生成AI×ボイスボットでできることは?導入ステップ、リスクと対策
2025/11/26
コンタクトセンターや顧客対応部門において、ボイスボットと生成AIの技術を組み合わせた新しい取り組みに注目が集まっています。これらの技術を活用すれば従来の自動応答システムでは難しかった「より人間に近い柔軟な会話」が実現できると、期待が高まっています。
しかし、生成AIには特有のリスクも存在するため、導入を検討する際は、その特性を正しく理解しておくことが大切です。
この記事では、生成AIを搭載したボイスボットで何ができるようになるのか、具体的な導入ステップ、そして事前に知っておくべきリスクと対策についてなどを解説します。
目次
・ボイスボットと生成AIの特徴を理解して業務効率化を進めましょう
ボイスボットと生成AIの基礎知識
はじめに、ボイスボットと生成AIがそれぞれどのような技術なのか、そしてなぜ今この2つの組み合わせが注目を集めているのかを解説していきます。
ボイスボットとは
ボイスボットは、音声で自動応答を行うシステムです。まずは音声認識(STT)技術で顧客の話している内容を聞き取ります。そして対話管理システムがその意図を解釈して適切な応答を判断し、音声合成(TTS)技術で返答します。従来型のボイスボットは、あらかじめ設定されたシナリオに沿った定型的な応答が中心です。そのため、シナリオから外れた質問や、顧客のあいまいな表現にはうまく対応できないという特性もあります。
【参考記事】
AIボイスボットと従来型の違いは?特徴と導入前に知りたい3つの課題
生成AIとは
生成AIとは、大量のデータを学習し、それに基づいて新しい文章や画像、音声などを生成できるAI技術の総称です。特に自然言語処理の分野における進化は著しく、今や人間と同じようなレベルでの文章作成や対話が可能になりつつあります。この生成AIをボイスボットに応用すれば従来は難しかった、より人間に近い自然な返答や、複雑な文脈の理解ができるようになると期待されています。
ボイスボットと生成AIの組み合わせが注目されている理由
この2つの組み合わせが注目される背景には、大規模言語モデルの登場があります。技術の進歩により、人間の「あいまいな話し言葉の意図」や「会話の文脈」を生成AIが高い精度で理解できるようになってきました。これにより、顧客の状況や過去のやり取りに合わせた個別の対応が実現できるようになってきています。
結果として、従来はオペレーターによる対応が必要だった複雑な問い合わせや非定型業務も、自動化できる領域が拡大しつつあります。そのため、多くのコンタクトセンターが直面している人手不足の解消や、カスタマーハラスメント対策といった課題の解決策としても注目を集めています。
【参考記事】
カスハラ対策にAIを活用するメリットは?効果的な対策や導入ステップ
生成AI×ボイスボットでできること
生成AIとボイスボットを組み合わせることで、従来の自動応答では難しかった、高度で柔軟な顧客応対が可能になります。
より自然な会話体験
生成AIは、単にキーワードに反応して決まった答えを返すだけではありません。会話全体の流れや文脈を理解した、自然な相槌を打つことができます。さらに、顧客の言葉遣いや声のトーンから焦りや怒り、不安などを汲み取り、共感的な応答を返すことも理論上は可能です。これにより、まるで人間と話している時のようなスムーズな会話の実現が期待できます。
シナリオに縛られない柔軟な対話応答
従来のボイスボットは、設計されたシナリオから外れると応答できなくなるのが弱点でした。しかし、生成AIを組み込むことで、顧客がシナリオにない質問(例えば、天気や時事に関する雑談など)をしても、AIが自ら考えて会話を継続できます。また、「Aの件とBの件、ついでにCの状況も聞きたい」といった、複数の用件が混在する複雑な問いかけに対しても、AIがそれぞれの意図を理解して一つずつ応答を組み立て、適切な回答を出すことが可能になります。
過去の顧客対応データを活かしたパーソナライズ対応
CRM(顧客関係管理)の基盤とつなぐことで、さらに高度な個別対応が実現します。例えば、ボイスボットが本人確認を行った後、CRMの情報を参照し、「お客様の現在の契約状況は~です」「ご注文の商品は明日配送予定です」「今月の請求額は~円です」といった個別の条件に基づいた返答が可能です。
CRM連携やFAQ自動検索などの高度化
RAG(検索拡張生成)と呼ばれる技術の活用も進んでいます。これは、ボイスボットが社内のFAQやマニュアルといったナレッジベースを検索し、見つかった情報をもとに、生成AIが顧客の質問に合わせた適切な回答を生成する仕組みです。この仕組みにより、膨大なナレッジのどこに答えが記載されているかわからない場合でも、AIが回答を導き出し、顧客の問題解決を支援できるようになります。
生成AIを活用したボイスボットを導入するためのステップ
生成AIを搭載したボイスボットの能力を引き出すには、適切な導入プロセスが必要です。ここでは、導入を成功させるための4つのステップを解説します。
