国民健康保険の電話を自動化した自治体事例|前橋市は年間約550時間を削減
2026/10/29
「資格確認書や納税通知書を送った週は、国保の電話が一日中鳴りやまない」「ほかの市はどうやって電話を減らしたのか、上申に使える前例が知りたい」という国民健康保険課の担当者は少なくありません。国民健康保険の電話を自動化した自治体は、国保担当窓口の電話に自動音声を導入し、答えが決まっている用件は音声とSMSで案内して、それ以外を職員に転送しています。前橋市の国民健康保険課は、この形で年間約550時間の業務時間を削減しました。
本記事では、国保の電話に自動音声を入れた5つの市区の設計を一覧で比べ、前橋市の事例を、削減時間と導入時につまずいた点まで詳しく紹介します。そのうえで、自動音声に任せる用件と職員が受ける用件の分け方、繁忙期に間に合わせる日程、上申や仕様書づくりで聞かれる点を順に解説します。
目次
・前橋市 国民健康保険課の事例|年間約550時間を削減した進め方
・まとめ
国民健康保険の電話を自動化した自治体はどこ?
2024年の前橋市に続いて、2026年には沼津市・文京区・板橋区・東久留米市が、国保の電話に自動音声を入れたことを公表しています。対象はいずれも国保を担当する窓口ですが、既存の直通番号を使う市区と、自動音声専用の番号を案内する文京区があります。比較の根拠は各自治体の公開資料です。
| 自治体 | 開始時期と対象 | 案内の仕組み | 職員につながる時間と 公表されている効果 |
|---|---|---|---|
| 前橋市 (群馬県) |
2024年6月17日から試験導入 (市が発表した予定) 国保の資格・税額、 給付、後期高齢者医療 |
自動音声・SMS・ 職員への転送 既存の027番号のまま |
平日8:30〜17:15 年間約550時間の削減、 完結率約20% |
| 沼津市 (静岡県) |
2026年6月15日開始 給付係・賦課係・収納係 (高齢者医療係は対象外) |
自動音声・SMS・ 職員への転送 |
平日8:30〜17:15 参照資料に効果の記載なし |
| 文京区 (東京都) |
2026年4月1日開始 国保・後期高齢者医療・ 国民年金 |
自動音声・SMS・ 職員への転送 自動音声専用の050番号 |
平日8:30〜17:00 参照資料に効果の記載なし |
| 板橋区 (東京都) |
2026年4月27日開始 国保資格係 |
自動音声・SMS・ 職員への転送 |
平日8:30〜17:00 (火曜は19時まで、 第2日曜も対応) 参照資料に効果の記載なし |
| 東久留米市 (東京都) |
2026年6月1日稼働 保険年金課 |
自動音声・SMS・ 職員への転送 |
開庁時のみ 参照資料に効果の記載なし |
出典は各自治体の公開資料です(前橋市の試験導入の資料、沼津市の報道資料、文京区のお知らせ、板橋区のお知らせ、東久留米市の記者会見資料)。前橋市の効果の数字は、弊社の導入事例に掲載した年間換算の値です。ほかの4自治体の参照資料には、導入後の削減時間や完結率が記載されていません。
自治体で共通する案内方法と、電話番号の違い
自動音声が受けるのは、国保を担当する窓口への電話です。前橋市・沼津市・板橋区は既存の直通番号に導入し、文京区は国保・後期高齢者医療・国民年金に共通する自動音声専用の050番号を案内しています。既存番号を残すか専用番号を設けるかは、電話設備と住民への周知方法を踏まえて決める点です。
案内には、「自動音声で案内する」「SMSでURLを送る」「職員に転送する」の3つを組み合わせています。住民が番号を選ぶと、手続きの方法などは音声で案内され、内容によってはホームページや電子申請のURLが携帯電話にSMSで届く仕組みです。音声だけで説明しきれない書類の一覧や申請の画面をSMSで渡せるため、住民がメモを取る手間も省けます。電話からSMSでWebへ案内する仕組みは、民間の窓口でも使われている方法です。
自動音声の受付は24時間365日、職員への転送は各自治体が定めた職員対応時間だけです。夜間や休日にかけてきた住民も、手続きの方法やページの案内は受け取れます。職員と話す必要がある住民には、その自治体が案内する時間に転送します。
