2026/10/11

社内FAQの作り方5ステップ|部門別の質問例・回答例と、ツールの選び方

「パスワードの再設定方法を、今週だけで何回答えただろう」「年末調整の時期になると、同じ質問の内線で仕事が止まってしまう」。こうした悩みを抱える総務・人事・情報システムの担当者は少なくありません。社内FAQは、社員から繰り返し届く質問とその回答を1か所にまとめ、担当者に聞かなくても社員が自分で解決できるようにする仕組みです。作り方の要点は、思いつく質問を並べるのではなく、実際に届いた問い合わせを集めて件数の多い順に回答を書くことにあります。本記事では、社内FAQの作り方を5つのステップで解説し、総務・人事・情報システム・経理の質問例と回答例を表にまとめました。そのまま書き換えて使える回答例は、記事の中ほどにある「部門別の質問例と回答例」に置いています。

目次

・社内FAQとは?マニュアル・ナレッジベースとの違い

・社内FAQを作ると何が変わるのか

・社内FAQの作り方|5つのステップ

・【部門別】社内FAQの質問例と回答例

・社内FAQが使われないのはなぜ?症状別の原因と直し方

・社内FAQの運用ルールはどう決める?

・社内FAQは何で作ればよいか?ツールの選び方

・内線や電話で聞かれ続ける質問はどうする?

・よくある質問

・まとめ

社内FAQとは?マニュアル・ナレッジベースとの違い

社内FAQとは、社員が社内の手続きやシステムについて抱く「よくある質問」と、その回答をまとめたものです。社外のお客様に向けたFAQとは読み手が違い、総務・人事・情報システム・経理といった管理部門への問い合わせを減らすことが主な目的になります。まずは、混同されやすいマニュアルやナレッジベースとの違いから整理します。

社内FAQの意味

社内FAQは、社員が困った瞬間に「自分と同じ質問」を探して答えを得るためのものです。読み手は、経費の締め日を確かめたい営業担当者や、初めての出張申請に戸惑う新入社員、在宅勤務中にVPNがつながらない技術者など、管理部門の外にいる社員です。

そのため、制度の全体像を順番に説明するよりも、1つの質問に1つの答えを返す形のほうが使われます。「交通費の精算はいつまでに出せばよいですか?」と聞かれたら、締め日と申請画面の場所を最初に答える。この短さが、社内FAQの価値といえます。

マニュアルやナレッジベースとは何が違う?

違いは、読み手がどこから読み始めるかにあります。マニュアルは最初から順に読んで業務を覚えるための文書、ナレッジベースは担当者が持つ知識をためておく場所、社内FAQは困ったときに質問から引く場所です。

種類 主な読み手と
読む場面
書き方の形
社内FAQ 全社員が、手続きや
システムで困ったとき
1問1答。
質問から引いて、結論を先に返す
業務マニュアル その業務を担当する人が、
仕事を覚えるとき
手順を最初から順に説明する
ナレッジベース 担当者やチームが、
過去の対応を調べるとき
事例・手順・判断の理由を
ためていく

3つは対立するものではありません。社内FAQの回答から詳しい手順はマニュアルへ、例外的な判断の記録はナレッジベースへリンクでつなぐと、どれも使われやすくなります。ナレッジベースの種類と作り方はナレッジベースとは?5つの種類と作り方で、手順書の書き方はコールセンターマニュアルの作り方で詳しく紹介しています。

社内FAQを作ると何が変わるのか

社内FAQの効果は、問い合わせを受ける側と、質問する側の両方に表れます。ここでは、管理部門と社員それぞれに起きる変化を4つに分けて説明します。

総務・人事・情シスの手が止まらなくなる

管理部門の担当者は、本来の業務の合間に内線やチャットで質問を受けています。1件は数分でも、そのたびに作業が中断され、元の作業に戻るまでの時間も失われるのが厄介な点です。

社内FAQがあれば、「その件はFAQの◯番に載っています」とリンクを返すだけで済みます。社員がFAQを先に見る習慣が根付けば、そもそも質問が届かなくなるはずです。担当者が手を止めずに済む時間は、制度の見直しやシステムの更新といった、管理部門でしかできない仕事に回せます。

