チャットボットのシナリオの作り方|設計6ステップと会話例、行き止まりを防ぐ分岐
2026/10/09
「チャットボットを入れることになったけれど、シナリオを何から書けばいいのか分からない」「作ってはみたものの、途中で離脱されてしまい、結局電話が減らない」。こうした悩みを抱える担当者は少なくありません。チャットボットのシナリオとは、利用者を答えまで案内する会話の流れのことで、問い合わせの多い用件から順に「入口・分岐・出口」の3つを決めていけば作れます。うまく動かないシナリオの多くは、選択肢が当てはまらない、深すぎて戻れない、有人につながらないといった「行き止まり」を抱えているのが共通点です。本記事では、シナリオを作る6つのステップと、そのまま書き写せる設計シート、通販の問い合わせを例にした会話例、行き止まりを防ぐ分岐の決め方までを解説します。会話例と設計シートは記事の中ほど、うまく動かないときの直し方は表にまとめています。
目次
・まとめ
チャットボットのシナリオとは?
チャットボットのシナリオとは、利用者が知りたい答えや手続きにたどり着くまでの会話の流れを、あらかじめ設計したものです。どの質問を最初に出すか、どの選択肢で枝分かれさせるか、最後にどこへ案内するかを決めた「会話の設計図」と考えると分かりやすいでしょう。ここでは、シナリオで決めることと、チャットボットのタイプによる役割の違いを整理します。
シナリオで決めることは「入口・分岐・出口」の3つ
シナリオで決めることは、大きく分けて3つです。1つ目は、利用者が最初に目にする「入口」で、あいさつ文と最初に並べる選択肢がこれにあたります。2つ目は、利用者の答えに応じて会話を枝分かれさせる「分岐」です。
3つ目が、会話の終わりにあたる「出口」です。出口には、回答を表示して終わるもの、申込みや変更などの手続き画面へ案内するもの、オペレーターやお問い合わせフォームに引き継ぐものがあります。シナリオづくりでつまずく担当者の多くは、入口と分岐は丁寧に作る一方で、出口の種類を決めないまま書き始めています。
FAQページとの違いは?
FAQページは、利用者が自分で質問の一覧から答えを探す仕組みです。これに対してシナリオは、チャットボットの側から質問を投げかけ、利用者の状況を絞り込みながら答えへ連れていきます。
たとえば「返品したい」という用件でも、商品が届いてから何日たったか、未開封かどうかでも案内は変わるでしょう。FAQページでは利用者が条件ごとの説明を読み比べる必要がありますが、シナリオなら2〜3問のやり取りで、その人に合う答えだけを出せます。FAQの整え方そのものは、FAQチャットボットの作り方で詳しく解説しています。
シナリオ型・AI型・生成AI型でシナリオの役割はどう変わる?
シナリオがもっとも重要になるのはシナリオ型で、会話の流れのすべてを人が設計します。AI型や生成AI型でも、手続きの順番や有人への引き継ぎといった「外してはいけない流れ」はシナリオで固定するのが一般的です。各タイプの仕組みはチャットボットの種類と特徴で整理しています。
| タイプ | シナリオが 受け持つ範囲 |
向いている用件 |
|---|---|---|
| シナリオ型 | 会話の流れのすべて。選択肢と分岐を人が決める | 手続きの案内 営業時間・料金などの定型の質問 |
| AI型 | 入口と手続きの流れ。自由入力の質問はAIが登録済みの回答から選ぶ | 言い回しが人によって揺れる質問 |
| 生成AI型 | 手続き・本人確認・有人への引き継ぎなど、答えを固定したい部分 | 社内規程や商品情報など、資料の量が多い質問 |
どのタイプを選んでも、「この用件はこの順番で聞き、最後はここへ案内する」という骨組みは人が決めます。骨組みのないまま生成AIに任せると、手続きの説明が毎回違う、必要な確認を飛ばすといった事故につながりかねません。
利用者はシナリオのどこでつまずくのか?
