2026/10/10

クラウドPBXの構成図|オンプレとの違い、3つの型と必要な機器、IVR連携まで

「クラウドPBXに切り替えたいけれど、今の電話機と回線がどうつながっているのか、社内で説明できる人がいない」「ベンダーの提案書に構成図が載っているものの、どこを見ればいいのか分からない」。電話の入れ替えを任された担当者からは、こうした声がよく聞かれます。クラウドPBXの構成図とは、電話の交換機(PBX)を社内ではなくクラウド上に置き、インターネットを通じて社内外の電話機やスマートフォンとつなぐ形を1枚に表したものです。構成は大きく「完全クラウド型」「ゲートウェイ型」「ハイブリッド型」の3つに分かれ、どれを選ぶかは今の電話番号と回線をどこまで残すかで決まります。本記事では、オンプレミスのPBXとの違いを構成図で比べたうえで、3つの型の組み方と必要な機器、用途別の構成、IVR(自動音声応答)やボイスボットを組み込む位置、自社の構成図を描く手順までを解説します。

目次

・クラウドPBXの構成図とは?

・オンプレミスPBXとクラウドPBXの構成図はどこが違う?

・クラウドPBXの構成図は3つの型に分かれる

・用途別に見るクラウドPBXの構成図

・IVR・ボイスボットはクラウドPBXのどこに組み込む?

・自社のクラウドPBX構成図を描く5つのステップ

・構成図に書き込んでおきたいセキュリティと障害対策

・よくある質問

・まとめ

クラウドPBXの構成図とは?

クラウドPBXの構成図とは、外からかかってきた電話が、どの回線を通り、どこの交換機で振り分けられ、どの端末で鳴るのかを1枚に描いたものです。電話の「通り道」が分かる図と考えると、ベンダーの提案書も読みやすくなります。ここでは、構成図に必ず出てくる要素と機器の名前を先に押さえておきます。

構成図に描く4つの要素

どの型のクラウドPBXでも、構成図は「外線」「PBX」「ネットワーク」「端末」の4つでできています。

外線は、社外とつながる電話回線のことです。NTTのひかり電話のような光回線の電話サービスや、0120・0570といった番号のサービスがここに入ります。PBXは、外線と内線をつなぎ、着信を担当者や部署に振り分ける交換機です。従来は社内の機械室に置いていましたが、クラウドPBXではこれが事業者のデータセンターに移ります。

ネットワークは、PBXと端末を結ぶ通り道です。社内LAN、インターネット回線、拠点間をつなぐVPN、スマートフォンのモバイル回線が含まれます。端末は、実際に話すための機器で、IP電話機、パソコンのソフトフォン、スマートフォンのアプリが代表的です。PBXそのものの機能や種類については、PBXとは?機能や種類、ビジネスフォンとの違いで詳しく解説しています。

構成図に出てくる主な機器と用語

提案書の構成図には、普段なじみのない機器の名前が並びます。役割と置き場所を一覧にすると、次のようになります。

機器・用語 役割 置く場所
ONU 光回線の信号を
社内で使える形に変える
社内(回線の引き込み口)
ルーター 社内LANとインターネットを
つなぎ、通信を振り分ける
社内
VoIPゲートウェイ
(アダプター)
電話回線の音声とIPの音声を
相互に変換する
社内(ゲートウェイ型・
ハイブリッド型で使う)
PoEスイッチ LANケーブルで
IP電話機に電源も送る
社内
IP電話機 LANにつないで使う電話機 各席
ソフトフォン パソコンやスマートフォンを
内線電話にするアプリ
社内・在宅・外出先
SIP IP電話で発信・着信・切断を
やり取りする通信の決まり
機器同士の接続方式
SBC IP電話網の境目で、
接続の制御と不正な通信の遮断を行う
事業者側、または
大規模な社内網の出口

すべての機器が必ず登場するわけではありません。完全クラウド型ならVoIPゲートウェイは不要ですし、SBCは多くの場合、利用者ではなくクラウドPBXの事業者側が持っています。構成図を受け取ったら、まず「社内に置く機器はどれか」に印をつけると、自社で用意するものと事業者が用意するものの境目が見えてきます。

オンプレミスPBXとクラウドPBXの構成図はどこが違う?

