IVRとは?特徴やコールセンターに導入するメリット、サービスの選び方
2025/03/28

数多くの問い合わせが届くコールセンターでは、オペレーターが電話を取り切れずに対応できない状態(=あふれ呼)が発生しやすく、業務効率化が急務となっています。そこで課題解決の手段として注目されているのが「IVRシステム」です。
今回は、コールセンターの業務効率化に役立つIVRについてご紹介します。「あふれ呼」が頻繁に発生する場合や、回線のビジー状態が続く場合は、IVRを導入して業務の効率化を図りましょう。IVRの基礎知識から、導入のメリット、サービスの選び方までお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
・IVR(Interactive Voice Response)とは
コールセンターにおけるIVRの基礎知識
コールセンター(コンタクトセンター)では、顧客からの問い合わせに適切に対処し、問題を解消する能力が求められます。しかし、実際は膨大な量の着信に追われ、顧客を待たせてしまうケースも少なくありません。そんな場面で役立つのが、電話対応を自動化できる「IVRシステム」です。こちらでは、IVRの基礎知識をご紹介します。
IVR(Interactive Voice Response)とは
IVRとは、コールセンターのカスタマーサポート業務などで利用される自動音声応答システムのことです。顧客からの入電に対して、自動音声ガイダンスによる案内や用件別の電話番号への振り分けなど、事前に設定された通りの対応を自動で行います。IVRの主な機能には、自動受付、自動振り分け、コールバック予約、SMS連携などがあります。
IVRは人工知能(AI)の発達により、コールセンターの現場で急速に普及しました。AIによって顧客情報の管理や運用を自動化できるようになったのが理由です。そして、2010年代に入ると、音声だけでなくスマートフォンの画面上に案内メニューを表示する「ビジュアルIVR」も登場しています。これにより、担当者や窓口につなぐだけでなく、FAQサイトやチャットボットへの誘導も可能になりました。
定型化された受付はIVRで自動化
近年では、IVRが生活の身近な場面でも活用されています。例えば、郵便物の再配達受付の電話窓口では、IVRが自動で顧客対応を行っています。顧客がプッシュ操作で伝票番号や希望の配達日時などを入力することで、自動で手続きが完了する仕組みです。オペレーターによる有人対応が不要なため、利用者はコールセンターの営業時間外でも再配達の予約受付ができるようになりました。このほかにも、スマートフォンや携帯電話の留守番電話サービスや、地域の災害情報の発信など、IVRの活用シーンはますます広がっています。今後さらに幅広い問い合わせ対応を担う可能性も考えられるでしょう。
IVRの主な機能
・自動受付
顧客からの電話をIVRで自動的に受け付ける機能です。オペレーター不在時でも、24時間365日いつでも顧客の問い合わせを受け付けする体制を整備できます。顧客満足度向上やオペレーターの負担軽減につながります。
・自動振り分け
顧客からの電話を用件に応じて自動で振り分ける機能です。IVRで一次対応を自動化し、代表電話への着信を適切な担当部署・担当者へ振り分けられます。コールルーティングにより顧客を待たせる保留時間がなくなり、スムーズな案内が可能となります。
・コールバック予約
「あふれ呼」が発生した際、自動で折り返しの予約受付をする機能です。対応可能な場合はオペレーターに直接つなぎ、対応できない場合は折り返し電話の予約を受け付ける仕組みとなっています。消費者からの受電へ着実に折り返し連絡を行い、ビジネスの機会損失防止が期待できます。
・SMS連携
SMS(ショートメッセージサービス)を利用して顧客の電話番号宛てにテキストメッセージを送信する機能です。会話のみでは情報を伝えにくい場面でWebサイトや動画資料を共有することで、効果的に顧客へ回答を提示できます。顧客の問題の速やかな自己解決を促せます。
IVRによる自動応答の仕組み