回答が担当者によってぶれなくなる

同じ質問でも、答える人によって説明が違うことがあります。「領収書は原本が必要」と答える人と「写真で構わない」と答える人がいれば、社員は混乱し、経理の差し戻しも増えるでしょう。

FAQに回答を一本化すると、誰が答えても同じ内容になります。規程が変わったときもFAQを直せば全員に伝わるため、古いルールが口伝えで残り続けることも防げます。

担当者が不在でも社員が自分で調べられる

在宅勤務や時差出勤が広がると、聞きたい相手がその時間に席にいるとは限りません。夜間に出張先からVPNにつなげない、休日に勤怠の打刻を忘れたことに気づいた、といった場面でも、FAQがあれば社員は自分で次の行動を決められます。

担当者が休暇中でも業務が止まらないことは、担当者本人の働きやすさにもつながります。「自分が休むと誰も答えられない」という状態から抜け出せるからです。

新入社員や異動者が聞きづらさを感じなくなる

入社や異動の直後は、分からないことが多いのに、誰に聞けばよいかも分かりません。「こんなことを聞いてもいいのだろうか」とためらううちに、手続きの期限を過ぎてしまうこともあります。

聞きづらさをなくすことも、社内FAQの大切な役割です。社員が働きやすいと感じる環境づくりは、従業員体験(EX)を高める取り組みの一つでもあります。EXと顧客体験の関係はCXとEXの違いとは?で解説しています。

社内FAQの作り方|5つのステップ

ここからは、社内FAQをゼロから作る手順を5つのステップで紹介します。ツールを選ぶのは最後で構いません。先に「どの質問を、どう書くか」を固めるほうが、手戻りが少なく済みます。

問い合わせを集める、件数の多い順に選ぶ、質問文を社員の言葉で書く、回答を結論・手順・問い合わせ先の順で書く、置き場所を決めて案内する、の5ステップを示した図

ステップ1 問い合わせを1か月分集める

最初にやるのは、実際に届いている問い合わせを集めることです。担当者が「よく聞かれる」と感じている質問と、実際に件数が多い質問は、意外なほど食い違います。思い込みで作ったFAQは、肝心の質問が載っていないために使われません。

内線・チャット・メールの記録を1か所にまとめる

問い合わせは、内線電話、社内チャット、メール、対面と、いくつもの経路から届きます。チャットやメールは過去のやり取りを検索できるので、直近1か月分を書き出して1つの表にまとめます。表の列は「日付」「部門」「質問の要約」「回答にかかった時間」の4つあれば十分です。

記録がない場合は2週間だけ受付メモをつける

内線や対面の質問は記録に残りません。その場合は、2週間だけ担当者が受付メモをつけます。1件ごとに「誰から(部署)」「何を聞かれたか」「どう答えたか」を1行で書くだけで、FAQの元になる材料が集まります。

問い合わせを種類別に数える考え方は、コールセンターでいうコールリーズン分析と同じです。分類の仕方はコールリーズン分析とは?が参考になります。

ステップ2 件数の多い順に30問を選ぶ

集めた問い合わせを「同じ答えで済むもの」ごとにまとめ、件数の多い順に並べます。最初に公開するのは、上から30問ほどで構いません。100問をそろえてから公開しようとすると、作っている間に状況が変わり、公開が遅れます。

並べるときは、件数に加えて「答えるのに時間がかかる質問」にも印をつけておきます。件数は少なくても、毎回10分以上かかる手続きの説明は、FAQにしたときの効果が大きいからです。逆に、人によって答えが変わる個別の相談は、FAQにせず担当者が受ける質問として残します。

ステップ3 質問文を社員の言葉で書く

質問文は、社員が実際に口にする言葉で書きます。「経費精算規程について」では検索されません。「タクシー代は精算できますか?」「領収書をなくしたらどうすればよいですか?」のように、困っている本人の言い方に寄せます。

同じ質問でも、言い方は人によってまちまちです。「PC」「パソコン」「端末」、「有休」「有給休暇」「年休」のように、言い換えをFAQの本文かキーワード欄に入れておくと、検索で見つかりやすくなります。ステップ1で集めた記録の言い回しを、そのまま質問文に使うのが近道です。

