2026/09/14

自治体の電話対応を自動化するには?任せられる業務と導入手順・費用の目安

「窓口に住民が並んでいるのに、電話が鳴り止まなくて手が離せない」「同じ質問の電話を1日に何十件も受けている」。市役所や県庁の窓口で、こうした状態が続いている担当者の方は少なくありません。自治体の電話対応の自動化とは、住民からの入電をIVR(自動音声応答)やボイスボットがいったん受け止め、用件ごとに振り分けたり、その場で回答したりする仕組みを指します。すべての電話を機械に任せるのではなく、用件が決まっている入電から順に手放していくのが現実的な進め方です。

本記事では、自治体の電話を業務別に「任せられる」「一次受けだけ任せる」「職員が出る」の3つに切り分けたうえで、高齢の住民がどう受け止めるかという調査結果、導入手順、費用の考え方までを解説します。業務別の一覧は記事の中ほどに表で置いています。

目次

自治体の電話対応の自動化とは?

 ・IVR・ボイスボット・チャットボットは何が違うのか

市役所の電話が混雑するのはなぜか

 ・繁忙期が制度で決まっている

 ・山の高さは事前に分かっている

 ・用件が課をまたぐため取り次ぎが増える

 ・窓口対応と電話対応を同じ職員が兼ねている

【業務別】自治体の電話は、どこまで自動化できるか

 ・自動で完結させられる業務

 ・24時間の受付が結果に表れる用件

 ・一次受けだけ任せて職員につなぐ業務

 ・最初から職員が出るべき業務

高齢の住民は、電話の自動応答を使えるのか

 ・つながらないことのほうが強いストレスになっている

 ・高齢の住民に配慮する設計の勘所

自治体が電話の自動化で得られる効果

 ・職員の時間を窓口に戻せる

 ・住民が「つながらない」で諦めなくなる

 ・職員をカスタマーハラスメントから守れる

自治体が電話の自動化を進める5つのステップ

 ・ステップ1 入電を1か月分数える

 ・ステップ2 任せる業務を1つか2つに絞る

 ・ステップ3 通話の流れを設計する

 ・職員につなぐ条件を先に決める

 ・ステップ4 職員だけで試験運用する

 ・ステップ5 住民に周知して運用しながら直す

自治体の電話自動化にかかる費用はどう決まるのか

 ・予算要求の資料に載せる3つの数字

導入前に確認しておく4つの点

 ・個人情報をどこまで聞き取るか決めておく

 ・ネットワークの条件を先に確認する

 ・住民への周知を軽く見ない

 ・効果を測る指標を決めておく

よくある質問

まとめ

自治体の電話対応の自動化とは?

自治体の電話対応の自動化とは、住民からかかってきた電話を職員が最初に取るのではなく、システムが一次受けして用件を仕分ける仕組みのことです。用件によっては、担当課につながずにそのまま完結させることもできます。

たとえば粗大ごみの回収予約なら、着信と同時に音声が応答し、品目と希望日を聞き取り、受付番号を伝えて完了します。職員は一度も電話に出ません。一方で、税額の根拠を説明してほしいという相談であれば、システムは用件だけを聞き取って税務課へ回します。この「聞き取って仕分ける」ところまでを機械が担うだけでも、代表電話の取り次ぎ件数は目に見えて減ります。

自治体の電話業務は、電話のDXのなかでも着手しやすい領域です。既存の代表電話番号を残したまま、その手前に自動応答を置く形で始められるため、庁内の電話設備を入れ替える必要がありません。

IVR・ボイスボット・チャットボットは何が違うのか

3つの違いは、住民が「どう伝えるか」と「何で受け取るか」にあります。IVRはプッシュ操作、ボイスボットは話し言葉、チャットボットは文字入力です。

IVRは「粗大ごみのご予約は1を、ごみの分別は2を押してください」という音声ガイダンスに対し、住民がダイヤルボタンを押して進む仕組みです。選択肢が決まっている振り分けに向いています。ボイスボットは、住民が「粗大ごみを出したいんですけど」と話した内容をAIが聞き取り、用件を判断して処理まで進めます。階層をたどらずに済むため、用件の種類が多い代表電話と相性のよい方式です。