IVRは、導入準備の段階でシナリオを設定するのが基本です。具体的には、簡単な問い合わせでは自動音声を流す、難度の高い問い合わせは専門知識を持つオペレーターへつなぐ、などが考えられます。IVRを導入したコールセンターにユーザーから入電があると、自動音声ガイダンスが開始されます。「○○の方は1を、△△の方は2を……」のアナウンスが代表例です。そして、ユーザーが音声案内に従って番号を入力したり、プッシュボタンを操作したりすると、内容に応じて対応が行われます。
コールセンターにIVRを導入するメリットと注意点
こちらでは、コールセンターにIVRを導入するメリットや注意点を解説します。IVRの導入によって、ユーザーは簡単なボタン操作で問題解決に必要な情報を入手でき、企業は電話応対業務の効率化を進められます。しかし、オペレーターにつなぐまでの工数が増えることで負担に感じるユーザーもいます。IVRを導入する際は、メリットだけでなくデメリットも理解し、対策を講じることが大切です。
コールセンターにIVRを導入するメリット
自動音声応答(IVR)はいつでも電話がつながる安心を提供
・オペレーターの業務効率化につながる
IVRを導入することで、多くのコールセンター業務を自動化できます。電話業務の大部分を占める受付対応や簡単な問い合わせなどは、自動音声のみで処理できる場合も多いためです。オペレーターの業務負担を軽減でき、優先度の高い案件へ効率的にリソースを投じられます。
また、オペレーターの業務効率化はユーザー側にとってもメリットがあります。例えば、電話をかけた際に待ち時間がなく自動で受付してもらえる、用件ごとに適切なオペレーターにつながり、たらい回しや何度も説明する手間を省ける、問い合わせ時間を短縮できる、などが考えられます。顧客側の不満を解消し、顧客満足度向上を目的としてIVRを導入する企業も少なくありません。
・機会損失を防げる
IVRは24時間365日自動で稼働できます。そのため、営業時間内だけでなく、オペレーター不在の時間でも自動での受付を実現可能です。ユーザーは問い合わせたタイミングで確実に問題を解決できることもあるため、機会損失の防止にもつながります。
また、IVRの導入によって簡単な内容は自動音声ガイダンスに任せ、専門性の高い問い合わせや商品に関する細かな内容のみオペレーターにつなぐことで、応答率の向上も可能です。回線の混雑時に、電話がつながらない事態を避けやすく、オペレーターが対応不可能となる「あふれ呼」の対策にも効果が期待できます。
・コスト削減が期待できる
IVRの導入は、コールセンターの生産性向上や、オペレーターの人件費削減にも役立ちます。IVRによって問い合わせ内容ごとに振り分けを行うことで、オペレーターは一つのジャンルに特化できます。スキルを高めた専門分野について応対できるため、生産性が向上し多くの顧客からの問い合わせにスムーズに対処しやすくなるのです。また、問い合わせ件数の少ない時間帯はIVRで対応することで、人件費を抑えてコールセンターを稼働させることが可能です。そのほかには、社員研修の際は特定の分野に関する教育に専念でき、育成コストの削減や新人オペレーターを早期に戦力化しやすいというメリットもあります。担当窓口の人手不足対策にも有効です。
コールセンターにIVRを導入する際の注意点
コールセンターにIVRを導入すると、顧客側に自動音声ガイダンスがわずらわしく思われてしまうケースもあります。IVRの自動音声ガイダンスは、どのような用件であっても音声を聞いてボタンを押さなければオペレーターにつながりません。そのため、多くの時間がかかることでユーザーにストレスを与えないよう注意が必要です。例えば、振り分け先を細かく設定しすぎると、その分音声ガイダンスを聞く時間も長くなってしまいます。また、想定される用件の種類が多岐にわたる場合は、選択肢が増えてメニュー構成の階層が複雑になり、顧客が判断に迷ってしまうことも。万が一、プッシュボタンの操作ミスなどで初めからやり直しになれば、一から音声ガイダンスを聞かなければなりません。利便性が低下しないよう、適切な導線を設計することが大切です。
コールセンターに導入するIVRの選び方
