2026/10/30

カード不正利用の本人確認をオートコールで自動化|詐欺と疑われにくい流れと文例・事例

「不正検知のアラートが毎日たまって、本人確認の電話が追いつかない」「SMSを送っても返事が無い会員に、結局ひとりずつ電話をかけている」という不正対策・信用管理の担当者は少なくありません。カード不正利用の本人確認は、オートコール(自動音声の電話)で自動化できます。自動にするのは「本人の利用かどうか」を聞く最初の電話で、心当たりが無いと答えた会員だけをオペレーターにつなぎ、カードの停止や再発行の説明は人が担う、という分担です。
本記事では、検知後の連絡から回答結果の記録までの流れと、会員に詐欺の電話と疑われにくい自動音声の作り方を、カード会社の事例とあわせて解説します。そのまま社内のたたき台にできるガイダンス文の例は、「ガイダンス文の例とプッシュ操作の分け方」に載せています。

目次

・カード不正利用の本人確認は、どこまで自動化できる?

・本人確認の電話が人手で回らなくなっている理由

・不正検知から確認結果の記録まで|自動音声と人の担当を分ける

・会員に詐欺と疑われにくい自動音声の作り方

・ガイダンス文の例とプッシュ操作の分け方

・事例|ポケットカードが未対応残数0件にした運用

・既存の不正検知システムとどうつなぐ?

・本人確認の自動化で困ったときの原因と見直し方

・導入前に決めておく8つのこと

・よくある質問

・まとめ

カード不正利用の本人確認は、どこまで自動化できる?

自動化できるのは、本人の利用かどうかを会員に聞いて、答えを受け取るところまでです。答えによって、そのまま確認を終えるか、オペレーターにつなぐかを自動で分けられます。ここでは、自動にする範囲と人に残す範囲、手段の組み合わせ方を整理します。

自動にするのは「本人の利用ですか」と聞く最初の電話

不正検知のあと、最初にかける電話は、カード会社が保留した取引について「ご本人のご利用ですか」と聞く電話です。聞く内容は毎回同じで、会員の答えも「はい」か「いいえ」のどちらかに分かれます。このような電話は、プッシュ操作で答えを受け取るIVR(自動音声応答)の得意分野です。

会員が「本人の利用」と答えれば、自動音声のまま回答の受け付けを終え、結果をカード会社のシステムに返せます。その回答だけで利用制限を解除してよいかは、取引のリスクと社内の判定基準に沿ってカード会社が決めます。

人に残すのは、心当たりが無い会員への説明と判断

「心当たりが無い」と答えた会員には、カードの利用停止、新しいカードへの差し替え、補償の手続きといった説明が必要です。会員は不安を抱えているので、質問に合わせて答えを変えられる人が対応します。自動音声の役目は、その会員をできるだけ早くオペレーターにつなぐことです。

SMS・オートコール・オペレーターの順に連絡する

本人確認の連絡手段は、SMS、自動音声の電話、オペレーターの電話の3段で組むのが基本です。まずSMSで知らせ、返事が無い会員や、携帯電話の番号が登録されておらずSMSを送れない会員にオートコールをかけます。それでも確認が終わらない会員にだけ、オペレーターが電話をかけます。

この組み方で運用しているのが、ポケットカード株式会社です。1日50〜100件ほどの電話をオートコールで行い、本人確認ができていない会員の未対応残数は0件になっています。

本人確認の電話が人手で回らなくなっている理由

本人確認の電話が人手で回らなくなる理由は、件数が増えたことと、SMSだけでは連絡がつかない会員が残ることの2つです。確認が遅れるほど、カードを止めている時間が延びて会員の不便も大きくなります。

不正利用の被害額は2024年に過去最多になった

一般社団法人日本クレジット協会の調査では、クレジットカードの不正利用被害額は2021年に330.1億円となり、2024年には555.0億円と、1997年からの集計で最も多くなりました。2025年は510.5億円で、そのうち93.1%が番号盗用による被害です。