チャットボットはWebサイトやLINE上の文字のやり取りで、電話をかける前の段階を受け持ちます。

区分 住民の
操作
向いている
用件
自治体での
使いどころ
IVR プッシュ
ボタン
選択肢が
決まっている用件
代表電話の課別振り分け
時間外の案内
ボイスボット 話し言葉 用件の種類が
多い問い合わせ
粗大ごみ受付
各種予約
資格の確認
チャット
ボット
文字入力 調べれば
分かる用件
ホームページ上の
手続き案内

電話をかけてくる住民は、Webで調べる手段を持っていないか、調べたけれど分からなかった人です。そのため、チャットボットを設置しても電話の本数がそのまま減るわけではありません。両者は同じ問い合わせを奪い合うのではなく、入り口が違う別の窓口として並べる関係にあります。

市役所の電話が混雑するのはなぜか

自治体ボイスボット 月ごとの入電件数

自治体の電話が特定の時期に集中するのは、住民が行動する時期を制度側が決めているからです。納税通知書の発送日、給付金の申請開始日、転入転出が重なる3月から4月、この3つが入電の山をつくります。

繁忙期が制度で決まっている

住民税の納税通知書が届いた直後は、税務課の電話が数日間鳴り続けます。給付金の受付開始日も同じです。民間企業のように広告出稿を止めて入電を抑えるという調整ができないため、職員の人数では吸収しきれない波が毎年同じ時期に来ます。

山の高さは事前に分かっている

裏を返せば、いつ混むかは事前に分かっています。通知書の発送日は自治体が決めているため、その週だけ自動応答の受け皿を厚くするといった準備が可能です。人員を追加するより、受け皿の設定を変えるほうが早く手を打てます。

用件が課をまたぐため取り次ぎが増える

住民は自分の用件がどの課の担当か分かりません。「子どもの医療費のことで」という電話が、子育て支援課なのか国民健康保険の窓口なのかは、聞いてみないと判断できないのが実情です。その結果、代表電話でいったん聞き取り、担当課へつなぎ、担当課でもう一度用件を聞く、という二度手間が発生します。電話の取り次ぎそのものが職員の時間を削っています。

窓口対応と電話対応を同じ職員が兼ねている

自治体の窓口は、対面と電話を同じ職員が担当している職場がほとんどです。目の前の住民に説明している最中に電話が鳴れば、どちらかを待たせることになります。山口県総合交通センターの運転免許課でも、窓口対応と電話対応の両立が従来からの課題だったと導入事例で述べられています(出典: 導入事例)。

自分の庁舎で何が起きているかを見分けるために、症状から原因と打ち手をたどれる形で整理しました。

起きている
症状
考えられる原因 先に打つ手
代表電話が
ふさがる
用件を聞いてから
課へ回している
用件の聞き取りと
振り分けを自動応答に移す
同じ質問が
繰り返し来る
ホームページに
答えはあるが届いていない
音声で回答し
SMSでページを送る
特定の週だけ
つながらない
通知書の発送や
申請開始が重なっている
繁忙週だけ
自動受付の枠を広げる
時間外の
不在着信が多い
開庁時間に
電話できない住民がいる
24時間の受付を用意し
翌開庁日に折り返す
窓口の列が
進まない
同じ職員が
電話と窓口を兼ねている
電話の一次受けを
職員から切り離す

【業務別】自治体の電話は、どこまで自動化できるか

自治体ボイスボット住民からの着信先

判断の軸は「答えが一つに決まるか」です。手続きの方法や受付日、必要書類のように答えが決まっている用件は自動で完結させられます。反対に、住民ごとの事情を聞いて判断する用件は職員が出るべき領域です。

株式会社電話放送局が公開している自治体向けの活用ケースには、総務課の転送振り分け、市民課・国民健康保険課・保健所・水道局の総合自動応答、健康診断の受診勧奨、ワクチン接種の予約受付、粗大ごみの回収受付、公園管理事務所の総合自動受付、自動車税の相談窓口、税の滞納者への一次連絡、給付金申請の勧奨連絡などが並びます(出典: 自治体 活用事例集)。実際に動いている用件から、3つの層に分けて見ていきます。