いちばんの違いは、PBXが社内にあるか、クラウド上にあるかです。PBXの置き場所が変わることで、電話回線の入口と、内線が届く範囲も変わります。2つの構成図を並べて確認します。

社内にPBXを置くオンプレミスPBXと、データセンターのクラウドPBXにインターネットで端末をつなぐクラウドPBXの構成図を並べて比べた図

オンプレミスPBXの構成図

オンプレミスのPBXでは、外線が社内に引き込まれ、機械室などに置いたPBXの装置に入ります。PBXから各席の固定電話機までは、電話線や構内の配線でつながっています。外からの電話はPBXで振り分けられ、内線番号の電話機が鳴る仕組みです。

内線が届くのは、基本的に配線が届く範囲だけです。支店とも内線でつなぎたい場合は、拠点ごとにPBXを置き、専用線やVPNで装置同士を結びます。電話機を1台増やすにも、席替えで場所を移すにも、配線と設定の工事が伴うのがこの構成の特徴です。

クラウドPBXの構成図

クラウドPBXでは、PBXが事業者のデータセンターに置かれます。外線は事業者の側で電話網とつながり、社内には光回線のONUとルーター、LANのスイッチ、IP電話機やパソコンだけです。

社外の端末は、社内を経由せずにインターネットやモバイル回線から直接クラウドPBXにつながります。在宅勤務の社員のパソコンも、外出中の営業担当のスマートフォンも、構成図の上ではオフィスの電話機と同じ「内線」として描かれます。社内の機器が減る代わりに、社内ネットワークとインターネット回線の品質が通話の品質を左右するようになる点が、オンプレミスとの大きな違いです。

構成の違いを表で比べる

2つの構成の違いを、構成図を読むときの観点で整理しました。費用の違いは、PBX費用の相場で種類別に比べています。

比べる点 オンプレミスPBX クラウドPBX
PBXの置き場所 社内の機械室など 事業者のデータセンター
外線の入口 社内に引き込んだ電話回線 事業者側で電話網と接続
(ゲートウェイ型は社内にも入口)
内線が届く範囲 配線が届く範囲と、
専用線でつないだ拠点
インターネットに
つながる場所ならどこでも
席・拠点の追加 配線工事と装置の設定 管理画面で
アカウントを追加
通話品質を
左右するもの
PBXと電話回線 社内ネットワークと
インターネット回線
保守の担い手 自社、または保守契約先 PBX本体は事業者、
社内のネットワークは自社

表の最後の行は、移行の計画でつまずきやすいところです。クラウドPBXにすればPBX本体の保守からは手が離れますが、ルーターやスイッチ、Wi-Fiは引き続き自社の管理です。構成図に「ここから先は事業者」「ここまでは自社」という線を1本引いておくと、障害が起きたときにどこへ連絡すればよいかで迷わずに済みます。

クラウドPBXの構成図は3つの型に分かれる

ひとくちにクラウドPBXといっても、社内に何を残すかによって構成は大きく3つに分かれます。ここからは、それぞれの型の電話の流れと、向いている状況を順に紹介します。サービスの比べ方まで知りたい場合は、クラウドPBX比較もあわせてご覧ください。

完全クラウド型、ゲートウェイ型、ハイブリッド型の3つのクラウドPBXの構成図を並べ、それぞれの電話の流れと社内に残る機器を示した図

①完全クラウド型

完全クラウド型は、PBXも外線の入口もすべてクラウド側に置く構成です。社内に電話専用の機器はほとんど残りません。

電話の流れ

お客様がかけた電話は、電話網から事業者のクラウドPBXに届きます。クラウドPBXは着信のルールに従って、どの内線を鳴らすかを決め、インターネットを通じて社内のIP電話機やパソコン、社外のスマートフォンを同時に鳴らします。社内に必要なのは、光回線のONU、ルーター、スイッチと端末だけです。

向いている状況と注意点

オフィスの新設や移転、テレワークが中心の働き方、拠点の増減が多い会社に向いています。電話機を置かずに、スマートフォンだけで運用する形も可能です。

一方で、今使っている固定電話の番号を新しいサービスにそのまま移せるかは、番号の種類と事業者によって変わります。050で始まる番号を新しく使う前提のサービスもあるため、代表番号を変えたくない場合は、契約前に番号の扱いを必ず確認してください。