年 不正利用被害額 うち番号盗用被害額
(構成比)
2020年 253.0億円 223.6億円(88.4%)
2021年 330.1億円 311.7億円(94.4%)
2022年 436.7億円 411.7億円(94.3%)
2023年 540.9億円 504.7億円(93.3%)
2024年 555.0億円 513.5億円(92.5%)
2025年 510.5億円 475.4億円(93.1%)

出典:一般社団法人日本クレジット協会「クレジットカード不正利用被害の発生状況」(2026年9月7日公表)。海外発行カードの分は含みません。

被害額は2024年をピークに下がりましたが、2020年の約2倍の水準です。不正を疑う取引について会員への確認が必要になり、SMSで回答が得られない会員への電話が残ります。ポケットカードの事例でも、2022年頃から業界全体で不正利用が急増し、電話をかける作業に多くの人手が必要になったと書かれています。

SMSだけでは足りないのはなぜ?

SMSを開かない会員と、SMSを送れない会員が残るからです。SMSは、本人確認の最初に短い通知を送れる手段です。ただ、カード会社を名乗るフィッシングのSMSが多く出回っているため、本物の通知も開かれずに残ることがあります。ポケットカードでも、フィッシング詐欺への警戒からSMSが開封されないケースが多くあったと述べています。

もう1つは、SMSを送れない会員です。登録されている番号が固定電話だけなら、SMSは届かないため電話で連絡します。番号が古い場合は電話も届かない可能性があり、登録情報の確認や別の連絡手段が必要です。

カードの利用を一時停止した場合は、確認が遅れるほど会員を待たせる

カード会社が不正を疑う取引についてカードの利用を一時停止した場合、本人の利用か確認するまで停止が続くことがあります。JCBの会員向けページでも、不審な利用を検知するとカードを一時停止して本人に連絡し、本人の利用と確認できたら停止を解除すると案内しています(出典:JCB「不審な利用を徹底監視!知って安心「不正検知システム」とは?」)。

利用を一時停止した取引が本人のものだった場合、確認が翌日へ回れば、会員がカードを使えない時間も延びます。停止の有無と解除の条件は、カード会社の基準で決めることです。

不正検知から確認結果の記録まで|自動音声と人の担当を分ける

不正を疑う取引が見つかった後、会員への連絡と回答の記録を自動化できます。以下は設計例です。保留・利用制限の有無や解除条件はカード会社の基準で決めます。心当たりが無い会員への説明と、回答が得られない会員への電話は人が受け持ちます。

カード会社が不正を疑う取引を見つけ、SMSと自動音声で会員に連絡し、回答に応じて担当者へつなぐ様子

ステップ 何が起きるか 担当 次に渡すもの
1 検知 不正検知システムが疑わしい取引を見つける。取引保留や利用制限の有無はカード会社の基準で決める システム 会員番号、電話番号、
取引の日時・加盟店名・金額
2 SMSで通知 取引の内容と、答え方を知らせる システム SMSの送信結果、
回答の有無
3 オートコール 決めた時間までに返事が無い会員と、SMSを送れない会員に自動で電話をかける 自動音声 発信リスト
4 確認 取引情報を伝えてよい条件を満たした会員に、本人の利用なら1、心当たりが無ければ2を押してもらう。条件を満たさなければ取引情報を伏せて公式窓口へ案内する 自動音声 押されたボタン
5 1を押した会員 自動音声で回答を受け付け、結果を返す。利用制限の解除は社内の基準に従う 自動音声
システム
確認の結果、
解除の判定に必要な記録
6 心当たりが無い会員 その場でオペレーターに転送し、カードの停止と差し替えを案内する 人 取引の内容と、
「心当たりが無い」という回答
7 出なかった会員 時間をおいてかけ直し、それでも確認が終わらなければオペレーターが電話する 自動音声
人
発信の結果
(不在・話し中など)