自動で完結させられる業務

受付内容が定型で、結果を住民に伝えれば終わる用件です。粗大ごみの回収予約は代表例で、品目・数量・希望日・住所を順に聞き取り、受付番号を返せば完了します。

来庁予約、健康診断や予防接種の予約、公共施設の利用受付も同じ形です。これらは職員が対応しても聞く項目が変わらないため、自動化の効果がそのまま件数に表れます。予約内容の控えは、電話を切ったあとにSMSで送ればテキストで残せます。

24時間の受付が結果に表れる用件

予約系の用件は、住民が思い出したその場で電話をかけたいものです。開庁時間だけの受付では、住民が電話をかけ直す手間が生まれ、そのぶん再架電が増えます。24時間受け付けられる状態にすると、入電が日中に集中しなくなります。

一次受けだけ任せて職員につなぐ業務

用件を聞き取ってから担当課へ回す形が向く領域です。国民健康保険や介護保険の資格に関する問い合わせ、税額の確認、児童手当の届け出などが該当します。

自動応答が「どのようなご用件ですか」と聞き、住民が話した内容から担当課を判断して転送します。職員は受話器を取った時点で用件を把握しているため、住民が同じ説明を二度する必要はありません。転送前に本人確認の項目を聞き取っておけば、職員の対応時間はさらに短くなります。

最初から職員が出るべき業務

生活困窮の相談、児童や高齢者の虐待に関する通報、災害時の安否に関わる連絡、苦情の申し出は、最初から人が出る設計にします。これらは住民の話す内容から緊急度を判断する必要があり、機械の聞き取り精度に委ねる領域ではありません。

自動応答を入れる場合も、「至急のご用件の方はそのままお待ちください」という選択肢を常に用意し、住民が人につながる道を塞がないようにします。

業務の例 自動化の範囲 設計で押さえる点
粗大ごみの
回収受付
受付から完了まで
自動
品目名の言い換えを
辞書に登録しておく
来庁予約
健診・接種予約
受付から完了まで
自動
予約内容を
SMSで控えとして送る
代表電話の
取り次ぎ
用件の聞き取りと
転送まで自動
課の名称ではなく
用件の言葉で分ける
国保・介護の
資格確認
一次受けと
本人確認まで自動
個人情報の取得範囲を
事前に決める
税額・課税の
相談
一次受けのみ
自動
説明が要る用件は
早めに職員へ回す
生活相談
虐待の通報
自動化しない 着信をそのまま
担当職員へ通す
苦情・
申し立て
自動化しない 録音の案内を
入れて職員へ通す

高齢の住民は、電話の自動応答を使えるのか

使える用件と使いにくい用件がはっきり分かれます。「機械の応対そのものが受け入れられない」というより、「何を頼むか」で受け止めが変わるというのが調査から見えた傾向です。

電話放送局が全国の50〜70代の男女241名に実施した調査では、ボイスボットを利用したいと答えた人は31.6%にとどまりました。ところが用件ごとに聞くと、話しやすいと感じるシーンが一つ以上あると答えた人は70.5%に上ります。内訳は解約・退会の申し出が35.3%、深夜や早朝の問い合わせが24.9%と続きました(出典: コールセンター利用とAI自動応答(ボイスボット)に関する意識調査)。

反対に、人が対応すべきだと考えられている用件も同じ調査に出ています。複雑な契約変更が49.4%、判断や相談を伴う用件が36.1%、使い方の具体的な説明が29.0%です。自治体に当てはめれば、手続きの方法や受付日を聞くだけの電話は自動応答で足り、事情を汲んで判断する相談は職員が出る、という切り分けが住民の感覚とも一致します。

つながらないことのほうが強いストレスになっている

同じ調査で、電話がつながらない経験をしたと答えた人は50.2%、それを最も強いストレスに挙げた人は36.9%でした。問い合わせ先に求めることの1位も「すぐにつながること」で44.0%です。人が出るかどうかより先に、まず応答があることを住民は求めています。