利用者がつまずくのは、自分の用件に合う選択肢が見つからないとき、そして結局オペレーターにつながるなら二度手間だと感じたときです。作り方の前に、この2点を押さえておくと設計の判断がぶれません。
株式会社電話放送局が50〜70代の男女241名に行った調査では、自動応答(ボイスボット)を使うときの不安の上位に「結局オペレーターにつながるなら二度手間ではないか」22.0%、「想定されたパターン以外の用件に対応できないのではないか」19.5%が並びました。電話での不満でも「自動音声のプッシュ番号操作が複雑で面倒だった」が17.0%にのぼり、問い合わせ先に求めることでは「1回のやり取りで確実に解決すること」が36.5%でした。(出典:コールセンター利用とAI自動応答(ボイスボット)に関する意識調査)
調査の対象は電話の自動応答ですが、ここに出ている不安はチャットボットのシナリオにもそのまま当てはまります。利用者がつまずく場面は、次の4つに集約できます。
選択肢に自分の用件が見当たらない
最初のメニューに並ぶ選択肢が、会社の部署名やサービス名で書かれていると、利用者は自分の用件がどれにあたるのか判断できません。「料金プランについて」「契約内容について」と並んでいても、「引っ越すので住所を変えたい」人はどちらを押せばよいか迷います。選択肢は、利用者が頭の中で言っている言葉に近づけることが基本です。
階層が深すぎて、戻り方が分からない
選択を4回、5回と重ねても答えが出ないと、利用者は途中で画面を閉じてしまいます。さらに、1つ前に戻るボタンや最初からやり直すボタンがなければ、選び間違えた瞬間に行き止まりです。
最後に「お電話ください」で終わる
何問も答えたあとに電話番号だけを表示されると、利用者はそれまでの時間が無駄になったと感じます。電話をかけた先でも、同じ内容を一から説明し直さなければなりません。これが調査で上位に出た「二度手間」の正体といえます。
自由入力に答えが返ってこない
シナリオ型でも入力欄を開けている場合、自由に書いた質問に「申し訳ありません、分かりません」だけが返ると、そこで会話が止まります。答えられない入力が来たときに、どの選択肢に戻すかを決めておく必要があります。
チャットボットのシナリオの作り方6ステップ
ここからは、シナリオを作る手順を6つのステップで紹介します。順番どおりに進めれば、書いている途中で「この分岐はどこへつなぐのか」と迷うことが減ります。
ステップ1 目的と任せる範囲を決める
最初に、チャットボットで何を減らしたいのか、何を増やしたいのかを1つに絞ります。「電話の件数を減らす」「夜間の問い合わせに答える」「資料請求を増やす」のどれを目的にするかで、最初のメニューに並べる用件も、出口の置き方も変わるためです。
目的が決まったら、チャットボットに任せる用件と任せない用件を線引きします。本人確認が必要な手続き、苦情、体調や安全に関わる相談などは、最初から有人へ案内すると決めておくほうが安全です。ここで決めた線引きは、ステップ4で「有人への出口」として骨組みに入れます。
ステップ2 問い合わせを集めて、用件ごとに数える
シナリオの材料は、実際に寄せられている問い合わせです。想像で用件を並べると、担当者が「よく聞かれる」と思っている質問と、実際に多い質問がずれていることがよくあります。
集めるデータ
電話の対応記録、問い合わせメール、お問い合わせフォームの内容、FAQページの閲覧数の4つが主な材料です。少なくとも1か月分を集め、1件ずつ「何をしたくて連絡してきたか」を短い言葉で分類します。電話の用件を分類する方法は、コールリーズン分析の手順がそのまま使えます。
件数の多い順に並べる
分類が終わったら、用件を件数の多い順に並べ、上位の用件だけで全体の何割になるかを計算します。シナリオを作る順番も、この上位からです。件数の少ない用件まで最初から作り込むと、公開が遅れるうえ、メニューが長くなって上位の用件が見つけにくくなります。
ステップ3 用件ごとのゴールを決める
上位の用件それぞれに、会話をどこで終えるかを決めます。ゴールは「答えを表示する」「手続きの画面へ案内する」「有人につなぐ」の3種類に分けると整理しやすくなります。
たとえば「営業時間を知りたい」は答えの表示で完結しますが、「住所を変えたい」はマイページの変更画面への案内がゴールです。「請求額に納得できない」のように事情を聞く必要がある用件は、有人へ引き継ぐことをゴールにします。ゴールを先に決めておくと、ゴールまでに何を聞けばよいかが逆算で決まります。
ステップ4 分岐の骨組みをフローチャートで描く