②ゲートウェイ型(アダプター設置型)

ゲートウェイ型は、今契約している電話回線と番号を残したまま、交換機の役割だけをクラウドに移す構成です。社内にVoIPゲートウェイ(アダプター)を置くことから、アダプター設置型とも呼ばれます。

電話の流れ

お客様の電話は、これまでどおり社内に引き込んだ光回線の電話サービスに届きます。そこからVoIPゲートウェイが音声をIPの形に変え、インターネット経由でクラウドPBXに渡します。クラウドPBXが振り分けを決め、社内外の端末を鳴らすのは完全クラウド型と同じです。発信するときは逆の順で、クラウドPBXからゲートウェイを通って社内の回線から外へ出ていきます。

向いている状況と注意点

長年使ってきた代表番号を変えたくない会社や、名刺・看板・Webサイトに載せた番号をそのまま使いたい会社に向いています。今の回線契約を活かせるため、移行時に取引先へ番号変更を案内する手間もかかりません。

ただし、外線の入口が社内に残るため、オフィスの停電や回線の故障は着信に影響します。ゲートウェイとルーターを無停電電源装置(UPS)につなぐ、回線が止まったときにスマートフォンへ転送するといった備えを、構成図に書き加えておくと安心です。

③ハイブリッド型

ハイブリッド型は、今あるオンプレミスのPBXを残しながら、一部の拠点や在宅勤務の社員だけをクラウドPBXにつなぐ構成です。

電話の流れ

本社はこれまでどおり社内のPBXで電話を受け、支店や在宅の社員はクラウドPBXにつながります。2つのPBXはSIPなどで結ばれ、本社と支店の間でも内線番号でかけ合える状態にしておきます。外からの電話は、本社のPBXで受けてクラウド側の内線に回すことも、その逆も可能です。

向いている状況と注意点

PBXの保守期限がまだ先にある大規模な組織や、拠点ごとに順番に切り替えたい会社に向いています。一度に全社を切り替えずに済むので、業務を止めるリスクを抑えやすい構成です。

その反面、2つのPBXの設定をそろえ続ける手間がかかり、障害が起きたときにどちら側の問題かの切り分けも複雑になります。最終的にどの時点で全面クラウドに寄せるのか、移行の終わりまで構成図に書いておくことが大切です。自治体のように庁舎や部署が多い組織での進め方は、自治体のクラウドPBX導入で紹介しています。

3つの型はどう選ぶ?

型の選び方は、「今の電話番号と回線を残したいか」と「今のPBXをまだ使い続けたいか」の2つでほぼ決まります。番号も回線も変えてよいなら完全クラウド型、番号と回線は残したいならゲートウェイ型、PBXごと残したいならハイブリッド型が出発点です。

型 今の番号・回線 社内に残る
電話の機器
向いている状況
完全
クラウド型
事業者側に移す
(番号の扱いは要確認)
ほぼなし
(端末とネットワーク機器)
新設・移転、
テレワーク中心
ゲートウェイ型 そのまま残す VoIPゲートウェイ 代表番号を
変えたくない
ハイブリッド型 そのまま残す オンプレミスのPBX、
固定電話機
PBXの保守期限が先、
拠点ごとに順に移行

用途別に見るクラウドPBXの構成図

同じ型でも、使い方によって構成図に書き足すものが変わります。ここでは、相談の多い多拠点・テレワークと、コールセンターの構成を取り上げます。

多拠点・テレワークではどう組む?

拠点は各拠点のインターネット回線から直接クラウドPBXにつなぎ、在宅や外出先はスマートフォンとパソコンのアプリで内線にするのが基本の組み方です。決めるべきは、拠点や自宅からクラウドPBXまでの通り道をどう確保するかです。

拠点はインターネット回線かVPNでつなぐ

各拠点は、それぞれのインターネット回線から直接クラウドPBXにつなぐのが最もシンプルな構成です。拠点同士で内線を使うためだけに専用線を引く必要はありません。社内システムへのアクセスと同じ経路で音声も通したい場合は、拠点間をVPNで結び、本社の出口からクラウドPBXにつなぐ構成もとれます。ただしこの場合、本社の回線に全拠点の通話が集まるため、帯域に余裕を持たせておく必要があります。

在宅・外出先はスマートフォンとパソコンで内線にする

在宅勤務の社員や外出の多い営業担当は、スマートフォンやパソコンのアプリでクラウドPBXにつながります。会社の代表番号で発信でき、内線の転送も受けられるため、電話番のための出社は不要です。テレワークでの電話の受け方は、コールセンターをテレワーク化するメリットでも紹介しています。

コールセンターでは何を加える?