高齢の住民に配慮する設計の勘所

配慮すべき点は3つあります。1つ目は、ガイダンスの階層を深くしないことです。2階層を超えると、住民は自分がどこにいるか分からなくなります。2つ目は、聞き取れなかったときに同じ質問を繰り返さず、2回目で職員につなぐことです。同じ調査では聞き取り精度への不安が22.4%、二度手間への不安が22.0%挙がっています。3つ目は、案内の速度を落とし、数字は一語ずつ区切って読み上げることです。コールセンターの高齢者対応で使われている考え方が、そのまま自治体の窓口にも当てはまります。

自治体が電話の自動化で得られる効果

効果は「職員の時間」「住民のつながりやすさ」「職員を守ること」の3つに現れます。まずは職員の時間から見ていきましょう。

職員の時間を窓口に戻せる

山口県総合交通センターの運転免許課では、DHK CANVASの導入により電話対応件数を75%削減しました。同センターには1日およそ240件の電話があり、よくある問い合わせにはAIが回答し、必要に応じてSMSでWebページへ誘導、病気や個人情報が関わる案件は職員へ転送する形をとっています。担当者は、窓口対応に専念できる体制が強化され、県民に向き合う時間が増えたと述べています(出典: 導入事例)。

削減された時間は、そのまま人件費として消えるのではなく、窓口の待ち時間の短縮や、後回しになっていた事務に振り向けられます。自治体DXの取り組みのなかで、成果が数字で示しやすい領域です。

住民が「つながらない」で諦めなくなる

自動応答は同時に何本でも着信を受けられます。窓口が1本しか受けられない状態でも、10人が同時にかけてくれば10人とも応答を受け取れます。話し中の音を聞かされて切られる、いわゆるあふれ呼が減り、住民が何度もかけ直す必要はありません。どれだけ取りこぼしていたかは、応答率という指標で振り返れます。

開庁時間の制約もなくなります。仕事を持つ住民が昼休みに集中して電話をかける状況が緩み、日中の山は低くなるはずです。

職員をカスタマーハラスメントから守れる

自動応答が一次受けをすると、感情的な言葉を職員が直接受け止める場面が減ります。通話が録音されることを冒頭で案内する運用も取り入れやすく、カスハラ対策の一環として位置づけられます。窓口業務のストレスは離職にも直結するため、職員が受ける負荷を減らすこと自体が人員確保の施策そのものです。

自治体が電話の自動化を進める5つのステップ

自治体ボイスボット導入5ステップ

ここからは、実際に着手する順番を追って説明します。最初にやるべきことは機器の選定ではなく、いま何の電話が来ているかを数えることです。

ステップ1 入電を1か月分数える

用件ごとに正の字を書いていくだけで構いません。「粗大ごみ」「税額の確認」「担当者不在の折り返し依頼」といった単位で1か月分を集計すると、上位5つで全体の半分以上を占めるのが一般的です。この上位が自動化の候補になります。

集計の切り口はコールリーズンと呼ばれます。手間はかかりますが、この数字がないまま導入すると、効果の薄い用件に投資しかねません。予算要求の根拠としても、この集計がそのまま使えます。

ステップ2 任せる業務を1つか2つに絞る

最初から全課を対象にせず、件数が多く手順が定型の業務から始めます。粗大ごみの回収受付や来庁予約のように、成果が件数で示せる業務が向いているでしょう。

ここで対象を広げすぎると、シナリオの設計に時間がかかり、稼働までの期間が延びます。1つの業務で効果を出し、その数字をもって次の課へ広げるほうが、庁内の合意も取りやすくなります。

ステップ3 通話の流れを設計する

まず、住民が何を話し、システムが何を返すかを一通り書き出しましょう。これをコールフローと呼びます。読み上げる文言は、庁内で使っている言い方ではなく、住民が使う言葉に置き換えます。「賦課」ではなく「税額の計算」、「収納」ではなく「納付」といった言い換えです。