表の右の列は、次のステップに何のデータを渡すかを示しています。自動化がうまく回るかどうかは、この受け渡しを人の手作業なしでつなげられるかで決まります。

自動音声で回答を受け付ける方式と、オペレーターにつなぐ方式

オートコールで本人確認をするときの作りは、大きく2つに分かれます。会員の答えを自動音声で受け取って確認を終える型と、自動音声は呼び出しだけにして、確認はオペレーターが行う型です。

① 自動音声で回答を受け付ける方式

ポケットカードが採っているのがこの方式です。本人の利用と確認できた会員には自動音声のまま案内を終え、心当たりが無い会員だけをオペレーターに転送しています。オペレーターが最初の確認電話をかける件数を減らし、不正被害の可能性がある会員からの受電に人を回せます。

② 自動音声で呼び出し、オペレーターが確認する方式

三菱UFJニコスの会員向けページでは、自動音声の電話で「1」を選ぶとオペレーターにつながり、本人の利用かどうかはオペレーターが確認すると案内しています。自動音声の電話は発信専用で、折り返しても通話できないことも明記されています(出典:三菱UFJニコス「ご連絡と必要なお手続きについて」)。電話をかける作業は自動になり、確認の会話は人が受け持ちます。

どちらを選ぶかの判断材料は、オペレーターの人数と、自動音声だけで回答を受け付けてよいとする社内の基準です。高額の取引など、追加確認が必要なものはオペレーターにつなぐように条件を分ける案もあります。実際の判定条件は、カード会社ごとの運用基準に合わせてください。

人に残すべき電話はどれ?

人に残すべきなのは、会員の答えによって説明の内容が変わる電話です。具体的には、次のような電話です。

  • 心当たりが無いと答えた会員への、カードの停止・差し替え・補償の説明
  • 自動音声で何度かけても確認が終わらない会員への電話
  • 取引の内容について「金額が違う」「家族が使ったかもしれない」など、2択で答えられない会員からの折り返し
  • 自動音声の操作に慣れていない会員や、オペレーターと話したいと希望した会員

ポケットカードでも、オートコールで本人確認が完了しない会員には、オペレーターが有人で電話をかけています。最初の電話を自動にした分の人手を、こうした電話に回す考え方です。

会員に詐欺と疑われにくい自動音声の作り方

本物の本人確認の電話を詐欺と疑われにくいようにするには、会員が詐欺を見分けるときに確かめる点を、発信する側の作りでひとつずつ満たします。自動音声の電話は、詐欺の手口にも使われているからです。ここでは、その背景と、具体的な作り方を紹介します。

自動音声の電話は、詐欺の手口としても知られている

消費者庁は2024年6月11日、大手通信関連会社の名称をかたり、国際電話番号などから自動音声ガイダンスなどで料金の未納を告げ、案内に従って操作したり折り返したりした人に支払いを求める手口について注意を呼びかけました(出典:消費者庁「大手通信関連会社の名称をかたり、自動音声や国際電話番号等を用いて架空の利用料金請求を行う事業者に関する注意喚起」)。自治体の消費生活の窓口にも、行政機関や電話会社をかたる不審な自動音声の電話は、最後まで聞かずに切るよう呼びかけているところがあります(例:山形県の消費生活に関する注意喚起(PDF))。

会員はこうした注意を見聞きしたうえで、カード会社からの電話を受けます。社名を名乗るだけで本物と証明できるわけではありません。電話を切ってからでも、公式サイトやカード裏面の連絡先で確認できるようにしておく必要があります。