ゴールが決まったら、入口からゴールまでの分岐を図に描きます。紙やホワイトボードでも、表計算ソフトでもかまいません。いきなりツールの管理画面で作り始めると、全体の形が見えないまま枝が増えていきます。
1つの分岐で聞くことは1つだけにする
1つの質問で「商品の種類」と「届いた日」を同時に聞くと、選択肢の組み合わせが一気に増えます。1回の質問で確認することは1つに絞り、答えによって次の質問を変える形にします。
選択肢の数と階層の深さに上限を決める
1つの質問に並べる選択肢はおおむね5つまで、ゴールまでの選択は3回程度までを目安にすると、画面の中で迷いにくくなります。この上限を超えそうな用件は、最初のメニューを分けるか、用件の分類そのものを見直すサインです。
すべての分岐に「その他」と「有人」の出口を置く
どの選択肢にも当てはまらない人のために、各質問に「その他・この中にない」を用意し、その先を必ずどこかの出口につなぎます。この出口が無い分岐は、利用者にとって行き止まりになります。
ステップ5 シナリオの文言を書く
骨組みができたら、各分岐でボットが話す文章と、選択肢のボタンの文言を書きます。ここでは、骨組みと文言を1つの表にまとめる「設計シート」を作っておくと、関係者の確認と、ツールへの登録が楽になります。
| 番号 | ボットが 表示する文 |
選択肢 | 選んだ後の 行き先 |
|---|---|---|---|
| 1 | ご用件をお選びください。 | 商品が届かない 返品・交換したい 注文を変更したい その他 |
2へ 5へ 8へ 有人チャットへ |
| 2 | ご注文からどのくらいたっていますか。 | 3日以内 4日以上 分からない |
3へ 4へ 4へ |
| 3 | 通常、ご注文から3日以内に発送します。発送後はメールでお知らせしています。 | 解決した まだ分からない |
終了 4へ |
| 4 | 配送状況はマイページの注文履歴から確認できます。 | 確認できた 確認できない |
終了 有人チャットへ |
番号の列は、分岐を行き来するための住所です。「選んだ後の行き先」が空欄のまま残っている行があれば、それが行き止まりになります。シートを書き終えたら、行き先の列だけを上から見て、空欄がないかを確認してください。
文言を書くときは、1回の吹き出しを2〜3行に収め、選択肢は利用者の言葉で「〜したい」「〜が分からない」の形にそろえます。社内の呼び方(「ステータス照会」「契約変更手続き」など)は、利用者には通じないことがあります。
ステップ6 テストして、公開後はログで直す
ツールに登録したら、公開前に社内でテストを行いましょう。作った本人ではなく、問い合わせ対応の担当者など、シナリオを見ていない人に実際の用件で操作してもらうと、選択肢の言葉のずれが見つかります。
公開後は、会話のログを週に1回ほど確認します。見るのは、どの分岐で画面を閉じた人が多いか、「その他」がどれだけ押されたか、有人への引き継ぎがどの用件で多いかの3点です。運用で追う指標の決め方はチャットボット運用の課題とKPIで詳しく紹介しています。
チャットボットのシナリオ例|通販の「商品が届かない」
ここでは、ステップ5の設計シートを実際の会話に起こした例を紹介します。通販サイトで多い「注文した商品が届かない」という問い合わせを想定しています。
| 順番 | ボット | 利用者 |
|---|---|---|
| 1 | こんにちは。ご用件をお選びください。 | 「商品が届かない」を選ぶ |
| 2 | ご注文からどのくらいたっていますか。 | 「4日以上」を選ぶ |
| 3 | お待たせしております。配送状況はマイページの注文履歴から確認できます。こちらから開けます。 | リンクを開き、「確認できない」を選ぶ |
| 4 | 担当者にお引き継ぎします。ご注文番号を入力してください。ここまでの内容は担当者にお伝えします。 | 注文番号を入力する |
| 5 | 担当者が確認しますので、このままお待ちください。 | 有人チャットで続きを話す |
この会話例で押さえている3つのこと
1つ目は、2問目で「注文から何日たったか」を聞き、発送前の人と発送後の人を分けている点です。まだ発送の目安に入っていない人は、目安を伝えるだけで解決します。
2つ目は、答えを文章で説明しきろうとせず、マイページへのリンクで手続きの画面に連れていっている点です。配送状況のように人によって答えが違う内容は、チャットの中で説明するより、本人の画面を開いてもらうほうが早く終わります。
3つ目は、有人へ引き継ぐ前に注文番号を聞き、「ここまでの内容は担当者にお伝えします」と伝えている点です。担当者は会話の履歴と注文番号を見てから話し始められるため、利用者が同じ説明を繰り返さずに済みます。
社内ヘルプデスクなら、どう変わる?