職員につなぐ条件を先に決める

聞き取りに2回失敗したら職員へ、緊急を示す言葉が出たら職員へ、といった条件を設計段階で決めておきます。あとから足すより、最初から通り道を作っておくほうが安全です。音声ガイダンスの作り方の考え方が参考になります。

ステップ4 職員だけで試験運用する

本番の番号に載せる前に、職員が住民役として一通りかけてみます。特に確認したいのは、方言や早口、途中で言い直したときの挙動です。この段階で聞き取れなかった発話は記録に残り、辞書に追加していくことで精度が上がります。

ステップ5 住民に周知して運用しながら直す

広報紙、ホームページ、窓口の掲示で、いつから電話の受け方が変わるかを伝えます。「自動音声が応答します」「オペレーターをご希望の方は0を押してください」と明記しておくと、住民の戸惑いは小さくなるはずです。

稼働後は、聞き取れなかった発話のログを毎週確認し、言い回しを追加していきます。設計して終わりではなく、この地道な調整が精度を左右します。

ステップ やること 期間の目安
1
入電の集計
用件ごとに
1か月分を数える
1か月
2
対象の決定
件数の多い定型業務を
1〜2件選ぶ
2週間
3
通話の設計
読み上げ文言と
転送条件を決める
3〜4週間
4
試験運用
職員が住民役で
実際にかける
2〜3週間
5
周知と改善
広報で告知し
ログを見て直す
稼働後も継続

公共・自治体向けのDHK CANVASでは、構築期間を2〜3カ月と案内しています(出典: 公共・自治体向け 自動応答システムによる電話DX)。入電の集計を先に済ませておくと、この期間を短くできます。

自治体の電話自動化にかかる費用はどう決まるのか

自治体の電話自動化にかかる費用は、初期構築費と月々の利用料に分かれます。月々の利用料の決まり方は、回線数による形と、応答した件数による形の2つです。

件数で決まる形は、入電が少ない月の負担が軽くなる一方、繁忙期は費用が上がります。回線数で決まる形はその逆で、月額が読みやすい代わりに、閑散期も同じ金額がかかります。DHK CANVASは応答した件数に対して課金する形をとっており、対応時間が延びても金額が変わらない点を公開しています(出典: 公共・自治体向け 自動応答システムによる電話DX)。

金額の水準は用件数や通話時間で変わるため、ボイスボットの費用相場の考え方を踏まえて見積もりを取るのが確実です。

予算要求の資料に載せる3つの数字

必要な数字は3つです。1つ目は現在の入電件数と、そのうち定型の用件が占める割合。2つ目は1件あたりの平均通話時間。3つ目は、その2つを掛け合わせた年間の対応時間です。この3つが揃うと、削減できる時間を人日に換算して示せます。

金額の比較だけでなく、窓口の待ち時間や時間外の受付可否といった住民サービスの面も併記すると、費用対効果が伝わりやすくなります。自治体システム標準化や情報システムの更改と時期を合わせられるかどうかも、あらかじめ確認しておく点です。

導入前に確認しておく4つの点

自治体ボイスボット導入前に確認する4つの項目

つまずきやすいのは、技術ではなく庁内の調整と個人情報の扱いです。

個人情報をどこまで聞き取るか決めておく

氏名や住所、被保険者番号を音声で聞き取る場合、どのデータをどこに保管し、誰が閲覧できるかを事前に整理します。庁内の個人情報保護の手続きに沿って審査が必要になることがあり、この確認に時間がかかるケースがあります。

ネットワークの条件を先に確認する

行政専用のネットワークであるLGWANとの接続可否、庁内の回線構成、既存の電話設備との接続方法は、情報政策担当と早い段階で共有しておきたい項目です。既存の代表番号をそのまま使えるか、転送で受けるかによって工事の要否が変わります。

住民への周知を軽く見ない

自動応答が始まった直後は、「市役所が電話に出なくなった」という受け止め方をされることがあります。広報紙と窓口掲示に加え、ガイダンスの冒頭で職員につながる方法を必ず案内しましょう。周知が足りないと、苦情という形で別の入電が増えます。