会員が確かめる点と、発信する側でやることを並べました。

会員が確かめること 発信する側でやること 決める部署・担当
誰からの、
何の電話か
冒頭の数秒で社名と用件を名乗る。取引の内容は、伝えてよい相手だと判断できた場合だけ伝える 不正対策の担当、
ガイダンスの作成者
知っている番号から
かかってきたか
発信番号を公式サイトの不正利用のページに載せる。番号表示だけで本物と判断してもらう前提にはしない 不正対策の担当、
サイトの担当
暗証番号やカード番号を
聞かれないか
自動音声では暗証番号・カード番号・有効期限・セキュリティコードを聞かない。利用の有無は1か2で答えてもらう 不正対策の担当
URLや別の番号に
誘導されないか
自動音声でURLや折り返し先の番号を読み上げない。折り返しはカード裏面の番号へ案内する ガイダンスの作成者
確かめたいときに
聞ける窓口があるか
「この番号は本物か」という問い合わせに答える手順を、コールセンターの応対マニュアルに入れる コールセンターの
管理者

会員が公式サイトとカード裏面の番号を確かめ、カード会社が秘密情報を聞かない電話を用意する様子

冒頭で社名と用件を伝える

知らない番号からの自動音声は、最初の数秒で切られやすい電話です。冒頭は「〇〇カードの不正利用対策の窓口から、自動音声でお電話しています」のように、社名と用件を1文で伝えます。ポケットカードは、ガイダンスの冒頭で社名と不正を疑う取引の情報を伝えています。取引情報をどの相手に読み上げるかは、自社の基準で決めてください。

読み上げる取引の内容(日付・加盟店名・金額のどれを入れるか)は、社内で決めておく項目の1つです。会員ごとに内容が変わるので、録音した音声ではなく、データから読み上げる合成音声を使います。

暗証番号やカード番号は、自動音声では聞かない

自動音声で押してもらうのは、「本人の利用なら1、心当たりが無ければ2」の答えだけにします。暗証番号、カード番号、有効期限、セキュリティコードは聞きません。JCBは会員向けページで、メールやSMSで知らせることはあっても、ログインIDやパスワード、カード番号、暗証番号などの入力をお願いすることは一切ないと案内しています。

この「聞かない」をガイダンスの中で言葉にして伝えるのも1つの方法です。ただし、同じ言葉を詐欺の電話でも使えます。会員が電話を切り、カード裏面や公式サイトの窓口で確かめる選択肢を残してください。

発信番号を公式サイトに載せ、折り返し先を決める

ポケットカードは公式サイトで発信番号を案内し、会員が連絡内容を確かめられるようにしています。ただし、着信画面に表示された番号だけで真偽を確定することはできません。公式サイトの不正利用やセキュリティのページに、発信番号と、会員が自分でかけ直せる窓口を併記します。

あわせて決めておきたいのが、折り返しの扱いです。発信番号に折り返してきた会員を自動音声で受けるのか、窓口へつなぐのか、三菱UFJニコスのように発信専用にして別の連絡先へ案内するのかを決め、公式サイトの説明と合わせます。

本人以外が電話に出たときは、どうする?

固定電話など本人以外も出られる番号では、取引の日時・加盟店・金額を読み上げる前に、情報を伝えてよい相手かを判断する必要があります。「本人なら1を押す」という自己申告だけでは、応答者が本人かどうかは分かりません。確認方法を社内で決められない場合は、取引情報を伏せて、会員からカード裏面の窓口へ連絡してもらう流れにします。

三菱UFJニコスの案内でも、本人以外が電話に出た場合は、本人からカード会社へ連絡してもらうよう伝えてほしいとしています。固定電話などでは、取引情報を読み上げずに「〇〇カードから会員ご本人さまへのご連絡です。カード裏面の番号へお電話ください」と伝える方法があります。会員が取引を確認できる条件を満たした場合に限り、本人の利用かどうかを聞く分岐へ進めます。

途中で切られても、本物かどうかを確かめられるようにする

どれだけ作りを工夫しても、最後まで聞かずに切る会員はゼロになりません。その会員が後から本物かどうかを確かめられるように、SMSを送れる会員には確認が必要な旨を通知し、公式サイトには発信番号と「この電話がかかる理由」を載せておきます。オートコールの仕組みとほかの用途は「オートコールとは?」で紹介しています。

