時間削減。大きなクレームやトラブルはほぼ0件 |
| 山口県 総合交通センター |
運転免許の 問い合わせ |
1日約240件の電話のうち職員が対応する件数を75%削減。365日24時間の受付を実現 |
ネスレ日本と中京医薬品は、プッシュ操作と音声で受け付ける弊社の自動受付IVRの事例です。ボイスボットとIVRのどちらで稟議を書く場合も、件数と完結率で効果を示す考え方は変わりません。
導入前に決裁者と同じ不安があった事例
前橋市の事例では、導入前は自動応答に心理的な抵抗を感じる市民もいるのではという不安がありました。ダスキンでも、自動音声の受付がお客様の不満につながるのではという懸念が社内にありました。どちらも導入後は大きな問題が起きていないと事例ページに書かれています。決裁者と同じ不安を持っていた導入先の結果として紹介すると、「お客様が嫌がらないか」への答えにもなります。
よくある質問
Q. ボイスボットの稟議書は、何枚くらいにまとめればよいですか?
本文はA4で1〜2枚にまとめ、計算の内訳と見積書、事例は別紙で添えるのが読みやすい形です。決裁者が最初に読むのは件名・費用・効果・リスクの4つなので、この4項目は1枚目に入れます。別紙の計算表は、決裁者が数字を検算できるように式を残しておきます。
Q. 効果の数字は、ベンダーの事例をそのまま使ってもよいですか?
事例の数字は裏付けとして添え、効果そのものは自社の件数で計算してください。完結率は用件や案内の流れで大きく変わるため、他社の削減率をそのまま当てはめると、試行の結果が届かなかったときに説明がつきません。自社の件数で計算した試算をベンダーに作ってもらい、低めの完結率で検算するのが確実です。
Q. IVR(プッシュ操作の自動音声)の稟議でも、同じ書き方でよいですか?
同じ8項目と同じ計算式で書けます。IVRの場合は、プッシュ操作で用件を選んでもらうため、自由に話してもらう用件の聞き取りは向きません。対象の用件の欄で「番号で選べる用件に絞る」と書くと、決裁者に範囲が伝わります。
Q. 費用の回収期間はどう書けばよいですか?
「初期費用÷(月の削減額−月の費用)」で計算し、完結率を低めと高めの2段で書きます。低めの完結率で月の削減額が月の費用を下回る場合は、人件費だけでは回収できないと正直に書き、夜間の受付件数や放棄呼の減少など、時間で表しにくい効果をあわせて示します。
Q. 試行(トライアル)なしで稟議を通すことはできますか?
通すことはできますが、試行を含めた稟議のほうが決裁者は判断しやすくなります。試行なしで進める場合は、契約期間の縛りと途中でやめるときの条件をベンダーに確認し、費用の欄に書いておいてください。最初から本格導入する場合も、3か月後の判定の基準は書いておくと、導入後の報告がそのまま評価になります。
Q. 自治体で予算要求をするとき、いつまでに何をそろえればよいですか?
予算要求の締め切りは財政担当の課が示す日程で決まるので、まずその日を確かめ、そこから逆算します。締め切りまでに、対象の窓口の月別の着信件数(繁忙期を含む直近1年分)、ベンダーの見積書、実証実験の期間と本格導入に進む判断の基準の3つをそろえておきます。月別の件数が手元にない窓口は、見積りの依頼より先に集め始めてください。
Q. 稟議書の例をAIに作らせるときは、何を渡せばよいですか?
対象の用件ごとの月間件数、1件あたりの平均対応時間、見積書の3つを渡してください。AIに数字がないまま頼むと、一般的な削減率で効果を書いてしまい、決裁者に根拠を聞かれたときに答えられません。本記事の8項目と計算式を指定して、「完結率は20%と40%の2段で計算」と条件を付けると、そのまま使える下書きになります。
最後に、ボイスボットの稟議書についてよくある質問に回答します。
まとめ
ボイスボット導入の稟議書は、効果を「月の件数×1件の対応時間×完結率×12か月」で計算し、費用・リスク・やめる基準まで電話の数字で書くと通りやすくなります。完結率は低めと高めの2段で置き、元が取れる完結率と並べて、低いほうで回収できない場合はそう書きます。決裁者に信頼されるのは、この正直な書き方です。お客様への影響や障害時の備えなど、決裁者に聞かれる質問の答えは、「リスクと対策」の欄に先に書いておきます。
最初の一歩として、直近6か月の着信レポートから対象の用件の件数と平均対応時間を拾い、本記事の計算式で年間の削減時間を出してみてください。株式会社電話放送局の電話自動化サービスは、1,500社以上に導入いただいています。コールリーズンの分析から、自社の件数で計算した導入効果の試算まで、稟議の準備をお手伝いします。導入の進め方はDHK CANVASと導入事例もあわせてご覧ください。
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監修者情報
メーカーのコールセンター運営管理に従事し、自らIVRを導入。
不要な入電を抑制しつつ売上向上を実現するなど、現場視点で成果を創出。電話放送局では営業マネージャーとして10年以上従事し、クラウド型IVRの業界シェア1位獲得に貢献。
コロナ禍におけるユーザーのデジタル行動変容を受け、マーケティング部門を立ち上げ、責任者に就任。インサイドセールスを統括し、営業部門との連携を強化。自動音声応答の導入、運用、集客、営業の幅広い経験を有する。
IVRおよびコールセンター市場における20年以上の知見を活かし、ユーザーの検索行動やニーズを深く理解したマーケティング戦略を展開。
検索連動広告の運用経験を基に、現場で役立つ実践的な情報を発信し、読者のビジネス成功を力強くサポートします。
営業部 営業企画・推進チーム シニアリーダー 前田泰延
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