自動音声を入れた係と業務の違い
違いが出ているのは、どこまでを対象にしたかです。沼津市は給付係・賦課係・収納係の3つの番号に入れ、高齢者医療係への直通電話は、従来どおり職員が出る形を残しました。板橋区は国保資格係の1つから始めています。文京区は国保・後期高齢者医療・国民年金をまとめて、自動音声専用の電話番号を案内しています。板橋区は直通番号で自動音声を流し、職員への転送も用意する一方、職員対応を希望する人には代表電話へ国保資格係宛にかける方法も案内しています。
課の中から係を選んで始めたのが、沼津市と板橋区です。前橋市も、電話による簡易な問い合わせの件数が上位のものに対象を絞って試験導入しました。最初から課の電話をすべて対象にしなくても、件数が多く、答えが決まっている用件の係から始められるということです。
東久留米市は、電話の自動音声と同じ時期に、ホームページで国保税を試算できる仕組みも公開しています。「自分の税額はいくらになるか」という問い合わせを、電話の外で国保税の目安を確かめられるようにした例です。
納付の催告に自動音声を使う自治体もある
ここまでは、住民からかかってくる電話を受ける使い方でした。これとは別に、柏市のように、納期限を過ぎた保険料について自動音声電話とSMSで納付の催告をする使い方もあります。こちらから電話をかける使い方の設計や、守るべき電話のルールは「督促業務を自動化するには?」で解説しています。
前橋市 国民健康保険課の事例|年間約550時間を削減した進め方
前橋市の国民健康保険課は、弊社のDHK CANVASを使って国保の電話を自動化し、年間換算で約550時間の業務時間を削減しました。ここからは、導入前の状況、対象にした用件、つまずいた点、結果の順に紹介します。数字と担当者の言葉は、前橋市の導入事例と前橋市の公開資料に書かれた範囲で記載します。
導入前は年間約3万2千件の電話を職員がすべて受けていた
前橋市の国民健康保険課では、年間約3万2千件、多い日には1日200件以上の電話を、すべて職員が直接受けていました。電話に時間を取られて通常の業務が滞り、時間外の業務が増え、職員が疲れて新しい取り組みに手を付けにくい状況だったといいます。電話が混み合うことで、市民を長く待たせてしまう面もありました。
検討を始めたきっかけは、市民サービスの向上と業務の効率化を両立させること、自治体全体のDXの動き、そして他の自治体の先行事例でした。ほかの自治体の前例が検討の後押しになった点は、これから上申する担当者にとっても参考になるはずです。
対象にしたのは件数が多く、個人情報を含まない簡易な問い合わせ
前橋市が試験導入の前に公表した資料では、自動音声で受ける対象を、国民健康保険課の業務のうち「電話で簡易な問い合わせの件数が上位のもの」としています。期待する効果の1つ目に挙げているのは、「個人情報を含まない定例で簡易な電話に24時間365日対応」することです。対象にした番号と、令和5年度の受電件数は次のとおりです。
| 業務区分 | 自動応答の対象業務 | 令和5年度の受電件数 |
|---|---|---|
| 国民健康保険業務 (027-898-6250) |
加入、脱退、 保険証の再交付等に関すること |
16,462件 |
| 国民健康保険業務 (027-898-6249) |
高額療養費、 限度額適用認定証等に関すること |
8,157件 |
| 後期高齢者医療業務 (027-898-6253、 027-898-5955) |
高額療養費、保険証の再交付、 限度額適用認定証等に関すること |
15,086件 |
出典は前橋市の試験導入の資料です。表は対象番号ごとの令和5年度の受電件数で、導入事例には導入前の電話が年間約3万2千件とあります。両資料は数値が異なりますが、集計対象や集計方法の違いは公開資料から確認できません。上申資料では出典を分けて示し、合算や直接比較は避けてください。