コールセンターでは、PBXの周りに着信を振り分ける仕組みや、顧客情報と連携する仕組みが加わります。構成図には、電話の流れとデータの流れの両方を描くのが一般的です。

着信を振り分けるACDとIVR

着信を空いているオペレーターや適切なスキルを持つ担当者に順番に割り振るのが、ACD(着信呼自動分配)です。その手前で用件を聞き、窓口を振り分けるのがIVR(自動音声応答)です。構成図では、電話網→IVR→ACD→オペレーター、という順で並べると流れが読みやすくなります。

顧客情報とつなぐCTIと通話録音

CTIは、電話とコンピューターを連携させる仕組みです。着信と同時に、発信者番号から顧客管理システム(CRM)の画面を開くのが代表的な使い方です。通話録音のサーバーや、録音を文字にする音声認識の仕組みも、ここに加わります。こうした機能をまとめてクラウドで使う形は、クラウドコールセンターとも呼ばれます。

IVR・ボイスボットはクラウドPBXのどこに組み込む?

IVRやボイスボットを組み込む位置は、「PBXの前で全件を受ける」「あふれた電話と時間外だけを回す」「通話の途中で転送する」の3通りです。どこに置くかによって、電話の流れも、構成図で確かめるべき点も変わります。電話放送局の導入事例から、それぞれの構成を紹介します。

PBXの前に置く、あふれた電話と時間外だけ回す、通話の途中で転送する、の3通りでIVR・ボイスボットをクラウドPBXに組み込む構成図

①PBXの前に置いて最初に用件を聞く

1つ目は、すべての電話をまずIVRで受け、用件に応じて「自動で受付を終えるもの」と「オペレーターにつなぐもの」に振り分ける構成です。0120などの番号の着信先をIVRに向けておき、人が対応すべき電話だけをPBXやコールセンターの番号へ転送します。

宅配水を販売する株式会社中京医薬品は、フリーダイヤルの用件振り分けで、追加注文の電話は電話放送局のIVRへ、それ以外の問い合わせは自社のコールセンターへ着信する形にしました。基幹システムは改修せず、IVRの側で顧客と商品を特定できる仕様にしています。その後、抗菌カートリッジの交換案内や、紙コップなど消耗品の注文も同時に受けられる仕組みを加えた結果、電話注文の80%を自動化しています(出典:導入事例 株式会社中京医薬品)。

代表電話でも同じ置き方ができます。電話放送局は自社の代表電話にボイスボットを置き、担当者名を伝えると、その担当者の携帯電話に直接転送されるようにしています。会社の電話機で鳴るのは総務部と代表宛の用件だけになり、月間の対応工数は約17%減りました(出典:導入事例 株式会社電話放送局)。取り次ぎの流れそのものを見直したい場合は、電話の取り次ぎが難しいのはなぜ?も参考になります。

②あふれた電話と時間外だけを回す

2つ目は、ふだんはこれまでどおりPBXからオペレーターにつなぎ、オペレーターが全員ふさがっているときや営業時間外のときだけ、IVRやボイスボットへ転送する構成です。人が受ける運用を変えずに、取りこぼしだけを自動で拾えます。

株式会社ダスキンは、エアコンクリーニングの繁忙期にオペレーターにすぐつながらない待ち呼が出たとき、ガイダンスで案内して、希望するお客様を自動音声の受付に転送する流れを作りました。営業時間外の電話も、同じように自動音声の受付へ回しています。現在では、エアコンクリーニングの注文の約10%を自動音声の受付でまかなっています(出典:導入事例 株式会社ダスキン)。

広告の直後のように、数分で着信が何倍にもなる窓口では、受け皿になるIVRの回線数も構成図に書いておきます。電話放送局のあふれ呼IVRは、300chの共用型を基本に、要望に応じて600ch・1,200chの共用型も用意しています。