ステップ4 回答を「結論・手順・問い合わせ先」の順で書く

回答は、最初の1文で結論を言い切ります。そのあとに手順を番号つきで書き、最後に「解決しない場合の問い合わせ先」を添えるのが基本の形です。この順番にそろえると、社員は1文目だけ読んで済ませることも、手順まで読んで自分で操作することもできます。

社内FAQの1つの回答を、結論・手順・対象者と期限・問い合わせ先・担当部署と最終更新日の5つの項目で書く型を示した図

回答に入れる5つの項目

1問ごとに、次の5つの項目をそろえて書くと、回答の抜けや古い情報の放置を防げます。表計算ソフトで管理する場合は、この5つをそのまま列にするとテンプレートとして使えます。

項目 書く内容 記入例
結論 質問への答えを1文で 交通費の精算は、
毎月5営業日までに申請します
手順 操作や手続きを
番号つきで
1. 経費システムにログイン
2. 「交通費」を選んで入力
3. 上長に申請
対象者・期限 誰に当てはまるか、
いつまでか
正社員・契約社員。
前月分を当月5営業日まで
問い合わせ先 解決しないときの
連絡先と、伝えてほしい情報
経理部(内線◯◯◯◯)。
社員番号と申請番号を添えて
担当部署・
最終更新日
回答に責任を持つ部署と、
内容を確かめた日
経理部/2026年10月1日

回答文では「規程第◯条による」のように規程の条文だけを示すのは避けます。社員が知りたいのは条文ではなく「自分は何をすればよいか」だからです。根拠となる規程へのリンクは、回答の末尾に添える程度で十分です。

生成AIで下書きを作るときの注意点

過去のチャットやメールを生成AIに読み込ませると、質問と回答の下書きを短時間で作れます。ただし、締め日や金額の上限、申請先といった社内固有の数字は、生成AIが一般的な値で埋めてしまうことがあります。下書きは必ず担当部署が規程と照らし合わせ、最終更新日を入れてから公開してください。社内文書を読み込ませてAIに答えさせる仕組み(RAG)の考え方は、RAGをコールセンターで活用するメリットは?でも紹介しています。

ステップ5 置き場所を決めて、入口から案内する

社内FAQは、社員が困ったときに最初に開く場所に置きます。社内ポータルのトップ、社内チャットの固定メッセージ、各システムのログイン画面の脇などが候補です。どれほど丁寧に書いても、置き場所を知られていなければ使われません。

公開したら、問い合わせを受けた担当者が「FAQのこちらに載っています」とリンクで返す運用を1か月続けます。答えをその場で教えるのではなく、FAQへの道順を教えることで、社員は次から先にFAQを開くようになります。

【部門別】社内FAQの質問例と回答例

ここでは、総務・人事・情報システム・経理の4部門について、問い合わせが集まりやすい質問と回答例を表にまとめました。「◯◯」の部分を自社のシステム名や内線番号、期限に置き換えれば、そのまま社内FAQの初版として使えます。期限や金額は一般的な例として書いているため、必ず自社の規程に合わせて直してください。

情報システム部門の質問例と回答例

情報システム部門には、ログインやネットワーク、機器の不具合といった「今すぐ困っている」質問が集まります。回答には、社員が自分で試せることを先に書き、それでも直らない場合の連絡方法を最後に添えます。

質問例 回答例 添えるもの
パスワードを忘れて
ログインできません
ログイン画面の「パスワードを忘れた方」から、社用メール宛に再設定のURLを送れます。URLの有効期限は◯分です。 再設定画面の画像。
メールが届かない場合の
問い合わせ先
在宅勤務中に
VPNにつながりません
まず自宅のインターネットにつながっているかを確かめ、VPNソフトを一度終了してから接続し直してください。直らない場合は、表示されたエラー番号を控えてご連絡ください。 よく出るエラー番号と
その意味の一覧
パソコンの動作が
遅くなりました
再起動と、更新プログラムの適用をお試しください。それでも改善しない場合は、機器の交換を検討しますので、資産番号を添えて申請してください。 資産番号の
確認場所
業務で使いたいソフトを
入れてもよいですか?
許可されたソフト以外は、申請が必要です。申請フォームにソフト名と利用目的を記入し、上長の承認を得てから情報システム部に提出してください。 許可済みソフトの一覧。
申請フォームのリンク
不審なメールを
開いてしまいました
添付ファイルやリンクを開いた場合は、パソコンをネットワークから外し、すぐに情報システム部へ電話でご連絡ください。メールは削除せずに残しておいてください。 夜間・休日の
緊急連絡先