社内向けでも、組み立て方は同じです。違うのは、入口の選択肢が「パスワードを忘れた」「パソコンがネットにつながらない」「経費精算のやり方が分からない」のような社員の用件になる点と、出口の多くが社内の申請画面や手順書になる点です。社内の問い合わせを整理する方法はナレッジベースの作り方やヘルプデスク効率化の進め方も参考になります。
行き止まりを防ぐ分岐の決め方
シナリオの出来は、分岐の終わり方で決まります。ここでは、行き止まりを作らないために、分岐を設計するときに決めておくことを紹介します。
選択肢は何個までにすればよい?
1つの画面に並べる選択肢は、5つ程度までにとどめるのが目安です。スマートフォンでは、それ以上並べるとスクロールしないと全体が見えず、下のほうの選択肢は読まれにくくなるためです。
用件が多くて5つに収まらない場合は、上位の4つを並べ、残りを「その他のご用件」にまとめて次の画面で出す形にします。最初の画面には、ステップ2で数えた件数の多い用件を上から順に置きます。
戻るボタンと「最初から」を必ず置く
選び間違えた利用者が1つ前に戻れるよう、各画面に「1つ前に戻る」と「最初からやり直す」を用意します。戻る手段のないシナリオは、選び間違えたときに画面を閉じるしかありません。
有人に引き継ぐときは、それまでの回答を渡す
有人チャットや電話に引き継ぐときは、それまでに利用者が選んだ内容と入力した情報を、担当者が見られる形で渡します。チャットボットのツールによっては、有人チャットへの切り替え時に会話の履歴が自動で引き継がれるものもあります。電話に案内する場合でも、受付番号を表示して「この番号をお伝えください」と添えれば、オペレーターはすぐに履歴を探せるはずです。
営業時間外の出口を用意する
有人チャットや電話の受付時間外に、「担当者におつなぎします」と出しても誰も応答しません。時間外は、お問い合わせフォームへの案内や、翌営業日の折り返し予約など、その時間に動く出口へ切り替わるようにしておきます。
「答えられない」で会話を止めない
自由入力に答えられなかったときは、「うまくお答えできませんでした」で終えず、最初のメニューか、近い用件の選択肢を並べ直します。2回続けて答えられなかった場合は有人の出口を出す、といったルールを決めておくと、利用者が同じ場所で何度もつまずくことを防げます。
シナリオがうまく動かないときの直し方
公開したシナリオは、最初から思いどおりには動かないものです。ここでは、ログに出やすい症状ごとに、原因と直し方を表にまとめました。自社のログで当てはまる症状の行から確認してください。
| ログに出る症状 | 考えられる原因 | まず打つ手 |
|---|---|---|
| 最初の画面で 閉じる人が多い |
選択肢が社内の言葉で、自分の用件が見つからない | 選択肢を「〜したい」の形に書き直す 件数の多い用件を上に置く |
| 「その他」が 多く押される |
上位の用件がメニューに入っていない | 「その他」の後の入力内容を集計し、多いものを選択肢に足す |
| 途中の分岐で 離脱が多い |
階層が深い、質問の意味が分かりにくい | その分岐を1つ減らせないか見直す 質問文を短くする |
| 特定の用件で 有人への切り替えが多い |
回答が説明しきれていない、手続きの画面に案内できていない | 回答を手続き画面へのリンクに変える もともと有人向きの用件なら、早めに有人へ案内する |
| チャットの利用は多いのに 電話が減らない |
チャットで解決できない用件が電話に回っている | 電話の用件とチャットの用件を並べて比べ、電話に多い用件のシナリオを足す |
表の5つ目は見落とされやすい症状です。チャットボットの利用件数だけを見ていると順調に見えても、電話の用件を並べると、チャットで解決できなかった人がそのまま電話をかけていることがあります。電話の記録はシナリオを直すための材料にもなるため、コールセンターのKPIとあわせて、用件別の件数を毎月そろえておくと比較が楽になります。
電話の自動応答にもシナリオの考え方は使える?