③通話の途中でIVRへ転送する

3つ目は、オペレーターがお客様と話している途中で、通話をIVRに渡す構成です。クレジットカード番号のように、オペレーターに聞かせたくない情報を入力してもらう場面で使われます。

小林製薬株式会社の通信販売では、オペレーターが注文を受けた後にIVRへ外線転送し、お客様が自動音声の案内に沿ってカード情報を入力する仕組みにしました。入力されたカード情報は決済代行会社へ連携され、すぐに登録や決済ができます。IVRの番号を1つ用意するだけで、委託先を含む複数の拠点から同じ対応ができるため、既存の設備や運用を大きく変えずに済みました。処理時間は想定より75%、運用コストは想定より47%少なく抑えられています(出典:導入事例 小林製薬株式会社)。

組み込む前に構成図で確かめる3つの点

IVRやボイスボットをクラウドPBXの外側にあるサービスとして組み込む場合、構成図の上で次の3点を確かめておくと、導入後の想定外を減らせます。

転送を挟むと同時に受けられる数が変わる

今の番号からIVRへ転送してつなぐ構成では、同時に受けられる電話の数が、転送する側の回線数で頭打ちになります。DHK CANVASの公式サイトでも、転送を挟む場合は転送元の回線数が上限になると案内しています(出典:DHK CANVAS)。IVR側の回線をいくら増やしても、手前の回線が足りなければ話し中は減りません。

転送の通話料はかかる?

転送には、転送元から転送先までの通話料がかかるのが一般的です。電話放送局のあふれ呼IVRでは、外線転送に使う回線とIVRの回線が同じ通信キャリアの場合、外線転送時の通話料が発生しない通信キャリアもあると案内しています(出典:あふれ呼IVR)。呼量の多い窓口ほど、どのキャリアの回線をどこで転送するかが月々の費用に響きます。

受け付けたデータをどこに戻すか

IVRで受け付けた内容を、誰がどのシステムで処理するのかも構成図に描いておきます。電話放送局の自動受付IVRでは、顧客管理システムや基幹システムとのAPI連携に加え、オフライン環境などでAPI連携ができない場合は、必要な情報を定期的にアップロードする方法にも対応しています(出典:自動受付IVR)。

データの連携を自社で作り込むと、思わぬ手間が生まれることがあります。通信販売の株式会社ハーブ健康本舗は、あふれ呼IVRと受電管理システムをつなぐ自社ツールを開発したものの、エラーの頻発と数時間単位の復旧作業に悩まされていました。連携の構築を電話放送局に移した結果、エラー対応にかかる時間は0時間になっています(出典:導入事例 株式会社ハーブ健康本舗)。

IVRだけを先にクラウドへ移せる?

移せます。PBXの入れ替えとIVRの入れ替えは、同時に行う必要はありません。IVRだけを先にクラウドへ移し、PBXの更改は保守期限に合わせて後から行う、という順番もとれます。

ぴあ株式会社は、チケット販売の受付に使うIVRを約10年間オンプレミスで運用していましたが、2018年のリプレースを機にクラウドへの切り替えを検討し、電話放送局のサービスに移行しました。移行後はトラブルが大きく減ってクレームもなくなり、人件費は15%削減されています。テレワークの体制になってからも、出勤せずに変わりなく運用できていると話しています(出典:導入事例 ぴあ株式会社)。

自社のクラウドPBX構成図を描く5つのステップ

ベンダーに相談する前に、今の電話の構成を自社で1枚に描いておくと、提案の比較が格段に楽になります。ここでは、描く順番を5つのステップで紹介します。

ステップ1 電話番号と回線を洗い出す

最初に、会社が持っている電話番号をすべて書き出します。代表番号、部署ごとのダイヤルイン番号、0120や0570の番号、FAX番号のそれぞれについて、どの通信キャリアと契約していて、同時に何通話まで受けられる回線なのかを確認してください。