不審なメールのように一刻を争う質問は、FAQで完結させず「すぐに電話で連絡」と書くのが正解です。自己解決を促す質問と、すぐに人へつなぐべき質問を書き分けることも、社内FAQの大事な設計です。パスワードの再設定と関わりの深い本人確認の仕組みは、多要素認証とは?で解説しています。

人事・労務の質問例と回答例

人事・労務への質問は、休暇や勤怠、各種の届け出が中心です。入社や異動、結婚や出産といった生活の節目に集中するため、手続きの期限と必要書類をはっきり書くことが大切です。

質問例 回答例 添えるもの
有給休暇の残りの
日数はどこで分かりますか?
勤怠システムのトップ画面にある「休暇残日数」で確認できます。付与日と有効期限も同じ画面に表示されます。 画面の画像。
付与のルール
打刻を忘れたときは
どうすればよいですか?
勤怠システムの「打刻修正申請」から、実際の出退勤時刻と理由を入力して上長に申請してください。締め日を過ぎると修正できないため、気づいた時点で申請をお願いします。 勤怠の締め日。
申請画面の場所
引っ越しをしました。
何を届け出ればよいですか?
住所変更届を、引っ越しから◯日以内に人事システムから提出してください。通勤経路が変わる場合は、通勤手当の変更申請もあわせて必要です。 住所変更と通勤手当の
申請画面のリンク
結婚して姓が
変わりました
氏名変更届を人事システムから提出してください。社内システムの表示名やメールアドレスの変更は、届け出のあと情報システム部が順次対応します。 旧姓の使用に関する
社内ルール
年末調整の書類は
いつまでに出せばよいですか?
今年の提出期限は◯月◯日です。人事システムの「年末調整」画面から入力し、控除証明書の原本は人事部へ郵送または持参してください。 入力の手引き。
よくある記入間違い

人事・労務の質問には、給与や家族のことなど、FAQでは答えにくい個別の事情が絡むものもあります。そうした質問は無理にFAQにせず、「個別のご相談は人事部◯◯までご連絡ください」と相談窓口を明記しておきます。

総務の質問例と回答例

総務には、備品や会議室の予約といった、オフィスで働くうえでの細かな質問が集まります。1件ずつは軽い質問でも件数が多く、総務の担当者が席を離れられない原因になりがちです。

質問例 回答例 添えるもの
文房具や名刺は
どこで頼めますか?
文房具は社内ポータルの「備品申請」から、名刺は「名刺発注」から申請してください。名刺は申請から届くまでに◯営業日かかります。 申請画面のリンク。
在庫がある備品の置き場所
会議室を
予約したいです
グループウェアの施設予約から、空いている会議室を選んで予約してください。社外のお客様を招く場合は、来客登録もあわせてお願いします。 会議室ごとの
定員と設備
自分宛ての荷物や
郵便物はどこにありますか?
届いた郵便物は、部署ごとの棚に毎日◯時に仕分けて置いています。書留や宅配便は総務で預かり、社内チャットでお知らせします。 郵便物の棚の場所
社員証をなくしました すぐに総務へご連絡ください。悪用を防ぐため、連絡を受けた時点で社員証を止め、再発行の手続きを行います。 再発行の流れと
費用負担のルール
代表電話にかかってきた
電話の取り次ぎ方は?
相手の会社名・氏名・用件と折り返し先を聞き取り、担当者へ社内チャットで伝えてください。担当者が不在の場合は、折り返しの希望時間も確認します。 取り次ぎメモの書き方。
社員の内線番号一覧