同じ資料では、期待する効果として、最大300回線まで同時に電話を受けられるようになり、混雑時のかけ直しが減ることも挙げています。職員が出られる電話の数は席の数で決まりますが、自動音声は同時に多くの電話を受けられるのが違いです。発送月のように電話が一度に集中する時期ほど、話し中でかけ直す住民の数に差が出ます。
試験導入時のコールフローは2段のメニュー
同じ資料には、試験導入時のコールフローの例も載っています。電話がつながると、まず「前橋市役所国民健康保険課」であることと、75歳未満の人が加入する国民健康保険の案内であることを伝え、職員への転送は平日の8時30分から17時15分までだと告げる流れです。そのうえで、最初のメニューを次の3つに分けています。
- 1:国民健康保険の加入・脱退・保険証の再発行などの資格や税額
- 2:高額療養費・限度額適用認定証・療養費などの給付
- 3:医療機関の方
1を選んだ住民には、さらに「加入」「脱退」「保険証再発行」「その他」の選択肢が続く作りです。加入・脱退・再発行を選ぶと、自動音声での案内か、着信した番号あてのSMSかを選べます。「その他」と、案内を聞いても分からなかった場合は、職員が業務時間内に対応する決まりです。
この流れには、ほかの課でも使える工夫が2つあります。1つは、最初に医療機関からの電話を分けていることです。同じ番号にかかってきても、住民向けの案内と医療機関の問い合わせを別の経路に分けられます。もう1つは、加入などの案内で疑問が解消しなかった場合に、開庁時間内なら職員へ転送する出口を残していることです。番号を押す方式の作り方は「コールフローとは?」で例と一緒に解説しています。
なお、これは試験導入を始める時点の例です。最終的なメニューの構成は公開されていません。また、従来の健康保険証は、厚生労働省の案内のとおり有効期限が2025年12月1日で終了しており、マイナ保険証を持っていない人には資格確認書が交付されています。これから設計する場合は、当時の「保険証の再発行」という選択肢をそのまま使わず、現在の制度と自治体の手続きに合う案内に直してください。
案内が長くなった問題は情報を絞って解決した
導入当初は、「説明漏れがないよう丁寧に伝えたい」という思いから、案内が長くなり、選択肢も増える傾向があったと導入事例に書かれています。行政として正確に伝えたいという考えは当然ですが、電話の音声は読み返せません。説明が長くなるほど、住民は途中で自分がどこにいるか分からなくなります。
前橋市は、弊社の担当とデータを見ながら打ち合わせを重ね、正確な情報提供という軸は変えずに、過剰な説明を省いて「あえて情報を絞り込む」方針に切り替えました。不要なアナウンスを削ったことで、住民が途中で迷いにくい流れになったといいます。
あわせて、音声の案内から住民が情報にたどり着けるよう、ホームページやFAQの動線も見直しました。SMSでURLを送っても、送り先のページで答えが見つからなければ、住民はもう一度電話をかけてきます。電話の案内とホームページを一緒に直したことが、後で触れる結果にも表れています。
結果は年間約550時間の削減、大きなクレームはほぼ0件
導入後、電話応対の時間は年間換算で約550時間減りました。自動音声で案内が完結する割合を示す「完結率」は約20%で、導入事例ではホームページの見直しとの相乗効果も出ていると述べられています。対象となった電話の件数や1件ごとの短縮時間は事例ページに記載されていないため、別の自治体の削減見込みにそのまま当てはめることはできません。
導入前は、自動応答に抵抗を感じる市民がいるのではないかという不安もありました。しかし、懸念していた大きなクレームやトラブルは、事例の取材時点までほぼ0件です。前橋市の担当者によると、導入当初の状況は次のとおりです。
導入当初は「電話機が故障したのではないか」と不安になったほど電話が減り、1年目の実証実験で成果を確かめて本格導入に移ったと、担当者は述べています。
試験導入で効果を確かめてから本格導入に移った流れは、上申の際に「何をもって継続を判断するか」を決めておく参考になります。
完結率約20%はどう読めばよい?