この一覧が、型を選ぶ材料になります。移したい番号と残したい番号を分けた時点で、完全クラウド型にするかゲートウェイ型にするかの見通しが立ちます。

ステップ2 端末と使う人の場所を数える

次に、電話を使う人と端末の数を、場所ごとに数えます。本社、支店、在宅、外出先のそれぞれに何人いて、固定の電話機が必要なのか、スマートフォンだけでよいのかも書き添えてください。受付やコールセンターのように席に電話機が必須の場所と、スマートフォンだけで足りる職種を分けておくと、IP電話機の台数を見積もりやすくなります。

ステップ3 社内ネットワークの余力を確かめる

クラウドPBXの通話は、社内LANとインターネット回線を通ります。同時に何通話が発生するかを見積もり、事業者が案内している1通話あたりの必要帯域を掛けて、回線に余力があるかを確かめるのが手順です。

あわせて、音声の通信をほかのデータより優先する設定(QoS)や、音声用のネットワークを分ける設定(VLAN)に、今のルーターやスイッチが対応しているかも見ておきます。会議室や倉庫など、Wi-Fiの電波が弱い場所でスマートフォンを内線として使う予定があるなら、その場所も構成図に書き込んでおきましょう。

ステップ4 着信から応答までの流れを書き込む

機器を並べたら、電話の流れを矢印で書き込みます。代表番号にかかった電話が、まず誰の電話を鳴らし、出られなかったら次にどこへ回るのか。営業時間外や休日はどうなるのか。ここまで描くと、IVRやボイスボットをどこに置くべきかも見えてきます。

時間帯によって流れが変わる場合は、平日の日中、昼休み、営業時間外の3枚に分けて描くと、抜けが見つかりやすくなります。

ステップ5 止まったときの迂回路を書き込む

最後に、どこかが止まったときに電話をどう受けるかを書き足します。社内の停電、インターネット回線の故障、オフィスに出社できない災害時の3つを想定し、それぞれで着信をどこへ回すかを決めておくことが大切です。コールセンターの事業継続の考え方は、コールセンターにおけるBCP対策で詳しく解説しています。

構成図で見つかりやすい課題と打ち手

5つのステップで構成図を描くと、移行の前に手を打っておきたい点が見えてきます。よく見つかる課題を、原因と構成での打ち手に分けて整理しました。自社の構成図に当てはまる行から確認してください。

見つかった課題 考えられる原因 構成での打ち手
試験の通話で
音が途切れる
音声とデータが
同じ回線を取り合っている
QoSで音声を優先し、
音声用のVLANを分ける
今の番号が
移せないと言われた
番号の種類や
事業者の条件が合わない
ゲートウェイ型で
今の回線を残す
着信が重なると
話し中になる
同時に受けられる
回線数が足りない
回線数を見直し、
あふれた電話をIVRで受ける
停電すると
電話が止まる
ルーターやゲートウェイに
予備の電源がない
UPSにつなぎ、
スマートフォンへの転送を設定
担当者に
つながるまでが長い
代表番号の電話を
人が受けて取り次いでいる
PBXの前に
ボイスボットを置いて振り分ける

構成図に書き込んでおきたいセキュリティと障害対策

クラウドPBXでは、通話も設定の操作もインターネットを通ります。構成図には機器のつながりだけでなく、通信をどう守るか、止まったときにどう続けるかも書き込んでおきます。

通信の暗号化と管理画面の守り方

通話の制御にはTLS、音声そのものにはSRTPといった暗号化の方式があり、事業者や機器によって対応が異なります。構成図の各線に「暗号化あり・なし」を書き込んでおくと、どこに確認が必要かが一目で分かります。

見落としやすいのが、着信のルールや音声を変更する管理画面です。誰でもどこからでも入れる状態だと、設定を書き換えられるおそれがあります。電話放送局のあふれ呼IVRでは、管理画面をSSL/TLSに対応させたうえで、アクセス元を固定のグローバルIPアドレスで制限できるようにしています(出典:あふれ呼IVR)。

障害時も電話を止めないには?