コールセンターにIVRを導入する際は、種類や費用を比較検討するとともに、自社の業務に適したソリューションをお選びください。ここでは、IVRの選び方について解説します。
IVRの種類で選ぶ
IIVRには、大きく分けて「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類があります。このうちオンプレミス型はソフトウェアおよびハードウェアを自社で保有・管理し、システムを自前で構築する運用方式です。自社の環境に合わせて柔軟にカスタマイズできる点が強みですが、必要な機器の調達やインフラの維持管理にコストがかかる傾向にあります。一方、クラウド型はインターネット上に構築されたシステムを利用する運用方式です。自社環境の構築や機器の用意が不要なため、初期費用を大幅に抑えられます。また、申し込みから利用開始までの時間がかからない点も特徴の一つで、短期間で運用を開始できるのが強みです。
導入にかかる費用で選ぶ
IVRの料金形態は、主に「初期導入費用」「月額利用料」「追加オプション費用」などで構成されます。各費用は、回線数やIVRが利用できる席数によって前後します。ベンダーにもよりますが、IVRの初期導入費用の目安は約30万円~80万円です。月額利用料の目安は約1万5,000円~15万円となっています。コストを抑えて導入するなら、初期導入費用を抑えられるクラウド型のIVRを検討しましょう。また、必要な機能のみを搭載した、IVRのパッケージサービスを利用するのも一つの手です。各社サービスの費用を詳しく比較したい場合には、複数のベンダーから見積もりを取るようおすすめします。
自社に合ったIVRを選ぶ
IVRのサービスによっては、複数の機能が搭載されている場合があります。機能面が充実したIVRは利便性が高い一方で、なかには自社にとって不要な機能が含まれているケースもあります。利用する予定のない機能が多いなら、必要な機能のみを搭載したIVRを選び、シンプルな運用を設計したほうが管理しやすいでしょう。また、IVRのサポート体制はベンダーによって異なります。特に初めてのIVR導入であれば、手厚いサポート体制が揃ったベンダーを選ぶと安心です。ベンダーによっては、IVRのサービスを専業としていないケースや、最小限のサポートのみを提供するケースもあるので、事前に確認しておきましょう。
自動化したい要件で選ぶ
IVRを導入する際は、現状のコールセンター業務の課題に合わせて機能を選ぶことが大切です。そのためにも、自社に架電する顧客のコールリーズン(=電話をかけた理由)を分析して、必要な自動化機能を特定すると良いでしょう。例えば、一次対応の負担が課題となっている場合は自動振り分け機能を搭載したIVRを選ぶといったように、自社に適した機能を見極めることがポイントです。
コールリーズンについて、詳しくは以下の関連記事で解説しています。顧客のニーズを把握してサービスの改善につなげるために、本記事と併せてぜひお読みください。
【関連記事】コールリーズンとは?分析の重要性と流れ、コールセンターでの活用法
コールセンターでIVRを活用する際のポイント
コールセンターに導入したIVRの効果を最大化して、顧客の利便性を高めるためには、以下のポイントを押さえておきましょう。ここでは、コールセンターでIVRを活用する際のポイントをご紹介します。
ガイダンスはできるだけ簡潔に設定する
IVRで顧客が操作するときに聞くガイダンスは、わかりやすさを重視して設計しましょう。ガイダンスが必要以上に長かったり、選択肢の数が多すぎたりすると、顧客にとって使いづらいサービスになってしまいます。顧客が途中で通話をやめて、離脱してしまうかもしれません。想定される用件が多いときは、選択肢を増やすのではなく、複数の選択肢をまとめる方法もあります。例えば、「その他の方は○を押してください」「オペレーターにつなぐ場合は○を押してください」といった音声ガイダンスも検討してみましょう。
導入後の見直しや改善は定期的に行う