代表電話の取り次ぎのように、社員から総務へ「やり方」を聞かれる質問も、FAQにしておくと総務の負担が減ります。取り次ぎの基本的な流れは電話の取り次ぎの流れで詳しく解説しています。

経理の質問例と回答例

経理への質問は、経費精算と請求書の扱いが中心です。締め日を過ぎてからの問い合わせは差し戻しや手戻りにつながるため、期限と必要な証憑を先に書いておくことが重要です。

質問例 回答例 添えるもの
経費精算の締め日は
いつですか?
前月分の経費は、当月◯営業日までに経費システムから申請してください。締め日を過ぎた分は翌月の処理になります。 今年の締め日カレンダー
領収書を
なくしてしまいました
経費システムの「領収書紛失」を選び、支払日・支払先・金額・理由を入力して申請してください。上長の承認が必要です。 紛失時の申請画面と
記入例
取引先から届いた請求書は
どこに出せばよいですか?
紙の請求書はスキャンして、経費システムの「請求書登録」から登録してください。原本は経理部の回収ボックスに入れてください。 支払日のサイクル。
登録画面のリンク
出張の日当は
出ますか?
出張旅費規程で定めた距離や日数の条件を満たす出張には、日当が支給されます。出張申請の際に「日当あり」を選んでください。 出張旅費規程の該当箇所。
条件の早見表

4部門の表を見比べると、回答の多くが「どの画面で、何を入力し、いつまでに出すか」でできていることが分かります。社内FAQを書くときは、この3点を毎回確かめるだけで、回答の抜けを大きく減らせます。

社内FAQが使われないのはなぜ?症状別の原因と直し方

社内FAQが使われない原因の多くは、内容ではなく「探しにくさ」と「古さ」にあります。公開後に起きやすい症状と、その原因、直し方を表にまとめました。自社の状況に近い行から確認してください。

起きていること 考えられる原因 まず打つ手
FAQを公開したのに
問い合わせが減らない
FAQの存在や置き場所が
知られていない
問い合わせにFAQのリンクで
答える運用を1か月続ける
「探しても見つからない」
と言われる
質問文が管理部門の言葉で
書かれている
実際の問い合わせの言い回しと
言い換えを質問文に足す
FAQを読んだうえで
結局聞きに来る
回答の結論が後ろにある、
手順が抜けている
1文目で結論を言い切り、
手順を番号つきで書き直す
古い内容のまま
残っている
回答ごとの担当部署と
更新日が決まっていない
全回答に担当部署と
最終更新日を入れる
内線や電話での
質問が残り続ける
電話をかける社員に
FAQへの道順がない
電話の入口でFAQを案内し、
URLを届ける仕組みを作る

最も多いのは、1行目の「公開したのに減らない」です。社員にとって、内線で聞くほうが早いと感じているうちは、FAQは開かれません。管理部門の側が答えをその場で教えるのをやめ、FAQへのリンクで返すことが、使われる社内FAQへの最短の道です。

社内FAQの運用ルールはどう決める?

社内FAQは、公開したときがいちばん正確で、放っておくほど古くなります。運用ルールは、更新する人・確かめるタイミング・効果を見る数字の3つを決めておけば十分です。

担当者と更新日を1問ずつ持たせる

回答ごとに、内容に責任を持つ部署と最終更新日を入れます。経費の質問は経理、パスワードの質問は情報システム、というように担当がはっきりしていれば、規程やシステムが変わったときに誰が直すかで迷いません。

最終更新日は、読む社員にとっても判断材料になります。2年前の日付の回答を見れば、社員は「念のため確認しよう」と考えられるからです。

月1回、届いた質問とFAQを照らし合わせる

月に1回、その月に届いた問い合わせとFAQを照らし合わせます。FAQに載っていない質問が複数届いていれば新しく追加し、FAQに載っているのに届いた質問は、質問文か置き場所のどちらかに問題があるはずです。

規程の改定や新しいシステムの導入、年末調整のような季節の手続きの前には、関連するFAQを先回りして更新しておきます。問い合わせが集中する前にFAQを整えておけば、担当者の繁忙期を軽くできます。