自動音声を悪用する手口そのものと、企業側の対策は「ボイスフィッシング(ビッシング)とは?」で解説しています。

ガイダンス文の例とプッシュ操作の分け方

ガイダンス文は、名乗り、取引の内容、質問、押したあとの案内に分けて作ります。取引情報を伝えてよい条件を満たさない番号には、別の案内を用意します。

ガイダンス文の例

下の文面と1・2・9のボタン割当は、弊社が作った設計例です。ポケットカードなど実在のカード会社の文面や操作方法ではありません。社名は「〇〇カード」、取引の内容は架空の値にしています。取引情報を読み上げるのは、カード会社の基準で伝えてよい条件を満たした場合だけです。

場面 ガイダンス文の例 作るときのポイント
名乗り こちらは〇〇カードの不正利用対策窓口です。カードのご利用について確認のため、自動音声でお電話しています。 社名と用件を最初の1文に入れる
取引情報を伝えられない番号への案内 〇〇カードから会員ご本人さまへのご連絡です。カード裏面の番号へお電話ください。 取引の日時・加盟店・金額は読み上げず、ここで終話する
取引の内容 10月28日に、〇〇ストアで、2万9,800円のご利用がありました。 取引情報を伝えてよい条件を満たした場合だけ読み上げる。項目の範囲も社内で決める
質問 ご本人のご利用であれば1を、お心当たりがなければ2を押してください。もう一度お聞きになる場合は9を押してください。 回答用のボタンは2つに絞り、聞き直しのボタンを添える
1を押したあと ご回答ありがとうございました。カードの利用制限については、弊社で確認のうえご案内します。この電話でカード番号や暗証番号をお聞きすることはありません。 確認が終わったことと、聞かない情報をはっきり伝える
2を押したあと 担当者におつなぎします。そのままお待ちください。 待たせる時間が長くならないよう、受ける席を確保しておく

文面は短いほど、最後まで聞いてもらいやすくなります。1つの文に入れる内容は1つにして、数字や加盟店名は聞き取りやすい速さで読み上げるのがコツです。ガイダンスの作り方の基本は「電話音声ガイダンス(IVR)の作り方」で紹介しています。

押したボタンごとの流れと、返す結果

以下は、取引情報を伝えてよい条件を満たした会員に対する設計例です。押したボタンごとに、その後の流れと、カード会社のシステムに返す結果を決めておきます。情報を伝えられず公式窓口を案内した場合は別の結果として記録します。

会員の操作 その後の流れ システムに返す結果
1(本人の利用) 確認を終えた案内を流して終話 本人の利用と回答
→社内の判定へ
2(取引に心当たりが無い) オペレーターに転送 心当たりが無いと回答
→転送した記録
9(もう一度) 取引の内容と質問を繰り返す 記録しない
(繰り返した回数のみ)
何も押さない 質問を1回繰り返し、それでも無ければ終話 未回答
→かけ直しの対象
出ない・話し中・
途中で切れた
決めた間隔でかけ直す 不在・話し中・途中切断
→かけ直しの対象

「途中で切れた」会員は、名乗りの段階で切ったのか、取引の内容を聞いてから切ったのかで、意味が変わります。どこで切れたかの記録が取れれば、冒頭の文面を直すべきか、取引の伝え方を直すべきかが分かります。弊社のオートコールIVRなら、管理画面の「切断箇所」のレポートが手がかりです。

取引に心当たりが無い会員は、どう人へつなぐ?