Step1.目的とスタート領域の決定
まず重要なのは、「生成AIだから何でもできるはず」と期待しすぎないことです。「なぜ導入するのか」という目的を明確にし、自動化する業務範囲を限定してスモールスタートで始めることをおすすめします。例えば、「よくある質問(FAQ)への応答」や「特定の商品に関する応答サポート」など、領域を絞って効果を検証することで、リスクを抑えながらノウハウを蓄積できます。
Step2.学習データ(ナレッジ)の整備
生成AIの回答品質は、学習させるナレッジ(FAQ、マニュアル、過去の応対履歴など)の「質」と「量」によって大きく左右されます。そのため、導入前にはAIに学習させる社内データの棚卸しと精査が欠かせません。もし古い情報や間違った情報がナレッジに含まれていると、AIがそのまま間違った回答を生成してしまうため、正確で最新の状態に整備しておく必要があります。
Step3.PoC(概念実証)とベンダー選定
整備した自社のナレッジを使い、小規模な環境でテスト(PoC)を行います。このテストを通じて、期待通りの回答精度が出るか、事実と異なる回答(ハルシネーション)がどの程度の頻度で発生するかを評価します。この結果に基づき、本番導入の可否や、自社の目的に適した技術を提供するベンダーを選定することになります。
Step4. 運用体制の構築と継続的な改善
生成AIを活用したボイスボットは、導入して終わりではありません。AIの回答が本当に正しいかを人間がモニタリングし、もし間違った回答をした場合は、その原因となったナレッジを修正・追加するといった継続的なチューニングが不可欠です。
生成AIを活用したボイスボットのリスクと対策
生成AIは多くの可能性を秘めている一方で、従来のシステムにはなかった特有のリスクも抱えています。特に企業の公式な窓口として利用する際には、これらのリスクを正しく理解し、対策を講じることが求められます。
回答の正確性に関するリスク(ハルシネーション)
生成AIには、「ハルシネーション」と呼ばれる現象があります。これは、AIが学習データにないことや、事実と異なる情報を「もっともらしい嘘(誤回答)」として回答してしまうリスクです。企業の公式回答として誤った情報を顧客に伝えてしまうと、重大なクレームや企業の信用失墜に直結しかねません。
回答の品質に関するリスク(ナレッジへの依存)
AIの回答品質は、学習させるナレッジ(FAQやマニュアル)の質に大きく依存します。既存のデータが古い、間違っている場合、AIもそのまま不正確な回答をしてしまうからです。結果として、顧客の問題を解決できないおそれがあります。これを防ぐには、先ほど述べたように「質の高いFAQ(ナレッジ)の整備」と、継続的に更新し続ける運用体制が重要になります。
情報セキュリティに関するリスク(個人情報の漏洩)
利用するAIプラットフォームやその設定によっては、顧客との会話データがAIの学習に利用されたり、ログとして長期間保存されたりする場合があります。顧客との会話には、氏名・住所・クレジットカード番号といった個人情報や、社内の機密情報が含まれることも考えられます。これらの情報が、意図せず別の顧客への回答時に漏洩したり、外部からのサイバー攻撃によって流出したりする危険性も否定できません。
対策として、利用するAIプラットフォームがどのようなセキュリティ対策を講じているか、事前に詳しく確認しておく必要があります。
ボイスボットと生成AIの特徴を理解して業務効率化を進めましょう
ここまでご紹介したように、「ボイスボットと生成AI」の組み合わせは、コンタクトセンターの顧客体験を大きく変える可能性を秘めています。より自然で柔軟なやり取りが実現すれば、顧客満足度の向上に大きく寄与することも期待されます。
しかし、生成AIにはハルシネーションという、企業の公式窓口としては見過ごせない重大なリスクも存在します。もしAIが事実と異なる情報を顧客に伝えてしまうと、企業の信頼問題に直結しかねません。
多くの企業にとって、最先端技術の追求と同時に、まずは「安全で確実な自動化」を実現することも重要です。
電話放送局が提供する「DHK CANVAS」は、確実な自動化を実現するための選択肢の一つです。DHK CANVASはシナリオ型のボイスボットであり、あらかじめ決めたルール(シナリオ)通りに動作するため、ハルシネーションのリスクがありません。
また、ノーコードで操作できるため、現場の担当者が業務の状況に合わせてシナリオを迅速に作成・変更できる点も特徴です。「あふれ呼(電話が集中してつながらない状態)対策として、特定の時間帯だけ自動応答にしたい」といった、まずは「ここだけ自動化したい」というスモールスタートにも適しています。
生成AIの本格導入を検討する前段階として、まずは確実な業務効率化の第一歩に、DHK CANVASの活用を検討されてみてはいかがでしょうか。
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