完結率と職員の電話応対時間は別の指標です。前橋市では、完結率が約20%の段階でも、年間約550時間という職員の時間の削減が出ています。完結率は「自動音声だけで終わった割合」を示す数字で、職員の負担がどれだけ減ったかは、職員が電話に使った時間で別に測る必要があります。
上申の資料で効果を見込むときも、事後に効果を報告するときも、「完結率」と「職員の電話応対時間」を分けて書くと説明がぶれません。前橋市の事例ページには完結率の内訳までは載っていないため、ここでは公表されている2つの数字を並べるにとどめます。
検討で決め手になった3つの点
前橋市が弊社を選んだ理由として、導入事例に挙がるのは次の3点です。
- 市民になじみのある市外局番(027)の番号をそのまま使え、番号を変える必要がなかった
- システムを納めるだけでなく、初期から課題を共有して伴走する姿勢に安心感があった
- ノーコードでフローを設定でき、フローの修正やカスタマーサクセスの支援を回数の制限なく無料で受けられた
3つ目は、案内を絞り込む見直しを何度も重ねた進め方と結びついています。担当者は運用の負担について、弊社のチームが「もう1人の職員」のような感覚で伴走してくれると話しています。
前橋市が使っているDHK CANVASの自治体向けの機能や導入の流れは、公共・自治体向けのページにまとめました。庁内で「住民にとって聞き取りやすい声なのか」を確かめたい場合は、同じページからデモを試せます。
国保の電話で、自動音声に任せる用件と職員が受ける用件は?
答えが住民ごとに変わらず、個人情報を聞かなくても案内できる用件は、自動音声に任せられます。反対に、住民ごとの事情や記録を確かめないと答えられない用件は、職員が受ける側です。前橋市の資料にある「個人情報を含まない定例で簡易な電話」という線引きが、そのまま判断の基準になります。
判断の基準は2つの問い
用件を仕分けるときは、次の2つを順に問います。1つ目は、答えが住民ごとに変わるかどうかです。加入や脱退の手続きに必要な書類、届け出の期限、窓口の場所は、誰が聞いても同じ答えになります。一方で「自分の今年の税額はなぜこの金額なのか」は、世帯の所得や加入の状況によって答えが変わります。
2つ目は、答えるために個人情報を聞く必要があるかどうかです。高額療養費の申請方法は一般的な案内で答えられますが、「私の申請はいつ振り込まれるのか」は、本人を確認して記録を見なければ答えられません。2つの問いのどちらかに当てはまる用件は、職員が受ける側に置きます。
自動音声とSMSで答えられるかどうかは、すでにホームページに答えが載っているかも判断材料です。ページに載っている内容なら、音声で要点を伝え、詳しくはSMSで送ったURLを見てもらう設計ができます。
国保の用件別の任せ方
国保の電話で多い用件を、任せ方ごとに整理しました。用件の名前は、前橋市・沼津市・板橋区の公開資料に出てくる言葉に合わせています。
| 用件 | 任せ方 | 理由 |
|---|---|---|
| 加入・脱退の 手続き方法 |
自動音声で案内し、 必要書類のページを SMSで送る |
必要書類と届け出先は 誰が聞いても同じ |
| 資格確認書・ マイナ保険証の案内 |
自動音声で案内し、 詳しいページを SMSで送る |
制度の説明は一律で、 国の案内ページもある |
| 納税通知書・ 資格確認書の 発送時期 |
自動音声で案内 | 発送の日程は 課で決まっている |
| 保険税(保険料)の 納付方法・口座振替 |
自動音声で案内し、 申込みのページを SMSで送る |
手順が決まっていて、 電子申請へ渡せる |
| 高額療養費・ 限度額適用認定証の 申請方法 |
自動音声で案内し、 申請のページを SMSで送る |
申請の方法と 必要書類は 一律で案内できる |
| 税額の根拠・ 減免の相談 |
用件を選んでもらい、 職員対応時間に職員へ |
世帯の所得や 事情で答えが変わる |
| 分割納付・ 滞納の相談 |