閲覧数と問い合わせ件数をあわせて見る

効果を確かめるには、FAQの閲覧数と、管理部門への問い合わせ件数をあわせて見ます。閲覧数が増え、同じ種類の問い合わせが減っていれば、FAQが社員の自己解決に役立っている証拠です。

ツールに検索機能がある場合は、検索されたのに該当するFAQがなかった言葉も確認します。これは「社員が知りたいのに載っていない質問」の一覧そのものです。問い合わせ対応の数字の見方は、ヘルプデスク効率化の方法とは?で紹介しているKPIの考え方も参考になります。

社内FAQは何で作ればよいか?ツールの選び方

社内FAQを作るツールは、FAQの数と、社員がどこで質問を探すかで選びます。最初から専用のシステムを入れる必要はありません。ここでは代表的な4つの作り方を比べます。

作り方 向いている段階 気をつけること
表計算ソフト・
共有ドキュメント
まず30問ほどで
始めたいとき
問数が増えると探しにくくなる。
検索の工夫が要る
社内wiki・
グループウェア
社内ポータルに
まとめて置きたいとき
部門ごとにページが
散らばらないよう構成を決める
FAQシステム 問数が多く、閲覧数や
検索語を分析したいとき
導入前に、更新する人と
運用の手間を見積もる
チャットボット 社内チャットの中で
質問に答えさせたいとき
元になるFAQが整っていないと
正しく答えられない

どの作り方を選んでも、中身になるのは先の5ステップで作った質問と回答です。表計算ソフトで作った初版は、そのままFAQシステムやチャットボットに取り込めることが多いため、まずは手元のツールで始めて、問数が増えた段階で乗り換える進め方が無理なく続きます。社内チャットで答えるチャットボットの仕組みと作り方はFAQチャットボットとは?、費用の目安はチャットボットの費用相場は?で解説しています。

内線や電話で聞かれ続ける質問はどうする?

FAQを整えても、内線や電話での質問はゼロにはなりません。電話をかける社員は「調べるより聞くほうが早い」と感じているため、電話の入口でFAQへ案内する仕組みを用意すると、残った電話も減らせます。

社員からの電話を自動音声が用件ごとに聞き分け、FAQで解決できる用件にはSMSでURLを送り、個別の相談だけを担当者へつなぐ流れを示した図

FAQで答えられる用件は、電話の入口で案内する

工場や店舗で働く社員、外出の多い営業担当者など、パソコンを開かずに電話で聞く社員は少なくありません。そうした社員からの電話には、自動音声応答(IVR)で「パスワードの再設定は1番、経費精算は2番」のように用件を聞き分け、FAQで解決できる用件には該当するページのURLをSMSで送る方法があります。社員はスマートフォンでそのまま手順を確認でき、担当者が電話に出る必要はありません。

これは社外のお客様向けの窓口で使われている方法を、社内に当てはめたものです。集合住宅向けインターネットサービスを提供する株式会社ギガプライズでは、オペレーターが取りきれない電話に対して、IVRでチャットボットやFAQサイトを案内する運用を始めました。その結果、チャットボットやFAQの利用率が10%上がっています(出典:導入事例 株式会社ギガプライズ)。電話がつながらないまま待たせるのではなく、すぐに解決できる場所を案内することで、かけた側にも受ける側にも利点が生まれた例です。

人が答えるべき相談だけを担当者へつなぐ

電話の入口で用件を聞き分けておけば、担当者に届くのは「FAQでは答えられない相談」だけになります。人事への個別の相談や、不審なメールのような緊急の連絡は、最初から担当者へ直接つながるように設計しておくと安心です。

電話放送局でも、代表電話の取り次ぎを自動音声に任せ、担当者名を伝えるとその担当者の携帯電話に直接つながる設定にしています。総務部や代表電話宛ての用件だけが会社の電話機で鳴るようにしたことで、月間の対応工数が約17%減りました(出典:導入事例 とりつぎ君)。管理部門の電話を減らすには、FAQの中身を整えることと、電話の入口で用件を振り分けることの両方が欠かせません。