IVRのシステム設定は、導入後も変更できます。システム設定は一度設定したら完了するわけではなく、定期的に見直しを行うとともに、必要に応じて変更することも重要です。その際は、顧客からの問い合わせ傾向や、実際の反応などを踏まえて、よりユーザーファーストな設定を目指して改善を繰り返しましょう。メニュー構成を整理したり、音声ガイダンスで読み上げる内容をブラッシュアップしたりすることで、わかりやすい案内ができるようになる可能性があります。定期的な見直しと改善により、顧客満足度の向上を目指しましょう。
オペレーターとの連携をスムーズにする
万が一、IVRの自動応答サービスで顧客が問題を解決できない場合は、速やかにオペレーターへ引き継ぐ必要があります。IVRではよくある質問の自己解決が期待できる一方で、定型化できない複雑な質問に関しては、引き続きオペレーターによる対応が求められます。電話業務の自動化にともない顧客がストレスを感じることがないよう、導入時に十分に考慮して運用を設計しましょう。
顧客属性に合った対話方式を設定する
IVRの対話方式には、「DTMF(プッシュ)入力」や「発話による選択肢入力(ボイスボット)」などの種類があります。音声認識を利用したボイスボットは手入力の負担がなく便利である一方で、一般的に年配者の顧客層には従来型のプッシュ入力が好まれる傾向にあります。同様に、桁数の多い会員番号やカード番号の入力では、プッシュ入力のほうが確実で安心感につながる場合もあるでしょう。顧客の状況や環境に応じて対話方式を設定することが重要です。
コールセンターにおけるIVRの活用事例
IVR導入で問い合わせ対応を最適化し、柔軟な運用と顧客満足度向上を実現した企業の事例です。
集合住宅向けサービスを提供する企業では、引っ越しシーズンや災害時に問い合わせが急増し、呼量の波が激しいという課題を抱えていました。加えて、顧客数の増加にともない通常時の電話対応の負担にも悩んでいました。その一方で、人員不足や採用難の背景もあり、繁忙期や有事の際のみオペレーターを増員するのは難しいのが現状です。そこで、課題解決へ向けてIVRの導入に踏み切りました。
IVRの導入後は、「あふれ呼」で顧客からの電話がつながらない場合にSMS送信で案内を行い、チャットボットやFAQページでスムーズに対応できる状態を実現。利便性が高まり、発信者のストレスを軽減できました。また、IVRは設定を柔軟に変更できるため、災害時や緊急時に即時にガイダンスの設定を変えることで、有事の際の対応がスムーズになったのも大きな効果です。
【導入事例】IVRを使って解決チャネルの最適化を目指しています!
IVRを導入してコールセンター業務の効率化を進めよう
今回は、IVRの基礎知識、導入のメリット、サービスの選び方についてお伝えしました。IVRは不動産業界や製造業界、旅行業界など、さまざまな現場で導入が進んでいます。コールセンターの対応品質向上や業務の効率化には、IVRの導入がおすすめです。
コールセンターの改善施策をご検討の際は、電話放送局の「DHK CANVAS」をご活用ください。「DHK CANVAS」は、オペレーターに代わって自動音声応答システムがユーザーの問い合わせに応対するサービスです。導入の手軽さや高いセキュリティ、回線の安定性などが多くの企業様からご好評をいただいており、導入事例は1,500社以上を誇ります。
また、ユーザーからのコールが集中し、機会損失を招いている場合は、「あふれ呼IVR」もおすすめです。「あふれ呼IVR」はユーザーからのオーバーフローした入電を自動転送し、コールバック情報としてオペレーターに報告するシステムです。オペレーターは受付データをもとにコールバックできるため、問い合わせの取りこぼしを防げるようになります。IVRシステムの導入をご検討の際は、ぜひ資料請求や無料のデモ視聴をお試しください。
なお、電話放送局が提供するIVRサービスの導入事例は、以下のページからご覧いただけます。IVRの導入を検討し始めたら、まずは各企業の導入方法や活用例を参考にしてはいかがでしょうか。具体的な企業の事例を通じて、IVR活用のノウハウや運営に役立つヒントをチェックしていただけます。ぜひ本記事と併せてお読みください。
【参考記事】導入事例
DHK CANVAS
あふれ呼IVR
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