最初から職員が受ける | 個人の記録を確かめ、 判断が必要になる |
| 医療機関からの 問い合わせ |
最初の選択肢で分けて 職員へ |
住民向けの案内と 混ぜない(前橋市の例) |
板橋区は、お知らせの中で「本システムは一般的なご案内を目的としており、個別具体的な判断を要する事案については対応いたしかねます」と明記しています。どこまでを自動音声で受けるかを、住民に向けた案内でも先に伝えておく書き方です。
「国保・介護の資格確認」のように、本人確認まで自動で聞き取ってから職員につなぐ設計は、自治体の電話対応を自動化するには?でも業務別に紹介しています。前橋市の試験導入では、個人情報を含まない定例で簡易な問い合わせを対象にしています。自分の課で本人確認を伴う用件まで対象にする場合は、扱う情報と庁内の運用を別に検討してください。
電話の用件別に件数を数える
前橋市は、入電理由を分析したうえで、「自動音声で解決できる内容」と「職員が直接耳を傾けるべき内容」を仕分けています。用件別の件数が、仕分けの土台です。前橋市の試験導入資料にも、対象番号ごとの受電件数が記載されています。
集計は、電話を受けた職員が用件を正の字で記録する方法でも始められます。繁忙期と通常期を分けた記録は、どの用件から案内を作るか判断する材料です。入電理由の分け方と集計表の作り方は「コールリーズンとは?」で解説しています。
「保険税」と「保険料」は自治体で呼び方が違う
案内の文言を作るときは、自分の自治体が国民健康保険を「税」と「料」のどちらで集めているかに合わせます。前橋市や東久留米市の資料は「保険税」、柏市のお知らせは「保険料」です。
住民は通知書に書かれた言葉で問い合わせてくるため、自動音声の選択肢も通知書と同じ言葉にそろえます。他の自治体の案内文を参考にするときは、この言葉を必ず置き換えてください。
固定電話の住民と高齢の住民に配慮する
SMSは携帯電話にしか届きません。文京区は、固定電話からかけた住民には自動音声で案内すると明記しています。SMSを送る用件でも、音声だけで要点が伝わる案内を必ず用意しておきます。
高齢の住民への配慮も欠かせません。弊社が50〜70代の男女241名に実施した調査では、問い合わせの電話で「自動音声のプッシュ番号操作が複雑で面倒だった」という経験が17.0%ありました。一方で、最も大きなストレスは「電話がつながらない」で36.9%でした。番号を押す回数を抑えつつ、職員につながる経路も示しておく必要があります。前橋市は案内の長さと選択肢を見直しました。階層の深さや聞き取れなかったときの扱いなど、高齢の住民向けの設計の勘所は、先ほど紹介した自治体の電話自動化の記事で詳しく解説しています。
国保の電話を自動化したあとに確認すること
稼働後に確認したい症状と、考えられる原因・対応例をまとめました。各自治体で表の症状が実際に起きたという意味ではありません。対応例は、前橋市の事例と自治体の公開資料で確認できる案内方法をもとにしています。
| 確認する状況 | 考えられる原因 | 参考にできる対応 |
|---|---|---|
| 職員への転送が 思ったほど減らない |
案内が長く選択肢が多く、 途中で「その他」を 選ぶ住民が多い |
説明を削って選択肢を絞り、 件数の多い用件から作る (前橋市が行った見直し) |
| SMSでURLを送っても また電話が来る |
送り先のページで 答えが見つからない |
ホームページやFAQの 動線も一緒に見直す (前橋市が行った見直し) |
| 固定電話の住民に SMSを送れない |
SMSは 携帯電話にしか届かない |
固定電話には 音声で案内する (文京区のお知らせ) |
| 転送を選んでも つながらないと言われる |
職員の席の数は 変わっていない |
混雑時はかけ直しを案内し、 職員対応を希望する人に 代表電話も知らせる (板橋区のお知らせ) |
| 時間外に職員と 話したい住民が困る |
転送できる時間が 伝わっていない |