自由な言葉で話した用件をAIが聞き取って振り分けるボイスボットを使えば、番号を押す操作に慣れていない社員でも迷いません。社内外の問い合わせ窓口全体を自動化する考え方は、ヘルプデスク自動化とは?で詳しく解説しています。

よくある質問

Q. 社内FAQは最初に何問くらい用意すればよいですか?

30問ほどで公開を始めるのがおすすめです。実際に届いた問い合わせを件数の多い順に並べて上から30問を選べば、毎日のように届く質問から先に手当てできます。100問をそろえてから公開しようとすると時間がかかり、その間も同じ質問が届き続けます。


Q. 社内FAQは誰が作るのがよいですか?

回答の中身は、その質問に普段答えている部署の担当者が書きます。経費の質問は経理、パスワードの質問は情報システムというように分担し、全体の書き方や置き場所をそろえる取りまとめ役を1人決めておくと、部署ごとに書き方がばらつきません。


Q. 社内FAQとマニュアルはどちらを先に作るべきですか?

社員からの問い合わせを減らしたいなら、社内FAQを先に作ります。FAQは届いている質問から作るため短期間で効果が出やすく、詳しい手順が必要な質問が見えてきた段階でマニュアルを整える順番が無駄になりません。


Q. 生成AIで社内FAQを作ってもよいですか?

下書きづくりに使うのは有効です。過去のチャットやメールを読み込ませれば、質問と回答の案を短時間で作れます。ただし締め日や金額などの社内固有の数字は誤ることがあるため、公開前に必ず担当部署が規程と照らし合わせてください。


Q. 社内FAQの更新はどのくらいの頻度で行えばよいですか?

月に1回、その月に届いた問い合わせとFAQを照らし合わせるのが基本です。加えて、規程の改定やシステムの入れ替え、年末調整のような季節の手続きの前には、関連する回答を先回りして更新します。


Q. 部署ごとに別々の社内FAQを作るべきですか?

社員から見た入口は1つにまとめ、中を部署別に分ける形がおすすめです。社員は自分の質問がどの部署の担当かを知らないことが多く、入口が部署ごとに分かれていると探す手間が増えます。回答の担当と更新は、部署ごとに分けて持ちます。

まとめ

社内FAQが使われるかどうかは、実際に届いた質問から作り、社員の言葉で書き、結論を1文目に置けているかで決まります。思いつく質問を並べるのではなく、1か月分の問い合わせを集めて件数の多い順に30問を書くところから始めれば、公開した日から管理部門への質問は減り始めます。

最初の一歩として、今月届いた問い合わせを「日付・部門・質問の要約・回答にかかった時間」の4列で書き出してみてください。質問例と回答例の表を手元に置けば、初版の30問は短期間でそろいます。そのうえで、内線や電話での質問が残るようなら、電話の入口でFAQへ案内する仕組みも検討してみてください。株式会社電話放送局では、電話の用件を自動で聞き分けて、FAQの案内や担当者への取り次ぎにつなぐ仕組みづくりを支援しています。具体的な使われ方は導入事例もあわせてご覧ください。

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・電話の一次対応や取り次ぎに費やしている経営資源を、コア業務へ振り向けたい
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監修者情報

メーカーのコールセンター運営管理に従事し、自らIVRを導入。
不要な入電を抑制しつつ売上向上を実現するなど、現場視点で成果を創出。電話放送局では営業マネージャーとして10年以上従事し、クラウド型IVRの業界シェア1位獲得に貢献。
コロナ禍におけるユーザーのデジタル行動変容を受け、マーケティング部門を立ち上げ、責任者に就任。インサイドセールスを統括し、営業部門との連携を強化。自動音声応答の導入、運用、集客、営業の幅広い経験を有する。
IVRおよびコールセンター市場における20年以上の知見を活かし、ユーザーの検索行動やニーズを深く理解したマーケティング戦略を展開。
検索連動広告の運用経験を基に、現場で役立つ実践的な情報を発信し、読者のビジネス成功を力強くサポートします。

監修者 前田泰延(株式会社電話放送局) マーケティング責任者 営業部営業推進課 課長 前田泰延

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