使えます。電話の自動音声(IVR)や、話した言葉で用件を聞き取るボイスボットも、入口・分岐・出口でできた会話の流れで動くという点は同じです。電話ではこの流れを「コールフロー」と呼ぶことが多く、作り方はコールフローの設計手順で紹介しています。ここでは、チャットと電話でシナリオがどう違うかを整理します。
チャットと電話では選択肢の見せ方が違う
チャットでは、利用者が画面で選択肢を見比べられます。電話では、利用者は音声を聞いて覚えるしかないため、一度に案内できる選択肢はチャットより少なくなります。
| 項目 | チャットボット | 電話(IVR・ボイスボット) |
|---|---|---|
| 選択肢の 見せ方 |
画面に並べて見比べてもらえる | 音声で読み上げるため、覚えられる数は少ない |
| 戻り方 | 戻るボタンで1つ前に戻れる | 「もう一度聞く場合は9番」など、戻る番号を案内する |
| 答えの 渡し方 |
リンクや画像で手続きの画面を見せられる | SMSでURLを送り、画面に移ってもらう |
| 有人への 引き継ぎ |
有人チャットへ履歴ごと切り替える | オペレーターへ転送する。混雑時は折り返しの予約を受ける |
選択肢と案内を削ると、迷う人が減る
前橋市の国民健康保険課では、年間約3万2千件、多い日には1日200件以上の電話を職員が受けていました。用件を分析して「自動音声で案内できる内容」と「職員が聞くべき内容」を分け、問い合わせの多い項目から音声の案内を作っています。
導入当初は、説明漏れがないようにとの思いから案内が長くなり、選択肢も増えがちでした。不要なアナウンスを思い切って削ったところ、市民が途中で迷いにくい流れになり、年間で約550時間の業務時間の削減につながっています。(出典:前橋市 国民健康保険課の導入事例)チャットボットのシナリオでも、丁寧に書こうとするほど選択肢と文章が増えていく点は同じです。
案内の言葉を変えるだけで、選ばれ方が変わる
ネスレ日本では、携帯電話からの着信の一部を自動音声で受け、希望した人にチャットの案内をSMSで送る運用を始めました。導入当初はSMSの送信を希望する人が20%でしたが、案内の文言を変えたところ51%まで上がり、SMSのURLからチャットを希望した人は85%にのぼっています。(出典:ネスレ日本の導入事例)同じ流れでも、利用者にかける言葉ひとつで、選ばれる出口が変わることを示す例です。
電話からチャットボットへ案内することもできる
ギガプライズでは、オペレーターが取りきれない電話を自動音声で受け、チャットボットやFAQサイトへ案内しています。その結果、チャットボットとFAQの利用率が10%上がりました。(出典:ギガプライズの導入事例)
チャットボットのシナリオの出口に電話があるように、電話のシナリオの出口にチャットボットを置くこともできます。どちらか一方で完結させようとせず、用件ごとにいちばん早く終わるチャネルへ送る設計が、利用者にとっての「1回のやり取りで解決」に近づきます。音声とチャットの組み合わせ方は、ボイスボットと相性が良い業務も参考にしてください。
シナリオ型だけで足りないときは、AIとどう組み合わせる?
自由入力の質問が多い場合は、入口と手続きの流れをシナリオで固め、自由入力の受け止めだけをAIに任せる組み合わせが現実的です。すべてをAIに任せるか、すべてをシナリオで作るかの二択にしないことが、運用の手間を抑えるうえでのポイントです。
AIに任せる部分と、シナリオで固める部分を分ける
言い回しが人によって揺れる質問(「ログインできない」「入れない」「パスワードが通らない」など)は、AIに意図を読み取らせると拾いやすくなります。一方で、本人確認、解約や変更の手続き、料金の案内など、答えを毎回同じにしたい部分はシナリオで固定するのが安全です。AIが用件を読み取ったあとに、シナリオの分岐へ渡す形にすると、両方の良さを使えます。
生成AIを使うときに決めておくこと
生成AIは、社内資料やマニュアルを読み込ませて答えを作れる反面、資料にない内容をもっともらしく答えてしまうおそれもあります。答えてよい範囲、答えられないときの出口、有人に渡す条件の3つは、シナリオとして先に決めておく必要があります。AIを使った応答の考え方は、AIエージェントとはや生成AI×ボイスボットでできることの記事にまとめました。