冒頭で転送できる時間を 伝える (前橋市が公表した試験時の流れ) |
| 医療機関の電話が 住民向けの案内に 混ざる |
住民と医療機関が 同じ番号にかけている |
最初の選択肢で 医療機関を分ける (前橋市が公表した試験時の流れ) |
前橋市は、運用中に案内の長さとホームページ・FAQへの導線を見直しました。導入前に、誰が入電の状況を確認し、案内文を直すかを決めておきます。
繁忙期に間に合わせる導入スケジュール
国保の電話の山は、課が通知書や資格確認書を送る月に来ます。いつ混むかが事前に分かっている以上、自動音声はその山の前に動かしておくことが欠かせません。ここでは、前橋市の日程を例に、逆算の段取りを整理します。
国保課の繁忙期は発送月で決まる
前橋市の庁内資料には、国保・後期高齢者医療の保険証や納税通知書などの発送時期にあたる7月・8月を繁忙期とし、その前に導入すると書かれています。発送の時期は自治体ごとに違いますが、課が自分で決めている日程なので、山の位置は前年の受電件数の記録から読み取れます。
年度替わりの転入・転出や、退職に伴う加入の手続きが重なる時期も、加入・脱退の問い合わせが増えやすい時期です。月ごとの受電件数を1年分並べると、自分の課ではどの月に、どの係の電話が増えるのかが見えます。最も件数の多い時期に案内を修正する余裕を残せるよう、稼働の目標日を決めます。
前橋市の導入日程と、繁忙期までの準備
前橋市が試験導入の前にまとめた庁内資料と、試験導入の資料に書かれた日程を並べると、次のようになります。右の列は、自分の課に置き換えるときにその時期までに済ませておく作業です。
| 時期 | 前橋市の日程 | 自分の課で済ませておく作業 |
|---|---|---|
| 前年度 | 令和5年度の受電件数を 番号ごとに集計 |
用件別の件数を数え、 対象の用件を決めて 予算を要求する |
| 4月 | 当初予算の成立を条件に、 4月24日から 契約の準備を進める |
仕様書に対象の用件と 件数、転送の条件を書く |
| 5月 | 5月中旬に 指名型プロポーザル (予定) |
事業者を選び、 案内の文言と SMSの送り先を決める |
| 6月 | 6月17日から試験導入 (市が発表した予定) |
職員だけでかけて試し、 住民への周知を始める |
| 7月・8月 | 保険証・納税通知書の 発送による繁忙期 |
受電件数と転送の件数を 毎週見て案内を直す |
| 翌年3月 | 3月31日まで試験導入、 その後に本格導入 |
削減時間と完結率を まとめ、次年度の 予算に反映する |
この日程で目を引くのは、企画段階の資料にある5月中旬のプロポーザル予定から、6月17日の試験導入予定までの期間が短いことです。実際の契約日や構築に要した日数までは、公開資料からは分かりません。対象の用件と番号ごとの件数を契約前にまとめ、案内の文言づくりと試験に使う期間を確保してください。
弊社の公共・自治体向けのページでは、構築の準備期間を2〜3カ月と案内しています。入電理由の集計と対象の用件の決定は、予算要求の段階から進めておくと、その後の案内づくりに時間を充てられます。
住民への周知は4つの経路で
前橋市は、広報、ホームページ、納税などに関する通知書への掲載、報道発表の4つで市民に知らせる予定だと庁内資料に書いています。通知書に案内を載せる場合は、そこに書かれた電話番号と自動音声の受付時間もそろえます。通知書を見て電話をかける住民が、案内方法を事前に確認できるためです。
沼津市・文京区・板橋区・東久留米市も、開始日・受付時間・電話番号・使い方をホームページや記者会見の資料で公表しました。周知の開始日を決め、住民が初めて自動音声を聞く日を繁忙期の初日に重ねないようにします。
上申・仕様書づくりで確認する4つの点
国保の電話の自動化を庁内で説明する際は、電話番号、個人情報、効果の測り方、費用を確認します。上申の資料や仕様書に書く内容を、4つの問いに沿って整理します。
電話番号は変えなければいけない?