効果を測る指標を決めておく

導入前に、応答率、自動で完結した件数の割合、職員へ転送された件数を測る取り決めをしておきます。コールセンターのKPIで使われる指標が、そのまま自治体の窓口にも使える物差しです。数字がないと、翌年度の予算要求で継続の理由を示せません。

よくある質問

Q. 高齢の住民が多い自治体でも、電話の自動応答は使えますか?

A. 用件を選べば使えます。電話放送局が50〜70代の男女241名に実施した調査では、話しやすいと感じるシーンが一つ以上あると答えた人が70.5%でした。一方で、複雑な手続きは人が対応すべきと答えた人が49.4%います。予約や受付のように答えが決まっている用件から始め、相談は職員が出る設計にするのが現実的です。


Q. 代表電話の番号は変えなければいけませんか?

A. 多くの場合、変える必要はありません。既存の番号あてにかかってきた電話を自動応答へ転送する形で始められます。広報紙やホームページに載せた番号を変えずに済むため、住民への周知の負担も小さくなります。


Q. 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?

A. 公共・自治体向けの構築期間は2〜3カ月が目安です。入電の集計と対象業務の決定を先に済ませておくと、この期間は短くなります。庁内の個人情報保護に関する手続きが必要な場合は、その日程も見込んでおきます。


Q. 自動応答にすると、職員につながらなくなりませんか?

A. そうならないよう、職員へつなぐ条件を設計段階で決めておくことが前提です。聞き取りに2回失敗した場合、緊急を示す言葉が出た場合、住民が0を押した場合など、人へ回る道筋を複数用意します。自動応答は職員を置き換えるものではなく、職員が出るべき電話を選び分ける仕組みです。


Q. 小規模な町村でも導入できますか?

A. 導入できます。応答した件数に応じて費用が決まる形であれば、入電の少ない自治体でも負担を抑えられます。粗大ごみの受付や施設の予約など、業務を1つに絞って始める例が多いようです。


Q. 災害が起きたときはどう使えますか?

A. 避難所の場所や罹災証明の受付方法など、繰り返し聞かれる内容を自動応答に載せることで、職員が対応すべき電話に集中できます。平時から設定を用意しておき、発災時に切り替える運用にしておくと、混乱の中で設計する必要がなくなります。コールセンターのBCP対策の考え方が参考になるでしょう。

【参考】
コールセンターのBCP対策

まとめ

自治体の電話対応をどこまで自動化できるかは、「答えが一つに決まる用件か」で判断できます。粗大ごみの回収受付や各種予約は自動で完結させられ、資格や税額の問い合わせは一次受けまで、生活相談や通報は最初から職員が出る。この3層に分けるところから設計が始まります。

最初の一歩は、1か月分の入電を用件ごとに数えることです。上位5つの用件が分かれば、どこから手をつけるべきかと、予算要求に必要な数字が同時に手に入ります。株式会社電話放送局は自治体のIVRを30ケース以上稼働させており、業務ごとの設計から運用後の改善まで伴走しています。自治体での使われ方を具体的に確認したい方は、自治体 活用事例集もあわせてご覧ください。

DHK CANVAS

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監修者情報

メーカーのコールセンター運営管理に従事し、自らIVRを導入。
不要な入電を抑制しつつ売上向上を実現するなど、現場視点で成果を創出。電話放送局では営業マネージャーとして10年以上従事し、クラウド型IVRの業界シェア1位獲得に貢献。
コロナ禍におけるユーザーのデジタル行動変容を受け、マーケティング部門を立ち上げ、責任者に就任。インサイドセールスを統括し、営業部門との連携を強化。自動音声応答の導入、運用、集客、営業の幅広い経験を有する。
IVRおよびコールセンター市場における20年以上の知見を活かし、ユーザーの検索行動やニーズを深く理解したマーケティング戦略を展開。
検索連動広告の運用経験を基に、現場で役立つ実践的な情報を発信し、読者のビジネス成功を力強くサポートします。

監修者 前田泰延(株式会社電話放送局) マーケティング責任者 営業部営業推進課 課長 前田泰延

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