取引の質問で「心当たりが無い」と答えた会員は、取引の内容と回答の記録をオペレーターに引き継ぎ、待たせずに転送します。不正利用の被害にあっている可能性があります。転送先で長く待たせないよう、受ける席を確保してください。発信する時間帯も、席数に合わせて調整してください。

株式会社電話放送局の調査(2026年10月、職場で電話対応に携わる20〜60代255名)では、自動音声から人に代わる電話を経験した203名のうち49.8%が、「自動音声で伝えたはずの要件を、もう一度説明する必要があった」「聞き取った内容が引き継がれていなかった」のいずれかを選びました(出典:電話対応業務の負担と自動化ニーズに関する実態調査、ニュースリリース)。カードの確認電話でも、オペレーターが会員に同じことを聞き直さないよう、回答と取引の情報を引き継ぎます。

事例|ポケットカードが未対応残数0件にした運用

ここからは、弊社のオートコールIVRで不正利用の本人確認を自動化したポケットカード株式会社の事例を紹介します。内容は、導入事例のページに書かれていることだけに基づきます。

導入前の課題

ポケットカード株式会社(オペレーション本部 事務管理部 信用管理センター)では、不正利用を検知したときの本人確認を、電話とSMSで行っていました。SMSで回答が得られなかった会員や、SMSを送れない会員には、すべてオペレーターが電話をかけていたそうです。

2022年頃から業界全体で不正利用が急増し、電話をかける作業に多くの人手が必要になりました。不正の疑いがある間はカードの利用を止める必要があり、確認が遅れるほど会員の利便性を損なうことも、課題として挙げられています。SMSはフィッシング詐欺への警戒から開封されないことも多く、速く確実に会員と連絡を取る手段が求められていました。

オートコールで組んだ流れ

システムの不正検知に当てはまった会員に、オートコールで本人確認をしています。本人の利用と確認できた会員には自動音声のまま案内を終え、心当たりが無い会員だけをそのままオペレーターに転送する流れです。

詐欺と疑われにくいための工夫は2つあります。ガイダンスの冒頭でポケットカードからの連絡であることと、不正と検知した取引の情報を名乗っていること。そして、公式サイトでも発信番号を案内し、会員が正当な連絡だと確かめられるようにしていることです。

導入後の効果

1日50〜100件ほどの電話をオートコールで行っています。オートコールで本人確認が終わらない会員にはオペレーターが有人で電話をかけ、不正利用を検知した会員すべてに漏れなく連絡ができる体制になりました。未対応残数は0件、発信の自動化は1日最大100件です。

最初の電話をオートコールに任せた分、不正被害の可能性がある会員からの電話を受ける対応に、より力を注げるようになったとしています。導入を決めた理由には、導入までの期間が短く費用を抑えて始められたことと、音声ガイダンスの調整やインフラ面の助言といった支援が挙げられています。

既存の不正検知システムとどうつなぐ?

不正検知システムや会員管理システムとは、API連携か、データの定期アップロードでつなぎます。どちらを選ぶかと、あわせて決める項目を表にまとめました。項目と選択肢は、弊社のオートコールIVRのサービスページに載っている機能をもとにしています。

決める項目 選択肢 決め方のポイント
発信リストの渡し方 API連携/
データの定期アップロード/
Web管理画面での登録
検知から発信までの時間を短くしたいならAPI連携。社外とつなげない環境ならデータのアップロード
結果の受け取り方 API連携で自動で受け取る/
管理画面からCSVで取り出す
利用制限の判定に結果を使う場合は、回答の記録と社内の判定処理をつなぐ
読み上げる内容 録音した固定の音声/
データから読み上げる合成音声
取引の内容を会員ごとに伝えるなら合成音声
発信の時間帯と
かけ直し
発信の開始・終了の日時、
かけ直しの回数と間隔
APIでつなぐ場合は、会員1人ごとに時間帯や音声を変えられる
発信番号 自社の0120・0570番号などを表示 公式サイトに載せる番号と同じにする
2を押した会員の行き先 コールセンターへ転送/
折り返しの予約を受け付ける
受ける席を確保できる時間帯は転送、それ以外は折り返しの予約
SMSとの組み合わせ 電話の前にSMS/
電話の流れの途中でSMSを送る
電話に出なかった会員にも内容が残るようにする
環境 共用環境/専用環境
(VPN対応も可)
件数と、社内のセキュリティ基準で決める