変える必要はありません。前橋市は、市民になじみのある027の番号をそのまま使っています。板橋区も、国保資格係の番号にかけると自動音声が流れる形です。
一方で、文京区のように自動音声専用の050番号を別に案内する方法もあります。既存の番号のまま始めれば、通知書やホームページの番号を書き換えずに済み、周知の負担も小さく済むのが利点です。どちらの方式にするかは、庁内の電話設備と、既存の番号をどこまで残したいかで決めます。
個人情報はどこまで扱う?
最初は、自動音声の側では個人情報を聞かない設計から始めるのが現実的です。前橋市が期待効果に「個人情報を含まない定例で簡易な電話」と書いているとおり、案内の用件だけなら、氏名や被保険者の番号を聞かなくても成り立ちます。
SMSを送る場合も、送るのは着信した番号あてのURLだけで、本文に税額や個人の情報は書きません。SMSの本文に何を書いてはいけないかは「自治体のSMS活用」で詳しく解説しています。本人確認を伴う用件まで広げるのは、案内の用件で効果を確かめてからでも遅くありません。
効果は何で測る?
受電件数、完結率、職員が電話に使った時間、開庁時間外の入電数の4つを、導入前と導入後で比べます。前橋市の事例のように、完結率と職員の時間は分けて測ります。開庁時間外の入電数は、時間外の案内がどの程度使われたかを見るための数字です。
導入前の職員の負担を示す材料として、株式会社電話放送局の調査も使えます。職場で電話対応に携わる20〜60代の255名に聞いたところ、電話対応で本来業務が中断される頻度は「週に数回以上」が72.5%でした。自動化する場合に満たされていないと導入したくない条件は、「利用者が操作に迷わない」23.1%、「必要なときに確実に人に代われる」22.7%、「人に代わるときに用件が引き継がれる」22.4%がほぼ並んでいます(出典:電話対応業務の負担と自動化ニーズに関する実態調査)。国保課では、番号操作の分かりやすさ、職員対応時間の転送、選択した用件の引き継ぎを、実機で確認する項目にできます。
費用はどう決まる?
弊社のDHK CANVASは、電話1件単位の件課金です。見積もり時には、月間の対象件数と、音声案内・SMS・職員転送の利用範囲を伝えます。
国保の案内は、加入の書類や高額療養費の申請方法など、説明に時間がかかる用件を含みます。予算を見積もるときは、月の受電件数、繁忙月の件数、使う機能をまとめ、見積もりに含まれる範囲と課金単位を確認してください。費用の決まり方と予算要求に載せる数字は、自治体の電話自動化の記事の費用の章で整理しています。
よくある質問
Q. 国保課だけ先に自動化して、代表電話はそのままでもよいですか?
国保課の直通番号だけで始めて問題ありません。沼津市は国保の3つの係、板橋区は国保資格係の1つの番号から始めています。直通番号は通知書に載っていて、かけてくる用件が国保に絞られているため、代表電話より仕分けがしやすい入口です。
Q. スマートフォンを持っていない高齢の住民はどうなりますか?
固定電話からかけた住民にも、自動音声で手続きの方法などを案内できます。文京区は、固定電話からの電話には自動音声で案内すると明記している自治体の一つです。職員と話したい住民は、自治体が案内する職員対応時間に転送で職員につながります。