よくある質問
Q. シナリオは何本くらい用意すればよいですか?
最初は、問い合わせ件数の多い上位10〜20の用件から作り始めるのが現実的です。件数の少ない用件まで最初から作ると、公開が遅れ、メニューも長くなります。公開後に「その他」の入力内容を見ながら、多いものから足していきます。
Q. シナリオを作るのに、どれくらいの期間がかかりますか?
用件の数と、問い合わせのデータがそろっているかで変わります。データ集めと分類にいちばん時間がかかるため、電話やメールの記録を1か月分そろえるところから日程を組むと、見通しが立てやすくなるでしょう。骨組みと文言は、上位の用件に絞れば短い期間で形にできます。
Q. シナリオのフローチャートは何で作ればよいですか?
慣れたツールで十分です。紙やホワイトボードで全体の形を描き、表計算ソフトで本記事の設計シートのような表にまとめると、関係者の確認とツールへの登録がしやすくなります。チャットボットのツールに分岐を図で編集できる機能があれば、それを使ってもかまいません。
Q. シナリオはどのくらいの頻度で見直せばよいですか?
公開直後の1〜2か月は週に1回、落ち着いたら月に1回を目安に見直します。新商品の発売や料金改定、制度の変更があったときは、その都度該当する分岐を確認してください。古い案内が残っていると、間違った手続きに誘導してしまいます。
Q. シナリオ型と生成AI型は、どちらを選べばよいですか?
用件の多くが定型の手続きや決まった答えで済むなら、シナリオ型から始めるのが向いています。社内規程や商品情報のように資料が多く、質問の言い回しも幅広い場合は生成AI型が候補です。どちらを選んでも、手続きと有人への引き継ぎはシナリオで固める部分として残ります。
Q. チャットボットのシナリオで、電話の問い合わせは減りますか?
チャットで完結する用件の分は減らせますが、電話のすべてが置き換わるわけではありません。文字で説明しにくい相談や、急ぎの用件、ネットを使わない人からの電話は残ります。電話の用件とチャットの用件を並べて比べ、電話に残る用件は電話の自動応答で受けるなど、両方を設計するのが確実です。
まとめ
チャットボットのシナリオの出来は、分岐の多さではなく、すべての分岐に出口があるかどうかで決まります。問い合わせを用件ごとに数え、件数の多い用件から「入口・分岐・出口」を設計シートに書き出し、行き先が空欄の行を残さないことが、離脱の少ないシナリオへの近道です。
最初の一歩として、直近1か月の問い合わせを用件ごとに数え、上位の用件を1つ選んで、本記事の設計シートに書き写してみてください。チャットで解決しない用件は、電話の窓口にも流れてきます。株式会社電話放送局では、電話の自動応答のコールフロー設計から公開後の改善まで伴走しており、チャットボットやFAQへの案内を組み合わせた運用も支援しています。具体的な使われ方は導入事例もあわせてご覧ください。
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監修者情報
メーカーのコールセンター運営管理に従事し、自らIVRを導入。
不要な入電を抑制しつつ売上向上を実現するなど、現場視点で成果を創出。電話放送局では営業マネージャーとして10年以上従事し、クラウド型IVRの業界シェア1位獲得に貢献。
コロナ禍におけるユーザーのデジタル行動変容を受け、マーケティング部門を立ち上げ、責任者に就任。インサイドセールスを統括し、営業部門との連携を強化。自動音声応答の導入、運用、集客、営業の幅広い経験を有する。
IVRおよびコールセンター市場における20年以上の知見を活かし、ユーザーの検索行動やニーズを深く理解したマーケティング戦略を展開。
検索連動広告の運用経験を基に、現場で役立つ実践的な情報を発信し、読者のビジネス成功を力強くサポートします。
マーケティング責任者 営業部営業推進課 課長 前田泰延
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