サービスページには、1時間に5,000件以上の自動架電が可能と記されています。ただし、共用環境のため、この件数は保証されていません。実際に必要な発信枠は、1日の総件数だけでなく、検知が集中する時間帯とオペレーターへ転送できる件数を合わせて確認します。

このガイダンス例ではカード番号や暗証番号を尋ねません。弊社のサービスページには、カード情報をIVRで取得する場合、PCI DSSに準拠した環境で運用できると記されています。今回の本人確認フローにどの管理策が必要かは、取り扱うデータと接続先を明らかにしたうえで、社内のセキュリティ担当部署と確認してください。カード情報を電話で扱う別の業務は「クレジットカードの非保持化とは?」で解説しています。

本人確認の自動化で困ったときの原因と見直し方

自動化を始めてから起こりやすい問題と、原因、見直すことをまとめました。自社で起きていることを左の列から探してください。

起きていること 考えられる原因 最初に見直すこと
電話に出てもらえない 知らない番号として警戒されている。かける時間帯が会員の生活に合っていない 発信番号を公式サイトの不正利用のページに載せる。時間帯を変えて、出てもらえる割合を比べる
名乗りの途中で
切られる
冒頭が長い。社名と用件が後ろに回っている 最初の1文に社名と用件を入れ、前置きを削る
2を押す会員が
思ったより多い
読み上げた加盟店名が、会員の覚えている店名と違う。取引の日付や金額が聞き取りにくい 加盟店名の読み上げ方を見直す。数字はゆっくり読み、9で聞き直せるようにする
転送した会員を
待たせてしまう
2を押す件数に対して、受ける席が足りない 発信の時間帯を席の多い時間に寄せる。席が足りない時間は折り返しの予約に切り替える
確認が終わらない
会員が残る
かけ直しの回数が少ない。登録番号が古い かけ直しの回数と間隔を見直し、SMSと組み合わせる。最後はオペレーターが電話する
「この番号は本物か」
という問い合わせが増える
公式サイトに発信番号や電話の理由が載っていない。窓口の応対マニュアルに答えが無い 公式サイトに発信番号と電話の理由を載せ、応対マニュアルに答え方を入れる

どの見直しも、結果を数字で見ないと改善したかどうかが分かりません。発信した件数、電話に出た割合、1と2が押された割合、途中で切れた位置、確認が終わらずに残った件数を、週ごとに並べて見るのがおすすめです。

導入前に決めておく8つのこと

オートコールで本人確認を始める前に、社内で次の8つを決めておくと、運用を始めてからの手戻りが減ります。

  • 自動音声で回答を受け付けるか、オペレーターが確認するか
  • 発信する時間帯と、夜間に検知した取引をどう扱うか
  • かけ直しの回数と間隔、電話に出なかった会員にSMSを送るか
  • 自動音声で読み上げる取引の内容の範囲(日付・加盟店名・金額)
  • 取引情報を伝えてよい条件と、伝えられない番号への案内
  • 発信番号を載せる公式サイトのページと、コールセンターの応対マニュアルの更新
  • 2を押した会員を受ける席の確保と、席が足りない時間帯の扱い
  • 結果を見る数字(電話に出た割合・2が押された割合・未対応の残り件数)

このうち、発信番号の掲載と応対マニュアルの更新は、システムの準備とは別の部署が受け持つことが多い作業です。準備の初めに担当を決めておくと、発信を始める日に間に合います。

よくある質問

Q. カードの不正利用の確認電話は、自動化できますか?

できます。不正検知システムが見つけた取引について、会員に「本人の利用か」を自動音声で聞き、プッシュ操作で答えを受け取る仕組みです。本人の利用なら自動音声で確認を終え、心当たりが無い会員だけをオペレーターにつなぐ形にできます。