Q. 職員につながらなくなったという苦情は出ませんか?
前橋市では、懸念していた大きなクレームやトラブルは事例の取材時点までほぼ0件です。前橋市の試験導入時の案内は、冒頭で職員につながる時間を伝え、分からなかった場合は職員につなぐ作りです。板橋区は、転送を選んでも混雑時はすぐにつながらない場合があると知らせ、職員対応を希望する人には代表電話の利用も案内しています。
Q. 後期高齢者医療や国民年金の電話も一緒に自動化できますか?
一緒に自動化している自治体があります。文京区は国保・後期高齢者医療・国民年金の電話をまとめて自動音声で受けており、前橋市も後期高齢者医療業務の番号を試験導入の対象にしました。反対に沼津市は、高齢者医療係の電話を従来どおり職員が受ける形にしています。
Q. 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
弊社の公共・自治体向けの案内では、構築の準備期間を2〜3カ月としています。前橋市の企画段階の資料には5月中旬のプロポーザル予定、6月の記者発表資料には6月17日の試験導入予定が記載されています。実際に構築に要した期間は公表資料からは分かりません。対象の用件と件数は、予算要求の段階からまとめておくと、契約後に案内文と試験を検討しやすくなります。
Q. 番号を押す方式と、話しかける方式のどちらがよいですか?
国保の案内の用件は選択肢が決まっているものが多く、ここで紹介した自治体の多くは番号を選ぶ方式で始めています。用件の種類が多い窓口で話しかける方式も検討するなら、想定する質問を使ってデモで応答と職員への転送を確かめてください。弊社のDHK CANVASは、決められた流れで進む方式と、生成AIで自然な会話に答える方式を組み合わせて使えます。
まとめ
国民健康保険の電話の自動化は、国保担当窓口への電話を自動音声で受け、答えが決まっている用件を音声とSMSで案内し、それ以外を各自治体が定めた職員対応時間に転送する形で、前橋市・沼津市・文京区・板橋区・東久留米市が進めています。文京区は専用の050番号を案内し、ほかには既存の直通番号を使う自治体もあります。前橋市はこの形で年間約550時間の業務時間を削減し、導入時に長くなった案内を「あえて情報を絞り込む」ことで、住民が迷わない流れにしました。
最初の一歩は、自分の課の直通電話について、用件ごとの件数を一定期間数えることです。件数の多い上位の用件のうち、答えが住民ごとに変わらず、個人情報を聞かずに案内できるものが、最初に自動化する候補になります。そのうえで、繁忙期に案内を見直す時間を残せる稼働日を決め、予算要求の時期から逆算してください。
株式会社電話放送局の電話自動化サービスの導入実績は、1,500社以上です。国保課のほかにも、運転免許や予約受付など、自治体の電話を自動化した例を「自治体 活用事例集」にまとめています。庁内での説明に使える前例をお探しの方は、導入事例とあわせてご覧ください。
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【本資料は、下記の関心をお持ちの方におすすめです】
・自治体のどのような電話業務に活用できるのか知りたい
・自動化に適した各部署の業務内容を知りたい
・IVR(ボイスボット)やオートコールの具体的な活用事例を知りたい
監修者情報
メーカーのコールセンター運営管理に従事し、自らIVRを導入。
不要な入電を抑制しつつ売上向上を実現するなど、現場視点で成果を創出。電話放送局では営業マネージャーとして10年以上従事し、クラウド型IVRの業界シェア1位獲得に貢献。
コロナ禍におけるユーザーのデジタル行動変容を受け、マーケティング部門を立ち上げ、責任者に就任。インサイドセールスを統括し、営業部門との連携を強化。自動音声応答の導入、運用、集客、営業の幅広い経験を有する。
IVRおよびコールセンター市場における20年以上の知見を活かし、ユーザーの検索行動やニーズを深く理解したマーケティング戦略を展開。
検索連動広告の運用経験を基に、現場で役立つ実践的な情報を発信し、読者のビジネス成功を力強くサポートします。
営業部 営業企画・推進チーム シニアリーダー 前田泰延
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