事業者の設備が冗長化されているかを確かめ、社内側にも迂回路を用意しておくことが基本です。データセンターが1か所しかなければ、その場所が止まったときに電話も止まってしまいます。電話放送局のクラウドサービスは、データセンターを複数拠点で運用し、7,000回線以上の回線で年間4,000万件以上を処理しています(出典:あふれ呼IVR)。

あわせて、110番や119番といった緊急通報に発信できるかどうかも確かめてください。番号の種類やサービスによっては発信できない場合があります。その場合は、緊急時に使う固定電話や携帯電話を別に確保しておくことを、構成図の欄外にでも書いておきましょう。

よくある質問

Q. クラウドPBXにすると、今の電話番号は使えなくなりますか?

番号の種類と選ぶ構成によって変わります。今の回線を残すゲートウェイ型やハイブリッド型なら、番号はそのまま使えます。完全クラウド型で番号を事業者側に移したい場合は、移せる番号かどうかを契約前に事業者へ確認してください。


Q. 構成図は自社で作る必要がありますか?

最終的な構成図は、ベンダーが提案や導入の際に作成するのが一般的です。ただし、今の番号・回線・端末の数と、着信がどう流れているかは自社にしか分かりません。現状の構成を自社で1枚に描いて渡すと、提案の精度が上がり、見積もりの比較もしやすくなります。


Q. 今使っているビジネスフォンの電話機はそのまま使えますか?

完全クラウド型やゲートウェイ型では、多くの場合IP電話機への入れ替えが必要です。ビジネスフォンの電話機は主装置とセットで動く設計のため、クラウドPBXに直接はつながりません。電話機を当面残したい場合は、主装置ごと残すハイブリッド型を検討します。


Q. 社内のインターネット回線はどのくらいの速さが必要ですか?

必要な帯域は、同時に発生する通話の数で決まります。事業者が案内している1通話あたりの必要帯域に、ピーク時の同時通話数を掛けて見積もります。社内のデータ通信と同じ回線を使う場合は、QoSで音声を優先する設定もあわせて確認してください。


Q. クラウドPBXとIVRは同じ事業者でそろえる必要がありますか?

必ずしも同じ事業者でそろえる必要はありません。IVRやボイスボットを別の事業者のサービスで用意し、番号の着信先や転送でつなぐ構成も一般的です。その場合は、転送をはさむことで同時に受けられる数や通話料がどう変わるかを、構成図の上で確かめておきます。


Q. 構成を決めてから使い始めるまで、どのくらいかかりますか?

構成の複雑さによって大きく変わります。完全クラウド型で端末がスマートフォン中心なら短期間で始められる一方、ハイブリッド型や拠点の多い構成では、拠点ごとの切り替え計画も含めて数か月単位で考えておくのが安全です。番号の移転には事業者側の手続きの期間もかかるため、早めに確認しておきましょう。

まとめ

クラウドPBXの構成図は、電話の通り道を1枚に描いたものです。型は、今の番号と回線を残すかどうか、今のPBXを使い続けるかどうかで、完全クラウド型・ゲートウェイ型・ハイブリッド型のいずれかに絞れます。そのうえで、多拠点やコールセンターなど用途に応じた機器を書き足し、IVRやボイスボットを置く位置を決めると、全体の構成が固まります。

最初の一歩として、会社の電話番号と回線、端末の数を書き出し、代表番号にかかった電話がどこを通って誰につながっているかを矢印で描いてみてください。描いてみると、PBXの入れ替えと一緒に見直すべき電話の受け方も見えてきます。株式会社電話放送局では、IVRとボイスボットの構成の設計から、既存のPBXやシステムとの連携、運用後の改善まで伴走しています。具体的な組み方は導入事例もあわせてご覧ください。

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監修者情報

メーカーのコールセンター運営管理に従事し、自らIVRを導入。
不要な入電を抑制しつつ売上向上を実現するなど、現場視点で成果を創出。電話放送局では営業マネージャーとして10年以上従事し、クラウド型IVRの業界シェア1位獲得に貢献。
コロナ禍におけるユーザーのデジタル行動変容を受け、マーケティング部門を立ち上げ、責任者に就任。インサイドセールスを統括し、営業部門との連携を強化。自動音声応答の導入、運用、集客、営業の幅広い経験を有する。
IVRおよびコールセンター市場における20年以上の知見を活かし、ユーザーの検索行動やニーズを深く理解したマーケティング戦略を展開。
検索連動広告の運用経験を基に、現場で役立つ実践的な情報を発信し、読者のビジネス成功を力強くサポートします。

監修者 前田泰延(株式会社電話放送局) マーケティング責任者 営業部営業推進課 課長 前田泰延

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