Q. 自動音声の電話は、会員に詐欺だと思われませんか?

会員が電話の真偽を自分で確かめられるようにすることが必要です。冒頭で社名と用件を名乗り、取引情報を伝える相手は社内基準に沿って限定する形です。暗証番号やカード番号は聞かず、発信番号を公式サイトに載せておきます。途中で切った会員には、公式サイトで窓口を確認できるようにし、SMSを送れる場合はカード裏面から問い合わせる方法も知らせます。


Q. SMSだけで本人確認を済ませられませんか?

SMSだけでは、連絡がつかない会員が残ります。フィッシングへの警戒からSMSを開かない会員や、携帯電話の番号が登録されておらずSMSを送れない会員がいるためです。SMSで返事が無い会員にオートコールをかけ、それでも終わらない会員にオペレーターが電話する3段の組み方が向いています。


Q. 心当たりが無いと答えた会員はどうなりますか?

ポケットカードの事例では、その場でオペレーターに転送します。カードの停止や差し替えをどう案内するかは、各社の手順に沿って決めます。転送のときに取引の内容と回答の記録がオペレーターに届くようにしておくと、会員に同じことを聞き直さずに済むはずです。席が足りない時間帯は、折り返しの予約を受け付ける形にもできます。


Q. 何件くらいから自動化する意味がありますか?

件数で一律には決まりません。人が毎日かけている本人確認の電話の件数と、その日のうちに終わらずに残る件数を見て判断します。ポケットカードの事例は、1日50〜100件ほどの電話をオートコールで行っている規模です。


Q. 既存の不正検知システムとつなげられますか?

接続方法を検討できます。弊社のオートコールIVRはAPI連携に対応し、API連携が難しい環境では、データを定期的にアップロードする方法もあります。具体的な項目と接続範囲は、既存システムの仕様を確認したうえでの個別設計です。どちらの方法が合うかは、検知から発信までに許される時間と、社内のシステムの決まりで決めます。

まとめ

カード不正利用の本人確認では、最初の「本人の利用ですか」という電話を自動音声に任せ、判断と説明を人が担う形です。SMSで返事が無い会員と送れない会員にオートコールをかけ、心当たりが無い会員をオペレーターにつなぎます。冒頭で社名と用件を名乗り、取引情報は伝えてよい相手に限って伝えます。暗証番号を聞かず、発信番号を公式サイトに載せておくことも必要です。

最初の一歩として、直近1か月に人がかけた本人確認の電話の件数と、その日のうちに終わらなかった件数を数えてみてください。株式会社電話放送局のサービスは1,500社以上に導入されており、ガイダンス文の作成から既存システムとのつなぎ方まで、ご相談いただけます。オートコールの具体的な使われ方は、導入事例もあわせてご覧ください。

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監修者情報

メーカーのコールセンター運営管理に従事し、自らIVRを導入。
不要な入電を抑制しつつ売上向上を実現するなど、現場視点で成果を創出。電話放送局では営業マネージャーとして10年以上従事し、クラウド型IVRの業界シェア1位獲得に貢献。
コロナ禍におけるユーザーのデジタル行動変容を受け、マーケティング部門を立ち上げ、責任者に就任。インサイドセールスを統括し、営業部門との連携を強化。自動音声応答の導入、運用、集客、営業の幅広い経験を有する。
IVRおよびコールセンター市場における20年以上の知見を活かし、ユーザーの検索行動やニーズを深く理解したマーケティング戦略を展開。
検索連動広告の運用経験を基に、現場で役立つ実践的な情報を発信し、読者のビジネス成功を力強くサポートします。

監修者 前田泰延(株式会社電話放送局) 営業部 営業企画・推進チーム シニアリーダー 前田泰延

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